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gock221B

映画その他の感想用ブログ(since 2015) http://gock.flavors.me/

「岸辺の旅(2015)」 黒沢清/幽霊が黄泉平坂で宇宙の終りと始まりを語る場面に感動

幽霊 (ドラマ) 〈邦画〉 〈ヨーロッパ〉 【映画】

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監督:黒沢清 製作国:日本/フランス

公開から半年くらい経ってやっと観た。
黒沢監督は物凄く好きな監督だが本作は去年の秋の公開時に見逃して年末のアップリンクでの上映も逃した。正直、これ観たら何か自分の中の様々な諸問題と直面しなきゃいけなくなる恐れがあって、内心避けていたような気もするが気のせいかもしれない。
このままDVDで観るわけにいかんと検索したら品川で上映されてたので行った。
観終わったらむしろ気持ちが楽になる傑作だった。あほですね。。

 

三年前に蒸発した夫(浅野忠信)が妻(深津絵里)の元にひょっこり戻ってくる
しかし彼は既に死んで幽霊。彼は妻を連れて、世話になった所々を旅行して回る

妻・瑞希(深津絵里
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深津絵里演じる妻・瑞希はピアノ講師をしている。あまり深い意味はないだろうが、いつでも旅に出れる職業にしたのかな。ちなみに浅野忠信演じる夫の優介の職業は医者で、これまた瑞希が一人で不自由なく暮らしててもおかしくないような職業にしたのかもしれない。
そういえばトウキョウソナタ井川遥演じるピアノ講師も男がどっか行っちゃった空虚な感じの美人だった気がする。あのキャラのスピンオフだと思い込んで観るのも面白いかもしれない。
深津絵里黒沢清映画によく出てくる独特のもっさりした雰囲気の黒沢ヒロイン。好き
後半、夫と心が通じてからどんどん可愛くなっていって最後の方は20代くらいに見える


夫(浅野忠信)と幽霊
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医者だった夫・優介は三年前、蒸発して海に落ちて死んだ。
(死ぬ前ではなく)死んだ後に転々と暮らしていた場所に妻を連れて行く。
浅野忠信は「アカルイミライ」とか「珈琲時光」の浅野とほぼ同じキャラ‥というか彼はMARVELヒーローとか演じても全部同じキャラだが。。(スター俳優なのでそれでいい)
優介は、過去の黒沢Jホラーと同じ小中理論的に出現する。本作に出てくる他の霊も同様の出現の仕方をする。しかし今までと違うのは光が彼ら幽霊の顔に当たり、また彼らは生きている人間に普通に話しかけたり触れる事ができる。本作で優介を幽霊だと見破る事が出来たのは序盤の電車にいた少年だけしかいなかった(後に出てくる僧侶と同様に気付いていない可能性もある)
柄本明や食堂の夫婦などは、ひょっとして優介が幽霊だと最初から知っていたのかもしれない。しかしその辺はどっちでも深い意味はないのでそこは各自が自由に想像する感じでいいんだろう。
しかし、どうやら別離の時以外はSEXしてはいけないらしい。
また優介は普通に食事をするが、彼の食事シーンにはカメラが動いて彼がものを食ってるところを意図的に撮らないようにしていた。


小松政夫
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旅行に出かけた夫婦は、優介が世話になっていた新聞屋さん(小松政夫)を訪ねる。
この男も実は遥か昔に悔いを残して死んでいる、後に出てくる無念の地縛霊もそうだが自分がとっくに死んでいる事に気付いていない。
無念を持った彷徨う霊たちは、どうやら時と共に世界全体と徐々にズレていき様子がおかしくなっている。
映画や怪談に出てくるそういう感情の霊といえば、たいてい気が狂った様なかたちで出てくる。霊がいるいないは置いといて、もし霊がいるなら徐々に気が狂ってそういうものなんだろうなと思う。
小松政夫はいつもにこやかだが張り付いたような笑顔をしていて、本当に笑ってるのかどうかようわからない顔をしている。だからこの役にピッタリだと思った


中華料理屋
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次に餃子がおいしい中華料理の夫婦の元を訪れる。
「水が合う合わない」の話が出てきて、自分の事についても考えさせられた。
ここで起きるイベントはピアノに関するもので、かなり普通の邦画っぽいものだった。


深津絵里蒼井優に試合に負けて勝負に勝ったのか
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瑞希は、優介が過去に浮気したらしい同僚(蒼井優)を訪ねる。
瑞希とこの蒼井優は優介が消えた後に、やり取りしていてお互いの事を知っている。
優介は「あの子は遊びだったし別にどうでもいいよ」と言い、それが原因で喧嘩になって夫婦は別行動になり優介は消える。
瑞希と蒼井優は対峙し、女同士特有の怖い感じ全開でスタンドバトルを始める。
嫌な感じ。。浅野忠信を間に挟んだプライドのぶつかり合いか。
瑞希は最初優勢に思われたが蒼井優の方が一枚も二枚も上手で、すぐに敗れ去った。
完全に敗れ去った瑞希を笑顔で見つめる蒼井優。。ああ、嫌だ
でも、劇中の人物にとってのお天道様(観客)は絶対みんな瑞希の方が可愛いいと思ったはず。だから瑞希は試合に負けて勝負に勝ったんだ。。勝ち負けの問題じゃないが、そう思いたい
この序盤~小松政夫~餃子屋のピアノ~蒼井優などまで(第二幕の終わりくらい?)は、かなり普通の映画っぽくて、ここから先が一気に黒沢清っぽくなる。。という展開はトウキョウソナタと似てるなと思った。
音楽は大友良英&江藤直子らしいが、小松政夫が成仏するシーンや終盤で主人公夫婦らが月を眺めるシーンに流れる曲は凄く壮大で、芥川也寸志の「八つ墓村」のサントラ曲っぽいエモーショナルな感じだった。


黄泉平坂のある村
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最後に、柄本明と息子の嫁(奥貫薫)とその息子が住む田舎にやってくる。
奥貫薫「叫」以来2回目の出演かな。どっちも不幸な役。
この村には何と池の底に黄泉平坂(霊界への入り口)があって凄く色々な事が起きる。
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というかそもそもこの村に来た深津絵里はモンペに着替えてるし全体的にノンビリしすぎた雰囲気でもあるし、この村自体が幽霊みたいな感じがした。
ここからが本作の本番という感じ。
優介は、この村で村人に科学の話をして人気者だったらしい。
村人や子供達が「先生だ~!」と大量に集まるので大袈裟だなぁと最初は可笑しかった。
優介は科学講座の続きを始める
「何も無いという事は決して無意味ではない。"無"こそ全ての基本なんだよ」
これは当然、幽霊とか、もしくは一見、無駄に思える事は、決してネガティブなだけの存在ではないと言いたいのだろう。今までの映画と違う切り口なので驚いた。
奥貫薫は蒸発した夫に引っ張られて生気のない人間になっている。
瑞希は「その消えた夫はどうなるの?」と訊くと、優介は
きっと何か得体の知れない、 混乱した、 ぞっとするようなものになっていくんだろうね。」と黒沢清節で答える。ファンなら「来た来た~」と盛り上がるところ
黒沢映画のキャラ風に言うと「この台詞は、何だかよくわからないやり方で、僕の中にすうっと入って来た。嘘なんかじゃないよ?」という感じだ。
この奥貫薫と幽霊の亭主は、主人公夫婦が道を誤った悪い未来の暗喩キャラなのかな。
生死の境をまたいだままズルズル関係してたらこうなるぞ、と提示された感じなので否が応でも主人公夫婦の真の別れが近づいてきたと思わされる
優介は残された時間が終わりに近づくにつれ、具合が悪くなってきて村人に最後の講義を始める。宇宙の広大さ、偉大さを語る(語り始めると村人たちが一つ一つ電球を点ける!)

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宇宙はこれで終わるんじゃない。ここから始まるんです。僕たちはその瞬間に立ち会っているんです
と言うので、毎日が不安な自分の中に暖かいものが広がりジーンときた。
正直、主人公夫婦の気持ちが一つになる場面やラストシーンよりも感動した(それは哀しいかな僕が独身だから夫婦より宇宙の方が切実なのかもしれない)
坊主の説教聞いてジーンとするジジイやババアはこんな安心感なのかなと思った。
神仏より宇宙で話された方がスッと入って来る(どちらも同じものだが)
そりゃ、先生!先生!つって老人や子供に人気なわけだ。
まあ、結末が同じ(死)なら暗い顔しててもしょうがないですしね。。
それにしても、この映画は全編、死の香りでトヨエツが「右にも死体!左にも死体!どこもかしこも死体だらけだ!」とか言いそうなのに凄く暖かい不思議な映画だった
観た人が逆「回路」って言ってたのをよく耳にしてたが、確かに黄泉から死者が進行してくる「回路」とは逆に成仏シーンが多かった。それにしても深津絵里の父は何のために出て来たのかイマイチわからなかったな


まとめられなかった
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主人公夫婦は、いつもの黒沢映画の夫婦の感じ。。だが、途中の蒼井優がらみの喧嘩とか後半の打ちとける様子とか愛を交わす描写とか、今までにない場面がバンバン出るし良かった
妻に枕をぶつけられた浅野忠信が「も~!笑」とか言ってイチャイチャする場面も可愛い
ラストカットの深津絵里のあっさり具合もクールで凄く好き。
これを観てると、だんだん初めて結婚したくなってきた
何かあらすじを順に書いていくような感想になったのは、まだ自分の中で消化できてないからなんだろうなと思った
とにかく良かったです。次回作は6月のサスペンス映画「クリーピー」か

そんな感じでした

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