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『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)/リンチ版の方がマシだったけどラスト5分の決闘だけ良かったです🐛

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原題:Dune 監督&脚本&制作:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 脚本:エリック・ロス、ジョン・スペイツ  制作:メアリー・ペアレント、ケイル・ボイター、ジョー・カラッチョロ・ジュニア 製作総指揮:トーマス・タル、リチャード・P・ルビンスタイン 原作:フランク・ハーバートSF小説デューン砂の惑星』(1965) 上映時間:155分 シリーズ:ヴィルヌーヴの『デューン』シリーズ第一作目

 

 

 

アメリカの作家フランク・ハーバートが1965年に発表したSF大河小説『デューン砂の惑星を原作とした映画化。
本作開始直後に小さい字で「Part.1」的な字が出てくる通り、これは2部作の1作目。
本作がヒットするかどうかわからなかったので本作が公開されても続編が作られるかどうか未定だったが、どうやらヒットしたみたいで続編が作られることが早々に決まった。近年の映画で言うと前編であるホラー映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)がヒットしたので、後編となる『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019)が制作できたのと同じだ(結果的に『IT』は前編だけでよかった気もするが)。
1970年代にアレハンドロ・ホドロフスキーが監督で、各界の物凄い天才達を集めて「観た人達の意識を変える」ほど凄い10時間以上のSF超大作映画を作ろうとしたが制作中止になった。その製作過程を振り返ったドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』(2013)が公開された。これは凄く面白いのでオススメ。
1980年代に鬼才デイヴィッド・リンチ『デューン/砂の惑星』(1984)を制作して公開されたが4時間以上撮ったものをスタジオがリンチから取り上げて2時間以内に圧縮した結果ダイジェストみたいな珍品が出来上がって批評的にも興行的にも失敗した。だが数年前に観返してみると確かに失敗作だが、美術は異常にカッコいいしハルコネン男爵の魅力や間抜けな死に様などが凄く良いので嫌いになれない一品だった。
2000年にTVドラマシリーズになったらしいがそれは観てないのでよく知らない。
というか原作も読んでおらず、ざっくりとした大まかなあらすじしか知らない。
本作のドゥニ・ヴィルヌーヴといえば、めちゃくちゃカッコいい画面を撮る監督という印象。映画の内容も一癖あってハズレはない……が、かといって超最高だ!と思ったこともない印象。しいて言うなら『プリズナーズ』が一番面白かった。
原作は読んでないけど、スペースオペラ映画シリーズと言えば『スター・ウォーズ』『スタートレック』ばかり目立ってるので本作も大成功して『デューン』も定番のシリーズになって欲しかった(単純に楽しみが増えるから)。
完全にネタバレあり



 

遠い未来、レト・アトレイデス公爵オスカー・アイザック)は、宇宙で最も価値のある物質〈メランジ〉の唯一の供給源である……砂の惑星デューンの異名を持つ〈アラキス〉の管理権を受け入れる。
メランジは人間の寿命を延ばし、超人的なレベルの思考を提供し、超光速の旅行を実用的にするスパイス
レト公爵は、この機会が宇宙皇帝や、デューンの残虐なハルコンネン家に仕組まれた罠であることを覚悟の上で、不思議な力を持つ愛妾レディ・ジェシレベッカ・ファーガソン)、二人の息子で母同様に不思議な力を持つ後継者ポール・アトレイデスティモシー・シャラメ、彼が主人公)、そして信頼できる戦士やアドバイザーを連れて行く。
公爵は砂漠の地中を移動する巨大な砂虫〈サンドワーム〉によって危険に晒されているスパイス採掘作業を管理させられるが敵の襲撃に遭い、ポールとジェシカの母子はアラキスの原住民〈フレーメン〉に導かれる―

そんな感じの話。
要は、高潔で美しいアトレイデス家が醜く残虐なハルコンネン家と銀河皇帝の策略にハマってピンチになるが、フォース……みたいな超能力を持った英雄の主人公王子ポールが砂漠の部族と手を結んで立ち向かうという非情に明快な英雄譚。リンチの珍味な『デューン/砂の惑星』(1984)で予習済みだぜ。

 

 

 

とりあえず主人公の王子ポールを演じるのがシャラメ、その母ジェシカを演じるのがレベッカ・ファーガソンで父の公爵を演じるのがオスカー・アイザック……という世界一美しい家族だ。
その部下の戦士もジェイソン・モモアジョシュ・ブローリンなど美形タフガイ揃い、ひと目で「強さ」が伝わる。皆、とてもカッコいいのだが、あまりにも美形や如何にもカッコいい俳優を集めすぎた結果、逆に印象が薄くなった感もある。あまりに美形揃いの中、頭脳担当っぽい凄く大柄のおじさんが目立つ存在だった。
肥満で残虐な悪役ウラディミール・ハルコンネン男爵ステラン・スカルスガルド)。ハルコンネンを演じてるのはMCUファン的には『マイティ・ソー』シリーズでやたら全裸になったり洗脳させられるセルヴィグ教授役の人だ(俺はセルヴィグ博士、MCUサブキャラの中でかなり上位で好き)。あとは『ニンフォマニアック』の色情狂の主人公女性の話を「どした?話きこか?」と聞き続けるチ○ポ騎士団ジジイ役として本物のチ○コも披露して印象に残った。この人は、とにかく顔が邪悪。だから正義のセルヴィグ博士を演じてる時に異常に不穏な空気が出ていて好きだった。ハルコンネンはスキンヘッド肥満で宙に浮いているという濃いキャラなのだが、彼の不穏な魅力が薄まっていた。やはりこの俳優は普通の格好してるのが一番不穏なんだなと思った。
その残虐な甥グロッス・ラッバーンデイヴ・バウティスタ)。まぁ見た目通り「邪悪なドラックス」だ。バウティスタのファンなので大役が嬉しいが、個人的に彼は善性が溢れてるので味方の戦士役して欲しかった気がしなくもない。
砂漠の原住民フレーメンの部族長スティルガーハビエル・バルデム)彼もまたモモアやブローリン同様の美形タフガイだ。個人的には彼が一番カッコいい、いやカッコ良すぎる。なんとなくベニチオ・デル・トロもこの映画に出てきそうだな?この四人は何となくイケてる具合が似ているよね?
ポールが夢で幻視する謎の少女チャニゼンデイヤ)。彼女の褐色の肌と長過ぎる手脚がめちゃくちゃカッコいい。
そんな感じでキャスティングは凄くヴィルヌーヴ的なカッコよさで溢れている。
さっきから何度も言ってるが、ちょっとイケてる感じが過ぎてるきらいがある、もうちょっと味方の大柄相談役みたいな特徴的な外見のキャラが欲しかった。
スター・ウォーズ』『スタートレック』みたいにエイリアンやドロイドが居ないのだから、見た目が面白い人間をもっと出すべきだ。

ヴィルヌーヴなので、どの場面も非情に美しい。彼は最近流行りの「リミナルスペース(Liminal Spaces)」っぽい風景を昔から撮ってた気がする。リミナルスペースというのは誰も居ない深夜のショッピングモールやホテルの廊下や駐車場などの風景……の事だと承知してるが厳密な定義はよく知らん。一言でいうとヴィルヌーヴがよく登場させる風景はガランと人気が少なく簡素で遠くは霧や砂埃でよく見えない。凄くかっこいい風景。だが『ブレードランナー 2049』(2017)の時も思ったが、ヴィルヌーヴはSFなどの特殊な世界よりも以前の、我々が住む普通の世界の風景を撮った方がカッコいいと思う。「よく見る普通の風景なのに深夜ってだけで異世界に見える」というリミナルスペース効果が、彼の撮る風景をカッコよく見せてたのかもしれない。これは最近リミナルスペースという概念が広まって気づいた。ブレラン2049のサイバーシティや本作の砂の惑星や宮殿よりも、以前の映画に出てくる何の変哲もない駐車場や道路の方が特殊でカッコよく見えてた。僕はそう感じましたね。
内装や小道具などはリンチのデューンの方が濃密で好きでした。

細かい設定はよく知らないが、主人公ポールと母ジェシカは代々伝わる不思議なパワーを持っている。予知夢を見たりテレパシーのようなものが使える?また言霊で他人を意のままに操る……SWで言うところのジェダイ・マインド・トリックのようなものが使えるようだ。
装備としては、砂漠ではまともに行動できないので特別なアーマーを着る必要があり、汗など体液を濾過して水を作れるらしい。また街や航空機はては個人単位でバリアのようなものを晴れる。……バリアと言っても剣や矢や気化した毒であっさり殺されてしまう。「じゃ、バリア何の意味があるんだ?」と思ったが、このバリアは多分、飛び道具を防ぐのだろう。劇中で登場人物たちに白兵戦させるための舞台装置といったところか。ガンダムで言うと人型ロボット……モビルスーツに近距離で撃ち合いやチャンバラさせるためにミノフスキー粒子を設定したようなもんだろう。そうでないと登場人物が全く対人光学兵器を使わない理由がわからんから多分合ってる。
ちなみに小型の航空機は昆虫のように羽を細かく羽ばたかせて飛ぶ。これは特徴あっていいね。
そしてやはり素晴らしいのは『デューン』の代名詞的な存在のサンドワームか。他の作品にはここまでデカい地中のモンスターは居ないし、闘いの果てに敗者がサンドワームに喰われて誰の目にも明らかな死を与えることも出来るし、混戦状態で地中からいきなり出てきて優勢の軍を喰うというデウス・エクス・マキナ的な展開を起こす事も可能だし便利な存在。

 

 

 

ストーリーより設定や美術の方が重要な作品だろうと思って、それらの話ばかりしてきたが、ストーリーは大体リンチの『デューン/砂の惑星』(1984)の通り。同じ話なのでそりゃそうか。ただリンチ版は冒頭で、この宇宙の設定を知らん女がいきなり説明しまくって「知らん知らん!いきなり設定語られても覚えられん!」と思ったものだったが、本作ではそれを考慮してかそれらの説明は一切なしだった。これは英断だと思う。「宇宙皇帝と邪悪なハルコンネン家が我らを嵌めようとしてる」とだけ語る。
そして、妻を人質に取られた仲間が裏切り、アトレイデス家の街のシールドを解除して敵を招き入れ、アトレイデス家を邪悪なハルコンネン家に差し出してしまう(そして当然あっさりハルコンネンに殺される)。
砂漠に逃れたポールとジェシカは、逃亡する。
モモアやフレーメンの女が助けてくれたりする、ハルコンネンは公爵の毒を喰らって治療中、バウティスタ演じる凶暴な甥は追ってこない。どうやら前編なので彼らと対決はないようだ。
ポールと母は砂漠を逃亡する。さっきも言った非情にヴィルヌーヴっぽい、だだっ広い砂漠を二人だけが移動する様子をロングショットで撮っている。
それだけだと退屈だと気を遣ったのかポールはたまにゼンデイヤ演じるフレーメンの少女とカッコいいアーマーを着て戦う近未来の光景を夢で見る。
夢だけでなくポールは様々な事を幻視する、その白昼夢は大抵スローモーションで「アーアーアー♫」といった民族音楽が流れ、過去の英霊だか誰だかが散文詩めいた世迷い言をつぶやきます。そして太陽の煌めきが眩しいLSD的な光景……そして、いつものだだっ広い砂漠……それらが交互に頻繁に流れる。現実の母子は砂漠を横断している。
この映画、Twitterで「寝た」って感想が多かったが頷ける気がした。ここまで非常に単純な話なのだが、こんな調子で凄くゆっったりと語ってきた。もう映画の残り時間は少ない。
バウティスタ演じる残虐なハルコンネン男爵の甥が率いるハルコンネン軍はアトレイデス家の者を皆殺しにしたらしい。「らしい」というのはハルコンネン軍がアトレイデス家の者たちを惨殺する映像が殆ど流れないからだ。さっきから何度も「ハルコンネン男爵の残虐な甥」と書いてきたが実際のところ彼が本当に残虐な事をしているところは見れなかった。彼がアトレイデス家の者の首を刎ねようとしたらカメラがぼやけて見えなくなるからだ。ここまで「ハルコンネン男爵の残虐な甥」と何度も書いてきたのはWikipediaにそう書いてあったから書いただけだ。というか彼の出番は全部合わせても多分3分もない。
前半で設定の説明、中盤でアトレイデス家が残虐に滅ぼされて、後半で砂漠を横断してハルコンネン家に一矢報いて「後編に続く!」というアメリカ映画のマナー通り進むと思ってたが、ここまでノンビリした映画だと思ってなかった、戦闘とか殆どないし。
「盛り上がりがないからサンドワームを出すか?」と思うと、サンドワームが出てくるが母子を襲わないというナウシカ的なシーンが入る。これしかないだろうな、敵もいないんだから……。後編に続くのは知ってたけど、ここまで何もないとはね……。映画全体がヴィルヌーヴが撮るリミナルスペース的な風景同様すごくガランとしてます……。
かなりウンザリしてきたところでポールとジェシカの母子は、砂漠の民フレーメン本隊?に合流する。前半で顔見せした族長のスティルガーやポールが何度も夢で見た(恐らく運命的な縁で結ばれてるであろう)ゼンデイヤ演じる娘もいる。凄く美しい。
ここでポールは、彼らの合流を認めないフレーメンの男とナイフで決闘することになる。ポールは彼を圧倒するが寸止めでは倒せない。フレーメンは負けを認めず、殺すしかないのだ。ポールは仕方なく彼を殺す。
ナイフには血がついており彼は絶命する。ここまで、レイティングを下げるため人が死ぬシーンを徹底的に避けてたのが効いて「おっ!殺した」と少し目が覚めた。
ポールは人を殺したことがない。勝利して仲間入りできたものの殺人を犯してショックを受けている。ここに来て初めて良い場面きたなと思った。ポールは決闘という原始的な通過儀礼を経て童貞を捨て(殺人)大人の男……戦士になった。
戦士になったところで、この前編は終わる。つまりポールのオリジンだったんだな。
この「ポールの殺人」は良かった。映画というのは最後が良ければそれまでどんなに退屈でも全体的に良かった感じになる。正直、最後の5分くらいまでは「これに比べたらリンチのデューンの方がずっと面白かったな」と思ってたけど少し見直しました。出来ることなら最初からこういう感じでやってほしかった。後編はなるべくスローモーションの夢見るシーン無くして欲しい。疲れました。
砂漠の逃れるとこまではリンチのデューンの方が良くて、フレーメンと合流して以降のラスト五分間くらいは本作が良かったかな?SWじゃないスペースオペラとしては『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(2017)の方がずっと面白いと思った。それとヴィルヌーヴは現実世界の話の方がいいと思った。

 

 

 

そんな感じでした

gock221b.hatenablog.com

デューン関連作〉
『デューン/砂の惑星』(1984)/あまりに善悪別れすぎてて上手く行き過ぎると修正された歴史や誰かの妄想みたいに見える。ハルコネン好き🐛 - gock221B
『ホドロフスキーのDUNE』(2013)/話を聞いてるだけでめちゃくちゃ面白い。人が永遠に生きる方法とは🧓 - gock221B

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作〉
『複製された男』(2013)/凄いのか凄くないのか判別が困難な映画👨👨 - gock221B

『ボーダーライン』(2015)/巨大な暴力を目の前にした時の無力感と不思議な快感、同時に我にあり💀 - gock221B
『メッセージ』(2016)/異星人との触れ合いは楽しかったがそれよりもラストにあるSF要素にもっと時間取った方が良かったのでは?👽 - gock221B
『ブレードランナー 2049』(2017)/デッカードを出さず前作との繋がりがない方が良かったような……🤖 - gock221B

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DUNE/デューン 砂の惑星 (2021) - IMDb

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