gock221B

映画やドラマの感想ブログ 😺🐱 殆どのページはネタバレ含んだ感想になってますので注意 😺 短い感想はFilmarksに https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)/犬アクションが特に良かった。理不尽な掟に苦しむジョンがキアヌ本人に見えて輝きが増した🧔🏻🐶


原題:John Wick: Chapter 3 - Parabellum 監督&製作総指揮:チャド・スタエルスキ 脚本&キャラクター創造:デレク・コルスタッド 製作国:アメリカ 上映時間:130分 シリーズ:「ジョン・ウィック」シリーズ第3作目

 

 

同日公開の「ジョーカー」を観る予定だったけど劇場まで行くと何となく自分があまり好きにならない気がして(というかジョーカーのオリジンとか別にどうでもいい)ジョーカーはまた今度にして安定のこっち先に観ることにした。
キアヌ・リーブスの「マトリックス」シリーズの主人公ネオ以来の当たり役となった「ジョン・ウィック」シリーズの、「アベンジャーズ エンドゲーム」の連続首位をストップさせたのがシリーズ三作目の本作。
マトリックス以来に当たった」とよく言われるが、それは「映画を年に一回観るか観ないかという人でも知ってるような大ヒット作」という意味であって、キアヌ氏はずっと途切れずに映画出続けてたし〈不老不死キアヌ〉〈Sad Keanu〉などのネットミームでも親しまれ絶えず人気者だった印象。
今年も期待度されているゲーム「サイバーパンク2099」への出演や、MCU作品への出演も常に噂され続けてるし「ビル&テッド」シリーズの数十年ぶりの続編も控えてるし、どっちかというと昔より今の方が全盛期という気がする。
このシリーズ。チャド監督の本職はスタントマンだったしキアヌは何ヶ月もかけて射撃訓練や実践訓練をしておりジョン・ウィックの銃撃や殺し方はかなり実践的(というか実物のキアヌ本人も相当強い気がする)、ガンアクションに対して興味ない僕でも、近接格闘技と至近距離での銃撃を組み合わせたガンフーや、ちゃんと弾切れ少し前にリロードする場面、胸に数発‥顔に数発‥と急所に何発も撃ち込んで確実に殺すアクションが凄く新鮮だった。
その様に戦闘描写は実践的なのに対して、このシリーズの世界観や犯罪組織の仕組みはアニメやおとぎ話のように幻想的かつ現実離れしたもので、そのギャップも魅力となって人気シリーズになった。
割とネタバレあり。銃のことやアクションについては詳しくない

 

 

亡くなった愛する女性が遺した愛犬が殺され車も盗まれたことを切っ掛けとして、裏世界に舞い戻ったジョン・ウィックキアヌ・リーブス)。彼は〈バーバ・ヤーガ〉の異名を持つ伝説の殺し屋だった。
犬を殺したギャングを皆殺しにして車も取り返し、新しい犬と出会った。
二作目でジョンは愛する妻と暮らした家を爆破される、その後いろいろあって殺し屋の絶対中立地帯〈コンチネンタルホテル・ニューヨーク〉内で殺しをしてしまった。
それはジョンが所属する暗殺者組織〈コンチネンタル〉や更に上位に位置する巨大犯罪組織〈主席連合〉の堅い掟を侵した事となり、ジョンは裏社会から除名されて賞金がかけられ、全世界の暗殺者から狙われる事となった。
早い話が完全に抜け忍もののストーリー。「カムイ外伝」みたいなもんだ。
毎回、前作のラスト直後から始まるのだが本作もまた、コンチネンタルホテルNYを脱出して雨の中を走るジョンと愛犬。ジョンは図書館で首飾りやコインを入手する。これらのアイテム〈誓印〉は「かつての借り」を物質化したもので、これを借りがある相手に渡されたら借りを返さなければならない、これもまた組織の掟。映画的にも誓印を出せば面倒な段取りをショートカットして共闘シーンにスムーズに移行できるわけだね。
図書館で本を使って大男を斃す格闘戦、隠し武器倉庫でのナイフ戦、馬小屋で敵を馬に蹴らせたり馬で道路を疾走するチェイスなど、かなり面白い。
隠し武器倉庫ではナイフをゆっくり敵の眼に刺して殺したり、投げナイフで敵を針山みたいにして殺したりと尊いシーンが連発されて良かった。
ジョンは、暗殺者とバレリーナの育成をしている育ての親(アンジェリカ・ヒューストン)の元を訪れ、次に〈コンチネンタルホテル・モロッコ〉に行き愛犬家暗殺者ソフィア(ハル・ベリー)に会う。
師匠の所行ったのは‥何だっけ?何か焼印おされてたような‥忘れた。とにかくジョンは、かつての知り合いに次々と会って〈誓印〉で自分の助かる手助けをしてもらっている。ソフィアと組んだのは、ジョンが全ての犯罪組織の頂点に位置する〈主席連合〉のボスに会って自分の賞金を取り消してもらうため‥に、ボスの居場所を知ってる犯罪の大物の所に行くため。
ソフィアは、犬や家族を大事にしてる事も含めてジョン・ウィックの女性版って感じの、今後も出てきたりスピンオフで主役を張る事もできそうなキャラ。大事な娘は組織の手にあるという伏線も解消せずに出番終わったし。
ハル・ベリーと言えばセクシーだし好きだが、昔から何かアクションめいた事をするとめちゃくちゃドン臭い(アクションしたら妙にモタモタした動きになる印象)動きがダサい女優ってイメージだったが、凄くトレーニングしたのか本作でのアクションはキビキビしてカッコよかった。女性だけあって接近戦ではジョン・ウィックほど強くないが、その差は多頭飼いしている愛犬が埋める。犬が噛み付いて敵の動きを止めてソフィアが撃ち殺したり、ソフィアが敵と取っ組み合いになってピンチになると噛み付いて助けてくれる‥といった銃撃+犬の攻撃が凄くよかった。どうせならラストまで出てほしかった。
誓印の借りの分は返したソフィアはここで出番は終わり。今から砂漠を横断するジョンに渡すペットボトルの僅かな水を全部口に入れてクチュクチュしてペッと吐き出して渡す‥という意地悪をするのだがハル・ベリーなので観てて興奮した。
ジョンは砂漠に居る主席連合のボスに会えるが、賞金首を取り下げる条件としては、主席連合に忠誠を誓うこと、指詰め、そして今まで自分を幾度となく助けてくれたコンチネンタルホテルNYオーナーのウィンストンの暗殺だった。
ジョンを追っているのはそこら辺の底辺暗殺者だけではない。主席連合から送り込まれた〈裁定者〉と名乗る女性幹部、そして今時きゃりーぱみゅぱみゅにんじゃりばんばん」が鳴り響くSUSHIバーの板前暗殺者ZEROとその配下。
再びNYのコンチネンタルホテルに戻ったジョン。そしてジョンを追う裁定者やゼロ達。一体どうなってしまうのか。。

 

 

ちなみに普段はSUSHIバーで板前をしているスキンヘッドの〈ゼロ〉という暗殺者は「アベンジャーズ エンド・ゲーム」のホークアイ並に聞き取れない日本語を話すのでひょっとして日本人という設定なのかな。このアクション俳優はアメリカ版「料理の鉄人」で「鹿賀丈史の甥」という設定でMCをしていたらしい、だから寿司屋の大将キャラも料理つながりなんだろう。
Iron Chef America - SECRET INGREDIENT - YouTube
ゼロが裁定人の頼みを聞く代わりに生のフグを彼女に食わせて、彼女の度胸を確かめるというハッタリシーンも何か意味不明だったな。フグ毒に度胸もクソもないし、そもそも他人を試す行為とか仕事に度胸とか意味わからんもんを絡ますのとか全体的に苦手。まぁ、だからジョンに滅されたのか。
終盤、ジョンがコンシュルジュと共に暗殺者集団と銃撃戦をする。ここも楽しかった。
暗殺者達は防弾アーマーを着ているので普通の銃撃は効かない。ジョンは超至近距離で何発も撃ち込んだり、アーマーの隙間を撃ったり、フルフェイスの面を開けて顔を撃つなど、かなり工夫して倒す。過去作では家屋内などで接近戦を強いられたが本作では「硬すぎるから」という理由で接近戦になった。銃で闘ってるのにも関わらず殆ど格闘技してるくらいの接近戦を強いられてるのが面白い。ジョンとコンシュルジュは「これじゃ拉致があかない」とばかりにホテルの安全地帯に戻ってきてアーマーを抜けるショットガン等の火力の高い武器を武装し直して再度闘いに赴く。この「安全地帯に戻って武装し直して再戦する」という流れが凄くゲームっぽい。
最後は、ゼロ一派との接近戦。ゼロは武術に長けた人だし、ゼロの部下は「ザ・レイド」の人なので、ジョンは押され気味。押され気味というよりも明確に2回くらいガチで負ける。だけど「トドメを刺さず、起こしてくれて再戦」などの舐めプでジョンは死なずに済んだ。恐らくゼロがトドメを刺したがってるから部下は殺しちゃいけないって事になってたんだろう。それにしてもゼロの部下ごときにジョン・ウィックが2回も負けてしまうのは「レイド」の人に見せ場を作ってあげたな~と感じた。「スター・ウォーズ」シリーズがレイドの人をすぐ死ぬ泥棒役にしたりゲームオブスローンズの大きい女優をしょうもないファズマにしたりして「SWは他で活躍した人を飼い殺して人気落とすために起用したのか?」って感じなのに本作では「こいつらは格闘ならジョン・ウィックより強い!」って、凄いサービスだな。
ジョンは接近戦では彼らに勝てなかったが殺しの総合力で上回り逆転する。

 

 

製作者は楽しいアクションだけでなく「ジョン・ウィックを苦しめ続ける」ということに心血を注いでいる。またヤクザ映画じみたハッタリの効いた制裁やケジメの付け方描写などを本シリーズの推進力にしていて、それが人気の元であるのだが、本作はそういったハッタリ描写が過去作より更に多い。
ジョンは同業者に〈誓印〉で頼みを聞いてもらう。〈誓印〉を見せられたら頼みを聞かなきゃいけないのだが、ジョンのように掟を破った者の頼みをきけばそいつも制裁を受けることになる。だからといって誓印を見せられての頼みを断っても掟を破ることになるらしく理不尽だ。掟を破った者の借りは返さなくてもいいようにすれば?と思った。そもそも「こんな何やってもストレスばかりかける組織、立ち行かないだろ」と、たまにアホらしくなったりもするが、それはこの現世の上の者だけ得して下々の我々は痛い目を見るという理不尽さを表現してるのかもなと思った。
コンチネンタルホテルNYの、ジョンと旧知の仲であるオーナーのウィンストンやコンシェルジュシャロンローレンス・フィッシュバーン演じる情報王バワリー、序盤で出たジョンの育ての親など、ジョンを手助けした者は、それぞれ主席連合が派遣した〈裁定人〉によって制裁を受ける。
特に、前作ラストで旧友ジョンをわざと逃したコンチネンタルホテルNYのウィンストンは、ジョンを殺さないと抹殺されてしまう事になった。そしてジョンもまた主席連合に「ウィンストンを殺せば許す」と言われている。「勝った方を許す」という事か。
ジョンとコンチネンタルホテルは、とりあえず派遣されてきた暗殺者達を共闘して倒す。
ジョンだけでなくジョンを手助けした者たちも軽い制裁を受ける。アンジェリカ・ヒューストンは両手を剣で貫かれるし、情報王バワリーは顔や胴を斬り刻まれる。劇中では描かれなかったが大物を痛めつけてしまったソフィアも恐らくジョン同様の逃亡者になったと思われる。
ジョンもまた頼みを聞いてもらう度に、焼印を押されたり撃たれたりと指詰めしたりしなかやいけなくなって、何かもう偉い者だけ得して庶民は消費財が更に上がって苦しむ自分たちみたいに見えてきてジョン達が可哀想になってきた。
それらの、ストーリーを推進させるための痛めつけられ描写は素晴らしい戦闘シーンの合間に入る。甘いものとしょっぱいものを交互に無限に喰い続ける女子みたいにストーリーは進むが、ラストは痛めつけれるターンで終わるのでムカ~としたストレスたまった状態で終わった。
既に4、5作目も作られるのが決まってるし今後はバワリーやソフィアと手を組んで主席連合と闘っていく感じか。それにしても主席連合を倒したら話が終わっちゃうのでそれは置いといて、裁定人くらいは本作でさっさと殺してほしかった。すごいムカつくんだよな‥。
ラストのウィンストンだが、あれは「ああいうやり方でジョンを逃した」って事なのかな?と自分は受け取ったがどうなんでしょうね。ジョンを崇拝してるコンシュルジュも「お上手」って言ってたし‥。

🐾なんか荒くても面白くもない感想になっちゃったけど映画は普通に楽しかった。
今回は序盤の武器倉庫戦とハル・ベリーの犬アクションが特に好きだったかな。ちょっと今回はキアヌやキアヌを助けた人らが痛めつけられる割合が多いしやられて終わったのでストレス溜まって帰った。次はジョン側がやり返す割合を多くして欲しい。

※追記:そんな感じで「アクション凄いし頑張るキアヌが観れるのは嬉しいけど、ストーリー無さすぎてジョン・ウィックはもうそろそろ充分かな‥」という覚めた感想だったが「ジョン・ウィックはキアヌそのもの」って趣旨の、人様の記事を見て「そう言われてみたらそうだな!」と思った。「愛する妻をなくした」とか「昔、伝説の殺し屋(マトリックス)だったが蘇った」とか、確かに色んな要素がキアヌそのものだ。何でこの見方してなかったんだろ。そんで、それらを踏まえて本作でジョンが、どんな酷い目に遭っても生き延びようとする理由が「自分が死んだら、死んだ妻の記憶がこの世から消える」という理由だったことを思い返すと本作の評価がガーンと上がり、自分の中でジョン・ウィックが再点火して輝きを取り戻した。4と5が楽しみだ。

 

 

そんな感じでした

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🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫🧔🏻🐶🔫

John Wick: Chapter 3 - Parabellum (2019) - IMDb

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『レディ・バード』(2017)/”レディ・バード”という仮面が生まれて消えるまでの一年間。そのレディ・バードが消えた場面が好き👩🏻‍🦰

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原題:Lady Bird 監督&脚本:グレタ・ガーウィグ
制作&配給企業:A24 製作国:アメリカ 上映時間:94分

 

 

 

「フランシス・ハ(2012)」の主演などで知られる女優のグレタ・ガーウィグが、自身の生まれ故郷を舞台に撮った半自伝的な映画(しかし現実のグレタはもっと髪も染めない真面目な少女で、本作の主人公レディ・バードは「自分がこう過ごしてたらどうだったかな」という空想も加えたらしい)。
主人公は監督に顔立ちがよく似てるね(というか映画監督の多くは自分に顔や雰囲気が似た俳優を主演にしがちだよね、デヴィッド・リンチとか黒沢清とか)。
長編映画二作目(というか殆どデビュー作みたいなもの)ながら多くの賞を受賞してアカデミー賞にも5部門ノミネートされた。

 

 

 

🐞2002年、カリフォルニア州サクラメントカトリック系高校に通い〈レディ・バード〉という異名を自称する女子高生クリスティン(シアーシャ・ローナン)。
大学進学にあたって憧れのニューヨークに進学したがっているクリスティン‥いやレディ・バードは、地元に残ってほしい母親(ローリー・メトカーフ)と口喧嘩ばかりしているが、何だかんだ言って親友と楽しくやっている。

🐞レディ・バード/クリスティンは、母親と何時も喧嘩しており、また裕福でない実家や厳しいカトリック系高校や町に閉塞感を感じており、そんな何もかも思い通りにいかない「自分」とは「別の自分」になりたい想いからなのか髪をオレンジ?だかピンクだかに染めて異名「レディ・バード」を自称し、それを家族や学校でも「レディ・バードと呼んで!」とグイッと押し出している。 「自分」自身として生きるのは上手くいかない、だから「レディ・バード」というキャラクター?仮面?を一発かます事によって快適に青春をやり過ごそうという感じ。何も思い通りにいかない10代だから「せめて自分の名前は、いつも喧嘩してるママじゃなくて自分が付けた名前で呼ばれたい」ってことかな。そして気になる男子やカースト上位の女子と仲良くなりたいと思ったらグイグイと行くし、かなり積極的な女の子。映画冒頭は、ママと車中で口論になって癇癪起こして飛び降りて腕を怪我するところから始まる(だから本編の殆どで腕にピンクのギプスをしている、これを付けてる間がレディ・バード期だ)。

🐞病院で働いている彼女のママ。ママが何でここまで口うるさいのかって理由は最後に明らかになるのだがレディ・バードは産まれてこの方この唯一人のママしか知らないので「ママはガミガミ言ってばかりだしきっと私を憎んでるんだ」としょっちゅう口にする。と言っても恐らく本気で言ってるのではなく、若い子供が親にしても許される程度の甘えを口にしているだけだと思う。ママも、いつも口うるさい訳ではなく時には一緒になってキャッキャはしゃいだりレディ・バードが失恋して泣いたら「あらあら」ってハグしたりもするし普通に仲が良い。とりあえずママはクリスティンが可愛いから厳しくしてる、というのは始まってすぐわかる。レディ・バードが初体験した直後ママに「私って、いつ頃になったらSEXしてもいい?」と訊くとママは「何?もうやったの?」とお見通し。ママとレディ・バードの関わりは本作の一番大きな部分。

🐞パパは物静かでレディ・バードに優しい、何歳なのかわからないがママよりも更に年上で初老寸前くらいに見える。だからなのか、レディ・バードはパパと仲良くしつつも同級生にパパを見られたくないと薄っすら思っている(そしてそれをパパもわかっている‥)。パパは家族に優しいがお勤めや精神状態が上手くいっていない。

🐞フリーターの兄は養子らしい(それもラストになると状況がわかってくる)、恋人をを実家に引っ張り込んでいる。

🐞親友の大柄女子ジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)。観てる間「この子ジョナ・ヒルに似てるな~」と思ってたが、実際ジョナ・ヒルの妹だと教わった。顔もそうだが太り方や演技まで似てる。ジュリーとレディ・バードの友情もまた重要な要素。

🐞レディ・バードは同じ演劇クラブにいる気になる優しい男子ダニー(ルーカス・ヘッジズ)と付き合い始めたり、その後アナーキストの尖った美少年カイル(ティモシー・シャラメ)と付き合ったりもする。この恋愛要素も本作のピースの一つだ。‥とは言え、これらの恋愛要素は彼女自身のママや友情や人生に比べたら極ちっぽけなものとして語られている。自分は男なので「女性からしたら終わった男なんてこんなもん」という感覚に触れられたのは貴重だった。

🐞レディ・バードは大柄の親友ジュリーがいるが、クラスメートのカースト最上位っぽいセクシーお嬢様ジェナ(オデイア・ラッシュ)と友達になる事に成功する(そうなると大柄女子とギクシャクする)。このジェナは僕が嫌いな結末の映画「グースバンプス モンスターと秘密の書 (2015)」のヒロインだった子が演じてる。昔よりも顔つきや身体つきが出来上がりすぎていて、そんな彼女が日焼けしてカトリック系スクールガールの制服をミニスカにしてる格好は単純に凄いエロい。全裸や下着よりも服着てるほうがエロいとすら思う。

🐞レディ・バードの周りはそういう感じ。
で、彼女はニューヨークの大学に行きたがっているが彼女の家の思わしくない経済状態と、娘を手元に置いておきたいママの存在がそれを困難にしている。
そんな彼女の家族、友情、進学、学園生活、恋愛‥など高校最後の一年を描いた青春映画。

 

 


🐞膨大な脚本を書いて大幅に削ぎ落としたためか凄いテンポ良くパッパパッパ進むので気持ちがいい。ステレオタイプの青春映画だったら念入りに描きそうなドラマチックな場面はダイジェストみたいに秒速で済ませて、それ以上の日常をじっくり描いてるのがクール。
ボーイフレンドが出来た→彼氏優しい→キスした→家族に紹介→だが彼がゲイって事が発覚→親友の大柄少女の前で泣いてる→「もう別れたわ」→仲直りして男友だちになる‥‥といった流れが10分くらいで済まされて、普通のよくある‥ヒットさせたいだけだったりクライアントに言われたから作ってるだけの青春映画だったら失恋の描写をダラダラダラダラやりそうなところだが、本作では数秒で済ませてしまう。「そんな扇情的なクソじゃなくて私は良い作品が作りたいんだ」という監督の意気込みが伝わってきた、だから気持ちいい。
それと「こういう尖った主人公の青春映画って、主人公がイタい失敗ばかりしそうだし共感性羞恥(恥かいてる他人を見て自分の事のように感じて苦しむ現象)を感じて辛そうだなぁ」と敬遠して観るのが遅かったのだが、実際観ると確かに「レディ・バード」を自称して周囲にも呼ばせたり見栄のために嘘ついたりバレたり等のイタい場面はあるが、僕が観る前に懸念していたような「うわ‥恥ず‥」と死にたくなる程のキツいものではなかったので良かった。イタさがあまりに過剰だと共感性羞恥と同時に自分の過去の恥ずかしい言動や失敗も同時に思い起こされて居たたまれなくなるから苦手だわ。ここもまた「扇情的にイタい主人公を笑おう」というよくあるノリではなく「10代だからこれが普通やろ」って感じで誠実に描いてる感じでむしろ良かった。
つまり、そういった感じでこの映画は面白いだけでなく、全方位的に誠実で丁度いい。
シャラメ君演じるマイペースすぎるカイルと、損得勘定で交友関係を選択するセクシーお嬢様ジェナは、どっちかというとレディ・バードと真の恋愛や友情を育むわけではない、よくあるフィクションなら「最低の同級生」として描かれがちなキャラではあるが、彼ら彼女らも別に悪人というわけではなく、現在のレディ・バードとは志向や波長が合ってないだけの人物として描かれる。数年後や町に帰ってきたレディ・バードと真の親友や恋人となってもおかしくはない。人生とはそういうもので、一人の波が高くなったり低くなったり‥その波長が合えば仲良くもなるし仲違いもする。彼らを「ただの嫌な同級生」として一面的に捉えて描くのではなく生きた人間として描いていて、ここもやはり丁度いい。彼らも今この時がこんな感じなだけで将来素晴らしい人物になる可能性も十分有り得る。というか多分そうなると思う。トニー・スタークもアイアンマンになるまでの長い期間は全く良い人物ではなかっただろ?
そういった誠実な人物描写は、別の青春映画「スウィート17モンスター (2016)」でも見られたし、こういった描写こそが現代の青春映画という感じがする。同時に嫌なやつを只の嫌なやつとして描く映画をグッと「昔の一面的で主観的な映画」に追いやった。
そんな感じで実に色んな事がありつつ、しっとり感動するラストで終わる。
レディ・バードは「こんなクソ田舎!」と何時も不満に思っていたが卒業間際、学長のシスターに「貴女って、このサクラメントという町を愛しているのね」と言われる。そこで「レディ・バードは逃げてばかりいたわけではなく実はつぶさにサクラメントの町や周囲の人物や自分の人生を真正面から受け止めていた」事がわかる。いわばレディ・バード自身がまだ気付いていなかった「本当の自分」が彼女自身に帰ってきた場面とも言える。彼女が自分自身に追いついたのだろう。「自分探し」なんて、しょっぱい無駄な事もせず必死に生きた結果こんな若くしてそれに気づけたんだから偉いよね(俺なんて、それが35歳くらいまでかかった)。
そして町を出た後、彼女は〈レディ・バード〉という仮面が必要なくなったので自然と元の〈クリスティン〉に戻る(個人的にここが一番感動した)。だから、これはクリスティンが作った〈レディ・バード〉という仮面が生まれて消えるまでの一年間を描いたお話と言える。
何時も仕事しながら車の助手席に乗せてくれてたママ、そのママが居た運転席に座りサクラメントを走ってママが見た町の景色を見るクリスティン。クリスティンは何時も口うるさかったママがどんな想いで自分を乗せてたのか感じながらサクラメントを走る。ママも見ていたであろうサクラメントの景色は美しいものだった。
‥この辺の、クリスティンやママの心の内を一切台詞にせず映像一発で見せてくれるあたりも良いですね。
この映画の他人の感想やレビューを見てみたが、ストーリーは素朴だけど情報量が多いせいか性差や個々人の環境が違ったせいか、人によって感じる部分や好きな場面が全然違うなと思った。というかこれほど他人の感想聞いて「え、君そこ?」と違和感を感じる映画も珍しいというか。僕の場合‥クリスティンが全編いろんな事に正面から当たっていってるところが良かった‥けど、そんな大掴みな好きなとこじゃなく、一番ぐっときたシーンで言うと‥大学に入ってレディ・バードじゃなくクリスティンを名乗った瞬間でしたね。そんな僕の感じ方も人によっては「え、一番良かったのそこ?」と思われて共感されないのかもしれない。だがそれが人間それが社会ですから、それでいいんだ。というか、そもそも共感なんてどうでもいい。ただ色んな人が居て色んな考え方をしているって事を全人類が常に強く思っておかないと駄目だと思う。そうでないと世界平和だとかSTOP環境破壊なんて夢のまた夢だ。自分さえたっぷり飯が食えればいい、だなんて、そんな考え方はクソだね。
とりあえず各々、お母さんの気持ちを考えるところから始めよう。

🐞この監督&主演女優コンビは今年のクリスマスに「若草物語」の映画化「Little Women (2019) - IMDb」を公開するらしい。主人公ジョーはレディ・バード。本作で尖った二人目の彼氏を演じたシャラメ君とか、二代目ブラック・ウィドウになりそうな俺が応援してるフローレンス・ピューさんも出る模様。エマ・ワトソンメリル・ストリープローラ・ダーンも出る。まだ未知数だけど予告を観た感じだと本作に似てるし順当に行けばグレタ監督はこの三作目にしてヒットメーカーの仲間入りすると思われる。日本公開は未定だが、まぁ絶対公開する要素しかないからするだろう(邦題は英語のままの予感)。
LITTLE WOMEN - Official Trailer (HD) - YouTube
このグレタ監督は1~3年後に配信されると思われる、キャプテン・マーベルに憧れるイスラム系女子高生がスーパーヒーローになるMCUドラマ「ミス・マーベル」の監督して欲しいなぁ。そうなんないかな。

 

 

 

そんな感じでした

グレタ・ガーウィグ監督作〉
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)/どの映画にも一つある「この良い場面1個あったからまぁ良かった」と思うような良いシーンが全編続く映画👩👱🏻‍♀️👩🏻‍🦰👱🏻‍♀️ - gock221B
『バービー』(2023)/面白かったし良作だったが最後に台詞で映画のテーマを全部まくしたててしまう場面だけ醒めた。ミームを始めとする映画外の話題の方が長くなった👧🏼👱🏼 - gock221B 

👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰👩🏻‍🦰

Lady Bird | Official Movie Site
Lady Bird (2017) - IMDb

www.youtube.com

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「サスペリア (1977)」いつも困った顔の、か弱い少女と思ってた主人公がイーストウッドやランボー並の尋常じゃない強さで敵を皆殺しに!🔴

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原題:Suspiria 監督&脚本&音楽:ダリオ・アルジェント 脚本:ダリア・ニコロディ
制作総指揮:サルヴァトーレ・アルジェント 制作:クラウディオ・アルジェント
音楽:ゴブリン 製作国:イタリア 上映時間:99分 シリーズ:魔女三部作

 

 

 

本作をリメイクした「サスペリア (2018)」をレンタルしたんだが「そういえばオリジナル観てなかったな」と思ってリメイク観る前にこっちも借りて観た。
※追記:この感想書いた後日にリメイク版「サスペリア (2018)」も観て、良い部分もあったけど90分で終わる話を二時間半に引き伸ばした印象でイマイチだった。感想も面白い感想にならなさそうなので書くのはやめておく。
定番ホラー映画の一本なのにも関わらず、何で観てなかったんだろ。
というかアルジェントの映画ほとんど観てない。たぶん自分はホラー映画には写実的なルックを求めてて、本作はアルジェントのドギツイ色彩のファンタジー感あふれるビジュアルとか作家性がクセありすぎて、そういうのってハマったらたまらないんだろうけど二の足を踏んでたのかもしれん。ジョジョ刃牙や福本漫画や山口貴由を絵柄で敬遠する感じか。
実際観たら面白かった!
本作の後作られた「インフェルノ (1980)」「サスペリア・テルザ 最後の魔女 (2007)」と合わせて魔女三部作らしい。そういえば「サスペリア・テルザ 最後の魔女」を10年前観たっけ‥めっちゃ面白くて好きな映画だったが何故か他のアルジェント映画一切観てない。いや、本作の続編ではないが続編のように見せかけて内容一切関係ない「サスペリアPART2 (1975)」も観たわ。アルジェントはその2本しか観てない。
40年以上前の映画(!)なのでネタバレありで。。

 

 

🔴👯‍♀️🔪🐕🔴

 

 

映画が始まると即ゴブリン(プログレのバンド)の曲が流れる。
Suspiria by Goblin on Spotify
名称わかんないけどホイミーみたいな音色のヴンヴンいってる楽器の音がかっこいい。この映画の三分の一はゴブリンの音楽で出来てる印象(残りはアルジェントと主演女優)。ゴブリンは本作と同じく「サスペリアPART2」「フェノミナ」「ゾンビ〈ダリオ・アルジェント監修版〉」などでもサントラを担当してる。
そして如何にもアルジェント如何にもイタリアンホラーって感じで極彩色の画面と、急激なドアップなど、全体的にクセが強い。そ-いうのはあまり好みではなかったがいざ観てみると良いですね。でも、どうせ観るなら思春期の時に観たかった感じの映画。

バレリーナ志望の少女スージージェシカ・ハーパー)は、叔母の紹介でドイツのバレエ学校に入学するためニューヨークから飛行機でやってきた。
空港の中、カメラがスージーの主観視点になって空港の出入り口に近づくとゴブリンの曲が流れる。客観視点に切り替わってスージーを正面から捉えると音楽は止む、また切り返しで主観視点になるとゴブリンが再び流れる。いよいよドアからドイツに足を踏み入れる段になると自動ドアの平開機構が突然ドアップになるので「何や!?」と思うが何も起こらずスージーはただ外に出るだけ。外気がブワアアッと突風となってドラマチックにスージーをなぶる。そして一瞬また自動ドアの平開機構がドアップに!一瞬だけ。直接的な意味はない。どうやら「観ている我々の世界と地続きの普通の世界だった『ドイツ以外の場所』からドイツに入ってきた、この時点でスージーは一度動き出したら止めることの出来ない何かに巻き込まれた。何かが始まりますぞ御期待あれ」という感じを演出してるんだろうと思った。一言でいうとジョジョのゴゴゴ‥みたいな「嫌な予感」ってやつか。だが嫌な予感というものは決して外れはしない、またぞろ出てきて‥酷いことをするのよ。
土砂降りの中、真っ赤なバレエの学園に到着するが入り口では取り乱した女生徒が「秘密よ!」「ドアの陰!」「3つのアイリス!」「青を回して‥!」そんな感じのことを何者かに伝えて雨の中を走り去っていく。異様な迫真の雰囲気。スージーは入れてもらえないので後日出直す事にした。
謎のキーワードを叫んで走り去った女生徒は友人の家に泊まるが、毛むくじゃらの腕を持った何者かによって友人ともども惨殺される。その過程で、美人の女生徒が毛むくじゃらの腕によって窓ガラスに押し付けられて不細工になった顔がアップになる、何だか「美しい顔を変形させたい」ってフェティシズムを感じさせる。
翌日、改めて学園に迎え入れられたスージー、学園には理事長代理のマダム、女性教師、盲導犬に引かれる盲目のピアニスト、ルーマニア人の下男、マダムの甥の少年、学費稼ぎのため住み込みで雑用をこなす爽やか美少年、そして多くの女生徒がいた。
登場人物たちは殆ど美形だし学園の内装や美術も綺羅びやかで、日本の70年代の少女漫画っぽいなと思った。
用務員?のオバサンと理事長代理の甥がいつも一緒に居て、常に無表情でスージーを眺めてる様とか「ツイン・ピークス」の〈トレモンド夫人と孫〉を思わせる。
スージーは薄気味悪さを感じながら日に日に意識が朦朧とし体調が悪化していく、また学園に蛆虫が大量発生、画作りが美しいのと「美少女と蟲」という幻想的なムードで、蛆虫が何千匹と出てきても不思議とキモさは感じない「何だか炊きたてのお米にも見える‥」と感じたが翌日の飯が不味くなりそうなので俺は考えるのをやめた。あと深夜に聞こえる謎の足音や学友の失踪。盲目のピアニストの盲導犬が学園の瘴気に感応してか学園長の孫を噛んだりピアニストを喰い殺したり(このピアニストが食い殺される人っ子一人居ない深夜の広場がめっちゃカッコいい)。
そんなボンヤリした怪異が次々と起こる。
そういった感じで映画は進むが「サスペリアは魔女の映画」っていう認識を忘れて観ていた俺は「カッコいいけどコレどういうホラー映画だっけ?サスペリアPART2みたいな殺人事件?それとも霊的な映画?」とよく把握できなかったため、また主人公のスージー同様ワイン‥いや葡萄酒を飲みながら観てたのでスージーとシンクロして幻想的だがよくわからない世界を「面白いのか面白くないのかよくわかんないけど何らかの面白さを魅せられてるな‥」とボンヤリと堪能しているうちに眠くなってきた。映画館で観たら徐々に眠くなりながら有意義な時間を過ごせそうだなと思った。寝ながら観てこそ面白い映画とかありますよね。友達とか恋人の家で深夜、映画観てる間にウトウトして「寝た?」「寝てない」をお互い言い合ってるうちに寝たりするのも最高ですよね。正直それこそ人生。そもそも我々日本人‥ヒューマンは別の意味で寝ながら生きてるようなものだし‥とかそんなことを言ったりして‥。どうでもいい。。

 

 


レッスン中、体調不良で倒れたスージーが、理事長などのオバサン達に囲まれ「失った血液をつくらなければ!」とか言われてクソデカい水差しで大量の水を飲まされる。このスージーを囲む三人のオバサンを見て「あ、これって『マクベス』『イーストウィックの魔女たち』『ロード・オブ・セイラム』とかに出てくる〈三人の魔女〉もの映画か?」と思い、「そうだ『サスペリア・テルザ 最後の魔女』も魔女の映画だったから、これもそうか」といったボンヤリした認識によって本作が「魔女の映画」だと思い出した。
魔女とか現代魔術とかウィッカとか‥ボンヤリと興味はあるが勉強したり実践してみようと思うほど興味があるわけではないので全く知識ゼロなのだが、魔女が出てくる映画は何となくカッコいいので好きだ。こんな知識ゼロのボンヤリとした感想で良いのでしょうか‥?僕はそれが一番いいと思っています。ジュリエッタ‥。
そしてスージーが学園の秘密を探る場面があり友人の青年(ウド・キアー)や心理学の教授が魔女や学園のことを喋りまくる。わかりにくいと思って唐突に差し込まれた説明パートだ。とにかく魔女の映画だとわかると目的地がわかった感じになって少し目の前の霧が晴れた。
それにしても困り顔の顔文字みたいな表情で「がぼがぼ (>o<:)」と水をがぶ飲みされるスージーが可愛くて、この辺で俺はやっと全編、困った顔して華奢な身体でウロチョロしてるスージーの魅力に気付き始めた。
そもそも普段観てるものの殆どはアメリカ映画やドラマで、それらの主人公は中年男性や中年女性だし(アベンジャーズの加齢率の高さを見よ)たまに若い女性主人公が出てきたとしても、それはセクハラ・パワハラに対抗したり「女性の躍進」などといった何らかの役割を持って出てくることが多い。そして彼女たちは筋トレしてバキバキの身体だったり、逆に「ありのままの自分」を表現するためムチムチした体型の女性が出てくることが多い。それはそれで良いことだと思ってるが、それだけにこのスージーみたいに華奢な身体や童顔の美少女が、特に何も主張せず「何だか大変‥」とばかりに左から右へ、右から左へとウロウロしてるだけの本作が逆に新鮮だった。「こんなか弱い女性キャラ、今出てこないもんね」と思った(だが最後まで観たらクソ強かったので驚いた)。
かと思えば色々しんどい目に遇ってカットが変わるとオモムロに煙草を「ふ~‥」と吸ってたのがめっちゃ可笑しかった。この当時は皆煙草を吸ってたの知ってるが今の俺は2019年を生きてる男なので、華奢な美少女がカット変わった瞬間にオッサンみたいに煙草をふかしてる姿はコントみたいに見えた。
次々と殺人が起こる中、スージーは学校に魔女が棲んでいる事を突き止める。
冒頭の学園に着いた夜、学園から走り去って惨殺された女生徒が呟いてたヒントを頼りに隠し扉を見つける。しかしスージーも、全く意味のわからん単語の羅列をよく覚えてたな。そういえば劇中でも観客に忘れさせないように2、3回思い出して印象づけてたな。だが誰も覚えようという気にならない感じだったし、実際出てきても「そうだったのか!」という感じではなく「‥そうなの?」という感じ。「よくわからないけど君の好きなようにしてくれよ‥応援するからさ‥」などという俺の好意的な態度の前でスージーは真相に近づいていく。
扉を開けてカッコいい暗い廊下を進むスージー。途中、用務員のオバチャン達が生肉をさばいてはしゃいでるシーンが挟み込まれる(ヨーロッパ映画でこういう生肉とか裸が出てきたら妙にアートな雰囲気を感じるのは何なんでしょう)。
「スージーが真相に近づいてる」という展開がそっくりそのまま可視化されていて、しかも殆ど邪魔は入らずスージーはただ廊下をまっすぐ進んでるだけというストレートさ。
一番奥の秘密の部屋では学園長代理などのオバハン達や使用人やガキが勢揃いして秘密の会談をしていた。どうやらスージーを呪い殺そうとしている。そして盗み聞きするスージーの傍らには学園を去ったと思っていた学友の惨殺死体が!逃げ出すスージー

 

 

 

スージーは、ある部屋に隠れる、そこにはベッドに誰か寝ていた。学園を作った元祖魔女らしい。だがベールをめくっても誰も居ない。しかし魔女の声は聞こえる。
魔女「私を殺す気かい?!ククク‥」と話しかけてくるが姿は見えない。
すると掃除道具入れみたいなノリで部屋の隅に立て掛けてあった棺桶を開けようと人の手が棺桶の隙間から出てくる。こ、怖い!
するとバーン!と勢いよく棺桶が開いて、さっき見たばかりの学友の死体が現れる。
死体は目をひん剥いてナイフを振りかざし低音ボイスで「ウハハハハハーー!」と笑いながら出てくる。何か飲み会で悪ふざけしてる奴がいるな‥と思ってよく見たら本物のキチガイが紛れ込んでいたかのような異様な雰囲気で凄く怖い!「サスペリアPART2」の人形のシーンほど怖くないが似たような怖さだ。何というか幽霊とかゾンビの怖さじゃなくて「キチガイが自分めがけて襲いかかってくる!」という種類の怖さ。
窓から外を見ていたら「何か様子がおかしい狂人が居るな」と思って見てたら、そいつが突然こっちに目を合わせて走ってきて自分のいる建物を登ってきてドアをドンドンドンドン!叩きまくって寝て深夜起きてドアの覗き窓を覗くとそいつがまだ居て向こうからも覗いていて「見つけた-!」と言って再びドンドン!ドアを叩いてくる‥そんな怖さだ。
そんなガイキチがナイフというコミュニケーションツールを持って僅か数メートル先にいる。そしてそのコミュニケーションツールをスージーの身体に刺してスージーのパーソナル・スペースを侵害するどころかマイナスに‥つまり刺殺しようとしている。
館の外では雷光と雷鳴が轟いている。
スージーは自分に襲いかかってくる動く死体と交互に背後のベッドを見る、まるでベッドに魔女が居ると知ってるかのようだ。実際、ベッドには誰も居ないのだが雷鳴によって人の輪郭が浮かび上がる。スージーは「そこだー!」とばかりに人の輪郭の胸あたりをぶっ刺す!
魔女「ギャー!」
そこには何百年も生きている?学園の創設者である醜い魔女が姿を現し絶命する。
魔女の命と連動しているのか理事長などの学園関係者も同時に全員死亡!ついでに学園が突然自然発火して全焼!まさかのスージーのパーフェクト勝ちだ!‥この辺は、ここ十年くらいのアメリカ大作映画でもそうだな。敵の弱点の一点を突くと敵の全てが滅んでしまうという‥。デス・スターとかアベンジャーズとか‥全部そうだ。ご都合主義と言ってしまえばそうだが、わかりやすいので新しいやり方が出てくるまでこのやり方が、まだ数年続いても俺は構わんよ。
焼け落ちる学園をバックに、憑き物が落ちたかのように晴れやかな笑顔のスージーが歩き去りゴブリンが流れるという衝撃のラストカットで映画は終わる!
いつも華奢な身体で困ってるだけだと思われたスージーだがめちゃくちゃ強かった。
結局、一人で真相を突き止めてラスボスまで辿り着き、すぐ目の前には動く死体が高笑いしながらナイフで襲いかかってるにも関わらず、後ろを見て透明になっている魔女の位置を雷鳴でサーチしてブッ殺すんだもんね。透明な魔女のことが何故わかったのかはよくわからんが、こんな今際の際に伝説の英雄みたいな最適手が取れるかね?一人で5、6人分の働きをしている。さすが昔の人だ。俺だったら動く死体が出て来た時点で腰が抜けて殺られてしまいそうだ。
そういえば「サスペリア・テルザ 最後の魔女」でも女性主人公が魔女軍団を倒して最後に爆笑してたけど、あれは本作から来てたんだね。素晴らしいラストだわ。
とにかく、よくある映画の流れから言うと館の焼失と共に主人公も死んだり曖昧な感じで終わりそうなもんだが、まさか若い時のイーストウッドランボー並の最適手で敵を全滅させてしまうとは!スージーめちゃくちゃ強い!
それまでの本編での困りっぷりとか「弱そうな痩せた美少女」という出発点からのギャップ有りすぎてめちゃくちゃ俺の心に焼き付いた。
そういえば入学時に「一度こうと決めたら曲げない」という意志の強さを見せてたな、あれが伏線だったのか?とにかく、まさか強いと思ってなかった、最後死ぬんじゃないか?とすら思っていた主人公が尋常じゃない強さを見せたという一点で監督が意図してない魅力が発生しました。僕個人の映画女性主人公の強さスケールで測った結果、アベンジャーズの女性ヒーローやインシディアスばあさんや死霊館おばさん、リプリーやサラ・コナーより、このスージーの方が強い、という結果が出ました。物語の理を超えた強さ、イーストウッドが演じたキャラなどに匹敵する理不尽な強さだ。
そういえば爽やかなイケメンはどこに行ったんだろう?とか魔女たちは何で妙に遠回りなやり方で殺人を行ってたんだろう?とか色々思うところはあるがスージーの活躍の前ではそんな事どうでもいい。どうせ全員、焼け死んだんだろう。
 

 

 

そんな感じでした

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深き淵よりの嘆息―『阿片常用者の告白』続篇 (岩波文庫)

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「大菩薩峠 (1966)」本編や殺陣よりも姿なき幽霊や全ての瘴気が交差するラストだけ盛り上がった🌄

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監督:岡本喜八 脚本:橋本忍 原作:中里介山大菩薩峠」第一巻~第三巻
製作国:日本 上映時間:120分 英題:The Sword of Doom

 

 

 

🌄政治的な面で「なんかもう日本ってここ数年、封建時代に後退したかのような‥ディストピアSF映画を観て『こんな国あるかよw』と笑ってたような国に現実になってるな」と危機感を感じてたが、ここ数日の再改造内閣のニュースで更に危機感を感じた。なんというか、どうせ傀儡なので有能じゃなくていいとしても有能で賢そうな奴とかを対面上据えればいいのにと思うのにそうしない。他の先進国のようにクールで有能な奴を据えたら日本国民が「よし私たちも頑張って世の中を良くしよう」などとイキイキし始めたら良くないので、わざと無能を据えて「お前らが知ってるようにコイツは無能だ。だがお前らはその無能に逆らえない」と知らしめることで偉い人が嫌うもの‥クールな人気者が体制の矛盾を突く言動や若者の夢や希望といったパワーを萎えさせて無気力にするためにそうしてるのではないか、と思ったりもした。文化やリテラシーが発展した国ほどデモや社会活動が盛んで手強い、これはあながち冗談ではないような気もする。とにかく普段、政治的な話とか面倒くさそうなのでしない俺がしてるという時点で、自分で自分お言動を見てヤバみを感じた。そういった「漠然とした不安」を感じて頭が曖昧になってきたので山口貴由先生の「衛府の七忍」を読み返していた(俺の推しキャラは沖田総司)。ファンタジーではあるが、こういった侍と肩がぶつかっただけで斬り殺される封建時代をデフォルメして描いた漫画を読むと「即死させられるわけじゃないから現世の方がまだマシか‥」と精神を安定させることができた。当然、現実逃避に過ぎないのだが現実逃避望むところ。このままマッチ売りの少女のように幻だけ見て死んでいくのも悪くない(一度だけで終わるなら‥)。衛府を7巻まで読み終えると「そういえば時代劇ながいこと観てないな」と思って積んでた本作を観てみた。覚えてないけど8年くらい観てないかも。別に邦画が嫌とかモノクロは嫌、とかそんな事ないのだが基本、アメリカ映画ドラマばかり観てるので、気分や雰囲気がガラッと変わり過ぎちゃうので何か切っ掛けがないと観る気分にならないっていうか。面白い少女漫画もあると知ってても女の子の家に行かない限りよく知らないから読まない感じというか「朝は絶対、パン!」という人が納豆とご飯と味噌汁は何か切っ掛けがないと喰わないだろう、それと似た感じか?喩えが下手。

🌄これは芥川竜之介を始めとする文豪が絶賛したという長編時代小説「大菩薩峠」‥の全41巻のうち最初の3巻までだけを映画化したものらしい。検索してみると何と11作も映画化されている。
時代劇や新選組についても全然詳しくないし原作も読んでない。岡本喜八の映画が好きで観ただけ。原作は今後も読まなさそうだし「原作の一部だけ映画化したので、この映画の後もまだまだ続く」という事も無視して「この話はこれで終わりなんだ」という気持ちで、純粋に一本の映画として観た。今、何でもいいから長文を書きたい気分だったので長いです。ついでに最初に言うとラスト以外あまり面白くなかった。
完全にネタバレあり

 

 

主人公は残忍で身勝手な狂気の天才剣士・机竜之介仲代達矢)。
こんな狂犬には可憐すぎる名前の技「音無しの剣」を使う。どういう技かと言うと構えてじっと相手が打ってくるのを待ち、しびれを切らした相手が切りかかってきたところを、相手の剣と自分の剣を打ち合わせず音もなく斬殺するというカウンター技らしい。待ち竜之介だ。コマンドで言うと「(竜之介が右向き時に)レバー後ろ溜め・→←→+PP」といったところか。剣の腕が立つくせに待ち竜之介とは‥恥も外聞もない血に飢えた狂い犬よ。この音無しの剣を武器に暴れまわる。
この全く感情移入できない狂った男を主人公とした話。
冒頭、大菩薩峠の頂上、常日頃から辻斬りをしていたらしい竜之介は、山登りして休憩していた年老いた行商人をいきなり斬り殺す。サイコ・バーサーカーだ。
哀れな老人の孫娘・お松(内藤洋子)は、大菩薩峠の頭頂で祖父に飲ませようと水を汲みに行っていたので祖父を殺した竜之助の顔は見ていない。たった一人の身寄りを失って泣き崩れるお松。そこに、たまたま通りかかったのが盗賊・裏宿の七兵衛西村晃)。悪党の七兵衛だが、気の毒なお松を見て人並みの人情が鎌首をもたげたらしく、お松を拾って自分の娘のように育てて天本英世の屋敷へ奉公に出す。ちなみに僕は西村晃がかっこよくて好き。自分が幼い頃に死んだ祖父に似ている。ついでに東野英治郎も好きだ。幼い頃に祖母が水戸黄門をめっちゃ観てたのだが二人共、黄門役だ。幼かったので祖父とダブル黄門が頭の中で混ざりあって「ダブル黄門=祖父に似てる」という認識が産まれたのかも知れない。
一方、大菩薩峠の麓に住む机竜之介は(近所にぶらり散歩して辻斬りしてたのか‥)宇津木文之丞という剣士との武芸試合「御嶽山奉納試合」があったのだが、竜之介に主人は勝てんと踏んだ宇津木の妻・お浜(新珠三千代)は、竜之介に負けてくれるよう頼みに来る。「それには条件がある‥」と言った竜之介はお浜をファックする。そして武芸試合での約束を守らず宇津木文之丞を撲殺!(殺さなくても‥)「村に居てはヤバい」と思ったのか竜之介は江戸に出奔する事にする。夜道で待ち受ける宇津木の関係者達、だが竜之介は超必殺技・音無しの剣で皆殺しにする。無茶苦茶である。なんか最近「悪さばかりして人生の殆どを刑務所で過ごす犯罪者をテストしたら軽度の知的障害の疑いがあった」という話を小耳にしたばかりだが、竜之介も「とりあえず何も考えずやりたい事やる。それで困った事があったら相手を斬り殺すして逃げる」という考えなし人間に見えてくる。何か「どんな手段を使ってでも天下無双の剣士になる」とか、そういった思想も特にない。観る前は「悪のカリスマ」キャラかと思ってたが、そんなカッコいいキャラでは全く無く、単純に物事を深く考えず人の気持ちもわからないサイコパスという感じ。原作ではどうなのかは知らん。たとえ原作ではカリスマキャラだったとしても岡本喜八はどうしようもない男として描きそう。とにかく、そんなサイコパスはやっていけなさそうだが、良くないことに竜之介には必殺の音無しの剣があるんだな。また凄いイケメンだしモテる。だからやっていける。剣の天才、超イケメン、という二刀流を手にしたサイコパスのサディスト。これは恐ろしい‥「DV夫が、上級国民の息子しかもサディストの空手家」みたいな絶望感だ。
また夫や夫の仲間を全て失ったお浜は「行く宛がない」と言って竜之介の妻となる。くんくん。破滅の匂いがするな‥。

 

 


江戸に出奔した竜之介とお浜のクソ夫婦。江戸に来てからの竜之介は偽名として「吉田竜太郎」を名乗っている。家を捨てて来たもんだから金が無い。子供も産まれたし、お浜には「あんたに着いてきたばかりに金が無く惨めな暮らしだ」とネチネチ言う。竜之介は何をしてるのかというと仲代達矢のカッコいい顔で虚空を見つめるばかり。虚空を見つめても金にはならぬ(もし現代ならずっとTwitterしてるんだろうな)。
そして竜之介は、島田虎之助(三船敏郎)の道場で宇津木兵馬加山雄三)という爽やかイケメン青年に出会う。彼は竜之介が撲殺した文之丞の実の弟、お浜の義弟だった。
取り柄が剣しかない竜之助は新選組(の前身組織)に出入りするようになる。バイトかな。
竜之介は新選組と共に寅之介を闇討ちするが、虎之助は範馬勇次郎の如く鬼神の強さで新選組を皆殺しにする。ちなみに見た目は椿三十郎そのまんまのミフネ。しかもミフネのクソ強キャラに思慮と人望といった要素を合わせた完璧剣士(ちなみに、この虎之助は実在の剣客、勝海舟の師匠)。竜之介は一歩も動けず斬りかかることが出来ないまま虎之助に「お前の剣には心がない、それじゃアカン」みたいな説教まで喰らって見逃されるという屈辱の敗北。スランプに陥った竜之介は宇津木兵馬との決闘をすっぽかし妻お浜を斬り殺して幼子を置き去りに再び京都に逃げる。
どうしようもない奴だな。虎之助先生もさっきついでにコイツを斬り殺せばよかったのに‥。前半、竜之介は「強くてイケメンだが、それだけのカス」といった感じのキャラだったが、それでも仲代達矢の美貌と演技力で「血に飢えた狂剣士‥」みたいな迫力はあった。だけど、この中盤でニートしてたらカミさんにグチグチ言われたりするので残ったカッコいい要素も全て削げ落ちて「強くてイケメンだが、本当にどうしようもないカス」という感じになってきた。しかし我が子を可愛がる様子も一切なく捨てたしマジでサイコパスなんだろうな。
舞台の後半は京都。
大菩薩峠からの因縁=お松と育ての親・七兵衛。
御嶽山奉納試合からの因縁=「兄の仇」と竜之介を追ってきた宇津木兵馬。
江戸からの因縁=新選組
これらが一つの屋敷で交差して終わる。‥いや、よく考えたら「二人で竜之介をぶっ殺しましょう!」と竜之介の元に向かった七兵衛と兵馬は、竜之介の元に辿り着く前に映画が終わってしまったので「えっ?」と言った。
とある店で竜之介は、お浜と出会い、部屋で二人。辻斬りで自分の祖父を殺した竜之介は目の前にいるのだが、実行現場を見てないお浜はそれを知らない。竜之介もお浜のことを知らない。
お浜は竜之介の背後を見て「きゃっ!」と叫ぶ。なんでも女の人の幽霊を見たという。
乾いた笑いを浮かべる竜之介だったが、どうやらこの娘は「大菩薩峠で斬り殺した老人の孫」らしいと気付いた竜之介は様子がおかしくなる。今度は竜之介がお松の背後を見て盃をポロリ‥と落としてしまう。彼もまた幽霊を見たのか?お浜は再び竜之介の背後に幽霊を見る!この一連の流れ、幽霊を見る二人の顔はアップになるのだが幽霊は別に映らない。だけど彼ら彼女が見る幽霊を映さない事がかえって恐ろしい。‥ちょっと上手く説明できないな。とにかく竜之介はお浜や捨てた赤ん坊の影を見、声を聞いて半狂乱になり周囲の物を斬りまくる。死んだ者だけでなく生きている虎之助の影や彼の説教なども聞こえて完全に気が狂った竜之介はサイコバーサーカーとなり一人で暴れまくる。お松はどっか行った!たぶん逃げたんだろう(ちなみに以降、二度と出てこない)。
まぁ「サイコパスの心の下の無意識下に知らず知らずのうちに溜め込んでいた罪悪感、負い目、自己卑下、敗北感‥そういったネガティブな感情が澱(おり)となってたまってて、それが幻覚幻聴を伴って反射屈折を繰り返しやがてスパーク‥発狂してしまった」そういった感じだろう、と思った。ネガティブな感情を元に幽霊の姿で現出した幻覚が見えた‥映画でよくある場面だ。だけどちょっと待て、お松は竜之介がどういう男なのかとか祖父を斬殺したことも知らないのは勿論、幽霊で見たお浜に至っては会ったことも聞いたこともない。だから竜之介が見聞きしたものは幻覚かも知れないが、お松が見た幽霊は本物という事になる。怖い。「負の感情が幽霊となって見えた幻覚」というシーンってだけなら、お松がお浜の霊を見る描写は必要はない。これはドでかいネガティブな要素を重ねて因果が重なりすぎた竜之介の周囲の瘴気が幽霊となったものかもしれない。もしくは敏感そうなお松が見た幽霊もまた、竜之介の負のオーラにアテられた結果、それに自分の悲しい思い出もミックスされて幻視した名状しがたい忌まわしい幻覚だったのかも。どちらにしてもネガティブすぎてやばい。「復讐者に憐れみを」で姉が死んだと思ったら誘拐した幼女が知らない間に無意味に溺死したシーンに似た感触を感じた。
そこへ、仲間と竜之介の裏切りを察知した新選組が殴り込んできて、バーサーカーとなった竜之介は音無しの剣を振りかざして新選組を斬りまくる。
見事な殺陣だが斬っても斬っても終わらない。両者は特に因縁が深いわけでもないし「美しいが長いな‥」と思って眠くなってたら突然画面がストップして「」と出て映画は終わった。

 

 

 

‥えっ!竜之介の命運は?七兵衛と兵馬は?お松は?と思ったが、わざわざここで終わるという事は、これはヤケクソではなく「ここっで終わりでええ」と思って終わらせたんだと受け取った。
いま暇だったので長文書きたくなって書いてただけで、正直あんまり面白くなかった。竜之介は悪人だし、かと言ってピカレスクロマンって感じの悪の華キャラでもない、どうしようもないカスなので結構どうでもいい。序盤とラストの仲代達矢の長い殺陣、中盤の峰敏郎の長い殺陣はさすがに見事だが、どれも文脈や因縁がなく行きがかり上、斬りまくってるだけなので特に響くものがなかった。大物すぎる役者陣、主役級のキャラが蠢きあって収束する終盤などは重厚な雰囲気を一瞬感じ取りはしたが、どうもすれ違いが多かったり因縁が薄かったせいで盛り上がりきれず‥。今まで観た岡本喜八の映画の中でも一番盛り上がれなかったかもしれん。
だがそんな中、(映画本編の殆どが乗れなかったというのもあるかもしれないが)、さっき書いた幽霊のくだり、そこから繋がる竜之介大暴れからの大胆なブツ斬りエンド。永遠に宙にプカプカ棚上げされた、お松と七兵衛と兵馬‥。などが何だか大胆で良いなと思ってしまった。一言でいうと最後だけ良いっていうか。本編全部がラストの飛躍のためだけにある感じが何だか俺の好きな「ツイン・ピークス (2017)」のラストっぽいなぁと思い、最後だけ良い映画として記憶に残った。あぁ、あと幽霊シーンと西村晃のカッコよさね。画面のかっこよさと殺陣の美しさもあったけどね。要はストーリーやキャラに乗れなかった感じですかね。
ついに竜之介の居る場所に辿り着けなかった七兵衛と兵馬だが、西村晃加山雄三に「二人いれば勝てる!鉄砲も持ってるし」としつこいくらい言ってたから、きっと映画終わった後勝つだろうと思った。
ちなみに原作はこの後も竜之介は生き残って延々と続くらしいが関係ない。俺の中の映画終了後の竜之介は「重症を負いながら新選組を皆殺しにして店の外に出たら、ばったり会った兵馬に斬られ、ついでに七兵衛の銃撃を眉間に喰らって即死。お松と兵馬は夫婦になり七兵衛も加えて末永く幸せに暮らしました‥」こんな感じでいいだろう。
一体どの辺だったか忘れたがニートの竜之介が自宅で虚空を見つめて薄ら笑いを浮かべる顔が完全にガイキチで、怖かったのでこの記事のTOP画像にしてみた。いかがかな
長くなったが思うさま長文書いて満足したのでこれで
「終」

 

 

 

そんな感じでした

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The Sword of Doom (1966) - IMDb

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『アンフレンデッド:ダークウェブ』(2018)/中盤で殺人が始まるまでが面白い。後半のダークウェブ住人は魔法使いすぎる💻

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原題:Unfriended: Dark Web 監督&脚本:スティーヴン・サスコ
製作国:アメリカ 上映時間:93分 
制作:ブラムハウス・プロダクションズ シリーズ:「アンフレンデッド」シリーズ

 

 

 

💻PCの画面内だけで連続殺人が進行するサスペンスホラー。
SNSいじめが原因で連続殺人が起こった前作も、傑作とかでは全然ないが最後まで退屈せず楽しめる程度には面白かった。大学生が面白がれそうな映画というか。
というかモキュメンタリーとか「全編主観映像」とか「全編、PC画面内だけで映画が進む」とかそういうのは楽しいからね。まぁそういうのってどれもあんまり数が多くないね。そういった特殊な形式の映画を作ってヒットさせるには相当作り込まなきゃ面白くならないだろうし、それがそこそこヒットして日本にも来るって時点である程度面白い数本しか入って来ないんだろう(全編SNS画面内で進行する映画としては「search/サーチ(2018)」が一番面白かったかな)。
製作者は前作の監督とは変わってしまってるし、前作のキャラは全員死んだので別のキャラたちが主人公を務める。コンセプトだけ同じでストーリーは全然繋がっていないタイプの続編。当然前作は別に観なくていい。
前作はメールソフトやチャット、SYOUTUBEやNSなどのメジャーなネットサービス上が舞台だったが 今回は現代では人気の都市伝説の一つでもあるダークウェブが舞台のようでワクワクする。

💻「ダークウェブ」というのは「特別なソフトや設定や認証などを使ってしかアクセスできない、特定のWebサイトがあるネットの深層領域の一部分」を指す。
我々がググって普通に観覧できるウェブサイトやSNS等がある領域が「表層WEB(サーフェス・ウェブ)」。観覧するには認証が必要で特定の者しか見れない会員制サイトや鍵垢やフリーメールなどのサイトは「深層Web(ディープ・ウェブ)」。
「ダーク・ウェブ」はディープ・ウェブの一部。ディープウェブとダークウェブの差がイマイチよくわかってないんだけど、まぁ深層の中のヤバい一角みたいな感じか?
そこでは銃やドラッグや毒物や臓器や偽造クレジットカードや偽札やIDやパスワードなど普通の店で買えないようなものの売買、ハッキングや殺人の依頼、違法ポルノサイト、殺人鬼と殺されたい人の出会い掲示板、または只の詐欺サイトやどうでもいいイタズラサイトなど玉石混合の良くないものがある。そこでの金品のやり取りは足がつかないようにビットコインが用いられている。悪事だけではなくCIAがハッカーをスカウトするためにテストに用いられたり、権力者の悪事を告発するために情報のやり取りが行われたりもするらしいが真相は定かでない。「暗殺者を雇える」「拷問や殺人を中継するサイトがある」等は只の都市伝説で証拠が見つかっていようだが、殺人&食人したい者と殺されて喰われたい者が出会い掲示板でマッチングして本当に殺して食ったという映画のような事件は本当にあったので(ローテンブルクの食人鬼)「こんな無茶苦茶な事があるんだから殺人の依頼とか拷問やスナッフフィルムは、見つかってないだけで、ありそうだな」と思わされる。ダーク・ウェブに乗じた都市伝説や動画などは多いが、殆どはイタズラやフカシ。だけど本物にヤバい事象も存在する‥そんな認識。
都市伝説ではあるものの、ダークウェブ自体や良くない売買や違法行為は本当にあるのでダークウェブ自体は都市伝説ではない只の事実とも言える。では何が都市伝説かというと「そこにあるもの」「そこから起きたもの」が都市伝説‥という感じ。
ネタバレありなので、興味ある人はこれ読まないほうがいいと思う。

 

 💻

 

マサイヤスという青年が主人公。その彼女は耳が不自由な女性。他にはネットやコンピューターに詳しい白人のオタク青年。政府の陰謀論やデモ活動に夢中のお調子者白人青年。婚約したばかりの白人と黒人のレズビアンカップル。アジア系の女の子‥という七人がメインキャラ。
前作同様、彼らがビデオチャットで会話したりPC画面だけで映画が進む(終盤、主人公が外に出るが、その時は主人公がスマホのTV電話で彼女と話してるので、そのスマホ画面が主人公の家のPCに映り続けてる)。
全編PC画面映画なので、主人公がPCを立ち上げて恋人や仲間達とビデオチャットするためにSpotifyとかFacebookや各種サービスにログインするところから始まる。
こういう内容なら、主人公が説明台詞みたいな独り言を言いまくりそうだが本作は、主人公が恋人や仲間と通話する以外では全然独り言を言わず、PC画面だけで見せていくので「結構こだわって作ってるね」と思った。
このPC、主人公は耳が不自由な彼女と通話するために高価なPCを欲しており(読唇術させやすいようにだったかな?細部は忘れた)とある場所に何ヶ月も放置してあった高スペックPCを拝借してきてしまったらしい。どこだっけネットカフェだっけ?とにかく元の持ち主だと思われる男に頻繁にFacebookのダイレクト・メールが届く。
この日は主人公が仲間達とネット上にビデオチャットで集まって遊ぶゲーム・ナイトだったらしい、主人公はPCをセッティングしながら恋人と話したり仲間と会話する。
しかし、どうにもPCが重い。仲間に促されてPC内をサーチすると膨大な隠しファイルがあった。開いてみると近所の家の中を撮った動画がたくさんあった。‥PCに付いているカメラは、たとえ電源が落ちていようと内部電源によって全てネットに繋がっている。それをハッカーから隠すには要人であろうとカメラにテープを貼るというアナログな方法を取るしかない(アレクサとかも‥)。
近隣住人の盗撮動画を集めている変態か?更に見慣れぬソフトを起動させるとDOS画面(なんか黒いウィンドウに字だけ表示される昔のPC画面みたいなアレ)が出てきて「お前に入金した」と主人公‥いや「前のPCの持ち主」に語りかける謎の相手。調べると何千万円分のビットコインが振り込まれていた。
なにが起きている?しばらく相手の言うことを聞いていると、どうやら「金を払ったから早く自分が言うように生贄を拷問して殺してくれ」と言うではないか。
ざわめく仲間たち。
動画ファイルを探ってみると誘拐した女性を殺害する動画がたくさんあった。そして最後に女の子が誘拐されるだけの殺害は行われていない動画があった。その子の名前で検索すると確かに最近行方不明になった近所の女子高生だった。
どうやら主人公が拝借してきたPCは、女性を誘拐して殺す動画をダークウェブで見せることによってダークウェブ住人からビットコインを受け取っていた犯罪者の物だったようだ。
‥という‥中盤くらいまで?は、かなり面白い。何よりさっきも言ったが主人公が説明台詞を言わないのが良い。言わないので「今何してるんだ?」的な感じで嫌がおうにも集中して観させられて没入感が高かった。そして自分はいつもモニター大きめのPCで映画観てるんだけど、本作はずっとPC画面だし、主人公がFacebook見てる場面とか、自分がFacebook見てる画面と同じなので仮想現実感が強く自分と主人公のシンクロ度も高かった(映画館で観たらそこまででもないだろう)

 

 

そこから先は、元の持ち主であるスーパーハカー殺人鬼が主人公をハッキングし、主人公や主人公が通話している恋人や仲間たちの素性が全てバレてしまう。
そこで、犯人が恋人の家に侵入してビデオチャットで主人公だけに向かって「俺のPCを返さないとお前の恋人を殺す」「この事を警察や仲間に話せば殺す」「ビデオチャットを続けろ、やめたら殺す」などと脅してくる。画面がずっとPC済む工夫がなされてるわ。主人公は仕方なく、びびってる仲間たちにビデオチャットを再度繋げて
「さっきのダークウェブは、当たり前ですが偽ダークウェブです。初笑い、できたかな?」とおどける。笑ったり怒る仲間たち。
このままでは彼女共々殺されると思った主人公は、さきほど犯人に振り込まれた大量のビットコインを自分の口座に振り込む事で自分と彼女の命を延長させることに成功。そして「彼女とこのPCを交換だ」と交渉する。
何も知らない彼女を自分の家に呼び、犯人は彼女の後を着いてきて、自宅に来た犯人にPCを渡して彼女を開放してもらう、という段取りだ。
しかし犯人は、主人公を常時監視しているので、主人公が警察や仲間に喋ったら彼女は殺されてしまう。
主人公は彼女に「地下鉄で来るように」と言った。地下鉄では駅以外の場所を走っている時に彼女や犯人のスマホの回線が切れる。その僅かな時間を使って主人公は仲間に全て話し、何とか「回線がまた繋がったら、さっきまでと同じように自分とゲームしててくれ」と頼む。
というか、この時点で既に詰んでいるっていうか、犯人は殺人に慣れてるし待ち合わせでPCを渡したら主人公カップルは殺されるだけでは?その場で殺されなくても後日いくらでも殺されるよね。というか地下鉄走ってて様子が見られなくても犯人の仲間が主人公PCをハッキングしてるとかの心配はないのだろうか?まぁキリないからそういった事は思考停止して続きを観よう。
ところで犯人はビデオチャットで主人公と喋る時、自分の顔を隠すためにビデオチャットでも自分にリアルタイムでモザイクかけたりしていた。「いくらハカーでもそんな事瞬時に出来るか?」と思ったが、後で別のハッカーがコラや動画を数秒で作ったり終いには地下鉄を止めたりするし気にしない事にした。「アメリカ映画に出てくるハッキング」とは「現代の魔法」って表現だからね。ましてやダークウェブ住人なんだからもう大黒魔法使いも同然だ。細かいことは考えないようにしよう。
主人公が元の持ち主殺人鬼と交渉してるあたりまでは面白かったのだが、今まで通話してた犯人以上の実力を持ったダークウェブ住人達が介入し始め、仲間を一人ひとり殺し始めてしまう。単純にカメラの前で殺すだけじゃなくて、仲間のPC内にある動画とかを使って他人に撃たせるよう仕向けて間接的に殺したりとか色々工夫してるのは面白かったけど、はっきり言って街の全てを操れる勢いの上級ダークウェブ住人が何人も寄ってたかって襲ってくるのだから、自宅を出れないし通報も出来ない丸腰の主人公たちが勝てる要素はない。
最初の、スーパーダークハッカーが一人だった時は主人公と交渉しあって拮抗していたので緊張感あって楽しかったが、こうなってしまうと処刑されるだけなので何だかもうどうでもよくなってくる。
しかもダークウェブ住人達のハッキング魔法使い加減が飛躍しすぎてて、やはり一切抵抗もできず皆殺しにされてしまう。
まぁ前作の「ネットに侵入した霊が復讐の連続殺人を行う」という真相にガッカリした自分としては、人間であるハッカーが殺人するようになったのは進歩だと言えなくもないが、何だかハッカーが神のように有能すぎて「これなら幽霊とか悪魔と大差ないな‥」と感じた。
これをもうちょっと実現可能なハッキング具合にして、もう少し主人公たちが犯人に食い下がれれば‥と思ったが、そうなるとホラーじゃなくサスペンス映画になっちゃうのでこれでいいのか。ブギーマンとかジェイソンなどの殺人鬼を「ダーク・ウェブ」というホットな都市伝説に置き換えた胸糞スラッシャーホラーって感じか。
ところで前作でも思ったが罪を着せられた主人公は最後、生かされた方がキツいと思うのだが、どうして二作とも主人公を殺しちゃうんだろうね。
とは言え最後まで飽きずに楽しめるほどには面白かったです。
特に中盤までは「主人公が恋人と通話してる画面」「主人公が拝借してきたPC内を探る場面」「仲間たちのチャット画面」など幾つもの出来事が同時に一つの画面内で同時進行しており、説明台詞が少ないので「えーとこっちではアレをしてて、こっちでは多分アレをしてるのか?」などと考えなきゃいけない感じが何だか「近未来のホラー映画」感があった。
何か、ダークウェブ自体や本編起きる事の説明するだけで長くなってしまい、映画の感想は数行だけになっちゃったな。まぁいいか‥。そこそこ面白い感じかな。

 

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そんな感じでした

gock221b.hatenablog.com

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Unfriended: Dark Web (2018) - IMDb

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