原題:Muumi ja punainen pyrstötähti
原作: トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の彗星』 監督: マリア・リンドバーグ
製作国 フィンランド/イギリス/ポーランド 上映時間 75分
シリーズ:ムーミンのパペット・アニメーションシリーズ
GyaOで配信されてたから流してたが、気になってきて頭から普通に観た。
こないだの大学入試センター試験でムーミンに関する問題が出て受験生がキレてたのが話題になった記憶も新しいムーミン。
ムーミンは幼い頃に日本製アニメをやってて(岸田今日子のやつ)家に「楽しいムーミン一家」の小説があってそれにはまって繰り返し読んでいた。
トーベ・ヤンソンの挿絵が刺々しく感じて、キャラクターの描写や台詞が妙にドライで少し冷たく感じたが、そこに異国情緒を感じて妙に温かみのある日本のムーミンよりもトーベ・ヤンソンの本家ムーミンの方が好きになった。
その後、ハヤカワ文庫のSF小説とかアメコミや洋ゲー好きになったのも、どれも日本より少し冷たくてドライなところが気に入ったのだと思う。
「楽しいムーミン一家」は超繰り返し読んでたのだが、小学校の図書室で他の作品‥この映画の原作のムーミン谷の彗星とか若い頃のムーミンパパが旅する話とか色々読んだ。どれも死の恐怖などの要素が少し入ってる印象だった。それを当時通っていた小学校にあった木造の湿気が多くて柱時計がボンボン鳴っていた図書室で読んだ記憶を未だに覚えている(きっとボロい図書室の雰囲気がムーミン小説とぴったりだったせいだろう)
そんな感じでムーミンやトーベ・ヤンソンはざっくりと好きだが、ムーミンコミックを集めたりといったムーミンマニアとかではない。6年に一度思い出すか思い出さないか程度の好き度だ。
この「ムーミン谷の彗星」も90年代に日本アニメの劇場版があって、クオリティ高いのだが、はっきり言ってめっちゃ日本っぽいし刺々しさが足りないので物足りない。やはりフィンランド製アニメの方が雰囲気出てる。
Story
世界の終わりがきた
ある朝、美しいムーミン谷がホコリで辺り一面灰色に。
哲学者じゃこうねずみが「もうすぐ彗星が落ちて地球が滅びる」と言い、ムーミントロール達は恐怖した。
不安になったムーミントロールは、ムーミンパパとムーミンママのアドバイスで、おさびし山にある天文台に行って彗星について調べることに。
こうして友だちのスニフと共におさびし山にある天文台に向け出発するムーミントロール。
道中でのスナフキン、スノークのお嬢さん、スノーク、ヘムレンさんなどとのと出会い。激流や恐ろしい生き物や竜巻などに遭うスリリングな道中となるのだった
それにしても「ムーミン谷の彗星」ってタイトルがカッコいい。
1stの機動戦士ガンダムのサブタイトルでありそうだ。
ブライトの声優が「ムーミン谷の‥彗星!」と読み上げるの声が脳内再生される。
パペットといっても何だか平べったいパペット。背景とかは絵の部分もあったりCGを使ってる部分などがあって徹底されてない感じもしたが、その適当さもまたムーミンっぽくていいかもしれない。
時系列的にはかなり最初期の話らしく、ムーミンとスナフキンとはこれが初対面。
🌠川の畔のスナフキンと知り合ったムーミントロールとスニフ。
スナフキン「やあ君たち、そのイカダに珈琲を積んでたりしないかな?」
スニフ「珈琲なら持ってるよ。お砂糖もある」
スナフキン「すごいねぇ」
こんな間抜けな台詞久々に聞いたのでハッ!とした。
アニメはもっとこういう間の抜けた会話や意味のないシーンを取り入れたほうがいい、と改めて思った。ちなみにスナフキンの吹き替えは子安武人
🌠スナフキン(CV子安)「僕の名はスナフキン」
スナフキン(CV子安)「テントで暮らしている。」
それ以上いけない
ホームレスみたいな風体で、こんな台詞言われたらハッとする。
俺をからかって飲むコーヒーはうまいか?
スナフキンによる彗星の話を聞いて怯えるスニフ。
スナフキン「まあまあ落ち着いて。それより凄いものがあるから見せてあげるよ」
ナレーション『すごいものと言われてスニフは彗星のことを忘れました』
いいね。このアニメ。
凄いものとは洞穴にあるガーネットだった。
スニフ「すごく綺麗だ!あれ君のもの?」
スナフキン「自分できれいだと思うものは何でも僕のものさ。その気になれば、世界じゅうでもね。自分でそう思えばね。」
雑誌ダヴィンチとかネットでのスナフキン名言特集で取り上げられそうな台詞。
それにしてもああいうサブカル的な感じでスナフキンの名言を一括りにまとめられるとイラッとするのは僕だけでしょうか?だけどまあ確かにいい台詞だしね(スナフキン的フォロー)
欲にかられてガーネットを集めるスニフ。
すると突然、洞窟の奥から巨大なトカゲが現れて追いかけてくる。
ナレーション『スニフは短い足を必死に動かして走りました』
妙にドライなナレーションがトーベ・ヤンソン感を演出。
恐怖で宝石を落としてしまい泣き出すアホのスニフ。
スナフキン「何かを自分のものにしようとすると、むずかしいものだよ」
「見たものはカバンでなく頭にしまって、それで立ち去れば良いんだ」
「だから僕は荷物も持たず、楽しく旅ができるのさ」
スナフキンの「物を所有しない思想」でた。
確かにまとめたくなる魅力あるわ。吹き替えしてる子安の言い方もうまい
🌠イカダで川下りしてピンチを迎えるが何とか助かる。
スニフ「もう冒険なんてこりごりだ!君たちにもだ!」
幼稚な性格の役柄を割り当てられて気の毒な気もするが、スニフは終始、不平不満ばかり言ったり周囲に八つ当たりするのでイライラしてくる。一緒に飯食いに行ってまずかったりしたら「おいしくない」とか、その場で言い出しかねないタイプ。しかもスニフの吹き替え声優はフリーザの人なので、フリーザの声で精神年齢5歳くらいのキャラクターが不平不満ばかり言うものだからイラついてくる。黒豹のように静かに近づいて腹に膝蹴りを入れ、すみやかに屠殺された豚のように静かにさせてやりたくなるというものさ。そうだろう?(スナフキン的まとめ)
🌠また、しばらく旅をしててムーミントロールが谷に落っこちそうになって、スナフキンがムーミンを括っているロープを引っ張るが一人では引っ張り上げられない。そこでスナフキンは事態に気づいていない後方のスニフに
スナフキン(CV子安)「スニフ~。手伝ってくれ~」
と最初は穏やかに言ってるが、アホのスニフは気づかない。すると
スナフキン(CV子安)「スニフーっ!!一人では引っ張り上げられない!!引っ張ってくれ!」
などと次第に呼びかけがエキサイトしていって最終的には
スナフキン(CV子安)「おい!スニフーーッ!!怒」
と、スナフキンらしからぬ怒号のような怖い声に変わっていくのが面白くて笑った
スナフキンの吹き替え声優・子安武人、普段はめちゃくちゃ穏やかで素敵な声なのだがエキサイトするとまるでDIOみたいな声色で怒号を飛ばすのでめっちゃ怖い!ちょうどネトフリにあったジョジョ三部アニメのDIO戦を再見した直後にこれ観たのでよりDIOっぽく聞こえた
スナフキン(CV子安)「おいッ!スニフゥーッ!聞いているのか貴様ーッ!!便所のネズミのクソにも匹敵する取るに足らない貴様がッ!役に立つのは今しかないんじゃあないのかーッ!?この汚らしい間抜けがーッ!」
今にもそんな風に言いそうで震えた
🌠食虫植物に襲われるスノークのお嬢さんとスノークを助けたムーミン一行。
スノークはいつものように議論を始める
スノーク「議題その1、彗星について!議題その2、なぜ誰も私の話を聞かないのか!?」
などと捲し立てると
スニフ「しらないよ。いつもそんな風なの?」
と言うのに笑った。スニフみたいなアホにこんな言われ方したら泣きたくなる
スノークのお嬢さんは相変わらず女を武器にした言動や行動、そのメス声でムーミンを誘惑してばっかりいやがる。相変わらずメス豚だ
そしてヘムレンさんを一行に加えて竜巻を乗り越えたりして天文台からムーミンハウスに帰宅する。
終末の時を迎えた皆は覚悟を決めて、洞窟でケーキを食べたりお茶を飲んだりする。
スニフは拾った黒い子猫を探しに行った。
スニフ「もうケーキとか隕石とかどうでもいい。子猫ちゃんどこにいったの?」
見た目がでかいネズミにしか見えないスニフが人語を喋ってて、ニゃーとしか鳴かない猫を可愛がってるのは何だかシュールな光景だ。だが不平不満や文句ばかり言って俺をムカつかせていたスニフが世界が終わる瞬間に突然、猫ちゃんを探しに行く(愛を探しに行く)場面は唐突で、自分も黒猫飼ってるのでハッとした。愚かでイライラさせられたスニフは観ていた自分自身だったのかもしれない‥(映画感想ブログにありがちな一文)
だが結局、彗星は地球をかすめるだけで大事には至らなかった。
いつもの日常に戻るムーミンたち。
彗星のおかげで増えた友だちと共に、苺ジャムを塗ったパンを食べるのだった‥
🌠この原作を幼い時に読んだ時は「世界の終わり」という初めての概念を知って震え、未曾有のカタストロフを感じた記憶がある。
幼い子供が死や世界の終わりについて考えて気が遠くなったりするのは必要なことだと思う(なぜ必要?と訊かれても具体的にはうまく答えられないが)
またムーミン作品に共通する冒険心、死に対する厭世観、「他の人にはたいしたことないけど僕にはこれが大事なんだ」というスナフキン的個人主義や間抜けな台詞などが満喫できた。
個人的にはパペットじゃなくてトーベ・ヤンソンの挿絵がそのままCGで動くアニメを観たいな。スヌーピーみたいに短編集みたいな作りでさ
そんな感じでした
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