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gock221B

映画その他の感想用ブログ(2015年開設) http://gock.flavors.me/

「ボーダーライン(2015)」ドゥニ・ヴィルヌーヴ/巨大な暴力を目の前にした時の妙な無力感と快感を感じる傑作

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原題:Sicario 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 製作国:アメリカ 上映時間:121分

もうじきハードSF「メッセージ」、そして秋に「ブレードランナー 2049」が公開されるヴィルヌーヴ監督の、去年話題になってた映画。
どうでもいいけど監督のフルネームかっこいいな。
まず「主演がエミリー・ブラント、脇を固めるのがジョシュ・ブローリンベニチオ・デル・トロによる対メキシコ麻薬カルテル映画」という時点で渋すぎる。
にも関わらず「何か地味そうだな」と思ったり、渋さを通り越してひたすら地味だった上にどうしても肛門の事を思い出してしまう映画「シリアナ」と本作の原題が似てるな‥とか思ってしまい観るのが延び延びになっていた。
この監督の映画は今んとこ「複製された男」だけしか観てない。
だから凄い監督なのか凄くない監督なのかまだよくわかんないんだけど、一つ言えるのは画面や演出が異常にカッコいいということ。とりあえず画だけはリドリー・スコットに負けてない

 

冒頭
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映画が始まるとFBIの女性捜査官ケイト(エミリー・ブラント)と部下3人が突入の準備している。
犯罪ものというより、まるでJホラーみたいな「ドン‥ドン‥ドン‥」という俺が好きな深刻なBGMが鳴っていて、映画が始まって数秒で「これ面白いかも」と思う感覚を久々に感じた。
メキシコ人犯罪者たちのアジトに突入して、人質を解放したいらしい。
突入用の車輌でアジトに突っ込む!そしてアジト内にいた犯人を射殺。
犯人が撃った壁の穴を見た隊員が「何だこりゃ‥」と言う
十数人分の腐った死体が壁の中にあった。
人質を殺すにしても、こんな事しても何の意味もない。
かといっても犯人たちは異常者などではなく合理主義者っぽい雰囲気だった。
人間、理由がよくわからないものは怖いので怖くなってくる。
この無残な死体が意志を持ってるかのようにちょいちょいアップになるのも怖い。
メキシコマフィアがよくやる、見せしめ死体か?
とか思ってると、倉庫を調べていた部下2人が爆弾でバラバラになって吹っ飛んだ!
アジトにいて無事だったケイトもフラフラしながら立ち上がると、怖ろし気なBGMと煙の中に爆死した部下の腕が落ちている。めちゃくちゃ禍々しい!
カットが変わるとケイトがシャワーを浴びている。

ケイトの頭からドロッと血が流れてビクッとする。
部下を2人同時に亡くした彼女の心痛のようにも見えるし、子羊が羊水の中から生まれている様にも見える。
‥という麻薬カルテルの得体のしれない恐ろしさを短時間で描いた冒頭が最高だった。


第一幕
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ケイトは、CIA特別捜査官マット(ジョシュ・ブローリン)に呼ばれる。
「メキシコの麻薬組織ソノラ・カルテルの壊滅」と「最高幹部マヌエル・ディアスの拘束」という極秘任務を帯びた特殊部隊にスカウトされた(ついでに部下レジーも)。
コンサルタントとしてチームに同行する元検察官だという怪しいコロンビア人アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)も一緒だ。
ケイトはメキシコのフアレスに連れていかれる。
メキシコの例の景色が登場(マフィアに首を刎ねられた全裸死体がぶら下がっている)
マットとその部隊のものは一般人がいる道路で、威嚇射撃の段階でメキシカン・マフィアを撃ち殺したりするし、尋問ではモロに拷問しまくる。
というか部隊の中に敵が混じってるのかどさくさに紛れてケイトを撃とうとする奴とかもいる。
アメリカの常識が通用しない所に来た事を実感するケイト。
この序盤の展開は、ケイトの一般人目線を通して「メキシコに連れて来られた捜査官」ライドとなっていってグッと引き込まれる。
マットたちの激しい捜査も一から十まで説明したりしないので好奇心を刺激される。


第二幕
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マットやケイトたちはマヌエル・ディアスを追っている。
隠し金を抑えるが、こういった事でマヌエルを逮捕してもすぐ弁護士に釈放されてしまうという。
マットは「マヌエルはメキシコに帰還させる」と言う(メキシコに帰って来させて自分達で暗殺しするという意味か?)
ケイトとレジ―がバーで寛いでいると、そこへレジーの友達(同僚?)の男がいた。
「フューリー」で男同士の友情のアテに占領地の少女を苛めてた役の奴、ドラマ「デアデビル」でパニッシャー役の人、ミリタリーものには必ず出てくるアイツ。こいつは要注意。
このパニッシャーはケイトとベッドインしかけるが、マフィアストラップを持っているという間抜けな理由でマフィアの一員だという事に気付いたケイトを絞め殺そうとする。
想像通り女子供を本気で殺そうとする悪人だった(この人こんな役ばっかだな)
マットが現れて逮捕する。マットはケイトを囮として泳がせていたのだ。
マットとアレハンドロ(デルトロ)はパニッシャーを拷問して彼の妻子の無事を約束して、捜査官内に入り込んでる敵の名前を吐かせる。
ケイトは冒頭からずっと善悪の”ボーダーライン”を目の当たりに見せられて戸惑うばかり

カッコいい画面。美しいエミリー・ブラントや共演者
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また、やっぱりこの監督の画作りが凄いのか、ただ単に自分のツボにはまったのか、何でもない場所のカットが一々カッコいいので場所が変わる度にスクショしてしまう。こんなにスクショしてしまう若手監督は他にジェームズ・ワン一派くらいだわ。
空撮や只の駐車場ですらカッコいい。ブレードランナー2049が楽しみになった。
エミリー・ブラントも元々好きだが美しかった。デルトロやジョシュブローリン、相棒のよく知らない黒人までもがカッコいい。
エミリーブラント演じる主人公はちょっと捜査官なのに華奢過ぎたり、性格が無垢な少女すぎる気もするが、まあ面白いからよし
この監督なのか撮影監督が自分と合ってるのかわからないが、いちいちツボにはまるものがある

第三幕。 メキシコ麻薬カルテル映画の、巨大な暴力を見た時の
無力感と妙な快感
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マット達は、いよいよ麻薬カルテルとマヌエルへ殴り込みをかける。
マットが、何も知らないケイト達を雇った理由、アレハンドロの正体と目的、そして冒頭からずっと出ていた町の警官など全ての結末が描かれる。
第二幕までは如何にもアメリカ映画的だったが、第三幕の展開はヨーロッパ映画的に感じられて意外性あった。
リドリー・スコットの、エイリアンやブレランと同じくらい好きな傑作「悪の法則」では麻薬カルテルの、まるで宇宙の悪意が一点に結集したかのような途方もない恐ろしさを描いていた。
主人公がここまで何も出来ないのは驚いたが、まともな感性の持主なら太刀打ちできない無力感を醸し出す存在でしかなった。
本作も、そうなのかと思ってたが本作は逆に、麻薬カルテルに対抗する側の恐ろしさを描いた映画だった。
ところで、麻薬カルテルもそれに対抗する側も怖ろしいが、そういった巨大で、それに巻き込まれると抗いようがなく滅ぶしかない巨大な暴力を見せられると、逆に妙な快感もある。
クトゥルー神話に感じるような、大海原の巨大な大渦を見た時の様な恐ろしさ。
同時に自らの無力感。
そういったものに巻き込まれるのは絶対に嫌だが、目にすると不思議な快感の様なものを感じるのもまた確かだ。
そしてそれは遠いメキシコだけの話だけではなく我々が住む地上の僅か薄皮一枚下に流れている、我々と僅だがずっと繋がっているものだという事を忘れてはいけない。
「面白い」か「つまんない」かとか以前に、パワーのある映画だった。
デル・トロも今までで一番良かった。
他の監督だったら多分デルトロを主人公にしてエミリー・ブラントは可愛いアシスタントって感じの配役にしてたんだろうな。

このブログ始める前だったから記事がないが、また「悪の法則」観て感想を改めて書きたいと思った。ブレードランナー2049も楽しみになった

そんな感じでした

gock221b.hatenablog.com

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