gock221B

映画やドラマの感想ブログ 😺🐱 殆どのページはネタバレ含んだ感想になってますので注意 😺 短い感想はFilmarksに https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

「ナイスガイズ!(2016)」今回もまた女性に対する優しい視線👬

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原題:The Nice Guys 監督:シェーン・ブラック 製作国:アメリカ 上映時間:116分

 この監督は「アイアンマン3(2013)」で知った。
アイアンマン3は「MARVELヒーロー映画としては」「アイアンマントリロジー最終作としては」「大河ドラマMCUの一篇としては」‥そんな目で観たらイマイチだったけど、そんな事を全て忘れて「トニー・スタークとかいう凄いアーマーを持ったおじさんが主人公の映画」として、只の映画ファンとして観ると凄く面白い映画だった。
僕も最初観た時は納得いかない部分があったが、何度か観ると面白いなぁと思うようになった。
そんでこの監督の監督デビュー作の「キスキス,バンバン-L.A.的殺人事件(2005)」というのがあって観てみるとめちゃくちゃ面白かった(というかキスキスバンバンは、ただ面白いだけじゃなくて自分にとってかなり特別な一本になった)
過去の監督作はこの二本しかないが、特徴としてどちらも「この人は女性に対して思うところが凄くある人で女性に優しいな」と思い、そこが気に入った。
あと、突発的な死、スカす展開が多い。
そのスカす展開はオリジナルのキスキスバンバンではハマってたが、アイアンマン3では完全に逆効果になってた印象(だからアイアンマン3は凄く好む人と嫌う人が極端に別れる)
本作はキスキスバンバンに似た感じの映画っぽいので何気に公開を楽しみにしていた。

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70年代。
シングルファーザーの探偵ライアン・ゴズリングは老婦人に、彼女の孫であるポルノ女優の捜索依頼を受けるが、そのポルノ女優は既に死んでいる。
しかし探偵は
アメリアという別の娘の存在に辿り着く。
一方、そのアメリア本人から自分を探る者を退けるよう頼まれたタフガイの示談屋ラッセル・クロウ)は探偵をボコボコにする。
だが、示談屋は謎の男達に殺されかけたため探偵と手を組み、探偵と示談屋の二人(ついでに探偵の娘も)はアメリアを捜索する。そしてそれは意外な事件に近づいていく‥
みたいな話。

パルプ小説みたいな映画、そしてこの手の映画は予告編では面白さげだが観てみると面白くない事が多い(なぜなら「パルプ小説みたいな映画」を撮る人はカッコよさげな映画が作りたいだけというケースが多いので)。
でもこれはかなり面白かった。
テンポが良く、要所要所で突発的に車が突っ込んで来たり、観てる人のタイミングを外した瞬間に銃撃が起きたり、意外な場面で意外な登場人物が死んだりと楽しさがずっと持続していくので退屈な時間が全然ない感じ。
それにしても何の罪もない通行人が流れ弾に当たって死ぬ場面が異常に多くて、ここにも何か監督の意志を感じた。
死んだキャラには悪いが関係ない人が死ぬと作品世界が強固に感じられて面白くなる。
あと突発的な事故とか流れ弾とか‥そういうこの監督が得意なアレコレで映画世界の中の登場人物や事象が、お約束じゃなく本当にこの世界で生きてたり起きてる様に感じられた。これもこの監督の面白さの一部だろう。
そういえばライアン・ゴズリングがドジって「あ‥」って感じで窓ガラスで手首が切れてしまい信じられないほど出血するシーンではゾワッと寒気がして気が遠くなった。
映画の中で首や腕が飛んだりグロイシーンは平気だけど、こういう「うっかり手を切っちゃった」みたいなシーンの方がクラッとする。きっとリアルに感じられるからなんだろうね

ライアン・ゴズリング演じる主人公の探偵は、賢い娘と暮らすシングルファーザー。
成り行きで相棒となる示談屋は腕力で何でも解決するタフガイ。
探偵は異常なまでのドジで、何でもない場所でドジって大怪我するのが可笑しい。
しかし、後半まで来るとそのドジが伏線になって命が助かったり敵が勝手に死んだりするので彼のドジは彼の特殊能力の様に思えてくる。そして最初は何も出来ない男のように見えるが実は探偵としてのディテクティブ能力が高い事が徐々にわかってくる。
探偵父娘は、仮の住まいとして無機質な豪邸に住んでいるが娘は気に入っておらず庭に「架空の家」があるという設定でバーチャルままごとみたいな事をしている。
そんな事がわざわざ時間を割いて描写されるが意図がよくわからない。
とりあえず探偵は妻を、娘は母を欠いている事だけは伝わった。
ラッセル・クロウ演じる示談屋は元軍人でマッチョで腕っぷしが強く暴力も殺しも厭わない男だが、見ているうちに心の底では良い人間になりたがっている事がわかる。彼は数年前にやった数少ない善行を密かに心の支えにしている。彼は自分のハートに欠けた部分を埋めたがっている。
探偵は妻と死別、示談屋は女にフラれている。映画の中に女が不在なのは何故だろう?
主人公が二人のバディムービーで、彼らは自分の欠けた部分を相棒で補おうとしてるから、妻や恋人キャラがいたらややこしいから排除したんだろう。
この主人公2人と探偵の娘はかなり魅力が高かった。
ライアン・ゴズリングはいつも良いから置いといて、ラッセル・クロウは嫌な役が多かったが久々に好感持てるキャラだった。身体の分厚さがカッコよかった。

やっぱり面白かったしキスキスバンバンにも似てた(終わり方もほぼ一緒だし)。
舞台設定を70年代にしたのは何故だろう?
便利な機械やスマホなどを排除してフィルムを奪い合う展開にするため?
あと70年代なおかげで、このご時世にもかかわらずライアン・ゴズリングが煙草吸いまくりなのが良かった。
喫煙シーンは叩かれこそすれ、あまり得しないのにそれを執拗にやってて、その姿勢が偉いと思った。「それのどこが偉いんだ?」というような人には説明してもわからないのでこの話はもうこれくらいでやめておく。
キスキスバンバンでも本作でも、心優しい主人公が手を大怪我してしまうんだけど何か意味あるのかな?
ブルーフェイスは‥気狂いピエロか?顔を青くするような意味は他にないもんね。
この監督は意味ありげな要素やオマージュをバンバン入れて来たり多用するので記憶に残り、だからまた観ようと思うのかもしれない。キスキスバンバンはブルーレイを早く出してくれ。
欠点は‥特にないが終盤の入り組んだ複雑なアクションになると各キャラの位置関係がわかりにくかったくらいかな。
あと文句というより殆ど言いがかりなんだが、ちょっとテンポ良すぎて面白いというより面白すぎるくらいで、面白すぎるシーンがずーっと続くと面白さに麻痺してくるので、ただ歩いたりただ飯食ったり意味なくボーッとしてたりするという、退屈で中だるみするシーンが中盤にあった方が個人的にはいい気がする(たとえば探偵父娘の何でもない触れ合いをもっと中盤に入れればよかったね)。

とにかくこれはオススメですね。是非、本作とキスキスバンバンを見てほしい。
興行収入は知らんけど本国で評価が鬼高かったから続編もあるかもしれん。
何気に僕は普段全然おすすめしないがこの監督作は推していきたい。
この監督の次回作は「プレデター」の新作だそうだ。しかも大作らしい。
どっちかというとこの監督はオリジナルものとか本作みたいな内容の方が良い気がするが、プレデターも当然応援したい。
エルモア・レナードの小説の映画化とかがハマりそうな気がする。

そんな感じでした

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「生きる(1952)」黒澤明/初めて観たが、泣けるとか感動というよりも面白くて活気のある映画って感じだった

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監督:黒澤明 上映時間:143分

記事とかで「黒澤明の最高傑作は?」みたいなところでは大抵「七人の侍」か本作が載ってるが、まだ「生きる」観た事なかったので観る事にした。
そこまで称賛されてるからには面白い事は間違いないのはわかってたが、如何にもアッパーっぽい他の作品と違って本作は「市役所で働くオッサンが余命僅かになって公園を作るという仕事を果たしてブランコ乗って歌いながら死ぬ」というストーリーだって事はボンヤリ知っていて、何か観たら寂しい気持ちになりそうで食指が湧かずにいた。

前半
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映画が始まると市役所の市民課長である主人公(志村僑)の胃のレントゲン写真が写り、ナレーションが語りだす

これはこの物語の主人公の胃袋である。
幽門部に胃ガンの兆候が見えるが、本人はまだそれを知らない

 次に、市役所の市民課でやる気なさげにハンコを押す主人公(志村僑)が映る

これがこの物語の主人公である。
しかし今この男について語るのは退屈なだけだ。
何故なら彼は時間を潰しているだけだからだ。彼には生きた時間がない。
つまり彼は生きているとは言えないからである。

だめだ!
これでは話にならない。これでは死骸も同然だ。

いや、実際この男は20年ほど前から死んでしまったのである。
その以前には少しは生きていた。少しは仕事をしようとした事もある。
しかし今やそういう意欲や情熱は少しもない。
そんなものは役所の煩雑すぎる機構と、それが生み出す無意味な忙しさの中で、全く磨り減らしてしまったのである。
忙しい。全く忙しい。
しかしこの男は本当は何もしていない。
この椅子を守る事以外は。
そしてこの世界では地位を守るためには何もしないのが一番いいのだ。
しかし一体これでいいのか。。一体これでいいのか!
この男が本気でそれを考え出すためには、この男の胃がもっと悪くなり、
そしてもっと無駄な時間が積み上げられる必要がある。。

このナレーション、、あまりにもキレキレである
窓口には主婦たちが来ており、下水を埋め立てて公園にしてくれと言って来ている。
役所は正にお役所仕事って感じで、主婦達を受け付けてる市民課が言う「ああ、それなら土木課へどうぞ」から始まり
市民課→土木課→公園課→保健所→衛生課→環境衛生課→予防課→防疫課→虫疫課→下水課→道路課→都市計画部→区画整理課→消防署?→児童福祉係→市会議員→助役→‥
という凄まじい大たらい回し大会が軽快な音楽乗せて回される‥ここが圧巻!
そして助役は「市民課へどうぞ
振り出しに戻った。
主婦たちを最初に応対した受付の男は主婦たちのことをすっかり忘れ、また最初の時のように「土木課へどうぞ」と言い、カメラが回り込んで主婦たちの顔が最初の時以来ひさびさに映る。
そして主婦たちが遂にブチギレて怒号が飛び交う!(俺なら3つめくらいでキレそう)
カットが変わり後日、志村喬は市役所を欠勤し病院にいた。
どうやら胃の腫瘍に気付いたようだ。
待合室で、胃癌の兆候にやたら詳しいオッサンがいて胃癌について語りまくる。
志村喬は胃癌ヲタから そっ‥と離れる、しかしその志村喬スリップストリームのようにピッタリついてきて胃癌について喋りまくる悪魔のような胃癌ニキ
凄い可笑しい。
絶望のあまり、帰宅して電気も点けずにうずくまってる志村喬の様子がヤバい
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というか迫力ありすぎてむしろ笑ってしまう。
親父がこんなになってても息子みつお(金子信雄)は「あ、いたんですか」とか言ってる!絶対何かあったと思って何か訊けよ
もっと辛気臭い映画かと思ってたが、いざ観たら軽快で面白い映画だった。
‥という、この前半が面白すぎて完全に心を掴まれた。

 

中盤
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志村喬は余命僅かだと確信して、この日から仕事を休み居酒屋で酒を飲む。
そこで知り合った漫才コンビ二丁拳銃の小堀みたいな痩せフランケン面の小説家メフィスト伊藤雄之助)と出会う。
遊びを知らない志村喬は彼に頼んで、パチンコ屋やスナックやストリップやナイトクラブなど色んな店に連れてってもらう。
途中、ホステスだか売春婦だかよくわからん夜の女に真面目帽子を取られてしまい、派手なオサレ帽子をゲットする志村喬(これはまるで童貞を喪失したかのような描写だった)
ここは妙に鏡を多用したシーンが多いのは「全てまやかし」的な意味?
この映画を現代版リメイクするなら、巨大ナイトクラブのシーンなどは新木場AGEHAサイバージャパンダンサーズとかポールダンサーを観るシーンになるのかな?
色々遊ぶが最終的には絶望的な顔になる。心の隙間を埋められなかったようだ。
次に、市役所を辞めた元部下の女の子とデートする。
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この子は幼女とオバハンを合体させたような雰囲気の元気で魅力的な女の子。
この世界の市役所は死の世界なので、活気あるこの子はさっさと抜けたんだろう。
この子が市役所の面々に付けた あだ名がどれも面白くて(「ハエ取り紙」「糸こんにゃく」とか)がウケた。特に「どぶ板」とか名付けられた日には落ち込むしかない。
息子みつおに何度か、胃癌を告白しようとするがその度に、みつおに絶望して伝えられない(本当に断絶しきっているのではなく、そこまでの人生で風通しの良い関係性を作ってなかったのですれ違いが多いというだけ)
女子からヒントを貰い、志村喬は映画冒頭でオバハン達が訴えていた公園作りを決意する。
ここで近くの席の女学生たちが学友にバースデイソングを歌うのだが、構図的にはまるで本当の意味で誕生した志村喬に向かって歌っているように見える。
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後半
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後半、志村喬がやっとやる気を出した次のカットではもう既に葬式している。
そこで親族や市役所の人達などが、志村喬最後の五ヶ月間について断片的に語って主人公が何を考えていたかどういう状態だったかなどが彼らの中で補完されていく。
この葬式のメンツや演技が当然凄いのだが、それより黒澤明の映画は、後半で登場人物が台詞で思ったことを分かり易い演技とともに全部言いまくる事が多くて本作の葬式もそうで正直、個人的にはあまり好きじゃない。
「いや、言わなくてもわかりますよ‥」という事を全部わかりやすく言われてしまうと自分のようなひねくれ者は覚めてしまう部分がある。
分かり易いからこそ世界的で大衆的な映画監督なのかもしれないし一長一短なんでしょうね。。
だけど志村喬がやるべき事を悟った瞬間に死んで後から回想で振り返る、という流れ自体はいいなと思った。
そして何か良い事をしようとする人は物凄く少なくて、その良い事がたとえ些細な事でもとんでもなく面倒な長い道のりでしか進まず、またその結果は世界を好転させずしかしほんの僅かの人の心には残る(かもしれない)という事を喉元までパンパンに詰めてくる感じがあった。
そしてブランコで感動のラストじゃなくて、皮肉な場面→パンドラの箱の底の小さな希望的なシーンで終わるとは思わなかったのでそれも驚いた。
当然のことながら自分の父親や自分についても多々思うことあったが、そういう個人的な事は他人に言う事でもないので書きませんが‥

 

でもやっぱ面白かった。
というかストーリーよりも志村喬の魅力がとにかく凄かった。
パワーありすぎてとてもじゃないが死ぬ寸前の人には見えなかった。
回想での末期状態も命の灯火が消えかかってる老人というよりは、凄い溢れるパワーでもって死の崖に全力で突っ込んでってるオッサンって感じの迫力。
開きっぱなしの瞳孔と顔面の迫力がもうとにかく凄かった。
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特にヤクザに「命がいらねえのか!」と凄まれても、本当に要らないのでニヤ~‥と不気味な笑みを浮かべるシーンはあまりにも気持ち悪かったしカッコよかった
こんな迫力を持って生きたいと思えた。

 

そんな感じでした
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『複製された男』(2013)/凄いのか凄くないのか判別が困難な映画👨👨

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原題:Enemy 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
制作会社:A24 制作国:カナダ/スペイン 上映時間:90分

 

 

 

この監督は去年公開された「ボーダーライン」が評判良くて(まだ観てない)今年公開される新しいブレードランナーの監督。あと「メッセージ」もこの人か。。
結構前からいるのに何故か一本も観てなかったしブレラン前に知っときたいので監督作まとめて数本借りた。
主人公役のジェイク・ギレンホールの事も最近好きだし、この人が出てると「ちょっと観てみよう」という感じになる。
まず、この映画は雰囲気がいい
俺が言う雰囲気いい映画=具体的に言うとアラフォー独身中年男性が主人公で、夜の場面や暗い部屋が多くコントラストが濃くて暗いモダンな画で、部屋が妙に生活感なくて整頓されてて、あまり特徴のないセクシーな女と空虚なSEXしたり妙に深刻そうな雰囲気で不安なBGMが鳴ってて徐々にトラブルに巻き込まれていく感じの映画。

冒頭、どこかの秘密クラブで主人公がエロいショーを観ている。象徴的に蜘蛛が映る
主人公は大学の歴史講師アダム(ジェイク・ギレンホール)。
この主人公の恋人役はメラニー・ロラン。「イングロリアス・バスターズ」のヒロイン役の人。この人はアメリカ映画あんま出ないからなかなか観れない。
2人はちょくちょく会っては空虚なSEXをしている。
主人公の母親役はイザベラ・ロッセリーニだった。高校くらいの時にデヴィッド・リンチと付き合っていてリンチファンの自分はセクシー熟女だった彼女が好きだった。久々に観たらかなりお年を召して初老のご婦人になられていた。
主人公はある日、同僚に勧められた映画を観てると、劇中に自分と全く同じ顔の無名俳優アンソニージェイク・ギレンホール)を発見する。
‥という導入部。。かなり面白い最高の始まり方
ジェイク・ギレンホールが二役演じてるのだから「そっくり」どころでなく「全くもって同じ顔すぎる男」なのだから面白い。

昔、MIXIかなんかで友人が参加するクラブのイベントの告知を観てると、ミニマルテクノ系DJの写真が俺で「え‥何で俺の写真が‥」と焦ったが、そのDJのそのアー写一枚のみが偶然俺に似すぎてるだけで本人は全く似てなかった。
あと何かを画像検索してたら俺が知らんオッサンと肩組んで酔っ払ってる写真が出てきて「誰だこれ。いつ撮られたんだ?」と焦ったが全くの別人だった。それにしても着てる服まで同じだった。まあ只の偶然という事だ。
あまりにもどうでもよすぎる面白くもない話で横道に逸れてしまったね?
自分に似すぎてる人を見ると一瞬頭がくらっとなって焦るという話。

主人公アダムは自分と全く同じ顔のアンソニーが気になりすぎて電話する。
声も全く一緒みたいで、アンソニーの妻は電話で話したアダムが自分の夫だと思う。
アンソニーはアダムと会う約束をするが、アンソニーの妻は一足先に大学に行ってアダムに会いに行く。
あまりの似すぎ具合を目の当たりにしてショックを受けたアンソニー嫁は帰宅後「はわわ‥」という状態になって泣き出す。
この映画、面白すぎる
アンソニーは過去に浮気をしたことがあり、その事で妻は情緒不安定なようだ。
というかアダムに対するアンソニー夫婦の態度が少し変で、この映画がどうなるのか予想できず期待が高まる

待ち合わせた薄暗い部屋でついに会ったアダムとアンソニー
全く同じ顔。同じ身体。同じ声。
アンソニーは「お前、腹に傷がないか?こういうの」と言って腹の傷跡を見せる。
アダムは驚いた顔をする
アンソニー「あるんだな?お前の誕生日は?」
するとどういうわけかアダムは狼狽える。どうやら誕生日も一緒らしい。
「こんな事は良くない。僕が悪かった」と言って逃げ去ってしまう。
なんで?
アダムもアダム母もアンソニー夫婦は何かを知ってる様子。だが全然わからない
因みにメタ情報だがこの映画はミステリーサスペンスなのでクローンではない。
どどど どういう事?
もうこの映画への期待が高まりすぎて魔法がかかってしまい面白パチンコのチューリップが開いた状態になって、キャラクター達がただぼーっと椅子に座ったりその辺を歩いてるだけのシーンでも面白くて仕方なくなる。
もう気になって気になって仕方ない。
アダムは街を歩く巨大な巨大生物を幻視する。

何だこれ?!めちゃくちゃいいじゃん
だが街を巨大生物が歩いているのではなく、これはアダムの不安を映像化した「不安の立像」的なイメージシーン。

第三幕でスワッピング的状況になり一気にクライマックスになり意外なラストが提示されて映画が終わる。
このラストにはさすがにポカーンとしてしまった。
どういう事だかサッパリわからんと思いながらコーヒーを淹れて飲んで考えた。
とりあえずこれはSFではないのだから蜘蛛は本物の蜘蛛じゃなくて何かのメタファーという事と、冒頭の秘密クラブや夫婦の態度やお互いの傷跡や巨大蜘蛛の幻視とかのシーンが幻想的だったのがヒントだろうかと思った。
とか思うと、この映画はリンチの「マルホランド・ドライブとか「ロスト・ハイウェイみたいな構造の映画なんだろうと思った。お話し的には「アイズ・ワイド・シャット」か?
そんな結論に達した(ひょっとして違うかもしれないが他に考えられないしそうだろ)
要は主人公アダムの状況と脳内での感情の動きを劇映像化したものがこの映画だったんだろう。ややこしいのは恋人や母親はアンソニー嫁や母親は実在してたので、劇中起きてる事が全部リアルタイムで同時に起きてると思わされたからだろう。
だけど何か腑に落ちないというか。。
多分これで合ってると思うが「そういう映画だったのね」という快感がない。
監督に「君が勝手にそう期待してたんだろ」と言われたらそれまでだが、ラストでミステリーやサスペンスとして現実的に明快に謎が明かされる期待が膨らみまくってたので、こういう文学的な結末だったことに「ああ、そういう映画だったん‥?」と正直ガッカリした。
でも、この映画は少しズルいだろ。
もうちょっとリンチ映画やアイズ・ワイド・シャットみたいに「この映画は普通の構造じゃないですよ~」みたいなサインを出してくれないと(いや後から思うと結構出してて自分が気づかなかっただけの気もするが)
まあ面白かった事と画面のカッコよさと雰囲気の良さは確かだった。
ヴィルヌーヴ監督の他の映画も全部観たら氏への理解度が上がって本作への印象もまた変わるかもしれない。その頃また再見してみよう
 

 

 

そんな感じでした 『ボーダーライン』(2015)/巨大な暴力を目の前にした時の無力感と不思議な快感、同時に我にあり💀 - gock221B
『メッセージ』(2016)/異星人との触れ合いは楽しかったがそれよりもラストにあるSF要素にもっと時間取った方が良かったのでは?👽 - gock221B
『プリズナーズ』(2013)/この監督作でこれが一番おもしろい🧑🏻👨🏻 - gock221B
『ブレードランナー 2049』(2017)/デッカードを出さず前作との繋がりがない方が良かったような……🤖 - gock221B
『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)/最後の5分くらいまでリンチのデューンの方がマシだと思ってたけどラストは凄く良かったです🐛 - gock221B

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Enemy (2013) - IMDb

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複製された男 (ポルトガル文学叢書)

複製された男 (ポルトガル文学叢書)

 

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「シンクロニシティ(2015)」ブレードランナーっぽい雰囲気のバック・トゥ・ザ・フューチャーもしくはシュタゲ

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原題:Synchronicity 監督:ジェイコブ・ジェントリー 製作国:アメリカ 再生時間:101分

BGMはヴァンゲリス風のシンセサイザー流れまくりスモーク炊きまくりタバコ吸いまくりという80年代回顧趣味のSF映画
主人公は前髪の量が多いジャケット着たギョロ目系ハンサムだし、ヒロインは刈り上げ風味のショートカットの女性だし、敵はマイケル・アイアンサイド
劇中ほとんど夜もしくは昼間でも閉め切った暗い部屋にいつも居てブラインドの隙間から強くて白い光が入り込んでる。そして大きなファンがよく回っていがち
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この映画はタイムスリップ系SFものなんだけど、ハッキシ言ってそれよりこの80年代テイスト出しまくり美術&BGMの方に力が入っている。SFじゃなくこっちがメインだろう
まあ予告編を数秒でも観れば一発でわかるだろう。
映画ブログを始めるにあたって絶対に使わないぞと決めていた「映像がきれい」「ツッコミどころ満載」「おバカな」「カッコして(褒めてます)」等と同時に封印した形容詞を今回初めて使ってみよう。つまりこの映画は

雰囲気がいい

深夜にソファーで横になって観ながら途中でウトウトしながら観る‥それを二夜連続で続けて観ると気持ちよさそうな映画。結構好きでした
逆に言うとSF要素は結構ゆるゆるで曖昧なので、この見た目や照明やBGMなどの俗に言う映画の雰囲気が気に食わなければ面白くも何ともないだろう(しかしそれら映画の雰囲気も金かけて努力して意図的に作ってるので、雰囲気などという曖昧な言い方は使いたくない。でもいい雰囲気と言えばすぐ伝わるのであえて使った)。
予告編を観て、このノリを二時間以上観たいと思わない人は観ても暇なだけなので観ない方がいいだろう。


Story
主人公ジムと仲間二人はタイムマシン開発に執念を燃やしていた。
スポンサーである宇宙開発企業のトップ、クラウス(マイケル・アイアンサイド)を読んで実験開始。無事にタイムスリップのためのワームホールが開いたがジムは昏倒。
撮影していたカメラには人影が映っており、カプセルに入ったダリアが出現していた。
そして謎の美女アビーと知り合ったジムは、ワームホールが開いた事をクラウスに報告する。
しかし、その事が仇となりジムはクラウスの罠にハメられ、タイムマシン実験技術を全て盗まれてしまう。
ジムは、過去の自分に警告するため、タイムマシンで過去に戻る。
戻った場所は、数日前に実験してアビーと出会ったところだった。
そして「同一世界で同一人物が複数存在できるのは48時間だけ」という事が判明。
衰弱死に向かうジムはそれでも何とか、アビーの正体暴き、クラウスの企みにハマった事実の修正‥などに奔走する。
そういう話。

ジムが最初にワームホールを開けた時点から、複数のジムが同時に存在する時間が続き、後半までは整合性が取れててよく出来てるっぽいが、後半で「同一線上のタイムスリップではなく、並行世界の過去へ移動していた」とわかり一気に複雑化。
今現在の状況を脳内でまとめようとすると脳がショートしそうになりながら観た。
それにしても過去に行ったジムが仲間に自分の携帯に電話かけさせたら、過去のジムの携帯にかかって、未来から来たジムの携帯は鳴らないのは一体どういうこと?
全く同じ携帯なんじゃないのか?どうや違う時間から来た奴は時空の異物‥っていうか「質量のある幽霊」みたいな存在なのだろうか?
それにしても登場人物は皆、曖昧でカッコいい言葉遣いで話すのが可笑しい。
それは事情を知らないはずの各人が、矛盾やタイムパラドックスが起きないように気を遣ってそうしている様に見えて来て可笑しかった(言ってる意味わかる?)
‥というか文章で上手く説明するのが難しいし、そもそもこの映画観てない奴はもうこの辺読んでも意味わかねーだろう。そろそろこのページ締めるか‥

結局は、アビーの働きかけ(再び過去に行くジムに手帳を持たせる)によって、過去に行ったジムが過去アビーに働きかける事によって新しい世界線が生まれてハッピーエンドという事なんだろう。
そもそもタイムパラドックスものはどうしても矛盾するものだし、あまり細かく考えない方がいいだろう。
そして、途中やラストを見るにつけ、これはハードなSFノワールなどではなく君の名は的な、軽いSFテイストの恋愛映画と見た方がいいかもしれない。
惹かれ合うジムとアビーのバカップルの行動で、上手くいくっぽい世界線へ移動できたようだからね。。
全然傑作とか上手い映画ではないが結構好きかな。
とりあえず雰囲気がいい

そんな感じでした

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「カツシン さみしがりやの天才 (2014-2015)」全2巻/読者自身がおてんとさまになれて最高だったが最終回で一気にテンション下がった

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著者:吉本浩二 ↑1巻表紙を見て「何でせっかくの勝新の顔をフィルムで隠してるんだろ?」と思ったら2巻の表紙で「フィルムと仕込み二つの武器を対比させてたんだ」と気付く粋な表紙

手塚の漫画描いてブレイクした漫画家さんが勝新を描いてたの知ってさっそく読んだ。
勝新はもちろん好きだ(というか勝新嫌いな人がいたらそいつはものをよく知らないか頭がおかしいかのどちらかだ)
勝新って妖精みたい

1巻
「人たらしで可愛らしい人物」というのは有名だが僕は割と評伝とかあまり読んでなくて作品の印象からクールだったり厭世的なキャライメージなどを強く持ってたので「この優しい絵柄の漫画家さんで大丈夫だろうか」と思ってたが、この漫画家は勝新の暖かみのある部分にクローズアップしてて、それが作風にあってて良かった。
それが第一話で、さみしがりなので一人では寝れないという勝新がスタッフに延々とマッサージさせたり、ホテルの部屋に集まってたスタッフが帰ろうとしたら必死でビールをたくさん買って彼らが帰るのを防ぐ可愛い様子にかなりキュンと来た。
劇中のスタッフ同様、読んでいるこちらもキュンとなる。
大成功の第一話だった。
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中村玉緒とのエピソードでは、珠緒とのエピソードが出会いから死別まで描かれる。死の三か月前に手を繋いで並木道を歩いた話が素敵すぎた(後述するがこの回を最終回に持ってくればよかったのに‥)
動画でよく見かける勝新ファンの画家バルテュスとの触れ合いの詳細も知れたし

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勝新が亡くなった事を妻から聞かされたバルデュスが、自室に帰って市の着物を抱いて半泣きで座頭市を観賞するコマとかも最高だった。
何より全体的に人好きだが、映画の事が好き過ぎるという描写が最高だった。
春日太一の回では「勝新は天才ではなく我々凡人の延長線上にいる努力の人」というのも良かった。
原田美枝子の巻に至ってはもう全てがヤバかった。一番好きな回。
ドラマ版座頭市原田美枝子が出た有名な二篇について語られるし、勝と原田の触れ合いがいちいち最高。
自分と原田の中に個別の孤独を感じていたという逸話が深みを感じさせるし死の前に原田に言った謎の言葉も、謎めいたイメージが少ない勝新にミステリアスさがぐんと増えて良かった。
最初は「面白いけどこの作家、全部手癖で描いて人の顔を似せようという気があまりないし似てないなぁ」と思って読んでたけど、読んでるうちに1巻の後半くらいで勝新だけは凄くそっくりに見えてくる。
春日太一勝新がのりうつったように描いてるうちに作者にのりうつったんだろうか
 
2巻
兄弟分のニューラテンクォーター社長の話。これはかなり良かった。
「遊びには無駄がねぇな‥」という台詞はかなり勇気づけられるものだった。
次に、作者は「独眼竜政宗」の大ファンだけあって、渡辺謙の正宗エピソードは前後編で念入りに描かれる。恐らくこの章が描きたくてこの企画を始めたんだろうなと思った(そしてこの渡辺謙と次の話の松田優作は他の人物より凄く似せている)
この撮影まで二人は一切会わず、勝新がアドリブしまくりな上に絶対にNGが許されないぶっつけ本番だったという有名な小田原参陣シーンが語られる
後編も勝新渡辺謙にこっそり告げた「主役俳優の極意」が語られる。
松田優作松田美由紀の回。この回は優作よりむしろ勇作の死後「松田優作の嫁さん」としか扱われてなかった松田美由紀に優しくし続けて彼女を一人の人間として浮かび上がらせたり「俺たちの死んだカリスマ松田優作さんの未亡人aka聖女が優作以外の男と付き合うなんてとんでもない!」と周囲に次の恋を次々と潰されてたところを勝新が救うエピソードもよかった。


最終回
最後は、事件を起こして女優を引退した長女と、事件を起こして勝新付き人になり役者になると同時に例の事件を起こした長男が語り部となった最終回。
長女と長男そして勝新本人が事件を起こし続け、勝新が死ぬ。
ここまでの華やかで面白すぎるエピソードではググーっと必要以上に引き込まれてハイテンションで感動させられ続けたが、この最終回は事件の数々の内容には突っ込まずササーっと義務的になぞって、作者は今までの様に「暖かい勝新、芸事が好きな勝新」を中心に良い話として着地させようとしているが今回だけは一切良い話として盛り上がらず、異常に寂しい雰囲気で死んでいって終わってしまい凄くモヤモヤした。
事件を色々なぞる長女は顔を伏せて無表情で、事件も全部1コマで義務的に済まされる事からインタビューしたはいいが使えない話だったんだろうなと思った。
長男の方は、誰が聞いても不透明すぎる例の事件の事もあるし「姉は見舞いに殆ど来ませんでした。死後に墓参りはよく行ってます」「『病室に仕込み杖を隠し持ってた』という伝説がありますが、ありはしませんでしたよそんなものは笑」などと言うのでテンション下がった。
別に「ファンの夢を壊すな」などと言いたいわけではなく「それ、どうしても言わないかんか?」という感じ。「俺が聞きたくない」からじゃなくて「サービス精神の塊の勝新は、そんな事言って欲しくないんじゃないか?」と思ってしまう。
ちなみに長男に「たまには見舞いに行けよ」と言われた長女は何故か無表情。
何か言えない事もしくはインタビューで聞いたけど書けない事とか色々あるんだろう。こないだ話題になった「ド根性ガエルの娘」を思い出す。
とにかく描写している事よりも、描写していないコマとコマの間から「色々あるんだろうな」という何かが臭いすぎてる。この匂いは嗅ぎたくないんだよな。描けないなら全部カットすべきだった。
勿論いい話だなという箇所も少しはあるのだが、この上手い作者が全力で描いてこの程度なので、実際にどういう感じだったのかとか、あまりいいインタビューじゃなかったんだろうなと推測できる。
最初から前回の松田優作松田美由紀の回まではテンション最高潮で一気読みしたが、この最終回だけテンションめっちゃ下がって本を閉じた。
何というか一気に読んで来てこの最終回読むと勝新だか何だか知らんが辛い現実には勝てない」「何だかんだ言って真面目に生きないとダメ」という勝新から遠く離れた、夢も希望もない感想が浮かんできてしまうのだ。
というか、この長女と長男を語り部にして最終回に描くのは無理があるだろ。
推測だが作者と編集者はそう思いつつも子供達を最終回に持って来て、それを更にカツシン力で超えて勝新とその周りの人々の業を昇華させて素晴らしい結びにしようとしたのだろう(そして失敗した)
中村玉緒と桜並木を一緒に歩いて死ぬ第二話が最終回なら。。というか殆どの話で勝新の死は描かれてるので他のどの話を最終回にしても盛り上がれるのだが。。
勝新の、その業ゆえに最後の最後が微妙な感じで終わってしまう‥という本作自体も勝新っぽさを体現してるといえば、そう言えなくもない。そんな風に無理矢理褒める方法はいくらでもある。でもまあこの最終回は単純に失敗だと思う

そんな感じでした

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天才 勝新太郎 (文春新書)

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俺、勝新太郎 (廣済堂文庫)

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