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『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』(2021)/回想の演出まで良かったのにラスト急にエイミー・アダムス復活ッッ!そして必殺の掌底!👱🏻‍♀️

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原題:The Woman in the Window 監督:ジョー・ライト 原作:A・J・フィン『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』 制作局:Netflix 製作国:アメリカ 配信時間:101分

 

 

 

Netflixエイミー・アダムス主演のミステリー小説が原作の映画が配信された。
ネタバレ少なめ。……いや下の方行ったらネタバレあるわ。三行の空白が来る前の、このブロックまでだけならネタバレないから自分で見たい人はこのブロックだけ読んでやめればOK。
精神分析医の女性アンナ・フォックス(エイミー・アダムス)は家から外に出れない広場恐怖症のため、愛する夫(アンソニー・マッキー)と娘とは別居中で、ニューヨークにて猫と古い映画と酒だけが慰めの引きこもり生活を送っていた。他人と会うのは、アンナの広場恐怖症を治そうと精神科医がたまにカウンセリングしに来るほか、地下に間借りさせているミュージシャンの青年デヴィッドだけ。怖がりのアンナがよく素性が知らん男を住まわせてるのは疑問が残るが原作ならきっとデヴィッドとの出会いとかも書かれてたんやろう、ここは考えないようにして先行こう。
新しく向かいに越してきたのはラッセル一家。息子、母(ジュリアン・ムーア)、父(ゲイリー・オールドマン)の順で、別々の用で訪ねてきて全員に会ったアンナ。
息子と妻に会った時、彼ら彼女らがラッセル父に怯えている事に気付く。
家族を束縛し強権的な、場合によってはDVしたりする父親なんだろうか?
ゲイリー・オールドマンは、どこにでもいる父親を演じているので『ダークナイト』トリロジーの時同様『シンプソンズ』のフランダースに似てた。
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そしてある夜、アンナが窓からラッセル家をふと見た時、なんとラッセル父が妻を刺殺するところを目撃してしまう。つい先日遊びに来て飲んだばかりのラッセル母が~!
アンナは、家に来た優しそうな黒人刑事(ブライアン・タイリー・ヘンリー)に自分が目撃した事を話す。同時にラッセル一家もアンナ宅を訪れたが、ラッセル家の母はアンナが前日会った女性とは全く別の女だった。
狐につままれたような気分で独自にラッセル家の調査をしたり、双眼鏡でラッセル家への覗きを続けて再度、刑事に訴えるが、精神が不安定で酒浸りのアンナの言うことは「幻覚でも見たんでしょう」「貴女の記憶は混濁してるのでは?」と、まるで信じてもらえない……。
みたいな話。
自由に出歩けない主人公が窓から向かいの建物の殺人を目撃して調査する『裏窓』的な話から始まるが、その『裏窓』展開をベースに、主人公の精神が不安定なので「主人公が観たもの=視聴者が観たもの」ですら本当に起きた事かどうかすらわからない、という「信頼できない語り手」ものでもあるサスペンス・ミステリー映画。
諦めきれないアンナがラッセル家をなおも探るが、ラッセル父が怒鳴り込んでくる。
ちょっと手厳しく言うってレベルじゃなくゲイリー・オールドマンエイミー・アダムスの顔にくっつきそうな程に接近して「うちを嗅ぎ回るんじゃない!皆迷惑してるんだ!この、酒と薬と猫しかない引きこもりの中年女がァァァーッ!」と怒鳴る……というか絶叫する。あまりに勢いが凄すぎて笑ってまう。
ラッセル父だけでなく、刑事の助手の女性刑事もアンナに態度が冷たすぎるし、この辺は「アンナの主観では彼ら彼女らはこんなに凄く酷い態度に見える」という主観の光景を反映させた描写なんだろう、と思った。
実際、アンナは精神科医に貰った薬をちゃんと飲まず止められていた飲酒も続けており、ただでさえ不安定なアンナの情緒や生活が更に不安定になっていく。
そしてアンナはしぶとく調査して再び刑事やラッセル一家が押しかけてきた時に、非常に、か細い証拠……最初に会ったラッセル母が描いた落描き……を突きつけるが、全員がアンナを疑ってる状況で、こんなアンナ自身が描いたかもしれない落描きなんて証拠にもならない物を「これが証拠よ!」と言って突きつけたもんだから皆がヤバい奴を見る目でアンナを見る。ジョジョ三部で死神13に襲われた花京院が夢の中で自分の腕をナイフで切った傷口を見せて皆に引かれるシーンと同じだ。今まで皆がアンナを見る目は疑いの眼差しだったが事ここにいたっては憐れみの眼差しになり、今までアンナを口汚くののしってたラッセル夫婦も完全に引いてしまい何も言わなくなる。
アンナ「ち、ちがう……私、本当のラッセル母を見たの!お願い信じて。何で信じてくれないの!そんな目で……私を見ないで……」
もともと情緒不安定だった脳が破壊され精神が錯乱したアンナは事件とは全く関係なく、デヴィッドの前科とか言い出して彼に八つ当たりして見てられない。
この場面の見てられなさやカット割りとか演技とかカメラワークとか諸々が見事。
そして。アンナの脳が破壊されきった時に、優しそうな刑事が申し訳無さそうにアンナが今まで必死に見ないようにしていた彼女の過去に起きた真実を話す。
そしてアンナは見て見ぬ振りできなくなり、心の奥に隠していた辛い過去に直面する。
そこで彼女の過去に何があったのかスムーズに回想が始まり、回想が終わるとアンナと皆が集合したアンナの家にカメラが戻ってくる。アンナが隣の部屋を観ると横転した車が……それを見るアンナ、車から這い出てくる過去のアンナ……。
曖昧で広場恐怖症の現在のアンナと辛い過去のアンナが一つになる場面だ。
この、衆人環視の中、アンナが過去の真実に直面する流れの映像はかなり見事!
名優エイミー・アダムスも鬼気迫る演技してたし、ここまでなら面白い映画だった。

 

 

 

アンナは「すみません、思い出しました。私はまだカウンセリングが必要で、幻覚でも見てたみたい。ラッセルさん皆さん、騒がせてしまい本当に私が悪かったわ……」と言い、皆は元の生活に戻った。
……かと思われたが勿論こういう話でよくあるパターン通り、アンナが見た殺人や出来事は全て事実で、犯人はさっきの中にちゃんといた。
アンナは自殺しようとするが偶然、今度こそちゃんとした証拠を見つけ、そこに犯人……っぽく見せたキャラが現れ、その後、真の犯人がアンナの家に現れる!
しかも凄くヒャッハー!的な古臭いサイコパス殺人鬼然とした姿で。邦画ならイケメンが喜々として演じて「さぁゲームの始まりですwww」とか言い出すような薄いキャラだ。
この古臭いサイコパス殺人鬼はかなり……何というか唐突で薄っぺらく嘘くさいキャラだった。原作の小説なら真犯人の背景とか心境とか台詞がたくさん書かれて納得できるのかもしれないが、この映画では凄く唐突に見える。ヒャッハー!的サイコパスが突然現れて訊かれてもないのに自分の動機をバンバン喋り始めるのでコントに見える。
そしてまたコイツは今までの劇中での姿とは違い、フードを被っている。何故かと言うとアメリカ映画では「フードを被ってる=後ろ暗いことがある奴」という記号なので、つまり「今からこのキャラは真犯人です、お前らみたいな者にもわかりやすいように真犯人を犯人っぽい格好にしたよ!」という事なのだろう。第二幕の最後でアンナの過去が明らかになる描写の丁寧さが消えた雑で粗い描き方だ。アンナの真実が描かれる流れが映画として良質だっただけに、すぐ後に描かれたこの解決編が物凄く陳腐に見える。
もうやる事ないのでアンナと真犯人のガチバトルが始まる!
「昔のアメリカ映画は色々ありつつも主人公と悪役が屋上とかトラックの屋根の上とかで殴り合って勝敗が決してたよな」とかよく冗談で言ってたが正に2021年にもなってそれをガチでしてる展開だ。日本のサスペンス劇場なら崖の上で犯人と語り合うクライマックスか。
第二幕まではエイミー・アダムスの演技もあって「人間ドラマも見せる繊細なサスペンスミステリーなのかな」と思って見てたのに突然「主人公と悪役が屋上で殴り合う」展開になった。
アンナは広場恐怖症なので屋上に逃げたら発作が起きる。
アンナ「ぐわああああ!頭が痛い!」
真犯人「ヒャッハー!逃げられはしないよ!」
悪役が振るう園芸道具がドアップのアンナの頬にグサッ!と刺さる!
アンナ「おッほおおォッ!」
「おッほおおォッ!」じゃないから。エイミー・アダムスに何させとんねん。
広場恐怖症で普通の生活すら送れずハロウィンで子供達が「お菓子おくれ」と訪ねてくるだけでブッ倒れてた中年女性アンナは、ただ屋上に居るだけで立ってられんほど苦しい!刺された顔も痛い。
アンナ「ひいいいい!救命阿 (じゅうみんあ)!」
苦しみながら屋上で真犯人とぶん殴りあう。さっきまでコンビニにすら行けなかったのに随分と元気だ。ひょっとしてこの殴り合いで治っていってるのかもしれない。凄いね人体。
そして真犯人は映画序盤で振っていた”古びた天窓”の上に倒れた!アンナはこの機を逃さず、両手の掌底による下段突きを天窓に喰らわせる。
アンナ「噴ッ(ふんッ)!喰らえェッ!」
古武道に伝わる完全なる眩惑(フェイント)に隠された必殺の両手掌底……、
アンナのダブル掌底で天窓にヒビが入り、天窓が割れる前にアンナは素早くローリング!
アンナ「おっと危ねェwww!」
真犯人「ぐわああああああ!」
真犯人だけが一階まで真っ逆さまに落ちていき……。
死亡!(ドァ~ン!)
アンナ「やれやれだわ」
解決!(バァ~ン!)
なんすかこれ。
刑事はアンナに謝罪!そしたらスッキリしたのか死闘を通じて凄いね人体でアンナの広場恐怖症も良くなったのか……アンナ全快!
復ッ……活ッ!
精神分析医アンナ・フォックス復活ッッ!アンナ・フォックス復活ッッ!アンナ・フォックス復活ッッ!アンナ・フォックス復活ッッ!アンナ・フォックス復活ッッ!アンナ・フォックス復活ッッ!
アンナ「してぇ……精神分析してェ~~~~~~~~(ニヤァ)」
アンナは過去のトラウマを乗り越え、ネコチャンを抱いて引っ越し。新しい人生を歩んでいくのだった……。
ですから、なんですかこれは。

 

 

 

特別につまらないわけでもなく、突然アンナがラストバトルして敵をブッ殺するのも別の面白さもあると思うが……、何というか後半は2000年代初頭くらいのアメリカ映画みたいでしたね。映画の3分の2……第二幕くらいまでの丁寧に、時には大胆に描いてた展開と、最後の粗い第三幕があまりに落差ありすぎる。20年前の映画でよくあった、プロデューサーとか制作会社に「曖昧な結末じゃなくてさ、こう最後に殴り合って勝利してハッピーエンドにしなきゃ!」と言われて監督はそうした……って感じの終盤だった。いや、原作もこういう展開なんだろうけど、もうちょっと見せ方あるだろう、と思った。やっぱ犯人の描き方が適当すぎるのと、普通の生活すら送れないアンナが突然闘い始めて真犯人を素手でブチ殺すのが悪かった気もする。
もっと開き直ってアンナが突然スーパーパワーを発揮して犯人を血祭りにあげるくらいの無茶苦茶やったら、まだ納得できたかもしれない。あまりに2000年的な「やってる間にこうなっちゃいました」って感じの古臭い展開でした。この監督作品で観たのはジェイソン・ステイサム主演の『ハミングバード』だけだけど、それは結構良かったんですけどね。か弱いと思ってた精神を病んだエイミー・アダムスが敵と敢然と戦い始める本作とは逆で、『ハミングバード』はめちゃくちゃ強いとしか思えない精神を病んだジェイソン・ステイサムがいつもほど強くないという映画だった、『ハミングバード』も脳が壊れたジェイソン・ステイサムが真実と向き合う様子が良かったし、この監督はそういう展開が描きたい人なのかもね。だからアンナのトラウマを描く第二幕で力尽きて倒れてしまい、第三幕は近所を歩いてた奴が監督して出来上がったのかもしれん。
これならアンナが真実を思い出して彼女の精神が完全に崩壊し、自殺はするが彼女がPCかネットに残した証拠によって事件が解決してアンナの魂は家族の元へ……って感じのバッドエンド風ビターエンドの方がまだマシだったかもしれん。
でもエイミー・アダムスの熱演もあったし終盤の展開も違う意味で面白かったので退屈せずに楽しめはしたけど。最後の展開も人によっては「これだから良いんだよ!自分はこれ好きだぞ!」って人もいると思う。
それに、この映画よりもこの感想書いてるうちにどんどん楽しくなってきたので、観てる間より観終わった後で楽しくなれる映画だと言えなくもない。ひょっとして良い映画だったのかもしれんね。

 

 

 

そんな感じでした

『ハミングバード』(2012)/イースタン・プロミス脚本家によるアクションよりドラマ中心のステイサム映画➕ - gock221B

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The Woman in the Window (2021) - IMDb

www.youtube.com

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