監督&脚本&コンセプトデザイン:庵野秀明 准監督:尾上克郎 副監督:轟木一騎 アクション監督:田渕景也 原作:石ノ森章太郎の漫画版『仮面ライダー』(1971)&特撮ドラマ『仮面ライダー』(1971-1973) デザイン:前田真宏、山下いくと、出渕裕 音楽:岩崎琢 配給:東映 製作国:日本 上映時間:121分
庵野秀明監督中心にカラー、東宝、円谷プロ、東映の4社がコラボするシリーズ『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース(SJHU)』第4作目。今のところ発表されてた中ではこれで一応終わり。ここまで特撮を網羅したからにはシン・ガメラとシン・戦隊もして欲しい。
※このブロックは感想じゃなくて前置きなので飛ばすのもあり。いろはのいだよ。
庵野は宮崎駿のように個人的なことを大作で自由に描ける純文学作家的な領域に入ってきたので、このシリーズを楽しむには庵野作品や庵野秀明本人のことが好きじゃないとキツい。というかむしろ「庵野作品や庵野秀明本人のことは好きじゃないけど特撮or映画は好き」という人が観ても逆にムカつくだけだろう。僕は庵野作品や庵野本人も原作もある程度好きなので楽しめました。SJHUってだけでなく「仮面ライダー生誕50周年企画作品」のひとつでもあるらしい。「興味ないが50周年だから観とくか……」という人、特に若は楽しめない傾向が強いみたい。
今回は初代『仮面ライダー』(1971-1973)と石ノ森章太郎の漫画版『仮面ライダー』(1971)双方から色んな要素を抽出したリブート。
自分は世代的には『仮面ライダー(スカイライダー)』(1979-1980)や『仮面ライダースーパー1』(1980-1981)あたりの世代なんですが、それらより夕方に再放送してた初代『仮面ライダー』(1971-1973)の方が好きでした。不気味だったから20歳前後の時に当時住んでた大阪でも夏休みに再放送してて観てたし。平成以降は全く観てない、唯一『仮面ライダー555』(2003-2004)だけはヒロインの女優が好きで観ていた。
「ウルトラマン」シリーズもまた『ザ☆ウルトラマン』(1979-1980)や『ウルトラマン80』(1980-1981)世代なんだが、これまた夕方に再放送してた初代マンが一番好きだったので(樋口監督作品ではあるが)『シン・ウルトラマン』(2022)も楽しめた。初代ライダー&初代ウルトラマンどちらも幼児期「特撮の映像作品として好きだった」ということ以上に、近所の公園で仲良しの友達と空き地で脳の血管が切れそうなほど興奮しながら転げ回ってライダーごっこやウルトラマンごっこに興じてた……という「自分たちはかつて仮想的に仮面ライダーやウルトラマンだった」という体感が身体の内部に残っているので「体感型アトラクションとして好きだった」感じがある。
そのせいか『シン・ウルトラマン』(2022)を観た時は、まだ何も感動する場面でも何でもない「ウルトラマンが怪獣と対峙してるだけ」「ウルトラマンがチョップしたりキックしてるだけ」みたいな何でもない場面で意味不明な涙が出そうになったので「脳の記憶には殆どないがウルトラマンごっこした身体が思い出してるのか?」と思った。
このシリーズ「SJHU」は、第一弾の『シン・ゴジラ』(2016)は今思えば奇跡的に「庵野作品が得意じゃない」という最も大勢の人も受け入れやすい作品だった。「ゴジラ」という題材からしてそうなのだが三幕構成になってたし日本の社会問題に対する問題提起もあったし非常に褒めやすい部分が多い。次のエヴァシリーズ26年に渡る最終作『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)は……ちょっと特殊だから置いといて、第3段『シン・ウルトラマン』(2022)は、樋口監督らしい女性への性的いじりシーンが妙に多いところや樋口&庵野作品特有の「アニメキャラみたいな台詞を普通の俳優が喋る恥ずかしいノリ」が、『シン・ゴジラ』(2016)を好きだった一般葬や普通の映画ファンに敬遠された。『シン・ゴジラ』(2016)で「シン・ゴジラ面白いけど、唯一ここだけ変じゃない?」と馬鹿にされてた「石原さとみ演ずるカヨコ・パターソンのノリ」、あの〈カヨコ・パターソンのノリ〉が「ここだけ」ではなく『シン・ウルトラマン』(2022)は全編がカヨコ・パターソンだった。カヨコ・パターソンのノリこそが庵野の本体だと気づかれてしまった。今となっては「庵野はゴジラに思い入れないから客観的に『シン・ゴジラ』(2016)を撮って、結果的に一般受けする作品になった」と言われている。僕としては折角、庵野制作映画を観るんだから『シン・ウルトラマン』(2022)の恥ずかしい部分も「効くゼ!」という感じで快感だったし何考えてるかわからん不気味なシン・マンやゾーフィなども解釈一致だったし超利他的な正義の動機で闘うシン・マンに対して子供のように感動したし前述の、空き地で転げ回って再放送ウルトラマンを自ら演じてごっこ遊びしていた「かつてウルトラマンでもあった僕ら」的な体感を細胞が思い出したのかシン・ウルトラマンが普通に動いてるだけで感動した……のだが、友達や普通の映画好きのフォロワーには「え……あれのどこがいいの……」と嘲笑われた。
映画ファンはポリティカル・コレクトネスに対応できてない作品や洗練されてない映画が好きじゃないのだが『シン・ウルトラマン』(2022)はまさにその2つを欠いた作品なので彼ら彼女らにウケるわけもなかった。僕も映画ファンなので、その気持ちもあるが庵野好きという部分もあるのでそっちを活かして楽しんだ。僕の周りの人を観察した結果「庵野作品(の中の特に恥ずかしい部分)が許容できて、かつ初代ウルトラマンが好き」という限られた人だけが楽しめた感じだった。
で、この『シン・仮面ライダー』(2023)だが『シン・ウルトラマン』(2022)以上に一般層や普通の映画ファンにウケない感じになっていたので驚いた。
等身大ヒーローということもあり庵野作品の中で最も恥ずかしかった『キューティーハニー』(2004)と殆どノリや描写が同じ。『シン・ゴジラ』(2016)より実社会との繋がりが薄かった『シン・ウルトラマン』(2022)より本作は更に薄い。殆ど一般人が全く居ない場所ばかりで物語が進行する。そういうところもウケなさそう。人間の社会生活の影で進む物語。本作に比べると『シン・ウルトラマン』(2022)の方が、まだ世間一般にウケる感じで作られていたかもしれない。普通の映画ファンの友達に散々バカにされた『シン・ウルトラマン』(2022)の時のような今回もまたバカにされる気がするが本作も大好きだったのでそうなっても構わない。好みは人それぞれですからね。
ネタバレあり
Story
バイク〈サイクロン号〉で逃走する本郷猛(演:池松壮亮)と緑川ルリ子(演:浜辺美波)。
秘密組織〈SHOCKER〉(以下ショッカー)は、人間に昆虫や動物の能力を付与して驚異的な能力を発揮させる〈オーグ・メンテーション〉という技術を有しており、その技術を施されて人を超える能力を発揮できるSHOCKER上級構成員を使い、世界征服……ではなく「人類を持続可能な幸福へと導く」愛の秘密結社だった。緑川ルリ子と父・緑川弘博士(演:塚本晋也)はショッカーに所属していたのだが、バッタの能力を付与したが洗脳直前だったバッタオーグこと本郷猛を救出して共に逃走。緑川博士はショッカーに対抗するため、本郷猛を選んで故意にバッタオーグに改造したのだ。
二人を追うSHOCKERは裏切り者である緑川弘博士を殺害するも、バッタオーグ改め〈仮面ライダー〉と自らを名乗りはじめた本郷猛に皆殺しにされる。
緑川ルリ子と本郷猛は、SHOCKERの恐ろしい計画を止められるのか――
そんな話。
構成的には『シン・ウルトラマン』(2022)と同様、「数十話ある特撮ドラマの回から5、6話くらい選んで一本の総集編映画にした」っぽい雰囲気になっている。映画が好きだからという理由で観る映画ファンからするとどうかわからんが、このシリーズはそれでいいと思う(そう考えると『シン・ゴジラ』(2016)が普通の映画ファンにウケたのは三幕構成で映画っぽかったからというのもあっただろう)。
冒頭。本郷猛&緑川ルリ子がいきなり逃走している。本郷猛に対する改造手術はカットで、緑川博士と共に脱出するところは緑川ルリ子になっている。手術台の上のライトが麻酔でグルグル回るカットは観たかった気もするが「その辺はもう知ってるやろ」という感じでカット「スパイダーマンになるくだり、もう映画で一から観たくないだろ」というのと同じ。ショッカー下級構成員が大型車両で本郷猛&緑川ルリ子とカーチェイス。崖から大型車両が落下。これミニチュアかな?凄く良い落下だった。
襲ってきたショッカーに対し、バッタオーグもとい仮面ライダーに変身した本郷猛。
変身した仮面ライダーが崖の上に無造作に立っている……ここは初代『仮面ライダー』(1971-1973)第一話の登場シーンの再現だが、崖の上に何考えてるかわからん仮面ライダーがヌボーッと仁王立ちしてる雰囲気が怖くて良い。夜道、突き当りを曲がったら包丁を持った狂人が立っていた感じ。『シン・ウルトラマン』(2022)のゾーフィみたいな「何してくるかわからんやべぇ奴と目が合ってしまった」感じだ。
仮面ライダーが飛び降りてきてニチアサのように「やあ!」「とう!」と叩きのめす……のかと思ったら一応、普通の人間であるショッカー戦闘員の胴体や頭部を正拳などでブチ抜き惨殺し始め、昭和の東映映画のような真っ赤なペンキみたいな血が周囲の雑木林にブチ撒けられる。やられた戦闘員の姿はスクリーンに映らないが多分、グチャグチャになってると思われる。「やあ!」「とう!」と適当に叩き伏せればそれでいいものを一応普通の人間である戦闘員をグチャグチャに惨殺しまくってレイティングをわざわざ上げているので、よっぽどコレやりたかったんだと思い好感度アップ!
ここまでがアバン。
🦗🏍本郷猛/仮面ライダー
本郷猛/仮面ライダー(演:池松壮亮)は緑川博士の最高傑作バッタオーグ。仮面ライダーに変身し大自然の風を吸収することでパワーが増す。普通のヘルメットが変形してバッタオーグの仮面になり、サイクロン号も普通っぽいバイクから戦闘用へと変形してカッコいい。戦闘用となったサイクロン号はジェット噴射で数十m上昇も出来る。普段は乗らなくても飼い犬のように後をついてきて可愛い。
キャラ的にはしっとりした本郷猛よりも明るい一文字隼人の方が好きだったが、仮面ライダー形態だと逆に明るい2号より悪役のように不気味な色彩の第1号の方が遥かに好き。
バッタオーグになると凶暴性が増すようだ。逆に本来の本郷猛は、最期まで他人のために命をかけた利他的な正義感を持った父親に憧れている心優しすぎる青年だった。緑川ルリ子が言うには「バイクの運転が得意な優しい青年だが、コミュ障が災いして無職」それが本郷猛。他人との会話も最後までぎこちない。何とか大人にはなったが対人コミュニケーション能力が成長しなかった碇シンジみたいな雰囲気がある。〈本郷猛〉は、昔の特撮ドラマ版の「藤岡弘、が演じた本郷猛」像がインパクト強すぎたので毛量多い以外はガラッと変えたシンジくんっぽい本郷猛となっている。これも良いと思う。この令和に「藤岡弘、が演じた本郷猛」みたいな奴が主人公だとパロディにしか見えないし。……いや空虚なしっとり加減……それでいて奥にハートがありそうな雰囲気はシンジくんというより綾波っぽいかもしれない。本郷猛&ルリ子のダブル綾波かもしれない。
彼は、緑川博士が殺される寸前に言った「ルリ子を頼む……」という言葉を遂行する。緑川博士はショッカーに対抗する正義のためとはいえ本郷猛を了承も取らず勝手にバッタのバケモノに改造したらしいのだが、本郷猛はそれについて全く怒らないばかりか、むしろ緑川博士の行為を肯定までして緑川ルリ子を「お人好しすぎる」と呆れさせる。
確かに利他的な正義の心を持った優しい青年ではあるものの全体的に「それ、本当に君の本心かい?それでいいのかい」と訊きたくなる危うさがある。
『シン・ウルトラマン』(2022)の主人公・神永新二は「ミステリアスで献身的な警視正・神永新二が子供を庇って死んだボディに外星人リピアが乗り移った存在」だったので命を捨てるかのような過剰に利他的な正義を遂行しても「献身的な外星人だからか」と飲み込みやすかったのだが本作の本郷猛は只の青年なので、その献身的すぎる考え方や行動が少し気になる。
彼の父は強盗から一般人を救おうとして本郷猛の目の前で殺害された。本郷猛は父のその「死んでも他人を思いやれきれる優しさ」を継承し、そして父に足りなかった「具体的な強さ」を欲していたので緑川博士に改造されてバッタの力を得た事に文句を言うどころか感謝する。実の父から他人を思いやりすぎる正義の心を、緑川ルリ子の父である緑川博士からは「正義を執行できるパワー」を継承する。二人の父から継承した正義をブーストしているのはわかるが若干「父ろいう居ない存在に囚われてる」危うい雰囲気も少しある。だが最後まで挫折もなく突っ走るので「単純に正義の心がありすぎる奴」という事なんだろう。喋り方と声が凄く良い。
ラスボスである緑川イチロー(演:森山未來)はショッカー幹部の一人(他にも強い奴はいるみたい)、同じ様に通り魔に優しい母を殺されショッカーで「全人類の魂を苦しみのない異空間に飛ばして救済する計画」……具体的に言うとエヴァの「人類補完計画とほぼ同じもの」を進めている。だからイチローは、初期MCUでよく登場した「主人公ヒーローの鏡写し型ヴィラン」といえる。
👩🏻緑川ルリ子
緑川ルリ子(演:浜辺美波)は所属していたショッカーから抜けてショッカー壊滅のために動き出した。人間電算機のような改造手術が施されてる。説明が聞き取れなかったので詳しくはわからんがハッキングとかプラーナ(人間の魂)をある程度操れるっぽい。物理的な強さはないので、そこは本郷猛が補う。本郷と一文字でダブルライダーだが、本作の本郷とルリ子はそれ以上に二人で一つ。
小柄ななで肩に不似合いなでかいロングコートを着ているので、全体的に美しいてるてるぼうずみたいな、親のロングコートを着た子供みたいなフォルムで、美形よりも全体のシルエットが可愛いところが好き。クモオーグに担がれてる時も尻が小さすぎるし子供が連れてかれてる!って感じで可愛い。
ショッカーに所属して手段を選ばない実験を繰り返す姿しか知らないので愛憎が入り混じった感情を父に持っているが「自分が物心つく前の、赤いマフラーをした心優しいバイカーだった父」という、現在ではなく自分が知らない過去の父に憧れを抱いており、本郷猛と共闘し始めて本郷猛の首に赤いマフラーを巻く(一文字隼人が新たに仲間になると彼にも巻く)。緑川ルリ子にとっての赤いマフラーはエヴァでいうと「綾波レイにとっての『碇ゲンドウの眼鏡』」ということなんだろう。というかルリ子は若干、自我が芽生えて大人になった綾波レイっぽい雰囲気がある。最初は本郷猛にもツンツンしていたルリ子だが、共闘を続けるうちに信頼感が湧いたのか「トイレ以外は私のすぐそばにずっと居て」とまで本郷猛に言うようになる。
ルリ子もまた本郷猛とは違う形で父親に囚われている。「赤いマフラーで笑う優しいバイカーの父」は自分が知らない写真の中にしか居ないので、知り合った心優しい青年・本郷猛に赤いマフラーを巻き、本郷猛を自分が知らない過去の父にする。最後まで自分とともに共闘してくれる仮想の父だ。
本郷猛は「赤いマフラーを巻いた優しいヒーロー仮面ライダー」となりルリ子の、失われた過去の父への叶わぬ憧れは成仏する。本郷猛は亡き父の想いを継いだり緑川博士の遺言どおりルリ子と共闘すること、その事に殉じ続け父と似たような結末に向かう。本郷猛はそれをするのが人生の目標であるので、ルリ子も本郷猛も気持ちが成仏したと言える。想いを遂げた二人は物語から退場する。
緑川ルリ子は原作の特撮ドラマや漫画版では、本郷猛が緑川博士を殺したんだと勘違いしてそのしょうもないミステリーも有耶無耶になったら本郷猛を頼ったりしてる間に本編からいつの間にか退場するだけのしょうもないヒロインだった、が本作では本郷猛と同格でショッカーと戦う主人公格、そして明確に退場する。
決め台詞「私は用意周到なの」をクドいくらい言う。最初はツンツンしてるが割とすぐ本郷猛に慣れてきて徐々にポカ波的な「お母さんみたいなぽかぽかする雰囲気」が出てくる。最初に赤いマフラーを本郷に巻く時の撮り方も凝ってて、観てたら浜辺美波が観客の首にマフラーを巻いたかのようなVR的な錯覚に陥った。『もののけ姫』でサンがアシタカに干し肉を口移しで食わせようとする時に感じる妙な近さに似た感覚。近接的コミュニケーションという意味でほぼSEX描写と同じ様なものなんだろう(というか本作のルリ子にとっては前述の通り「男にマフラーを巻く」行為ってSEXなんかより数十倍の意味あるコミュニケーションなのでその感覚は間違いではない)。
そしてルリ子は本郷猛と共闘し作戦をこなすうち、猫のように本郷猛に慣れてきて中盤では着替えや入浴できてない事に庵野的早口で文句言う。御馴染みの文言ですね……具体的な文言は忘れちゃったけど自分の肩を抱いて俯いたまま「……もーう○日間風呂入っっってない!何っっとかして!耐えられない信じられない信じたくない!」的な感じでまくし立てる庵野的なノリ(こんな台詞じゃないけど庵野ヒロイン不服申立ての雰囲気は出た)。頻繁に出てくる「風呂入ってなくて物理的に臭くなった」庵野系ヒロイン。何でヒロインが汗だくで臭くなるのが毎回必ずあるのかと言うと、それはもう「彼女は生きてるから」と言いたいからだろう。文句を言われた情報機関の男(演:斎藤工)が着替えを持ってきて「下着は女性隊員が選んだー私はー見ていない……」と、ルリ子を安心させる台詞を言う。これは『シン・ウルトラマン』(2022)で同じく斎藤工が演じた主人公・神永新二が、やはり風呂入ってないヒロイン長澤まさみの体臭を嗅ぎまくるシーンが映画ファンに「セクハラ的きしょいシーン」だと叩かれたので、斎藤工自身が「あの時は必死だったし面白いかと思って良かれとやったんですごめんね?」と、SJHUを通して観てる人に言い訳してるかのようで楽しかった。「樋口監督は臭くなったヒロインの体臭を味わうようなやつだが、このボク庵野は『ヒロインの人間らしさ』を出すために臭くしたかっただけなので叩くのは樋口だけにしてくださいね……」とも言いたいサムシングも感じた。この時、ルリ子は本郷猛にも「あんたも着たきり雀でクサいわよ!」と言う、これで超然としててルリ子より人間味なかった本郷も少しだけ人間に近づいた。これもまた「若い時の庵野が泊まり込み作業で一ヶ月間風呂はいらなくても庵野は肉食わないから体臭しなかったが、やがて鳥小屋みたいな匂いがしてきた」と樋口が語ってたエピソードや、安野モヨコが生活が無茶苦茶だった庵野の身だしなみや体調管理して寿命を伸ばしてくれた事実も想起させられた。ルリ子はわずかな時間で現在過去未来の庵野汁を観客に叩き込むヒロインだった。ネットを軽く観た限り本作の事が嫌いで仕方ないアンチに対しても「ヒロインのルリ子……というか浜辺美波」の事は絶賛している。パッと見や最初は顔の良いクール系美女だが、本郷や兄や父の思い出や幼なじみを思う熱い気持ちもあり綾波レイには気迫だった「放っとくと臭くなる肉体」も持つし庵野モヨコ的に本郷猛の着たきり雀を叱責してまるで浜辺美波が男性の観客に「っったく私の○○と来たら私がいないとなんもできないんだから」と世話焼いてるかのような錯覚させるのだから好きになる男性客が多くても無理なからんところ。いろはのいだよ。あと今回は「妙に古い懐メロ歌う」的な庵野ヒロインムーブはなかったが「ところがぎっちょん!」とショッカーとの戦いの中、死語を叫ぶ。古くはザ・ドリフターズ新しくは『機動戦士ガンダム00』のサーシェスも言ってた(今からしたらこれももう古いか)。そういう事で中年男性や若いオタは好きになりそうだが、実写なのに90年代アニメみたいな台詞をデカい声で連呼するので普通の映画ファンからしたら恥ずかしくて苦手な気がする、20代からアラサーの普通の映画ファンが一番恥ずかしいかも(推測)。いろはのい?遺憾の意だよ。浜辺美波のジッパーを下ろせばカルバンクラインの下着……ではなく内部に庵野秀明本人がいる感じなので庵野本人が好きじゃないとキツイかもしれない(作品そのものにもそれは言えるが)。
🕷🤖クモオーグ、ケイ、カマキリ・カメレオン(K.K)オーグ
話は冒頭の戦いに戻る。クモオーグ(CV:大森南朋)、こいつは自分の信条や決めセリフをクドいくらい慇懃無礼に何度も繰り返す敵……要するに『シン・ウルトラマン』(2022)で大人気になったメフィラスの再来だ。
パワーを欲し人類を見下しておりずっとクモの姿になりっぱなしの男。わかりやすい人間性の喪失……という事で「人間の敵」感が最も強い。
アクロバティックな動きとクモ糸で本郷猛を苦しめたが自由に動けない空中戦になってしまった事でライダーキックの的となり敗北。断末魔は「これは……私の……不利ーーーっ!」という凄くアニメチックなものだった。
※追記:後から現在連載中の緑川イチローが主人公の前日譚漫画を読んだ。
父に連れられてSHOCKERに入ったイチロー少年とクモ青年は知り合い、イチロー少年とクモは共に助けあい成長する。クモは人間だった時、自身もゲイだったがアウティングで自殺してしまったゲイを見殺しにしてしまったという罪の意識で「醜い心の人間が憎い。しかし弱い自分が一番憎い」と絶望し自らの顔を焼きSHOCKERに入り「死神」と呼ばれるイワン博士の実験で人ならざる者……オーグメント第一号になった。
それよりルリ子と本郷猛を観察し続ける人影が……ショッカー創設者が作った外世界観測用人工知能のバージョンアップ版のケイ(CV:松坂桃李)。こいつは前日譚漫画にも出てた。同じく石ノ森章太郎原作『ロボット刑事』の主人公Kそっくりのロボット。本作で最初にこいつが出てきた時、確かクモオーグを倒した帰りの本郷&ルリ子を道端で見てた時にぼやけて背景に立ってて一瞬背景と見落としそうになった瞬間に「……あ、Kか!」と気づく感じ、このJホラーの幽霊みたいな登場が『シン・ウルトラマン』(2022)のゾーフィの登場と似ててよかったです。
ここまでが前半……第一幕くらい。
後でクモオーグに憧れる後輩、カマキリ・カメレオン(K.K)オーグ(演:本郷奏多)も出てくるがアイデンティティが2つあるってのが何かしたい事が分散されてる感じがして今一つ魅力を感じませんでした。
🧑🏻🧑🏻政府の男、情報機関の男
クモオーグやショッカー戦闘員を惨殺した本郷猛は、心優しい本来の自分とバッタオーグ発動時の己の暴力衝動との差に戸惑いながら、ルリ子の隠れ家に行くと謎の男たち……政府の男(演:竹野内豊)と情報機関の男(演:斎藤工)が居た。
彼らもショッカーを追う最大勢力。手を組めばショッカー打倒に有利だし、断れば捕まるかもしれないのでルリ子と本郷猛は彼らと手を組むしかなくなる。
前半に出てくるので三人目の主人公、一文字隼人より出番が多いかもしれん。
政府の男(竹野内豊)は『シン・ゴジラ』(2016)、『シン・ウルトラマン』(2022)に続き三度目の登場。もう竹野内は特撮のSJHUには必須キャラなんだね。『シン・ウルトラマン』(2022)ではサプライズ的に出たが今回はさすがに予想されてたので前半でもう出てくる。勿論、3つは同じ世界で三人の竹野内豊が同一人物と明言されたわけではないが『アベンジャーズ』(2012)の様に後続作品でSJHU作品のクロスオーバーを、やろうと思えば出来るようなキャラクターがこの竹野内豊演じる「政府の男」なんだろう(斎藤工も加わったが)MCUのニック・フューリーみたいなね。
〈政府の男〉の下で汚れ仕事もこなす超然とした謎めいた情報機関の男(斎藤工)は、当然『シン・ウルトラマン』(2022)の〈神永新二〉を匂わせるためのキャラ。もし本作が『シン・ウルトラマン』(2022)と地続きの作品だったとしても、やる事がリピアっぽくないから『シン・ウルトラマン』(2022)の後でリピアは神永新二から抜けたか又は本作は『シン・ウルトラマン』(2022)より前の話って事なんだろう。まぁクロスオーバーはなさげだから今のところ只のファンサービスですが。
名無しだった二人だが映画ラストで一文字隼人に問い詰められて名乗る。これは、そう来るのを予想してなかったのでニヤリとさせられた。今思えば想像できそうな名前なのに何で想像できなかったというと「政府の男たちだしサソリやハチオーグなど女性をやたら撃ち殺すし悪者かも?」と思わされミスリードされた。そういえば庵野は国家権力キャラ好きだったな……。名乗ったとはいえ、これも「名乗らないと信用できん」という一文字に適当に偽名を言っただけかもしれないくて本名は「赤坂と神永」かもしれないし後からどうにでもなる、それでいて初代ライダーを楽しめるし上手いネタでした。
🦇コウモリオーグ
クモオーグに続く二人目のショッカー上級構成員は、緑川博士同様に科学者でもあるコウモリオーグ(演:手塚とおる)。政府の男がアジトを教えてくれた。原作通り「スパイダーマンの次にバットマンを倒す」という流れ。コウモリオーグは空気感染で人間を意のままに操れるウイルスを使い、カチこんできたルリ子を人質に取り本郷猛を待ち受ける。こいつはクモと同じく常時コウモリの姿、しかも他のオーグと違って仮面すらしていないので何十年もこの姿なんだと思った。説明シーンのためだけに100人くらいの人間を消してたしクモ同様に人間性が喪失して身も心も醜いバケモノになっている。
しかし用意周到に「私は用意周到なの」とクドいくらい連呼し続けるルリ子による用意周到な罠によってコウモリオーグは形勢逆転。コウモリオーグは慌てて逃げ出すがサイクロン号で上空に飛んだ仮面ライダーのライダーキックが胴体にブッ刺さり絶命。……本作のライダーキックってどういう理由で推進してるんだろうね?推進してるように撮ってるだけで本当は落下してるだけ?きっと背中からプラーナが噴出してるんだろう。
この二戦目は仲間を知り尽くしているルリ子の策略+サイクロン号の推進力を強調しつつ二人+一台で倒した感じ。
この死神博士を思わせる白いスーツを着たコウモリオーグ、演じている手塚とおるが高い声でハイテンション舞台演技している。「きおつけ」の姿勢で羽だけをバサバサと羽ばたく様がコミカルで、庵野作品のそういったノリまで許容してない普通の映画ファンからすると看過できない恥ずかしい光景が……ここから強くなってくる!具体的に言うと庵野版『キューティーハニー』(2004)のノリでの戦闘シーンが増えてくるので振り落とされる人が増える。
戦闘と戦闘の間の日常描写では当然、喫茶店みたいな曲が流れている。庵野作品は、家で寛ぐ時に毎回ボサノバみたいな曲流すのやめて欲しい!笑うから。
🦂サソリオーグ
三人目のオーグはサソリオーグ(演:長澤まさみ)。オーグにも効く毒を持ったオーグ。顔を半分隠しておりルー大柴総理大臣みたいに横文字を多用するハイテンションの90年代風セクシー美女で「誰だこれ!?」と思ったが退場するあたりで「ひょっとして長澤まさみ?」とGoogle検索的な事を思ったらそうだった。こういう感じで庵野作品御馴染みの俳優がたくさん出てくるが予告編や前情報で隠されてた人らが多く出てくるから楽しかった。こういう『FIRST SLAMDUNK』(2022)で功を奏した「予告や記事で前情報を隠す」やり方、好きなので定着してほしい。こういう演技の長澤まさみ観た事なかったから誰だかしばらくわかんなかった。こいつはカヨコ・パターソンを嫌って尾頭さんを褒めてた人が多かった『シン・ゴジラ』(2016)ファンみたいな人たちに嫌われそう。僕は好きさ。ルー大柴的な横文字は発音が日本語英語だった気がするのでカヨコ・パターソンには劣ってたかも。サソリオーグは大勢の政府のエージェント相手に無双してたので「さすがにオーグはライダーじゃないと倒せないじゃろ」と思ってたら、電話の向こうで喘ぎ声を出しながら数の暴力で普通に銃殺されてしまった(最期に「がくっ♡」と口頭で言って死ぬコミカル絶命)。銃撃でも怪人倒せるんだ。じゃあランボーやジェイソン・ステイサムとかなら余裕でオーグ倒せそうだよね。エヴァ旧劇で無敵だったネルフが対人スキルは実はないので戦略自衛隊に普通に惨殺されてたようなもんか、それはそれで良い展開。だがサソリオーグもっと観たかったのでライダーと戦ってほしかった(倒した後で斎藤工が毒を拾えば後のシーンにも繋がる)。
※追記:後から現在連載中の緑川イチローが主人公の前日譚漫画を読んだ。
父に連れられてSHOCKERに入ったイチロー少年とサソリは知り合い、サソリはイチローのお姉さんみたいな感じで共に助けあい死神博士&緑川派閥を潰そうとする創業派閥と戦う。連載中で、まだ明らかになっていないが家庭にトラウマを抱えて絶望しSHOCKERに入ったっぽい。
🐝ハチオーグ/ヒロミ
バッタの天敵スズメバチの能力を持つハチオーグこと本名ヒロミ(演:西野七瀬)。ずっとオーグの姿のままのオーグが多い中、彼女は本郷猛同様、普段はプラーナを放出して美しい女性の姿で戦闘時のみチェンジ(変身)してハチオーグになるタイプ。
高速で移動しスズメバチの毒針ならぬ日本刀で強襲してくる、縄張り内の人間も操れるし日本のヤクザを思わせるオーグ。ショッカー時代のルリ子の幼なじみ。言わばルリ子唯一の旧友。ヒロミとルリ子の間のドラマを語る時間はないのだが二人の感じや興奮したヒロミがルリ子に心情を吐露する台詞を聴くと彼女の愛憎が垣間見える。頻繁にショッカー……というか自分の元に戻ってくる事を要求し、それがダメなら「目の前で嘆き悲しむルリ子」の姿を見たがっており、そのためにもルリ子の新しいお友達である仮面ライダーを殺そうとする。ヒロミに忠誠を誓う情夫のような雰囲気の部下の男がおり、彼のプラーナ(魂)を吸ってパワーアップするが仮面ライダーとの一騎打ちで敗れる。優しい本郷猛はヒロミにトドメを出さず投降を勧告。ルリ子と本郷猛にほだされて「あらら……笑」を連発して投降しそうな雰囲気のハチオーグだったが、こないだまで「本郷猛が優しいことを危惧していたルリ子」のように「本郷とルリ子が優しくなってきたことを危惧した政府の男たち」によって、サソリオーグから奪った毒で作った銃弾によりルリ子達の目前で殺害される。ルリ子は哀しみながらも政府の男の判断を飲み込む。あと一歩で投降しそうに見えたので殺さなくて良かった気もするし、ルリ子や本郷はもう少し政府の男にキレてほしかった気もする。
ヒロミとルリ子の過去とか描かれてないので、ヒロミの言動や表情を観て彼女たちの10数年間が瞬時に脳内に浮かばせるオタクオーグでなければ、このキャラの良さを真に味わうことは難しい。
……という辺りまでが中盤……第二幕あたりまでか?後半はあまり語らずまとめよう。
🦗🏍一文字隼人/仮面ライダー第2号
明るい性格のジャーナリストだったが今はどうやら違うらしい!一文字隼人/仮面ライダー第2号(演:柄本佑)。彼は(恐らく)拉致されて第2バッタオーグに改造されて洗脳された敵ライダー、言わば偽仮面ライダー。バッタオーグとしての能力やサイクロン号の性能は本郷猛と互角くらいか?
デザインは不気味な第1号の方が好きだが、第2号は第1号より多めにカッコいい変身ポーズとってあの音が聞けるからありがたい。ジャージっぽい白いラインあまり好きじゃない。
後半から出てくるので本編に出て戦う時間はあまり長くない。本編終了後、一文字は漫画版であった故郷の漁村に帰郷してカニオーグと戦う……に違いない等と妄想も出来る。
一文字は内向的な本郷猛や緑川ルリ子と違い、洗脳されてた時からして明るい性格。本郷猛編から一文字編に移ると別作品みたいに雰囲気変わるが統一感無くなるので原作のそれは好きじゃなかったが本作の雰囲気が明るくなるのはよかった。「お前(本郷猛)のことは好きだけど、お前のバックにいる奴らは好きじゃないわ」とあっけらかんと語って走り去るシーンなどでその辺が出てました。
戦闘後の一文字はルリ子のプラーナ操作で洗脳を解かれる。
ショッカーの洗脳は多幸感でネガティブな感情を消して洗脳するというものだった。洗脳を解かれた一文字は今まで見て見ぬふりしていた哀しみに一度に襲われて号泣する。言わば酒やドラッグを接種し続けて多幸感を出しまくって辛い現実を見ないようにするやり方。幹部の一人であるイチローが辛い現実を曖昧にする人類補完計画をしたがってるので現実をぼやかして部下を統率してるのも理にかなっている。本郷猛と緑川父娘が暗いのは辛い現実を直視しているからだろう。
一文字のキャラは本作で一番良かった。明るい庵野キャラは今までも居たが少し捻ったところがあったが、こんなに引っかかりのない明るいタイプの庵野キャラは初めてかもしれん。本作の中でだけでなく庵野キャラの中でもトップレベルの良いキャラかも。演じている柄本佑も好きな俳優だし(というか妻の安藤サクラ、父の柄本明、弟の柄本時生みな好きだわ柄本一族、特にお父さん)。
唯一、1号vs.2号戦がドラゴンボールの空中戦みたいなCGバトルだったのは最初どうかと思ったが、それも好きになってみるか!
というか一文字は、妙に古風な原作の台詞を言わされたり今までにない庵野キャラのせいか妙に空虚な陽キャとなってて、それが黒沢清映画に出てくるサイコパス陽キャキャラっぽくて、そこが好きなのかも
もちろん続編『シン・仮面ライダー2』も観たい(多分もうないと思うけど)、そこでは柄本明の地獄大使が観たい。柄本時生や安藤サクラもいたら面白いかも。
政府の男たちの前で突然バク転したのが可愛すぎる。
🦗🏍大量発生型相変異バッタオーグx11🦗🏍🦗🏍🦗🏍🦗🏍🦗🏍🦗🏍🦗🏍🦗🏍🦗🏍🦗🏍
後半、本郷猛はショッカーの幹部の一人イチローを説得しに行く。
その前に、トンネルで偽ライダー部隊……11人の大量発生型相変異バッタオーグとのバイクチェイス戦がある(本当は総勢12人だったんだが一文字が抜けて11人)。つまりショッカーライダー。
劣勢だった本郷猛は漫画版のように殺されるのかと思ったら一文字隼人が加勢しに来る嬉しい展開。俺とお前でダブルライダー。ここは画面が暗すぎて正直よく動きがわかりにくかった。とりあえずサイクロン号でのカーチェイスで流れと「流れ」が並走しぶつかり合ってた事しかわからない。そこまではどんなにアホらしくても明るい場所で戦ってたので、ここも明るい所で戦ってほしかったがサイクロン号とライダー達の目だけが光ってる石ノ森的な映像にしたかったのかもしれん。もしくは偽ライダー部隊のバイクが、明るい場所でCGで規則正しく動く絵面がアホっぽいので暗くしたのかもしれない。走ってる仮面ライダーの前後左右から、並走していた偽ライダーがガッキーン!と挟み込む攻撃?が3回くらいあった。
何しろバイクチェイスして戦ってること、本郷猛がピンチになったこと、一文字が加勢に現れて逆転したこと……等の他の戦いの過程がよくわからなかったので、ここはお家でゆっくり観返したいバトルだった。
🦋イチロー/チョウオーグ/仮面ライダー第0号
イチロー/チョウオーグ/仮面ライダー第0号(演:森山未來)のところに辿り着いたダブルライダー。
映画観てる時はSHOCKER首領かと思っていたが、別にイチローは幹部の一人に過ぎないらしい?この世界に居るのかどうか知らんがシンSHOCKER首領とかシン死神博士やシン地獄大使その他の幹部も了解していたのだろうか?それともOVA『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』(1992-1998)の幻夜が行う地球静止作戦編みたいにイチローが他の幹部に内緒で独断で行ってるだけなのか?多分そんな気がする。緑川ルリ子達の介入がなければSHOCKER内での抗争が起きたりしたのだろうか?
全人類の魂をポケット時空に送り飛ばすという三次元世界の人間を皆殺しにするのと限りなく近い人類補完計画みたいなものを行わんとするイチローとのラストバトル。
説得が通じる相手じゃないので、イチローのヘルメットを割ってルリ子が工作した1号ライダーのヘルメットを被せる必要がある。
森山未來の演技も好きだったのが彼が魅力を発揮するのはハイテンションで喚き散らす現代の青年役なので、本作の厭世観あふれる自分の内面しか見ていない超然としたイチローは魅力なかった(「これが緑川弘の最期の最高傑作とは失望した」と言った後の「うん!なかったことにしよう!」の一言だけ凄く森山未來的で良かった)。やりたい事も碇ゲンドウ的な甘えた計画だし、人類補完計画は旧エヴァから『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)まで20数年かけて嫌というほど見せられたので「それは解決したやん!もういいよ」と思った。
前述した通り、洗脳を解く前段階としてダブルライダーはイチローをヘルメット割って取り押さえなければならない。だがイチローは多くのプラーナを取り込んでおりダブルライダーを遥かに凌ぐので難しい。
サイクロン特攻でチョウオーグへのプラーナ供給機を破壊。
一文字が吹っ飛ばされたので本郷がイチローと取っ組み合いを始める……そう「ラストバトル」ではなく「とっくみあい」という言い方が適当だ。
二人はいつの間にか子供の喧嘩のようにつかみ合いしてゴロ……ゴロ……と転がったり。何やら「がっ……!」「ごおっ……!」とか放課後の中学生男子みたいな声を出してるし異常に長い。ジョン・カーペンター監督が「他人の思想を変えるにはこれだけの時間が必要になる」という事を表現したと言われてる『ゼイリブ』(1988)の「グラサンかけろ!かけない!」珍バトルのオマージュか?幼い頃の仮面ライダーごっこしていた中年男性の記憶を呼び覚ますためか?ひょっとして「二人とも昔は純粋な子供だった」と言いたいのかもしれんが、それなら演出失敗してる気がする。
二人ともプラーナ切れでパワーが出せなくなったから、こうなってるのはわかるしパワー切れの今、互いの意見を戦わせてる時間なのはわかるのだが残念ながら台詞が全く聞き取れなかった、その上で取っ組み合いしてるので単純に困惑しました。
二人ともマスクして声がこもってる上に戦いつつ転げ回りながら会話してるから台詞の殆どが聞き取れなかったんですよね。なんならラストバトル前のルリ子によるイチローとか何とか世界の説明もよく聞き取れなかった。第三幕は全体的に黒澤明の時代劇以上に字幕が欲しかった。
勿論、映像や展開で各員がどんな感じのこと言ってたか大まかなストーリーを追うには問題ない程度にはわかるのだが物理的には聞き取れなさすぎたので細かいところや人間ドラマが全く伝わってこなかった。『シン・ゴジラ』(2016)の聞き取りにくい長台詞は装飾としての台詞が多かったので、そういうのは別にいいのだが、人間ドラマに関わる台詞が伝わらんのはシンプルに残念だった。だから字幕付きで観たい。
普通に良いラストバトルというと『エヴァ序』『エヴァ破』『トップをねらえ!』とか、ああいう燃えるラストバトルなんだと思うが、庵野は当然そんな燃えるラストバトルなんて作るのは簡単だと思うが多分それはしたくないんだろう。本作の、パワー切れで子供の喧嘩みたいになるラストバトルも意図的だったんだろう……けど物理的に会話が聞き取れなかったからよくわかんないんだよね。多分、本当は良いラストバトルだったんだろうと思う。
※追記:後から現在連載中の、イチローが主人公の前日譚漫画を読んだ。
父に連れられてSHOCKERに入ったイチロー少年はクモやサソリと知り合い、共に助けあい成長する。イワン博士&緑川博士の通称「絶望派閥」は「創業派閥」との派閥闘争に幼いイチローも参加する。漫画ではクモやサソリにめっちゃ懐いてるけど本編ではクモやサソリの死にノーリアクションだったね……。幸福計画で全員あっちの世界にブチ込もうとしてるから現世での友人の死とか何とも思ってないんだろうね。
映画観に行く前日に「関係ないかもしれんが一応読んどくか」と石ノ森章太郎の漫画版(原作に非ず)を読んでいったのだが驚くほど展開が似てた。「改造された本郷猛が脱走するが緑川博士は殺される」「能力を発現したら醜い傷跡が浮かぶ」「二人の一般男性が協力してくれる」「クモオーグ→コウモリオーグを倒す」「死んだショッカー関係者はあぶくになって消える(敵が死ぬと不気味だが、女性がコレで死ぬと人魚姫を思い出しロマンチックな感じがする)」「11人の偽ライダーと戦う」「一文字隼人が味方になる」「本郷猛の脚が折れて一文字が代わりに戦う(これはTV版)」「本郷猛も緑川ルリ子も途中で物語から消える」「本郷の声だけ帰ってくる」……など。ここまで同じなら「ショッカーの最終ミッション『10月計画』の発案者は日本政府」は絶対にやってほしかったのにベタベタした人類補完計画で残念だった。人類補完計画より絶対そっちの方が良かっただろう。
と、第三幕に不満が多いが、それ以外のキャラや要素が面白かったし概ね楽しめたし満足しました。後半、画面が暗すぎて何やってるかわかんなかったり、台詞が殆ど聞き取れなかったが心に残ったので次観たら感動する気がする。
本郷猛と緑川ルリ子が退場するのは哀しかったが、二人の退場……特にルリ子の退場は意外だったので作品がしまった感がある。前述の通り後半は不満だったが二人とも生きてラストを迎えたら後半のグダグダ感が増幅されて更に不満だったかも。「いなくならなくてもいいじゃん……」と思う二人が消えた哀しみの中、明るくて未来に希望が持てる一文字隼人が「まーた一人かよぉ」と言ったり協力者ができたりサイクロンで走り去るのが妙に爽やかで「(後半のグダグダしたところも)ま、いっか」と思えた気がする。というか今すぐ一文字主人公の続編が観たいな。本郷やルリ子も生き返ってどうぞ。
観客には劇場でライダーカード2枚が貰えるのだが僕は一文字隼人とクモオーグでした。
このシリーズSJHUはハイペースで制作してきたので庵野は本作で少し休むらしい。だが一文字が主人公になった本作の続編やってほしい(本作でやんなかった日本政府の10月計画とか今度こそやっておくれ)『シン・ウルトラセブン』とか観たいですね。というか僕は庵野やこのシリーズ全体的に肯定的なので『シン・帰ってきたウルトラマン』『シン・ガメラ』『シン・戦隊』とかも観たい。アニメもいいなら『シン・ナウシカ』『シン・ガンダム』か。何でもいい。ネームバリューのない題材は作らないと思うが本当はウルトラマンより『シン・ウルトラQ』『シン・怪奇大作戦』みたいに人間が怪獣や怪異に対応するものが一番面白くなりそうな気がする。観たいなぁ特に『シン・怪奇大作戦』……。別にシンや特撮じゃなくても『彼氏彼女の事情』の続きとかも観たいし。
そんな感じでした
『シン・ゴジラ』(2016)/5年ぶりに観ても面白かったが日本政府が有能すぎてコマンドーよりリアリティなく感じるようになってた☢️ - gock221B
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)/尿意は残っていたよ。どんな時にもね🧑🏻 - gock221B
『シン・ウルトラマン』(2022)/オタ臭さと性的シーンが多く人を選ぶがウルトラマンのこれ以上無い程の善性や楽しい展開、好きでした✨ - gock221B
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