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「プリズナーズ(2013)」ドゥニ・ヴィルヌーヴ/これを観てブレードランナー2049が凄く楽しみになった

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原題: Prisoners  監督: ドゥニ・ヴィルヌーヴ
製作国: アメリカ 上映時間: 153分

今年になるまでこの監督知らなかったが「ブレードランナー 2049」の監督なので2049公開までに監督作観とこうとボチボチ観始めた。これで四作目。あと2作くらい観てないのある
とりあえず現監督の中で一、二を争うくらい画がカッコよすぎる事と、反則ギリギリの終盤展開を繰り広げて観終わった後に考えさせられる終わり方が多いのが作家性かな?とわかってきた
特に「ボーダーライン」は今思えば、終盤で「主人公は、実は脇役でした」「脇役だったあいつは実は主人公でした」‥って展開はかなりズルイい。
すごく面白いので文句言う気は起らないが、もし上映時間がもっとタイトで重厚な画面じゃなかったらシャマランみたいにアホ扱いされてた可能性もある(まあシャマランも画面かっこいいけど)。
この監督と「バードマン」でお馴染みのイニャリトゥ監督は重厚な画面と、上映時間を二時間以上にする事によって如何にも重要な大作っぽく見せる技術に長けていると思う(ここ近年、凄いと思わせたい時に重厚な画と長い上映時間は必須で、賞が欲しい映画と凄いと思われたい演劇は描くことがもうない時も「何でもいいからもっと時間伸ばせ!最低でも二時間半にしろ!」と言われるらしい)

アメリカのペンシルヴェニア州の田舎町。
合理的な考えと行動の、無神論者で独り者の有能な刑事ロキ(ジェイク・ギレンホール
鹿狩りが趣味でキリスト教原理主義者&アメリカ万歳系の保守的な父親ケラー(ヒュー・ジャックマン)。
この2人が主人公。この2人の対比で見せていく

ケラーヒュー・ジャックマンは、妻グレイス(マリア・ベロ)と兄と妹の子供達と幸せに過ごしていた。
感謝祭の日、6歳になる末娘が隣人フランクリン(テレンス・ハワード)の家の娘と一緒に行方不明になる。
現場近くで目撃された怪しいRV車に乗っていた青年アレックス(ポール・ダノ)が逮捕される。
冒頭でヒュー・ジャックマン父子が狩った鹿と、犯人だと見なされているポール・ダノのRV車内からの視線で見る誘拐された少女達‥双方の水滴の付いたガラスごしの画が被る。
どちらも狩られるものだと言いたいのだろう。
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こういうのがイチイチうまいですよね
逮捕されたアレックスだが10歳程度の知能しかなく、まともな証言が一切得られないまま釈放される。
証拠もないし、ロキは「アレックスはシロ」だと思う。
ケラーは、娘が行方不明になって数日経ってるのに一切進展を見せない警察の捜査やロキ刑事に不信感を抱き、娘の居場所を聞き出すべく自らアレックスを誘拐、監禁、拷問を始める‥
というのが物語の発端。

ロキ刑事の捜査は実は順調に進んでいるのだが、ケラーは警察を信じていないので勝手に捜査を始める。
まるで童話の様に、ロキとケラーは対照的な人物に描かれてて、刑事らしく客観的な考え方かつ合理主義者のロキ刑事は好感が持てる。
ケラーは悪人ではないし家族を大事に思ってる真面目な父親なのだが、あまりに主観的で、平時ならともかくこういった異常事態には自分と家族さえ良ければいいというモードになってしまうマイルドヤンキー。日が経つにつれて鬱になった妻や息子をほったらかして止めていた酒も飲み始める。好きになれんわ‥
昔だったらロバート・デ・ニーロがよくやってたアメリカ田舎の右翼系親父キャラ。
基本的には善人なんだが、自分が思い込んだら恫喝や暴力で意見を通そうとする。
「自分は良い事をしている!」と思い込んでるので静止不能のジャガーノート
非常に良い人のヒュー・ジャックマンだが、この役をしてる時の顔がマジで怖い。
激怒してるウルヴァリンの時より怖い。身体もデカいし。
その怖さは多分、あまりに自分の考えを妄信してる超主観主義者だからだろう。
ケラーはアレックスを監禁して、自分と同じく娘を誘拐されたテレンス・ハワード演じる隣人と共に単純な拷問を繰り返す(単純に恫喝しながらブン殴り続けたり、身動きできないほど狭い部屋に閉じ込めて熱湯や冷水を浴びせる)
娘がいなくなって3日とか経った親が「もし娘が生きてたとしても、誰も世話してなくて水さえ飲めなかったら死ぬ!」と心配して焦るのはわかるが、証拠も何もないのに思いこみだけでこの行動は完全にアウトですよね。
隣人夫婦も自分達も娘が帰ってきてほしいから通報こそしないが完全に引いている。

監禁された哀れなアレックスはケラーに殴られすぎて真っ赤に腫れあがったトマトみたいな顔になって超可哀想。
この顔の見せ方も、頭に被せてある袋を取る→洗面台に隠れている→バーン!という音と共に無残な顔を見せる。と、凄くうまい
これを観てる俺の頭の中のアメリカ人が「オーマイガ‥」的なリアクションをする
それと全く同時に、これを見せられた隣人の妻が「オーマイガ‥」と言う。
完全に映画と自分がシンクロ。
可哀想だしケラーの行為は良くないのだが、映画の展開的にアレックスが真犯人の可能性もある。
実際に主人公が独自に捜査して無能の警察は何もやってない映画もよくある。
その場合「主人公が捜査して良かった。警察は何やってんだ!」と思わされる
ケラーの独走のおかげで娘が見つかったりしたらフィクション的に「お、おう‥。法的には正しくないがケラーの独走は結果的に良かった。だから俺はもう何も言う事はないよ‥」と思わせられるオチも充分に考えられる。
だから、ケラーの行為を全面的に悪く思えないという宙ぶらりんな状態で鑑賞。
その状態で最後まで鑑賞させられる体感が面白い。

一方、好感の持てる冷静なロキ刑事。
アレックスはシロだと判断した彼は別口の調査を進めている。
とある神父の家に行くと神父が倒れているので慌てて家に入る。
神父は寝てるだけだとわかったので家の中を観察していると冷蔵庫を動かした跡がある。汚れに沿ってズラしてみると扉がある。
扉を開くと真っ暗い床下。
床下に降りると椅子に縛られたまま結構前に死んでるミイラ状態の死体を発見!
‥というくだりが面白すぎる。
誰この死体!?というか、この倒れてた神父も誰なのよ?
神父が大変→家に侵入→隠し扉から地下に降りると謎の古い死体‥というこの流れ
今までに出てる情報とは全く関係ない(ようにしか見えない)流れ。
しかも一体この死体が何の関係があるのかは終盤になるまで全く分からない。
地下に降りる流れはイコール真相に近づいているんだけど、観てるこっちの謎は深まるばかり。
この「真相に近づいてるのに謎が深まってる(だけど本当は近づいている)」というなかなか得れない感覚が最高
「先が読めない」っていうのは映画を観てて最も楽しい瞬間のひとつですからね

かっこよかったり印象深かった画面
冒頭で、ヒュー・ジャックマンが狩った鹿を切ってた。
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年明けに北海道のアイヌガールから狩った鹿肉を送っていただいて食ってたので「あっ!鹿の脚の肉だ!ぶにょぶにょして真っ赤だから押さえる左手の感触が怖いやつ!」と反応しました

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・本作は、水滴の付いたガラスごしにキャラを見せる場面が妙に多かった。
その意図ははっきりとはわからないが、対照的な主人公二人を通して何かを語る本作だし、キャラクターに感情移入して観るというダサい観方じゃなくて、客観的に観察するように観てねという意志のあらわれだろうか?と推測した。
・場面と場面の間に建物とか風景を見せる‥漫画で言う捨てコマが異常にカッコいい
この上の↑建物と樹にグーっ!と寄るショットが超カッコよかった。
しかし静止画で貼っても全く伝らないね。
というか後からスクショ見ても観た時の良さが脳内再現されねーわ。
スクリーンやデカい画面で流れで見てこそ伝わるものがあるんだろうね。
この監督のカッコいいショットは、フェティッシュな感じで好きなので、好きじゃない人には全然伝わらないだろう。しかし趣味とはそんなもんだ
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・そんな感じだから、夜にロキ刑事が捜査してるシーンとか超カッコいい
アメリカの田舎なのにブレードランナーに見えてくる。
・バックミラー越しに見せるのも、さっき言ったガラス越しに見せるのと同じアリの観察効果なのかもしれない


‥と書いたが、ここまでは前半までの事でしかないんだけど、観ながら先の展開を知っていくのが面白かったので、まだ観てない人がこのブログでうっかり展開を知っちゃうのを避けたかったのでこの映画について書くのはここでやめよう。
やはり、カッコいい画で描かれる凄い事は間違いないんだが反則気味の飲み込みづらいストーリーや描写というのは本作も同じだった。
まるで「2001年、宇宙の旅」みたいに、わざと色んな謎や情報を提示しない事によって、考えさせて凄さを見せようとしてる感があった(この監督はそういうやり口が多い)。
僕は全部見せる系の監督が好きなので(イーストウッドタランティーノジョン・カーペンターウディ・アレン等)最高!とは思えなかった。
だけど凄く面白かったし言いたい事にも賛同できる映画だった事は間違いない。
この監督の映画の中では一番ストーリーや言いたい事の描写が明確で、一番多くの人が楽しる映画にも思えた。
そしてジェイク・ギレンホール演じるロングコートの刑事が捜査する映画だった事もあって、これを観てブレードランナーがめちゃくちゃ楽しみになった。
傑作かどうかは観るまでわからないが、ある一定の凄さとカッコイイ画面はあるだろう

 

そんな感じでした

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