原題:Carol 監督:トッド・ヘインズ
製作国:イギリス/アメリカ/フランス 上映時間:118分
普段観る映画の9割はアクションとかSFとかホラーばかりで、たまには女性的な映画が観たいと思って今週はこの映画を連日観ていた。何しろ主要登場人物は立派な女二人、次に脇役の立派な女一人、あと出て来る男はアホだけなので女性中心の雰囲気を味わっていた。
思えば俺は幼い時から、親戚の法事とか友人との飲み会とかホームパーティ等で、台所に行って女性に交じるのが好きな少年だった(男として女の中に交じるのではなく、気配を消して黙って溶け込むパターンの方)
これは女流ミステリー作家パトリシア・ハイスミスが1952年に書いた女性同士の恋愛小説の映画化。そんなもんバッシングされるに決まってるので別名義で発表したそうだ。
パトリシア氏は、デパートの売り子のバイトをしていて買いに来たゴージャスな金髪女性を見て、妄想でもってこれを書き上げたらしい。
パトリシア氏の小説を一冊も読んでないしLGBTに詳しいわけでもないのでWikipediaを5秒見ればわかる情報はここまでにしておこう。
Story
1952年。NYの高級百貨店のおもちゃ売り場でアルバイトしているテレーズ(ルーニー・マーラ)。
彼女はフォトグラファーという夢を持ち、恋人もいるが満たされない。
ある日、エレガントな婦人キャロル(ケイト・ブランシェット)が娘のクリスマスプレゼントを買いにやってくる。ちなみにキャロルは夫とうまくいってなくて離婚を決意している事が後でわかる
お互いに興味を持ち、惹かれ合い求めあう二人。。
みたいな話。
ケイト・ブランシェットは言わずもがなだが、ルーニー・マーラはフィンチャーがリメイクした「ドラゴン・タトゥーの女」主人公のゴスハッカーを演じてたCGみたいに美しい女優だ。
正直あまり興味なかったので「キャロルは観なくていいや」とスルーしてたのだが、あまりにもちょくちょく評判を聞くので一応抑えとこうって感覚で観たけど、良かった。
女性同士の恋愛で、男の俺には正直ピンと来ないものがある。。そういう事は身の周りでちょくちょくあったが正直、実際に身の回りで起きても現実味がないのかピンと来なかった。
自分が付き合ってる女性が男と寝たと言ったら当然、腹が立つわけだが、俺自身が童貞のような精神で女性を特別視してる部分があるせいか、男と浮気したら腹立つが女と寝たと聞いても「ああ、そうなん‥?( ¨̮ )」と受け入れてしまうところがある。たぶん女同士というのはもっとドロドロしてるんだろうけど、あまりその感じを肌で知らないからピンと来ないのだろう。むしろ「バイセクシャルなんて何だかカッコいいじゃん」と呑気に思ってしまいがち。
女同士の恋愛話を聞いても、どうも今ひとつ現実味がなく何だか妖精同士が触れ合ってるようなフンワリした良い認識しか出来てないのかもしれない。
女性同士で恋愛した話を女友達とかから聞いても、あまりにもスッ‥と受け入れるので柔軟な優しい男だというような良い意味で思われる事がたまにあるが、僕は他人から‥特に女性からプラスに思われるのは得なので黙ってるものの自分はそんな良い感じの男ではなく、むしろ逆に良くない奴なんだろうと思う。
自分は決してLGBTに理解がある男などではなく、この映画の中のレズビアンに対して激怒して妨害してくる夫や彼氏たちよりも、女性に対して本当の意味で親身になっていないという意味で、興味が希薄な分もっと酷い男なのかもなとたまに思う(そしてそれによって俺は困らないし他人にも迷惑かけてないのでじっくり考えることもないので真に理解する事もない)。
本作のテレーズとキャロルの恋愛や性愛に対しても、やはりピンと来ないので「女性同士の恋愛映画」と思うと興味なさすぎて眠くなるので、「『テレーズという人間』と『キャロルという人間』が愛し合ってるが二人はマイノリティなので、社会や男たちに抑圧されている、障害に立ち向かう恋愛映画」と、大きく引いた漠然とした視点で観た。
そんな感じで観てたのだが、この映画そのものが、あまりに重厚で画が持ちまくる‥この映画が作品として名作だったので、単純に絵本を読む子供のように「一体どうなるん?!」と、先の展開をハラハラしながら観れました。
ケイト・ブランシェット演じる「エレガントな婦人」のエレガントさがあまりに凄すぎて「この人、本当に現実に生きてる人間か‥?」という凄みが物凄かった。
自分は特にMではないし高貴な、位の高い女王様が好きではないのだが、このケイト・ブランシェット演じるキャロルというキャラは、彼女になら指示されて見返りのない雑用させられても充実感がありそうなカリスマがあった(俺自身のちっぽけなキャラクターを彼女が遥かに凌駕しているせいだろう)。
ケイト・ブランシェットといえば僕は、笑えないほど痛々しい女を演じたウディ・アレンの傑作コメディ「ブルー・ジャスミン」がめちゃくちゃ好きなんだけど、あの痛いキャラとこの立派そうなキャロルを演じてるのが同じ人物だと考えると頭がクラクラしてくる。
金持ちの立派そうな女性というルックスは一緒なもんだから余計にそう思える。
そういえば二人がモーテルでベッドインした時にケイト・ブランシェットの背中も綺麗だったが、ルーニー・マーラの胸があまりにも綺麗だった(綺麗すぎて1ミリも性欲が沸かなかった)。
数秒経って、俺が「‥めちゃくちゃ綺麗な身体だな~」と丁度思った辺りで、キャロルが「凄い綺麗な身体‥こんなの見たことないわ」とかいうので「視聴者の思考に0コンマ何秒レベルで台詞を合わせてくるやん!」と驚いた
出てくる度にギャーギャーうるさく女々しくて「うるせえな早く死ねよコイツ!」と思わされたキャロルの夫やテレーズのボーイフレンド。
彼らが本当にウザいのだが、1950年代の女性同士の恋愛、主人公二人の主観がそのまま映像化されたような恋愛映画、などという事によって「テレーズとキャロルの目からは世界はこう見えてる」という光景ってだけかもしれないな、とも思った。
本当にウザい夫とボーイフレンドだが、よく考えたら彼らは悪人というわけではなく、むしろ彼女たちを真剣に愛している。
本作の映画世界はキャロルとテレーズ二人の主観オンリーなので相対的に、どうしようもなくウザい人物に見えてるだけだろうな‥とも思った。
それに、そもそも殆どの男は女々しい人間だし、彼らは損な悪役になっているだけで、実際は至って普通の男性なんだろうね。
女性同士の同性愛の妨げになったり、彼女たちを阻害してくる社会通念などが、そのまま彼女二人(とキャロルの元カノ)以外の全てになって壁になって彼女たちを囲んでるかのような息苦しさを映画全編から感じた。
何というか最初っから「これは、この二人、絶対上手くいかんわ‥」という空気が充満している。
悲しげで切なげ‥それでいていい香りの空気が立ち込めてるんですよね。
だから、こういう同性愛映画にありがちな、心中したり殺したり元のストレートな環境に戻って「あんな事もあったわね」と思いながら終わったり‥といったクソしょうもない結末に着地する気がして「せっかく、いい映画なんだし、そうならなきゃいいな~」という、そこ中心に着目してハラハラしながら観ていた。
途中で一回、キャロル所有の拳銃が出てくるんだよね。
で、たぶんテレーズが拾ってもう出てこないんだけど‥、観てるこっちはそのアイテムがいつ出てくるか、はたまたそれでしょうもない終わり方する事をヒヤヒヤして観ていた(というか、そのために拳銃出したのかな?あんまり必然性ないのに出したしね)
そしたら、まさかのポジティブな終わり方するのでビックリしました。
付き合い始めた二人は、どこか自分たちの上手くいかなさや空虚な部分を埋める現実逃避として付き合ってるような雰囲気もあった気がしたんですが(テレーズのボーイフレンドもそう指摘していた)、そしてどこか夢見がちなフワフワした雰囲気だったテレーズも、最後には自分のやりたい事をやってる自立した凛とした女性になっていたのが良かった。
「人」という漢字みたいに2本の棒がもたれかかってるのではなく「II」みたいに2本の棒が並んで立ってるような(個人的に思う)理想的な交際状態だなと思いました。
映画が終わった後、永遠に共に暮らしたのかもしれないし、それとも数時間後にはさっさと別れてしまったのかもしれない。
しかしこれは映画なので、あの瞬間で終わってるって事はあの瞬間が全てなので、どちらでもあってどちらでもない。観た人が自由に考えることが出来るわけよ。
映画も恋愛(についての個人の思い出)もそういうもんですからね。
だけど、こういう恋愛フィクションというものは、悲恋で終わったほうが綺麗に記憶に残ってそうしがちなんだけど本作の場合は、わざわざポジティブな終わり方にしており、って事は「本編が終わった後も仲良く暮らしました」っていう可能性の方が凄く大きいんだろうなと思いました。
そんな感じの、ポジティブで爽やかな鑑賞後感でした。
何かフンワリとした曖昧な感想になってしまいましたが、これ以上具体的に書きようがないのでこの辺にしておこう。
とにかく、本作は観る前に予想していた内容や結末よりも実際には大きく上回ってたので、それが良かったですね。
9割方、悲劇で終わりそうな雰囲気なのにまさかの明るいオチというのが意外性あって良かったです。もし想像通りの悲しい終わり方だったら(自分の個人的な)評価は低かったと思う。
3行くらいにまとめられそうな事を長文で書いてしまったが、まあこのブログはそういうブログなので勘弁してください。
そんな感じでした
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