gock221B

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『アイリッシュマン』(2019)/最高だったが本作の素晴らしいラスト観たら他のギャング映画のラストが全てゴミに思えてきた‥🍉

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原題:The Irishman 監督&制作:マーティン・スコセッシ 主演&制作:ロバート・デ・ニーロ
原作:チャールズ・ブラント「I Heard You Paint Houses (2004)」 脚本:スティーヴン・ザイリアン
制作会社:Netflix 製作国:アメリカ 上映時間:209分

 

 

 

実在の殺し屋フランク・シーランの自伝を元にして、フランクの半生やジミー・ホッファ失踪事件に焦点を当てて第二次大戦後のアメリカ裏社会の盛衰を描き出す。
デ・ニーロ、ジョー・ペシハーヴェイ・カイテルなどが主演してアル・パチーノがスコセッシ映画初主演もしたスーパースコセッシ大戦。最近こういう映画に出資してくれる会社が少なくて困ってたところNetflixが出資して作れたという「ROMA / ローマ」と似た経緯で制作された大作。
スコセッシと言えば本作公開の少し前に、コッポラと一緒にMCUを「観てないけど、映画じゃなくてテーマパークみたいなもんだ」と軽んじた発言が取りだたされて話題となった。僕はMCU始まった瞬間からファンだけど、スコセッシの言いたいことにもまぁ一理あるなと思った。シネマティックユニバース形式は本来の一作一作に懸けた映画製作とは違う‥みたいな事が言いたかったのかな。そもそもスコセッシやコッポラが「ファンタスティック・フォーの前フリはブラックパンサー2とアントマン3かな?」「単純にカマラちゃんのドラマが楽しみ」とか言い出しても困る。「MCUはコミックの連載やクロスオーバーを映画で行ったもの」だと思ってるし。だけどこれは誤解される要素しかない台詞だなぁと思ってたら案の定メディアが観覧数目当てでMCUキッズを煽るような、まとめサイトっぽい見出して対立構造を作って乗せられたMCUキッズが思慮の浅い声を上げて冷えさせるというしょっぱい空気がしばらく続いた。ましてやスコセッシとかコッポラなどのあの辺の人らは全員口下手だからフォローのつもりで付け加えた言葉で更に荒れたりしてどうしようもない(喋るの苦手だから映画で表現してるような人ら)。国内外の映画ライターなら彼らのキャラや発言の意図はわかるだろうし何度か観覧数を稼いだならさっさと収束させろや、とイライラさせられた。
話をスコセッシに戻すが、僕は中学生の時、深夜テレビで「タクシードライバー」「キング・オブ・コメディ」を観てビデオに撮って何度も観返した。それで他のスコセッシ映画とかデニーロ主演作をよく観るようになった。ただし観た時がコミュ障でかなり捻くれた思春期だったのでデニーロ演じる男をイカれたサイコパスではなく「普通にカッコいい男」と、ヒーローとして観ていた。僕はバットマンのジョーカーとか、ただのイカれたバットマンの相手役としか思っていないのだが若者がジョーカーに憧れる気持ちって俺が少年時代にサイコウォーリアーを演じてたデ・ニーロに憧れてたのと同じ気持ち?などと最近思う。映画は完全にデ・ニーロを狂人として描いてるので、これは完全に間違った観方なんだけどIQの低い中高生だったので仕方ない。スコセッシ映画以外でもデニーロは空気を読めないコミュ障の男を演じることが多い。そんな役をしてる時のデニーロは、そのコミュ障ぶりや仕草や顔などが日常会話を全くしない自分の父親に似ており、父との欠けたコミュニケーションを劇中のデニーロに求めていた感じがある(中でも「みんな元気」と「ジャッキー・ブラウン」のデニーロが特に似ている)。こういうと自分の父がおかしな人に思われるかもしれないが僕の父は至って真面目な良い人です。ただ他人と会話とかコミュニケーションをしようという気持ちがないというだけ(おはようとかいただきます以外の自分が思っていることを口にしようという意思が最初からタイプの男性)。

 

 


2000年代、老人ホームにて最晩年の主人公が自分の半生を振り返る形で描かれる。
1950年代、フランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)は第2次大戦に出征していた頃、命令されるがまま投降した敵兵や捕虜を無情に殺しまくっていた男だった。退役してからはトラック運転手となり、偶然仲良くなったギャングの大物ラッセル・バファリーノ(ジョー・ペシ)の依頼で ”壁の塗装(暗殺)”に手を染めるようになる。
ラッセルの期待通り邪魔者を殺しに殺しまくっていたフランクは、全米トラック運転手組合のトップ、ジミー・ホッファ(アル・パチーノ)とも知り合う。大統領の次に人気があった男ジミーは、手段を選ばずギャングとも癒着して組合を大きくしていく男だった。
ジミー・ホッファ - Wikipedia
フランクはジミーの依頼も請け負うようになり、2人は仕事だけでなく家族ぐるみの付き合いをする兄弟のような親友となる。
本作はこの暗殺者フランク、大物ジミー、ギャングのラッセルの三人を中心に、アメリカ社会の移り変わりを数十年間に渡って描き、やがては全米を騒がせたジミー・ホッファ失踪事件の顛末を(フランクの告白を元にして)最後まで描く。
数十年に渡って描く中で、メイン三人はCGで本人たちより若くしたり逆にもっとジジイにしたりしている。だが三人とも最も若い歳に加工してもなお老け顔のオッサンでもあるせいか途中までCGの事は忘れて「あれ?そういえばこの回想シーンのデニーロ若いな」「あれ?このぺシよく観たら老けてない?CG?」「というかジジイの時と若い時どっちが加工してるんだっけ」と、観てる間によくわからなくなってくる。だからCG加工のことは途中から忘れて普通に観てた。それってある意味、贅沢なCG加工だね。その辺は同時に配信されたスコセッシ、デニーロ、パチーノ、ペシによる座談会でも語られてる(関係ないけどここでデニーロが後ろ髪を伸ばしてる髪型がカッコいい)。
他のキャラの話。フランクの話は後でするとしてフランクの次に出番が多いジミー・ホッファは「パットン将軍みたい」にまくしたてる姿が印象的(興奮すると両手を猫のニャー的な形にする)一番好きな食べ物がアイスで二番目は「ビールで蒸すのが決め手の『ラムズ』が作ったアメリカ一美味いホットドッグ」というガキ舌の男。色んな美味そうなものが出てくるが咥え煙草のオッサンが作るラムズのホットドッグは最も美味そうだ。フランクとはパジャマ着て一緒に寝たり、すねたフランクをジミーが必死になだめたりとイチャイチャが多い。フランクの最初の”親父”といえるラッセルを演じるジョー・ペシも半引退状態だったけど本作で復帰したんだっけ。今まで多かったキレる役ではなく常に静かなインテリヤクザ役だったが、ハッキリ言って怒ってないシーンでも目がめっちゃ怖い。これはペギーが懐かないのもわかる。そんな「フランクが家の外でしてる事を幼い時から常に悟っている」という、時空を超えて彼らを見る我々視聴者の分身かのような物語内で脇に追いやられている女性たちの集合体かのようなフランクの娘ペギー、このペギーの成長後の姿を演じていたアンナ・パキンもまた久々に観た。フランクが殺しをしてそのニュースを家で見てると、それを背後からペギーが見ている。同じく久しぶりに観たハーヴェイ・カイテルも、90年代に映画出まくってたので20代の時はまってた。彼の出番は少ないのでもう少し多めに出て欲しかった。彼は出番が少なく末路が描かれてないがゆえ最初から最後までクールなギャングだった。あとはアントマンの元妻の新しい夫役の人も序盤の肉屋系ギャングで出てたね。
俳優は知らないが「自分の耳がクソデカいと気にしすぎてるオッサン」ことビッグ・イヤーというキャラは何か凄く「ツイン・ピークス」に出てきそうなキャラだったので一瞬だけど印象に残った。
ジミーと犬猿の仲であるリトルガイとの争いは字幕だと「イタ公」ってところが吹き替えだと「お前らのようなもん」、吹き替えなら「クズ」って言ってるところが字幕だと‥何て言ってたか忘れたけどマイルドな表現になってて、どちらも一長一短あった。どちらもキツイ表現にしてくれよ。まぁ字幕、吹き替えどちらも楽しめる(だけど字幕では言ってる「イタ公」を吹き替えではカットしたのは、聞こえなければ子供が新たに覚えないだろう蔑称を音にしたくなかったのかなとも思いました。まぁ大人は柔らかい翻訳を読んだり聴いても「本当は多分蔑称で言ってるんだろうな」と想像つくから別に汚い言葉をわざわざ使わなくてもいいかと最近思う。そんな事言いだしたら英語リスニングするのと字幕&翻訳も違うし)。
あと酒を飲まないし部下にも飲ませないしスイカが嫌いなジミーの前で酒を飲むために酒をぶっ込んで染み込ませたスイカをジミーの前で爆喰いする組合のおっさんも良いキャラだった。「ジミーは酒を飲まねえ。そして最悪なのは側じゃ誰にも飲ませねえってこと!そしてもう一つ大事なこと‥ジミーは!スイカが!大嫌いなのさーッ!w(酒ズボー)」と非常に景気が良い。「ジミーにバレたら怖いし、会議が終わってからバーに行けば?」などとTwitterみたいなつまらない正論を吐いてる場合ではない。このようなキャラが居ないと映画も浮世も面白くない。何より景気が良いという事が一番大事だ。

 

 

フランクの、戦時中の殺人も、ラッセルやジミーの依頼によって”壁の塗装”を行う暗殺も、ライバル会社への破壊工作も、どれもまるで雑草でも抜くかのように無感情だ。
「殺しが好き」だとか「心を殺して無情に殺しを遂行」などというロマンも一切なく、本当にただ「朝起きたから歯磨きするか」といったフラットな感じで殺しや悪事を行う。戦時中も、敵兵に墓穴を掘らせて撃ち殺してその穴に落としていた。別にサディストだからでもなく単純に合理的だからそうしたのだろう(もし敵兵が拒否しても怒らずに撃ち殺して自分で穴掘って埋めるだけだろう)。
戦争で命令どおりに殺しまくってるうちにそうなった可能性もゼロではないが、本作を観てる限り多分もともとそんな男だったように見える。
最初に言ったように自分の父親は至って真面目な善人だが、何となく流れで合理的に何でもやる本作のデニーロにもまた父と似たものを感じた。よくわからないがフランクのそういった感じ‥特に深く考えず流れで合理的に何でもやる、という部分は、昭和‥戦後の人にそういったノリが多かったんじゃないかという気がした。若い時から死にものぐるいで働いてお見合いで結婚してお育てしてそのまま年取って死ぬ、特に世間に向けて主張したいことゼロみたいな(本当はあったのかもしれないが今のように手段がないし又は自己主張しようという発想がなかったので僕が聞いたことないだけかもね)。
とにかく、フランクはそんな感じだから全てを見通すフランクの娘ペギーはフランクに懐かなかった。ギャングのラッセルもまた表面上ペギーに無視されても怒らず常に優しく金や物品を与える、だがペギーは、ラッセルが弱者を踏みつけて稼いだ金を仲間の娘である自分にくれてるだけなのを本能で見抜いたのか一切懐かなかった。しかしペギーはジミーとは大の仲良しになった。ジミーの半分はカタギだったからなのかジミーは温かい部分があったのかそれとも子供のガードを打ち破るほどの人たらしだったのか、それはよくわからない(個人的にはジミーの人たらし能力によるものだと思った)。
ペギーにぶつかったという理由で‥本当は自分のメンツのために町のパン屋の頭を踏みつけるフランク、深夜”壁の塗装”に出かけるフランクなどを逐一くもりなきまなこで見ていた娘は仲良しのジミーが失踪したのに彼の妻に電話しようとしない父を見て、父の犯行を見抜いた。そしてそのまま一生口を利かなかったという。「良いところに就職して元気にやってるらしいが、ペギーはあの時に消えたよ。私の人生から」としんみり語るフランク。「自分を切った人間は、自分の人生から消えてしまう」というのは当たり前の事だが、改めて口に出して言われるとハッ!とするものがある。俺の人生から何人消えたか‥逆に何人の人生から俺が消えたか‥考えても仕方ないので俺は考えるのをやめた。さすがのフランクも、娘に見放されたら狼狽したが時既に遅し。妻も死んだし家族は誰もフランクの面倒を見ようとしなかった。いつもおとなしかった妻と娘たちだったが彼女達はただフランクに怯えていただけだったのだ。
さすがのフランクも娘たちに見放されたことは哀しんだようだが、次のカットではすぐさま自分の棺桶を買いに行って霊廟の段取りを決めるあたり、さすがフランク。「だって家族に見放されたんだから死ぬ前に自分で自分を葬らなきゃ仕方ないじゃないか。他にどうしろってんだ?笑」とでも言いそうだ。人間性の欠けた場面のはずだが彼のこういうところは嫌いになれない。自分にそういう部分があるせいなのか、それとも自分の死に対して感情を持ち込まず合理的に向き合う感じが僕の好きな猫や象の死に方に似てるせいなのか。。どちらにしてもあまり良い傾向とは言えない。
本作は三時間半近くあって長い。僕は近年のスコセッシの映画の妙な長さはあまり好きではないのだが(たとえばめちゃくちゃ面白い「ウルフ・オブ・ウォールストリート」も長くて後半すっかり飽きてしまった)それでも本作は凄く面白かった。スコセッシ映画が久しぶりなせいなのか、それともデニーロやペシが久々に帰ってきたせいなのか、あるいはその両方か。ダレそうになるとフランクの鮮やかな暗殺シーンが挟み込まれたりして飽きさせない。Netflixなので「長いな」と思えば分けて観ればいい。僕も長いから初見ではドラマみたいに三回に分けて観て、最後まで観た結果「やっぱこれ一気に観るもんだな」と悟って四日目は最初から最後まで一気に観た(とはいえやっぱ長いので途中で食事休憩を入れた)。「いや映画は当然全部劇場で観るべきだ!」という人は、東京なら吉祥寺アップリンクで上映中なので行けばいいし。それぞれ好きに観る時代だ。
本作の構成「成り上がって→不協和音が鳴り始め→花火が消える」という流れは「グッドフェローズ」と同じ段取りで(というか映画は大抵そういう流れだが)、そういう感じでギャング映画の終盤では「成り上がってる最初は景気良かったけど破滅する後半は辛気臭いな」と思いがちだが、本作の後半そしてラストはめっちゃ良かった。本作も辛気臭いがフランクの合理的なキャラが渇いてるのでメソメソした感じがしなくて良い。どちらかというとラッセルの方は娑婆に居た時は常に絶好調だったのに獄中で歳取るとヨボヨボになりジミーを殺害した事などを悔いたりとメソメソする役割だった。ジミーは別に良い人間でもなんでもないが自分のやった事やそれによって惨めになった境遇などを全て受け入れていた。ただ死後に何か救いを求めてる哀れさを最後に見せてるあたり最高のラストだった(フランクとは理由は違うが僕も昔からドア少し開けてから寝るし‥理由は猫が通れるようにだけど。むしろ少し開いてたらお化けが出そうで怖い。だが猫が通るから仕方がない)。本作のラストは恐らく哀れなラストとして撮られてるんだろうけど、アスペっぽいフランクの性格に自分や自分の父に通じるものを感じてか僕は少し痛快というか好感を持った。本作のラストがあまりに良かったせいか、今まで観た全てのギャング・ヤクザ・犯罪映画の、ロマンや情感を伴って終わるラストが全てゴミに思えてきた。これは一過性のものではなく今後もずっとそう思いそう。だがスコセッシは「若い時はブイブイいわせてたが皆、孤独な最期を迎えた」というつもりで撮ってる気がするが貧困の独身日本人男性の俺からしたら「家族に縁切られたけど、思い出があるし最後まで自分の面倒見れるだけ金持ってていいなぁ」と羨んでしまうという誤った感想を抱いてしまいどうしようもない。フィクションを正しく味わうには観る側も余裕がないとダメだなと思った。
これは何度も観れそうなので新しい友だちが出来たような気分にもなった。

 

 

そんな感じでした(ドアは少し開けておいてください)
〈他のマーティン・スコセッシ監督作〉
『沈黙 -サイレンス-』(2016)/『SHOGUN 将軍』(2024)の擬似的な続編として観るという変な動機で見たが実際「将軍」の続編みたいに作風が似てたし映画自体も面白かった✟ - gock221B

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The Irishman (2019) - IMDb

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Amazon: アイリッシュマン(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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『ブライトバーン/恐怖の拡散者』(2019)/僕が苦手な悪い子供ホラーかつ露悪的スーパーマン映画だったが意外と面白かった👦

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原題:Brightburn 監督:デヴィッド・ヤロヴェスキー 製作:ジェームズ・ガン
脚本:ブライアン・ガン、マーク・ガン 製作国:アメリカ 上映時間:91分

 

 

 

前回の更新から最近観たそこそこ面白かった映画は「クリスマスに降る夜は」「いつかはマイ・ベイビー」「犬ヶ島」「スリーピー・ホロウ」「全員死刑」イマイチだったのは「イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路-」つまんなかったのは「貞子」。なんかどれもあまり感想書く気にならなかった。そういえば「ジョーカー」も観て面白かったけど既に大勢が感想書いてるし凄い好きというわけでもないので特に書かなくていいか‥という感じ。昨夜観た本作は公開されたばかりの新作だし感想書く事にした。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズや「スーパー!」でお馴染みのジェームズ・ガン制作、そしてジェームズ・ガンの兄弟が脚本‥というガッツリとジェームズ・ガン企画なため「ジェームズ・ガン制作!」って事を全面に押し出して宣伝してるため、映画の監督が誰か一々調べないライト層からはジェームズ・ガンの新しい監督作だと大いに勘違いされてる本作(「ホステル」がタランティーノ作品だと勘違いする人が多いのと同じ)。
アメリカ本国ではコケた上に批評家からもオーディエンスからも低評価。しかも僕こういう「悪いスーパーマン」ものみたいな90年代アメコミで流行ったようなスーパーマンプライムみたいな露悪的なキャラは嫌いだし子供が悪いことするホラーも嫌いなので、観る予定なかったが、たまたま暇を潰さなくてはいけない時に居た街でやってたから観た。ちなみに本作には原作がないからアメコミ映画でもない。あくまで「地球に落ちたスーパーマンが悪い子だったら」というだけのオリジナルなホラー映画。
ネタバレあり

 

 


田舎に住む善良な夫婦と、夫婦に拾われた12歳の息子ブランドンの話。
夫婦の妻の方はジェームズ・ガンの長編デビュー作「スリザー (2006)」でも主人公だったエリザベス・バンクスジェームズ・ガンは身内を大勢起用するからね‥。ジェームズ・ガン映画にいつも出てくるヨンドゥ役でお馴染みのマイケル・ルーカーもカメオで出てくる。
設定は完全にスーパーマンと同じ。
なかなか子供が出来ない善良な夫婦の家の近所に、謎の宇宙ポッドが墜落。
中に居たのがブランドン。宇宙ポッドは夫婦によって家の地下に隠してある。
12歳の誕生日が近づくと宇宙ポッドからの謎の電波によりブランドンのスーパーパワーが覚醒。
怪力。飛行。ヒートビジョン。超聴覚に目覚める(あと多分、冷気も使えるっぽい)。思ってた以上に何から何までスーパーマンの設定そのまま。DCコミックがその気になって訴えればスーパーマンのネガティブなパクリとして裁判で余裕で負けれるくらい同じ。
パッと見た感じ、スーパーマンよりちょい弱くてアイアンマンくらいの強さ?
ブランドンは突然、自分に備わったスーパーパワーに戸惑うが、すぐに子供らしく「自分はスーパー(特別)な人間なんだ」と増長し周囲の人間を見下し始める。
今まで良い子だったのに徐々に反抗的になる。
これは「可愛かった子供が反抗期になったら全く理解できないモンスターにしか見えなくなる」っていう両親の感覚をホラー映画化したものなんだろう。
両親はブランドンのベッドの下からエロい写真(女性用下着の広告)を発見。「あいつも性欲が湧いてきたかぁ笑」とか言ってると内臓?などのグロい写真なども所持しており、更にブランドンは飼ってる家畜の鶏を皆殺しにしたっぽく、息子の性癖が不安になる両親。完全にシリアルキラーの少年時代状態のブランドン。
パパはブランドンを狩りに連れていき「女の子の身体に興味出るのは自然なことだ」と性教育する。それを曲解したブランドンは、さっそく親切にしてくれていた好きな女子の部屋に勝手に侵入。後日、当然その女子はキモがったのでカッと来たブランドンは女子の手を握りつぶす。その後、好きな女子のママを疎ましく感じて速攻で惨殺。個人的には、ブランドンと女子は子供同士なので「女子の部屋に不法侵入しただけ」って描写に留まってたけど本当は「レイプした」と描きたかったんだと思う。
その後、ブランドンはちょっと変なんじゃないかと懸念した両親は、知り合い夫婦にカウンセリングを頼むが、ブランドンにすぐさま惨殺される。
都合の悪いことが起きるとすぐ惨殺してしまうブランドン。そしてそれを疑う者がいたら子供なのでバレバレの嘘をつく。更に追求されたら速攻で惨殺。この繰り返し。
周囲の人物がやたら死ぬので両親もさすがに異星人の子であるブランドンを疑い出す。
だがブランドンへの愛情が強いママはその疑いを自分の中で打ち消し、そのせいで惨劇が更に広がっていく。
 

 

 

そんな感じでどんどん酷いことが起こる。
というか、これは完全にスラッシャー映画だね。スラッシャー映画というのは「ハロウィン」「悪魔のいけにえ」「エルム街の悪夢」「13日の金曜日」とか、ああいう感じの異常な殺人鬼が連続殺人していくホラー映画のジャンルね。この映画はそれらと同じ種類の映画。ただ子供が‥「スーパーマンの子供時代めっちゃ悪い子だったら?」という種類の殺人鬼だというのが本作の独自性。他の殺人鬼より数十倍強いね。スーパーヒーロー映画全盛の今だからこそウケると思ったんだろう。
最初に言ったように、こういうDCコミックにおけるスーパーマン・プライム(別の次元のアホで残虐なスーパーマン)とか、まだ観てないけどアマプラの「ザ・ボーイズ」みたいに「傲慢な殺人鬼スーパーマン」っていう露悪的スーパーマンキャラは、あんまり好きじゃないので観る前は「このガキにムカつきそうだなぁ。ムカつくと不快だから嫌だな」と思いながら観たけど、ブランドンは早い段階で想像以上のモンスターになっちゃうので、こうなると天災と変わらないし未成熟な子供という事もあって、ムカつきはするが懸念してたほどはムカつかなかった。むしろ、ブランドンが悪い事してると信じたくないあまり彼の行いから目を逸らして気付かないようにしてるママの方にムカついた。そして、この子役がまた可愛さと不気味さの丁度いい塩梅の顔しててハマり役だった(「セッション」主演でお馴染みのマイルズ・テラーに似ている)。
割と最初から最後まで、観る前の想像通りのスラッシャー展開が繰り広げられるだけだしブランドンも全く好きになれない殺人鬼なのだが、これが不思議と面白かったのが意外だった。なんでだろ?単純に演出が上手いのかな。別にもう一回観ようとか映像ソフト買おうとかは全く思わないが観てる間は最後まで充分面白かった。アメリカ本国でコケた上に低評価だったので、てっきりつまんないのかと思ってたが意外と面白かった。
むしろ何でヒットしなかった上に低評価だったのか、その方が知りたい。
「ザ・ボーイズ」は人気なわけだから、やはり子供が殺しをしたり逆にその子供を殺そうとする大人の場面があるから観客が嫌ったのかもしれない。僕はというと早い段階でスーパーヒーローものではなく只のスラッシャー映画だと思って観たので、そうすると本作はスラッシャーホラーの中では相当面白い部類に入るので僕の評価は高かった。
ネタバレするとこのガキが惨殺しまくってそのまま逃げおおせてしまう。そしてガキが更に大暴れしてる様子をビリー・アイリッシュの「Bad Guy」に乗せて見せていって終わり(ビリーアイリッシュ凄い好きでこの曲もほぼ毎日聴いてるんだが、好きになれないブランドンの犯罪に乗せて流れるので複雑な気持ちになった)。メタヒューマンによる犯罪だと気づいてるのはマイケル・ルーカー演じる作家だか学者っぽい人のみ。この子がスーパーパワーを持ってるらしきことは両親しか感づいてなかったし両親はそれを誰にも言ってない。自分ひとりでその片鱗を嗅ぎ取った有能な警官もブランドンに一瞬でグチャグチャにされて即死。銃撃も効かない。スーパーマンで言うところのクリプトナイトに相当する弱点を、ママだけは知ってた。だけどそのママも誰にも言えなくなってしまった。ブランドンはしばらく安泰だろう。
ムカつくツラのガキが殺しまくって一切罰を受けずに終わっちゃうのが低評価の原因だったのかな?この子が何で悪くなるのか原因があるのかと思ってたら(たとえばいじめられるとか大事にしていたガールフレンドやペットを殺されるとか)一切なしでいきなりピュア・イーヴィルになっただけだった。この子の母星がめっちゃ悪い奴らばかり版のクリプトン星で、邪悪な心を忘れてたブランドンを電波で邪悪さを目覚めさせたんだろう。説明ないので推測するしかないが多分そうだろ。
映画は面白かったがブランドンが殺人を謳歌して終わるので、ヘイトを溜めたままスッキリしない帰宅を強いられた。
そういった感じであまり好きになれないにも関わらず最初から最後まで凄く面白かった。主観的な「面白い・面白くない」と「好き・嫌い」そして客観的な「高評価・低評価」、この3つは分けて考えるべき。それを自分の中で測ると「面白いけど好きじゃない、でも高い評価の映画」という結論。
しかし、本家本元のスーパーマン映画が全く上手くいってないのに、こんな悪いスーパーマン映画を作られても‥という感じはした(勿論、DCワーナーと本作は何の関係もないのだが)スーパーマン映画がMCUみたいに大ヒットしてる中にカウンターとして本作が公開されたのならともかく、劇場に明るく正しいスーパーマンが不在でこんなクズ子供スーパーマン大暴れ!を見せられても不快だなぁ。しかも制作したのはDCのライバルでDCに大きく大勝してるMCU中心人物の一人ジェームズ・ガンなのも少しモヤモヤする。僕はジェームズ・ガンの大ファンだし完全にMCU派だけど「こんな悪いスーパーマン出したければオリジナルじゃなくてガーディアンズとかに出せばいいじゃん‥」と思った。オリジナル作品とはいえ完全に「スーパーマンを悪くしたキャラ」だというのは一目瞭然だからね。それをするのが悪いわけではないが少しモヤモヤする微妙なところ。
というか何度も言ってきたが「スーパーヒーローが悪かったら?」という高2病的テーマがそもそも苦手。こんなのは普通のヒーロー映画の敵として出してサラッと処理して、それで終わりでいいだろ(たとえばDC映画ならスーパーマンプライム出すとかMARVELならセントリー出すとか‥)。こういう、スーパーヒーロで不必要な暴力とかセックス描写、シンプルな正義の否定とか勧善懲悪アンチみたいな‥そういうグリム&グリッティ的なノリは苦手なんですよね。こんなテーマは大して面白くないから、さっさと済ませて普通にポジティブなヒーロー映画を作って、その中で表現して欲しいところ。こんな露悪的なメタヒューマンをメインディッシュに据えたら、ヒーローあんまり好きじゃない奴が観て「そうだそうだ!スーパーマンとか実際居たらヤバくね?!」とかアメコミが30年前くらいに通過した事を今更大声で言いだす、そんなアメコミ反抗期みたいな奴が増えたらウザいな‥と不安に思った。‥しかし、そんな事まだ誰も言ってない。誰も言ってないのにそんな奴の台詞を勝手に想像して怒るのはパラノイアっぽいし、あまり良くない状態だ(よく言うだろ?パラノイアパラノイアを知るって)。
今思ったが、そういうグリム&グリッティ的な展開が流行る時期を個人的にアメコミの思春期と呼んでるが、しかしアメコミは数十年前に通り過ぎたアメコミ思春期を「アメコミ映画」はまだやってなかった。だから今「ザ・ボーイズ」とか本作でやってるのかもしれんね。それならさっさと済ませて、そして次のフェイズに移行してほしい。

※追記
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「最後のおまけでちょっとしたサプライズがある」と聞いてたが実際に観て「あぁ、お友達のマイケル・ルーカーが出るってだけね?そして他にも悪のメタヒューマンがいっぱいいるっていう続編へのヒキね。だけどブランドンはムカつくし続編は特に要らないよ」と思ってたが、この上の画面の左下見ればわかるように六人の悪魔超人の画像の中にジェームズ・ガン監督作「スーパー!(2010)」の主人公クリムゾン・ボルトがいた!劇場で全然気づかなかった。しかも絵とかじゃなく写真だし明確に「スーパー!」世界と繋がってるって事だよね。僕「スーパー!」めちゃくちゃ好きなんですよ。好きな映画ベスト10に入るし下手したら「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と同じかそれ以上に好きかもしれん。
マイケル・ルーカー演じるYoutuber?が言う悪魔超人は、まず本作のブランドン(スーパーマン)、腕をクロスして縄を持つ怖い女(ワンダーウーマン)、不気味な半魚人(アクアマン)、マント付けたグレイ型エイリアン(マーシャン・マンハンター?)。どうやらジャスティス・リーグのホラー版パロディっぽい。となるとパワーを持たない狂人クリムゾン・ボルトはバットマンのポジションでしょう!あと一人伏せられてるのは誰だろう。フラッシュ?グリーンランタン?いや、隠してあるって事はもっと驚く凄い奴なんだろう。
恐らくチームを作るが「なんやこいつら悪人やないか!」と気づいたクリムゾンボルトが全員レンチで惨殺する展開に違いない!無敵のブランドンも宇宙船の素材でレンチ作って殴れば殺せる。クリムゾンボルトがブランドンをグチャグチャに‥これは絶対に観たい!きっとマイケル・ルーカー演じる狂ったYoutuberとも共闘してくれるに違いない。「スーパー!」と繋がってると知ったら70点くらいだと思ってた本作の評価が、ただそれだけの事で80点くらいに急上昇した。
本作はコケたもののソフトの売上などを考慮すると収支トントンにはなるらしく続編を作ろうと思えば作れるみたい。そして最近ジェームズ・ガンは「僕は『ザ・スーサイド・スクワッド』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3』監督するから続編の監督できんが制作なら出来る」と言ってる
この「ジェームズ・ガン・ユニバース」を逃せば、もう一度クリムゾン・ボルトの勇姿を観る機会なんて永久にないだろう。
さっきまでは「面白かったけどブランドンの顔ムカつくから別に続編やんなくていいよ」とか思ってたが今はもう続編が絶対に観たくなっている。新スースク、ガーディアンズ3もそうだがガンには期待しかない。

 

 

そんな感じでした
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)/この一ヶ月くらい何度も観てるうち物凄い好きになった🦝 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)/誰もが欲しがる強大なパワーを自ら棄て去るスターロードのカッコよさ🦝 - gock221B
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)/前作とハーレイ単独作で上手くやれなかった部分を全部こなすガン監督。そして本作そのものより魅力的なピースメイカー⭐ - gock221B
『アイ・アム・グルート』(2022) 全5話/面白いとかつまらないとか以前の話で完全に幼児向けで無味無臭。それより異常に神経質なまでに「誰も死んでませんよ!」と全話で示してくる勢いが凄い!🌳 - gock221B
『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022) 全8話/「過ちを犯したクソ野郎にも更生の余地はあるのでは?」とジェームズ・ガンが問いかける傑作ドラマ🚽 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/ホリデー・スペシャル』(2022)/暖かい楽しさ!その一方で少年期のトラウマに対峙する以外させてもらえないスターロードと現実のバッシングを反映してずっと暗いままのクリプラ。中年なのでヒーローがキツくなってきたがX-MENまでは頑張る話🦝🎅🎄 - gock221B

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Brightburn (2019) - IMDb

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『ゲーム・オブ・スローンズ』〈シーズン1-8〉(2011-2019) 全73話/長いスパンで変化する人間描写や女性の描き方、全体的な嫌戦ムードが良かった、が‥🐺

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原題:Game of Thrones〈Season.1 - 8〉 Episode.1 - 73
企画&製作総指揮:デヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイスほか

共同製作総指揮&現作: ジョージ・R・R・マーティン「氷と炎の歌 (1996-)」※刊行継続中
制作局:HBO 
製作国:アメリカ/イギリス 上映時間:全73話、各話約60~90分

 

 

 

冬来たる(Winter Is Coming)
こないだ完結したばかりのこの(日本と北朝鮮以外の)全世界で大人気だったドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」(以下GOT)。
「全世界で大人気だが日本人だけイマイチ食いつかない」という作品は大抵、傑作なので、その魅力を知りたかったが自分はドラマという形式があまり好きでない(数時間以内に結末まで行きたいので)。しかも本作は登場人物めっちゃ多い上に一話一時間以上の話が全73話もある‥と想像するだけでしんどくなってスルーしてたが本作のクリエーター、デヴィッド・ベニオフ&D・B・ワイス通称D&Dが次のスター・ウォーズ三部作を作る事になったし(本作を全話観終えた翌日にD&DはSWから離脱して消えた)、本作がヒットしすぎて「まるでGOTの○○のような」などと世界の共通認識みたいになってるし本作は「映像フィクションの流れを変えた」などとよく言われてて「GOTを観ずして今後の映像フィクションは語れない」みたいなムードが充満してるし、もう無視できなくなったのでHuluに再加入して観ることにした。観たいというより履修って感じ。
以前、何度か観ようとしたことがあったが、その都度「何だか諸名家や、覚えにくい名前の登場人物が無限に出てくる‥」と何度も数話で脱落した失敗を踏まえ、今回は相関図やWikiを片手に鑑賞してシーズン1を観てるうちに相関図や世界観が大体わかってきてヒットの切っ掛けになったというシーズン1第9話「べイラー大聖堂」まで観たら一気に惹き込まれて連日一気に観れた。サプライズが凄いってだけじゃなくて(というか知ってたし)演出そのものが見事なので前のめりになれた感じですね(後のレッドウェディングとかもそう)。
だから過去にタイムリープして「GOT全然面白くないな‥どこまで観たら入っていけるんだ?」と不安に思って何度も脱落してた自分に会えたら「1-9まで観たら入っていけるよ」と教える事ができる。実際、周りで脱落した人も1-9までの間に観るの止めた人は多かった。
そこからは面白いのでシーズン5までの全50話は一晩数話づつ観て一気に進んだが、S5があまりに陰惨なので(いつもなら楽しい冒険をしていたキャラさえも陰鬱な展開になって気持ちの逃げ場がない)ここで一回ウンザリして一週間くらいストップしていた(放送当時もこの辺で批判が多くて以降は若干マイルドになったらしい)。一週間開けたら回復したので残り23話を一気に観れた。
そういった感じで短期間で全73話観終えたのでHuluも無事解約できた。
細かい感想書いてたらキリないので物凄くざっくりした感想だけ書くだけにする。
基本全部ネタバレ

 

 

🐺🐲🦁

 

 
生活様式や文化は、限りなく我々が住むこの地球の、中世ヨーロッパを思わせる世界だけど地球というわけでもない、地球みたいな惑星の中世の話(SFではなくファンタジーなので原作者もその辺はSFみたいにキッチリ設定作ってるわけではなく「何となくこういう世界があるみたい」とボンヤリ感じてほしいみたい)。
物語の舞台の殆どは〈ウェスタロス〉という大陸にある〈七王国〉。七王国は〈鉄の玉座〉に就く王の中の王と9つの諸名家が収める。そして七王国が巨大な壁で閉ざした北の未踏地帯〈壁の北側〉、そして〈エッソス〉という隣の大陸が舞台になっている。ウェスタロスとエッソス以外にも西に大陸があるかもしれないっぽいが本作にはこの2つしか出てこない。ウェスタロスには四季が夏と冬しか来ないらしく、しかも一旦冬が来たらその冬が最大10年くらい続いたりする世界。
世界の殆どは人間が営む中世世界だが、ドラゴンや巨人や「森の子ら」と呼ばれる妖精っぽいヒューマノイドもいるし壁の北側にはホワイトウォーカーというゾンビを操る謎の人種もいる。またスーパーナチュラルな存在ではないが壁の北側には国に属さない〈野人〉という原始的な人種がおりウェスタロス本土にも国に属さない〈ブラザーフッド〉という集団もいる。人々は中世の人類みたいな普通の暮らしぶりだが、この世界にも魔法があり、魔術師や、生物の意識を乗っ取ることの出来る〈狼潜り(ウォーグ)〉という能力を持った者、死者を蘇らせる力を持った者、超自然的な力を持った〈三つ目の鴉〉などがいる。そういった幻獣や魔法などのファンタジー要素はあるが、この世界の中では「失われた伝説の言い伝え」みたいな要素で、ドラゴンは絶滅したと思われているし魔法を使える者なども全話通しても数人しか居ないので基本的には信じられていない。暗殺者ギルド〈顔のない男たち〉もスーパーナチュラルかな?と思ったけど彼らはニンジャみたいな超技術っぽい。
そういったファンタジー要素は忘れた頃に出てくる程度で、物語の殆どはあくまでも人間同士の駆け引きや残忍な処刑そして人間ドラマがメインになっている。ファンタジー要素は物語の中心ではなく物語を進めるための潤滑油のような感じ。もしくは「ドラゴン=核兵器」「スリープウィーカーと死の軍団=死そのものの比喩」「森の子=先住民」といった感じで色んなもののメタファーになっている。

物語の殆どは、幾つかの諸名家による「『鉄の玉座』に就いて七王国を統べるのは誰だ?」という愛と憎しみの権力争いがメイン。
決まった主人公は居ないが、中でも主人公格と言えるのが北部のお人好し過ぎてズタズタにされて復讐を誓う北部の諸名家「スターク家」、高圧的で奸計に長け残虐な「ラニスター家」。かつて鉄の玉座に座って七王国を支配していたが今は滅ぼされてエッソスに逃げていたが伝説の生き物ドラゴンや配下を着々と増やしてウェスタロスに帰って捲土重来を悲願とする「ターガリアン家(デナーリス一人だけだが)」。そして罪人や世捨て人が囚人のような立場となって北の壁を警護し続ける組織「ナイツウォッチ」。この三つの家&一つの組織がほぼ主人公っぽいポジション。
あとは他の諸名家「タイレル家」「ボルトン家」「グレイジョイ家」「マーテル家」「フレイ家」「タリー家」「アリン家」‥他にも色々ある幾つかの諸名家や諸侯も熾烈な殺し合いをする。諸名家以外にも〈ブラザーフッド〉や、壁の北にいる〈野人〉たちや人間ですらない〈ホワイトウォーカーと死の軍団〉なども絡んでくる。
ファンタジー要素も極たまに出てくる残虐なヨーロッパ三国志といった感じ。

物語開始時、鉄の玉座に就いていたのはロバート・バラシオン王。彼はシーズン1の途中で事故死する。そんなロバート王の弟分であった北部を束ねる善人の総督ネッド・スターク(ショーン・ビーン)。彼はシーズン1を観る限り主人公であるかのように描かれているが突然、故ロバート王の王妃であったサーセイの実家‥ラニスター家によって斬首される。この、視聴者が物語の登場人物や設定を飲み込んでき始めたシーズン1終盤で「主人公かと思って観ていたメインキャラがいきなり殺される」というサプライズと共に一気に先が観たくなる。まぁネッドが死ぬのは他人が言うのを聞いて知ってたしショーン・ビーンという時点で長生き出来なさそうだが、さっきも言ったように本作のサプライズの時はいつも演出が良い。
鉄の玉座が空席になり、死んだロバート王の王妃だったサーセイの息子ジェフリーが、自分が傀儡だとも気づいていないがラニスター家という強力なバックを盾に好き勝手しまくる虚ろな暗君となった。
このジェフリーが本当に憎たらしすぎる。彼も本作がブレイクした要因の一つだろう。
ジェフリーの存在感は本作ナンバーワンで、特に何も悪いことしてない微笑んでるだけの第一話の彼を見ても「こいつが死ぬところを見たい‥」というネイティブな憎しみが湧いてくる顔だ(若い時のショーン・ペンみたいなもん)。ジェフリーの憎たらしさは「一体どんな死に方するんだろう?」という期待を煽ってシリーズを引っ張り続ける。ジェフリーの後も、ラムジーとかユーロンなどの憎たらしい要素だけで出来た悪いキャラが出てきたが、ラムジーやユーロンは一面的で漫画っぽすぎて演技も単調だし、あまり憎くならなかった。それより様々な人間的な面を見せるジェフリーは「俺の周囲にも居そう」と感じて存在感が他の悪人の10倍くらいあった。
そうして新たな王が誕生したりして二転三転が続いて玉座争いが続く。
非業の死を遂げたネッド・スタークの子供達はバラバラになった、復讐を誓って北部を率いてラニスター家に弓を引くネッドの王妃キャトリンと長男ロブ・スターク。諸名家をたらい回しにされるうちにお花畑王女から聡明な指導者へと成長していくサンサ王女。復讐を誓って旅をするアリア王女。ラニスター家に下半身不随にされるが三つ目の鴉を探して旅をするブラン王子。ネッド・スタークの落し子ジョン・スノウはナイツウォッチに入隊。彼ら彼女らは、破れて殺されたり又は強く成長していく。

 

 

 

🐺なんか感想書く前の作品設定やあらすじ書いただけで長くなってしまった。既に観た人には不要だし未見の人が上記を読んでもピンと来ないだろうから全くもってここまでの文章は書く意味なかった気もするがFUCKする前には口づけしなきゃいけないようにどうしても感想の前に前置きを書いてしまう。順番ってものがある(世界の法則と言い換えてもいい)。
自分が好きな部分や気になったところを書いていこう。
本作の売り?となる部分は原作の映像化って事以外にも、お決まりの展開をズラすリアル志向というのがある。善人だろうが子供だろうが主人公っぽいメインキャラだろうが突然、惨殺されたりする。「現実では善人や子供やワンちゃんだろうが無残に死ぬ」って事の表現なんだろう。このサプライズは「おっ!」と惹き込まれるものがあったが、それがあまりに連発されるので確かに面白くはあるが一番陰惨だったシーズン5終盤では本当に嫌な気分になった。割と誠実な姿勢でそれをやってるので批判する気はないが単純に気分が悪い。アメリカ映画において犬は良心の象徴とも言える傷つけてほしくない存在だが本作のダイヤウルフは三回も惨殺されたり死体も冒涜されてるしウンザリした。週に一本観てたらまだマシだったかもしれんが一気観したので喰らってしまったのか。普段気の毒な映画とか陰惨な場面とか散々観てるはずなのに本作は良くも悪くも喰らってしまった。「勧善懲悪にしろ」とは全く思わないが、ちょっとそういった殺伐とした逆張り展開があまりに多く、また「このように実際には善人であっても無残に殺されますよおお!w」といった「視聴者にショックを与えてやろう」というドヤ感も若干感じた。これは気のせいかもしれんが、そういう露悪的な態度は苦手なんで、こういった部分は一長一短あるなと思った、というかもう少し普通でいい。悲惨な場面と楽しい場面が繰り返されると観てるこちらも「良い奴が幸せになる」「悪い奴に天罰が下る」というお決まりの展開を期待しなくなってくる。いやむしろそんな事を願う自分が甘いように感じて、考え方が矯正されていく。その感じが何だかDV受けてそれに慣れようとする人の感覚みたいで嫌だった。また残虐描写も、正義感あふれる善人も惨殺されるだけでなく遺体を弄ばれたり川に投げ捨てられたりモブ兵士がそれを嘲笑ってたり罪のない優しい幼女が生きたまま焼き殺されたりして、かなり気分が悪い。「戦争って嫌だな」と思わせるためだろうし、それは良い傾向だと思うが気分悪くなるのは確かだ。悲惨な出来事が起きるのもリアルで良いが、それがあまりに多すぎると鑑賞のノイズにもなると思った。レイプは殆どなかったのは良かったけど、これでレイプも多かったらもう観るの嫌になってただろう、レイプは殆ど無いのは助かったがその代わり女性キャラをレイプしようとする所作やセクハラや軽んじる発言とかは多いので嫌な気分になるのは変わりないけども。MCUや「ロード・オブ・ザ・リング」ほど優しい展開にする必要もないが本作は厳しすぎる。ちょうど中間に位置する「スター・ウォーズ」くらいの殺伐さ‥四肢欠損のあるSWくらいが一番丁度いい塩梅かもしれない。
残虐表現のある映画は平気なのに本作では何故こんなに嫌なのか考えたけど、キャラが後に改心したり非道なキャラもそうなる過去を伺わせたりするので非常に人間臭いのが嫌なんだろうなと思った。人生の一瞬だけ切り取った映画に出てくる悪人なら「こいつはナチュラルボーンキラーなピュアイーヴィルなんだな」とモンスターとして感じるので、それは天災みたいなもんなので受け流せるが本作の場合、長いスパンで「この悪人も人間です」と示されるので怪物として自分と切り離すことができないからだろうなと思った。怪物だと思えれば犬に噛まれたと思えるが自分に危害を加えた者が家族や飼い犬には優しかったりしたら許せなくなる。そういう感じだろう(わかる?言いたいこと)。
また、善人が平気で惨殺されたりする裏返しとして、悪人は割とあっさり死ぬ。
「このクソ野郎は苦しんで死んでほしい!」という感情は当然僕も持つので、悪人があっさり死んだりすると「それだけかい!」と思ったりはするものの結果的にはこれでいい。憎い悪人が、視聴者をスッキリさせるために長い時間苦しんで死ぬってなったら、それは勧善懲悪ポルノになってしまい、そうなるとドラマじゃなくてバラエティ番組みたいになっちゃうもんね。

🐙本作の一番良い部分は長いスパンでキャラクターが大きく変化していくところ。
一番変化が大きいのはやはりシオン・グレイジョイだろう。スターク家で家族同然に育った彼は好色で傲慢なクソ野郎でスタークを裏切って今まで世話になった人とかを惨殺する。その直後ボルトン家の落し子、サディストのラムジーに捕まって心身ともに拷問されたり去勢されて別人のように萎縮した奴隷になる、やがて勇気を振り絞って身内を救い(この時ラムジーの愛人を落下死させるシーンがめっちゃカッコいい映像)、遂にはかつて裏切ったスターク家のために命をかける、去勢されてるから金的蹴りされても一切効かずニヤリとする場面もカッコよかった。どうでもいいがTwitterで検索したら日本人女性はほぼシオンとラムジーの話しかしていないので観る前は主人公なのかと思ってた。次に”キングスレイヤー”ことジェイミー・ラニスター。彼は第一話で保身のため9歳のブラン・スタークを塔から突き落として下半身不随にするという最低の人間だったがスタークの捕虜となりクソまみれとなり自慢の利き手も失い、本作唯一の高潔な女性騎士ブライエニーに助けられたり助けたりするうちに人間らしい暖かい感情が芽生える。それはハウンドも同様。お転婆姫のアリア・スタークはハウンドと旅したり〈顔のない男たち〉の修行を受けて最強の暗殺者へと成長する。サンサ・スタークはかなり長い期間虐げられるだけの気の毒なお姫様キャラだったが、その経験を経て自由の身になった頃には立派な北部の指導者へと成長していた。
一人の人間が大きく変化する、それらの部分は一人の人間に多面的な表情を与える。
「月曜日に出会ってめっちゃ嫌な奴という印象になった、だけど君が会っていない火曜日に改心して残りの日曜日までめっちゃ良い奴だとしたら?君は月曜しか会ってないから彼が実は良い奴になったという事を知らんだろうが人とはそういう寒暖計の様な面がある」という長いスパンの神の視点で一人の人間の多様な面を見ることが出来る。これは短い時間を切り取った「映画」メディアでは難しい長所だと思った。
これによって悪人も単純に憎めなくなるし普段の生活でも、たった一言の失言や失敗で断罪したりするのは止めようと思ったし、その逆で良いルックスで甘言ばかり言う人も易易と信用しない方が良いなと思った。
それにしても自分をブッ殺そうとしてた者とか自分の家族を殺した者と、数日後には味方になって共に行動したりするのが多くて「人間って不思議だな」と思った。本作の登場人物は直情型なのにも関わらず家の事を考えると広い視野で自制せざるを得なくなってくる。国が一個人に強いるものが重すぎるよな。そして国はその借りを一個人にはついぞ返そうともしない。

👱🏻‍♀️そして女性の活躍を多く描くのも本作の良いところだ。だが「女性を活躍させましたよ!」って感じの、なんちゃってポリコレではなく女性の良い面も悪い面も描き、活躍するだけではなく力なき女性は無残に惨殺されたりする(野人の女オシャとかリトルフィンガーがスパイさせてた娼婦は好きだったので無残に殺されて悲しかった)。適当に活躍させるだけではなく女性が凄い酷い目に遭う‥サンサとか顕著ですね。そういう描写って形だけのフェミニズムではなく、もっと真摯なものを感じた。そういった本作の一番いいところの多くは中盤で数多く観ることが出来るので中盤あたり観てる時は「このドラマ、神では?」と思わされた。

🐦七王国の玉座争いやスターク家の子供達の運命やデナーリスの旅路と並行して、大きなストーリーラインは超自然的存在ホワイトウォーカーとの対決。
ナイツウォッチに入隊したジョン・スノウは、ナイツウォッチ内でプロップスを高めてのし上がり若き総帥となり敵対していた野人や巨人をも味方につけ、そしてシーズン1から引っ張ってきた恐ろしい怪物ホワイトウォーカーと、多くのスターク家の子たちと合流した最終章でぶつかる。‥と、こう書くと少年漫画の主人公としか思えないジョン・スノウ。何も知らないジョン・スノウ。実際に彼は主人公に近い英雄だし活躍を文章だけで読むと確かに凄い英雄に見えるのだが、彼が七王国から切り離された壁の北で童貞を捨てたり要領を得ないボンヤリした冒険してる様子は、ジョンなりには大変なんだろうが七王国での熾烈な玉座争いに比べると大学生が遊んでるようにしか見えず「随分のんびりしてるな」と、ナイツウォッチの描写は当分の間面白くなかった(シーズン1に至っては本当に山でのんびりしてるだけだし)。
そもそもナイツウォッチも、衣装はカッコいいし「ジェダイみたいなカッコいい組織なのか?」と最初は期待したが、家を追い出された者や只の犯罪者が送り込まれてるだけで殆ど全員無能なのも観てて辛いところだ。剣の腕も別に強くない(むしろ七王国の普通の騎士よりずっと弱い)そんな中、一番無能と思われた名家を追い出された大柄のサムが、物語が進むに連れてどんどん有能になっていく様はつまらないナイツウォッチ描写の中で珍しく面白い箇所だった。
童貞捨てたり総帥になったり野人をまとめたりする主人公っぽいジョンの活躍も、何だか製作者に贔屓されてるようにしか感じなかった(範馬刃牙みたいな感じ)。挙句の果てには完全に殺された後に紅の魔女の魔法で蘇るし。だが完全に死んだ者が蘇るって優しい大作エンタメですら滅多に無いので逆に珍しかった。
本当に微妙なので中盤過ぎた辺りで「ひょっとして、こいつは『フィクションの主人公補正に対するアンチテーゼ』のために作られたキャラなのかも?」と思わされたくらいだ。つまり凡人なのに主人公補正を背負わされてヒーヒー言いながら死んだり蘇ったりしながら闘わせられ続け「主人公補正は是か非か?」を問うキャラなのかなって。まぁ最後まで観たら単純にヒーローポジションみたいだったので勘違いか。本作のジョンの描き方はかなりぬるい気がする。後半では少し立派になってきたが、あまり自分でものを考えないところや自分の心に正直すぎて他人の気持ちに寄り添わない性格が何だかなと思った。結局最後の台詞も疑問形だったしラストまで何も知らないジョン・スノウだった。ジョンを演じた俳優はMCU「エターナルズ (2020)」で剣の達人アベンジャー、ブラックナイトを演じる。このジョン役を観てキャスティングしたんだろうな。ルックスは普通にカッコいいのでそっちは楽しみだ。
そういえばシーズン1から名前が出て最終章で遂にスターク家&ターガリエンその他の混合軍とぶつかるスリープウォーカーと死の軍団。彼らは物言わずゾンビを従えて人間世界に南下してくる。てっきり何か深淵な目的があると思ってみてたら何にも無い只襲ってくるだけのゾンビ軍団だったので拍子抜けした。まぁただ「不吉な雰囲気」の擬人化っていうか災害の擬人化っていうか‥ただそれだけの存在だった。

🦌こういった三国志ものでは、雄々しい決戦や天才軍師のカッコいい計略を見せたりするもんだが、戦争が嫌いな原作者による本作ではそんな軍師目線では描かない(そのせいか本当は天才戦術家らしいロブ・スタークも、彼の見事な連戦や戦術が全部カットされてるのでドラマ観ただけだと恋愛脳のアホにしか見えないのが気の毒だ)。というかそもそも合戦も1シーズンに一回くらいしか出てこない。たまに合戦があっても主人公ではないスタニスなんかの最後の合戦などは「行くぞ~!」と突撃してカットが変わるとスタニス軍が全滅してたりして、そんな即落ち2コマみたいな負け方は笑った。無駄な引き伸ばしがなくていいね。アメコミも戦闘シーンほぼない長くても数ページだけど本来こんなもんで良いと思う。ジャンプ漫画も戦闘シーンいらんだろって思う。主人公の合戦なども当然軍師目線ではなく(そもそも軍師は出てこない)兵士目線で描かれるので自分や周囲がグチャグチャに刺されて苦しんで死んだりして「絶対こんな風に戦争に出されてこんな風に死ぬのは嫌だ」と思わせてくれる。本作に出てくる最強トップ5に入るキャラでも6人くらいに囲まれたらピンチになったり死んだりするのでリアル路線。カタルシスは少ないがそういった描写は「戦争やろうぜ!」気分を損ねる良い描写だと思った。

🌹自分が好きだった場面。
スタニス海軍をワイルドファイアで壊滅させたティリオンと目が合ったパイロマンサーが狂った笑顔を見せるところ(この人大好きだがここしか出番なくて残念)、シーズン4のティリオンの裁判、アリアの冒険や成長、ブライエニーとジェイミーが旅して熊と闘うところ、アリアが図書室でゾンビから隠れてる場面、ハウンドとか完璧人間オベリンや玉ねぎの騎士や野人トアモンドも当然良かった、‥だけどそれらは恐らく観た人皆好きだろうから改めて言うことはない。
そういえば最低な決断ばかりするスタニスは人気なさそうだが多田野曜平氏(故・山田康雄そっくりの死ぬほどカッコいい声の声優さん)が吹き替えしてイーストウッドみたいな声で喋ったり殺される時潔かったりして結構嫌いになれないキャラだった。この作品のキャストは皆仲良くて本作を愛している俳優が多いがスタニスを演じた俳優は「残酷で陰鬱すぎて理解できない‥ギャラのためにやるけど嫌いだ‥」と言ってるのも何だかスタニス本人みたいで好感が持てた。
というかジョン・スノウやスタニス等どうしようもないキャラの中に俺自身のどうしようもない部分を見て共鳴したのかも。そういった意味で、好きなわけではないがジョンやスタニスは全編寄り添って観ていたキャラだった。
あと少女領主リアナ・モーモントも、めちゃくちゃ良いキャラで好きだったのだが、死の軍団との戦争で戦死して悲しかった。ゾンビ巨人の首級を挙げるという良い扱いだったけどね。「正義感の強い少女が戦争に出たらこうなるリアリティ!」とかも良いけど最終章だし普通にリアナ・モーモントも生還させろや、と思わずに居られなかった。自分の確固たる意思もあるけど周囲の意見も積極的に聞くという最も王に相応しいキャラだから単純に「この世界の損失が‥」と残念に思った。最後の七王国再編首脳会談の時に居て欲しかった。
あと、シーズン7でタイレル家のオレナ婆様が最期を迎える場面。彼女の孫のマージョリーも演じてるナタリー・ドーマー好きだし良かったね。マージョリーは劣勢になってる時間の方が多かったが彼女にしか出来ないあざとい女性っぽいやり方でかなり良いところまでラニスター家に侵食して善戦したね。そしてオレナ婆さんも元々いいキャラだったが最後の時が来て「好きだったけどこれで終わりかぁ」と思ったら最後の台詞‥ここが全73話観て一番カッコいい場面でカッコよすぎて感動して震えた。

🐲本作の最終章は不評で「最終章を作り直せ」という署名に150万もの票が集まってしまったらしい。確かに最終章は良いところもあるけど6話しかないせいかダイジェストみたいに性急で「何でこんなことになった?」という場面が多く、また死の軍団との戦争もテーマ無い癖に異常に長かったりとバランスが悪い(恐らく「ドラマ史上最大の闘い」と言いたかっただけだろう)。最終章は6話じゃなくて「死の軍団編」「デナーリス編」とシーズン2本分必要だった。何か製作者がさっさと辞めたがったのかな?原作はシーズン6くらいで追いついたから原作のない部分を描くのがプレッシャーだったのだろうか。
だけど描き方が変なだけで、全体的なストーリーの着地自体には違和感ない。
だから「最後のジェダイ」ほど悪いわけではなく「作り直せ」とまでは思わない。その代わり中盤では「神のドラマ‥」って感じだったのが全部観終えた今は「何かそこそこ面白かったね」という感触に落ちてしまってるし原作のない最終章の出来とかを見るとSWから離脱した事も大して残念でもないので、やっぱり失敗だったんだろう。
女だからと舐められ苦渋を舐めつつ仲間を増やして捲土重来を目指す、そんな誰もが応援したい英雄デナーリスも、僕はシーズン1の時から苦境の彼女を見て「辛い目にあってるからこそ『自分は何しても良い権利がある』と思う人間になりそう」と思ってたので予想は当たった。デナーリスはコロニー落としをするシャアみたいな人物だと思ってた。それにしてもvs.ラニスター戦で鐘の音を聞いてブチ切れるのは確かによくわからなかった。彼女が暗黒面に落ちる描写は数話じゃなくてもっと長い期間をかけないと足りてない。最初から彼女には危険なところがありそうと思ってた自分だが、それでも「デナーリスがサーセイを焼き殺すのはわかるけど一般市民に爆撃とかするか?」と凄く疑問を覚えた。やっぱりデナーリスの暗黒面の増大には1シーズン必要だったと思うわ。僕は一気観したしデナーリスを信用してなかったのでショックもないが、何年も観てたりデナーリスのファンとかは納得できないかもね。アメリカでは娘にカリーシ(デナーリスの呼び名)を付ける人が多かったそうだが一体どう思ったんやろ。
そんな感じで「ラストが良い映画は微妙に思えた全体までも良く見えてしまう」という現象の反対で、本作は中盤がめちゃくちゃ良かったにも関わらず最終章のせいで何か印象に残らない鑑賞後感になってしまった。一気観したせいもあるかもしれんがロスにも一切ならず「何か面白い時もあった、そんなGOTってドラマがあったな」という既に風化した思い出になりつつある。
とはいえドラマ苦手な僕が一ヶ月で全話観れたから相当面白いんだけどね。途中で何本か映画観たけど「GOTの一番つまんない回の方がずっと面白い」とか思ったしクオリティ高すぎドラマなのは間違いない。殆どのドラマは数話観ただけでやめちゃうしね。
関係ないけど王都の守り人akaシティウォッチの事を吹き替えで「金マント」と呼んでたのがガンダムの「木馬」とか「白いの」みたいでカッコよかった。やっぱり現場での略語っぽい呼び名はかっこいいな。

🦁そんな感じで僕が一番好きだった部分は、長いスパンでキャラの大きな変化を見せるろころや女性やティリオンの描き方とかですかね‥。
好きなキャラは‥まぁ大抵の人気キャラは自分も当然好きなので彼ら彼女らは除外するとして、それら以外に一番好きなキャラは‥と考えるとやはりオレナ婆さんとリアナ・モーモント。あとさっき言ったようにスタニスとジョンは好き‥じゃないけど好き嫌いを超えた特別な感情を抱いていた。この四人。ちょうど少女、青年、中年、老婆とバランスも良い。
全体的な感想を一言でいうと「中盤は傑作だったけど最後の急造で作った二つの章は、ストーリーには文句ないけど時間が短すぎてダイジェストみたい」という事になる。2シーズンで描くべき分量の内容を6話で描いたためにめちゃくちゃ性急で変。展開に納得行かないんじゃなくて「これをじっくりやればいいだけなのに‥」と勿体ない気持ちになった。フィクションというのは途中がどんなに良くても、ラストの印象で全体の印象が決まってしまう。途中がつまんなくてもラストが良ければ何だか良い映画観たような気持ちになってしまうものだ(まるで「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」みたいに)。その点、本作は最後が微妙なせいで、4章あたりでは大興奮してたものの観終わって何日か経った今としてはフンワリした薄い印象になってしまった。多分、来週には本作のことなど思い出さなくなってるだろう。だから勿体ないなと思った。
続編は「House of the Dragon」というターガリエン家を中心にした前日譚の制作が決まった。一方、ナオミ・ワッツが出る別の前日譚はパイロット版がイマイチで没になり制作中止になったらしい。ナオミ氏が勿体ないのでターガリエン家の方にナオミ氏も混ぜてほしい。というかターガリエンの双竜のくだりとか想像するに凄く陰惨そうだし実のところあんまり観たくない。

 

 

 

そんな感じでした
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 ゲーム・オブ・スローンズ 最終章』 スターチャンネル公式ページ 
Hulu「ゲーム・オブ・スローンズ」
Game of Thrones (TV Series 2011–2019) - IMDb

www.youtube.com

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『アリー / スター誕生』(2018)/前半とガガとShallowと自分の行動を全部説明するブラッドリー・クーパーは良かった👱🏻‍♀️🧔

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原題:A Star is Born 監督&脚本&制作&主演:ブラッドリー・クーパー
製作国:アメリカ 上映時間:136分 ※「スタア誕生 (1936)」の3回目のリメイク

 

 


映画の感想とは全く関係ないが吾妻ひでお先生が亡くなって悲しい今日。。
なんか長い間イーストウッドビヨンセ主演で映画化するって言ってたけど、ビヨンセが産休に入ったりイーストウッドが他の映画を何本も撮ったりして延期が続いてる間に、イーストウッドが親しいブラッドリー・クーパーに企画を譲ってブラッドリー初監督作になり主演もビヨンセからガガに変わってた。過去の「スタア誕生」は一本も観てないがネトフリにあがってたから観た。だがこの主題歌「Shallow」は前から名曲だなぁと知ってはいた。
今回は完全にネタバレあり。

 

 

👱🏻‍♀️🧔🏻🎤

 

 

カントリー歌手ジャック(ブラッドリー・クーパー)はスターだがモチベーションが下がっているせいなんか鬱っぽいせいなのか又はその両方か酒とドラッグに溺れており、年の離れた兄がマネージャーとなってジャックを支えていた。
ツアーの途中、ジャックは酒を飲むためにドラァグ・バーに立ち寄ると、ドラァグ・クイーンに紛れてウェイトレスのアリー(レディ・ガガ)が唄っていた。
ジャックはアリーの唄そして彼女自身に一目惚れ。2人はあっという間に仲良くなり、ジャックはアリーをステージに上げてアリーも大人気に。スタア誕生だ。
アリーはマネージャーを名乗り出た男レズの提案でカントリー歌手ではなくポップ・スターとしてデビュー。あっという間に大人気に。
アリーが人気者になるのは嬉しいが、カントリーからポップ歌手への転身については納得いってないジャックは更に酒量が増え荒れていきアリーの活動の妨げにもなってくる。
2人は最後まで愛し合っているのだが、すれ違いが増えていく―
‥というストーリー。オリジナルのストーリーを検索してみると、どうやら細部以外はオリジナルと全く同じ話みたいだね。

 

 

 

とりあえず映画始まって中盤くらいまではもう完璧と言えよう。
ボヘミアン・ラプソディ」の時も思ったが、かったるい描写は省いて鮮烈で面白いところだけポンポンポンと繋いであっという間にスタア誕生
アリーは自分に自信がない系の天才歌手。鼻が大きいことを悪く言われた歴史があるためか自分の容姿にもコンプレックスを持っており、それも彼女が一歩飛び越えることを阻害しているようだ。しかしジャックはアリーの唄も鼻も全肯定する。
アリーと同居している父親は元歌手で、才能あったけど才能以外の面に恵まれず大成しなかったらしい。いわば成功しなかった未来のアリーみたいなキャラ。そして実家には父親の友達のジジイが大勢たむろしており何時も楽しそうでわざわざ日本の競馬をしている‥何で日本の競馬?このアリーの父親やその友人達は、メインストーリーとあまり関係ないのにも関わらず異常にキャラが立ってて気になる。
ジャックもまた歌手だったが大成しなかった父や兄に憧れてカントリー歌手になってスターになったが片耳が難聴。難聴のせいなのかモチベーションも落ちてアル中かつドラッグ中毒。本編の殆ど酔っているし飲んでない時でも酔っ払ったように喋るので恐らく全編酔ってると言っても過言ではない(私見だがこのジャックというキャラは最初から最後まで死んでいるも同然で完全に死ぬ寸前の一瞬だけアリーという天使に出会ったのだと思った)。
ジャックは年の離れた兄とのサブドラマもある。この兄も存在感凄いのだがやはりメインストーリーと上手く絡んでないように思える。まぁ大成せず年老いたジャックみたいなものか。
アリーとジャック。スターになったが哀しい出来事が起きた2人と、大成はしなかったが普通の暮らしをして年老いた2人。2人の肉親サブキャラは主人公の色んなパターンを見せるために存在している(たぶん)。
 

 


アリーを見つけたジャックは、アリーのバイト終わりを待ってデートする。
ここでのジャックが最高。ジャックはアメリカ映画にたまに出てくる「自分の行動を女に全部説明しながら行うイケメンのナイスガイ」キャラ。
こんなシーンはないのだが、このジャックとアリーの最初のデートの雰囲気を言語化すると、こんな感じだ。

ジャック「いいか?俺は今からこのビールの蓋を開けるからな(笑顔)」
アリー「‥? ええ。」
ジャック「‥ちょっと待ってくれ‥今開けてる‥
アリー「わかったわジャックw」
ジャック「ふふふ‥なかなか開かないw(ふたり笑う)」「(真顔になって)酔ってなんかないぞ?いま開けるからな
アリー「私なにも言ってないわよw」
ジャック「‥よし空いた!(笑顔)。蓋はここに置いとくからな。見てくれ?
アリー「見てるわw」
ジャック「‥よく見てくれ?蓋はここに置いた。
アリー「わかったわよ!w なんなの?w」
ジャック「よし、ビールを飲もう
アリー「ええ、そうしましょう」
ジャック「一口で結構飲んだな‥見てくれ」「ガキの頃はこの半分しか飲めなかった(瓶の半分のところを指差す)今はこうだ‥!(空の瓶を見せる)」
アリー「そうなのね(笑顔)」 

こんな場面はないが大体こんな雰囲気で最高だ。
なだぎ武友近のディラン&キャサリンに似ている。吹き替えで観てたんだが声優2人の声や演技も、なだぎと友近に似てた気がする。
この「自分のやる事を女の子に全部言うナイスガイ」アメリカ映画でたまに見かけて好きだが何なんだろう?「ロッキー」のスタローンとか「デスペラード」のバンデラスもこんな感じだった気がする。「なだぎに似てる」という事は、観てないけど「ビバリーヒルズ青春白書」のディランもきっとこんな感じなのかな?
何でこんな喋りになるのか考えてみた。
ロッキーの場合惹かれ合ってるがロッキーが口下手すぎて飼ってる亀がどうのこうの言ったり「なぁエイドリアン。もっとこっち来いよぉ」とか言う。デスペラードの場合2人で一緒にギターの練習するがサルマ・ハエックはセックルする気満々なのだが純粋なバンデラスは気付かず2人でじゃれながらギターを触って「ふふ‥これじゃ曲とは言えない‥w」とかのん気な事を言ってたら至近距離から「真剣なかお」で自分を見ているサルマ・ハエックに気づいてハッ!として、やっとセックスが始まる‥。こんな感じだった。
たぶんお互いの事が凄く好きだがまだ結ばれていない、そして男が純粋だから気の利いた事も言えず、でも女の子と凄く会話したいからどうでもいい事でも何でも良いから口にして、こういう感じになったって事か? そういえば過去、自分にあったそんな場面でもやはり「君の鼻がどうの」とか「職場でどうの」とか、別に言っても言わなくてもいい、どーでもいい話を照れ隠しで言ってた気がする。別にキスしても文句言われないであろう場面で逡巡‥してるわけじゃないけど、そんな中途半端な時間を楽しんでるようにも見えるし「この男なんか可愛いな」と思わせるからいいのかも。
ちなみにジャックがアル中になった時も純粋な率直さはそのままで「きみは最低だ‥」「きみは醜い‥」などと苛立ちが心にもないことを言わせて関係が悪化するので心苦しかった、褒める時同様に悪く言う時も純粋だ。

 

 

 

知り合った翌日、自分のコンサートにアリーを招待したジャックは、彼女が昨夜口ずさんでた曲「Shallow」を完成させていた。そこでアリーをステージに引っ張り上げて「Shallow」をデュエット。会場は初めて聴く名曲「Shallow」そしてアリーという才能に溢れた新しいスタア誕生に大盛りあがり。
映画冒頭からこのピークの場面までの面白さが凄い。ここまでなら「ボヘミアン・ラプソディ」より面白い。そもそも、この「Shallow」って曲が本当にレリゴーみたいな、誰が聴いても一発でわからす名曲なので説得力が凄い。ホイットニー・ヒューストンの「えんだああああ~♫」同様、名曲過ぎて笑えてくるような曲だ。
※主演2人の色んな「Shallow」LIVE映像を下の方↓に貼った。
その後、アリーのマネージャーの提案によって、アリーはカントリー歌手からセルアウト的ポップ路線変更などにジャックは不満を抱いて酒量が増える。そしてアリーのグラミー賞最優秀新人賞の受賞を自分の泥酔で台無しにしてしまい、反省したジャックは酒を断つリハビリ施設へ。何ヶ月か頑張って帰ってきたジャック、アリーと今後は頑張っていこうと誓い合う。アリーはジャックを良くするため自分のツアーでジャックとデュエットするコーナーを提案するが、ジャックを疎ましく思っていたマネージャーはそれを却下。のみならずジャックを訪ねて「お前のせいでアリーと自分は尻拭いさせられた。どうせまた酒飲むだろうけど次飲んだら別れて欲しい」と言う。
どうなるんだろう?これでひと悶着あるけど何とか仲直りして「Shallow」をデュエットして一件落着かな?‥などと思ってたらマネージャーの一言で一気に気分が落ちたジャックは速攻首をくくって即死する。
‥えっ?てっきり「Shallow」また歌うと思ってたので急展開に驚いた。そして驚いたまま映画が終わった。
何ヶ月も施設でリハビリしてたのにマネージャーの一言で速攻死ぬってかなりヤバい。
ジャックのアル中‥っていうかジャックの鬱の症状があまりにも深刻な段階すぎて、これはもうマネージャーの心無い一言がなくても遅かれ早かれ自死してたんだろうなと思った。
そしてまたアリーを路線変更させてジャックの心を乱したのも、アリーがやりたがってたリハビリを兼ねたジャックとのデュエットコーナー潰したのも、最後のダメ押しでジャックを死に追いやったマネージャー、「こいつ一人だけが悪くない?」度が高すぎる。
ジャックも、本当はアリーとのことだけじゃなく片耳が難聴な事や父や兄との確執とか自分のパフォーマンスの事など色んな要素が重なって自死を選んだんだろうし、さっきも言ったように遅かれ早かれ自殺してそうだが、しかし本作を観てる分には「このマネージャーさえ居なければ‥」としか思えなくなった。
そんでもってラストは「マネージャー居なければな」とか「この後マネージャーは自分がジャックを死に追いやった会話のことアリーに言ったのかな?言うわけないか」「言ってないと誰も知らないから納得いかないな」「せめて誰か第三者がそれを聞いててほしかったな。マネージャーへの罰になるからな」などと、どうでもいいマネージャーの事を考えてるうちに映画が終わってしまった。だから一人のキャラだけに落ち度を作る人間ドラマには反対だ。
だが何度も言ってきたように、ジャック既に完全に壊れてるようにしか見えない。
「崖っぷち」だったのではなく「もう崖から落ちている途中の男が、崖下に落下するまでの間の一瞬だけアリーと過ごして真の愛を知った(そして死んだ)」という話だったのかな?と思った。
実際のところ後半の人間ドラマがガチャついてたのとマネージャーは一人だけ落ち度があるのがノイズとなって感動は半減した。
そもそもジャックがカントリー好きなのはわかるが、アリーがポップスター路線になったのが何であそこまで気に入らないのか理解できない。だけどかつてはカッコよく描かれがちな「酒びたりでドラッグやりまくるワイルドなスター」をカッコよく描かず「ただの病気で可哀相な男」として描いてるのは、現代的で良いと思った。その手腕も「酒いっぱい飲んだ?それなら大事な場面でションベンもらすだけです。」という冷徹な見せ方は良かったね。

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ブラッドリー・クーパーやガガなど出演者の演技。名曲すぎる「Shallow」。スタア誕生するまでの前半‥などは超最高だったし後半にも良い場面も多かったのだが、中盤以降の人間ドラマはイマイチだった。だから「中盤以降はイーストウッドが撮ってた方が名作になってたんだろうな」と思った。イーストウッドのショービズ映画は「センチメンタル・アドベンチャー (1982)」「バード (1988)」「ジャージー・ボーイズ (2014)」とどれも名作だったしね。
だがそれにしても鬱イケメン主人公ジャックを演じたブラッドリー・クーパーはマジでカッコよかった。キアヌ氏同様、中年男性なのでイケメンに興味ない俺でさえ惹かれるイケメンだ。やっぱこの辺のアメリカンイケメンはヒゲがカッコいいよね!俺は髭伸ばしても横光三国志諸葛亮孔明の部分にしかヒゲ生えないので様にならない。
最後ガレージで死を決意する場面、そのシーン自体は良いとは思わなかったが、演技は最高だったしね。

 

 

そんな感じでした

ブラッドリー・クーパー監督作〉
『マエストロ:その音楽と愛と』(2023)/中盤以降と出演者は良いんですけど最初の50分が信じられないくらいつまらなくて前半50分観るのに一週間かかった。悪い意味で邦画っぽいので日本の年寄りには良いかも👨🏻👩🏼♬ - gock221B

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A Star Is Born (2018) - IMDb

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「クロール -凶暴領域- (2019)」身体がめちゃくちゃ丈夫すぎるし強すぎる父娘がワニワニパニックを生き抜く🐊

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原題:Crawl 監督&制作:アレクサンドル・アジャ 製作国:アメリカ 上映時間:87分

 

 

 

週に1、2回は更新していきたい感じでやってるブログだが(本当なら毎日更新したいくらいだ)前回から半月近くも間が空いてしまいヤバい!と思って出先でやってたこれを観た(「ジョーカー」はネタバレ聞いちゃったからレンタルでいいわ)。今頃「ゲーム・オブ・スローンズ」を観たくなって、一ヶ月以内に観ようと一気に観てて映画あまり観てない(今シーズン6)。
先日、令和元年台風第19号が日本に上陸し、関東や東北などの東日本に甚大な被害をもたらした。俺が住む地域は河川も山もなく凹んでもないので幸いにも平気だったが家が壊され未だ避難所で不安な日々を過ごす人たちは多い。そんな台風19号と同じ規模「カテゴリー5のハリケーンが発生して洪水になる」というこの映画は観ててシンクロ感が高かった(こんな事態には遭わなかったが日本人として心情的には)。
監督は「ヒルズ・ハブ・アイズ (2006)」「ミラーズ (2008)」「ピラニア3D (2010)」とかでお馴染みのアジャ氏。寺沢武一の「コブラ」を映画化したいって10年くらい前からずっと言ってるけど全然進展してないね。ホラーじゃない映画は観てなかった。
タイトルの「Crawl」は、ワニが「這う」ことと主人公の得意な水泳とが、かかってる感じか?ネタバレあり。

 

🐊🐊🐊

 

 

フロリダ大学に通い水泳の大会で奨学金を得ている女子大生ヘイリー(カヤ・スコデラーリオ)。幼い頃、父デイブ(バリー・ペッパー)にコーチして貰ってたが、今は父に見て貰ってないせいか調子が悪い。
カテゴリー5の巨大ハリケーンの直撃を受けたフロリダでヘイリーは、妻と離婚して一人暮らししてる父デイブに電話しても連絡が取れないので心配した彼女はハリケーンの中、実家へ向かう。愛犬シュガーは居たが父の姿は無い。
昔、家族で住んでいて売りに出している古い家に行くと、何とデイブは地下室で重傷を負って倒れていた。
デイブは、周囲に生息しており配管から地下室に侵入したワニに噛まれたが、配管に囲まれてワニが入ってこれない安全地帯に逃げこんで気を失っていたらしい。
そうこうしてる間にヘイリーも片脚を噛まれてしまう。そしてワニは一匹ではなく複数頭が侵入してきている。
嵐はますます酷くなり地下室はどんどん浸水していく。このまま地下に居ても一時間も満たないうちに水で一杯になってしまう。父娘2人とも怪我しとるし。愛犬シュガーは心配そうに実家の床を引っ掻いている。
ヘイリーとデイブの父娘は地下から脱出できるのだろうか?―
という話。

🐊ワニは水中だと動きが素早くなり聴覚も鋭くなる。
だから時間が経てば経つほどワニは強くなり、怪我してる父娘は弱くなっていく(‥と思うじゃん?実際には父娘が強くなりワニが弱くなっていった)。
父娘はワニと闘いながらお互い胸の内を語り合い、お互い黙っていた自分の弱い部分をさらけ出す事によって心は晴れていく。そして会話して晴れていく精神状態と比例するかのように火事場のクソ力がアップして状況も好転していく。疎遠気味だった親子が久しぶりに会って打ち解けていく様子を、ワニ&台風ディザスター映画として描写した感じか。
主人公である父娘が喰われてしまうと話が進まないので、家の向かいのコンビニで火事場泥棒していた若者たちや父娘を助けに来た親切な警官などが代わりに喰われてくれる。
一番良かった喰われ方は、主人公ヘイリーの幼馴染警官の同僚が、ワニに空中を錐揉み状態でふっ飛ばされて違うワニが噛み付いて引き倒して6匹くらいに同時に噛まれて最終的にバラバラにされる‥というダイナミックすぎるもので笑った。この時のワニは、主人公父娘に噛み付くより明らかに数倍のパワーで気の毒な警官に噛み付いていて容赦がない!そして、この火事場泥棒や警官を襲っていた時のワニがピークで後は弱体化していく。
後半、色々苦労して地下室を出た父娘。ずっと心配してた愛犬シュガーも嬉しそうに尻尾を振る。かわいいね。だが雨脚は激しくなるばかりで家への浸水も激しい。せっかく地下から脱出したにも関わらず実家の中すべてがさっきまでの地下と変わらない状態だ。ワニどもも家の中を我が物顔で闊歩している。
それでも2人と犬一匹はワニに噛まれつつも何とかボートに辿り着いき、町を脱出しようとするが今度は町の堤防が壊れて町全体が屋根まで洪水に飲まれていく!こうなってしまっては町そのものがさっきまの地下。世界中がワニワニパニック状態。
‥と、この様に難局をクリアする度に「汚くて狭い地下→浸水した実家内→洪水に飲まれた町‥」といった感じで難易度の高いステージになっていくのが面白い。同時に、一番滞在時間が長かった地下室の場面は狭いし汚いし観ていて息苦しかったので、地下から実家に出れた爽快感が凄かった。ワニがいる地下よりワニがいる地上の方がマシという感じか。そういう感じで物語が展開するにしたがって気持ちいい状態になっていく。
それにしてもモブ人物はワニに一回喰われたら一発アウトなのに対して、主人公ヘイリーと父デイブはそれぞれ3、4回もガブッと噛まれてるにも関わらず何だかんだ気合で切り抜けた。とにかく頑丈な父娘だ。

🧔🏻最初から死にかけてた父親デイブだが、噛まれてより深刻な怪我する度にベルトでキツく締めればとりあえず回復。シャベルでワニ撃破するし。しかも死にかけた状態から回復する度に強くなってるように見えるサイヤ人気質。最終的には手を食いちぎられる重症を負うが何時ものようにベルトをキツく締めただけで全快した。当たり前だよな。

🏊🏻‍♀️娘のヘイリーも腕に噛みつかれても拾った銃でワニの口腔内に全弾発射して倒したり最終的には水中でワニに噛まれ、しかもそのワニは噛み付いた状態で食いちぎろうと大回転する‥という現実のワニもやる実在のワニ超必殺技「デスロール」を繰り出してくるがヘイリーも自分で回転してデスロールの威力を無効化する「ヘイリーロール」という返し技をアドリブで繰り出しデスロールの威力を無効化し、冷静に発煙筒を拾って発火してワニにブッ刺して逆転勝利!女子大生が水中でワニのデスロールを破った!コンサート会場で赤ちゃんも産まれた!アドレナリンが出て興奮したヘイリーはボートをGETして「私が捕食の頂点や!」と叫ぶ。すごい強い。奥飛騨最強の女が爆誕した。大学卒業した後は特殊部隊に入ったほうがいい。アベンジャーズに入るのは無理でもS.H.I.E.L.D.には余裕で入れる。登場人物が少ないせいで「一人の人間がワニに何度か噛まれるが死なすわけにはいかんので何とか生き抜く描写を2時間続けたせいで、普通の女子大生の主人公が最終的には超人くらい強く見えてしまう」という、この昭和のアクション映画の感じは懐かしかった。こういう「スーパーヒーロー映画やランボーみたいに意図したわけではないのに結果的に強く描写されてしまった映画の登場人物」の事を僕は〈異能生存体〉カテゴリーに入れて気に入っている。僕も水泳やってたので「水泳やってたらワニも倒せるんだな」と嬉しくなった。

🐶ゾンビ映画における犬はゾンビに知覚されず無傷な事が多いが、本作の愛犬シュガーも、ワニには最後まで気付かれず噛まれたりしないので愛犬家も安心して観ることができる。映画監督によっては裏をかいて「犬だけどストーリーと関係ないところで殺しちゃうぞ!これが現実‥リアルですからね」みたいな高2病的な逆張りで犬を無意味に殺しちゃう人もいるが、そ-いうのは要らないんだよ。変に逆張りせず、犬とか猫は殺さなくてよし。映画の中の犬とか猫はその世界に残った良心とかを現してるからな。「ジョン・ウィック」とかは犬の死に必然性あるからいいけどね。しかし父娘がこれだけ強かったからシュガーも「絶・天狼抜刀牙」でサポートして欲しかったところ。

🌀🌊🌊🌊🌀

そんなこんなで動物パニックものと台風ディザスター映画が一緒になった映画だった。それプラス親子愛ね。全体的にQTE(クイック・タイム・イベント)多めのゲームしてるような感じだった。リブート版「トゥームレイダー」やってる感じ。
それにしても、こういう映画も何だか古典的な懐かしさを感じた。
父娘が不死身すぎる可笑しさとかも懐かしいし、そこそこ楽しめました。
最近の映画にしては1時間半にも満たない短さとか、ワニ&台風のみでグイグイ押してくる「ウチの店は『ラーメン』と『餃子』その2つしか置いてません!」って感じの男らしいラーメン屋って感じで好感度高い映画だ。
それにディザスターものだとパパが家族を救ったりカップルがイチャつきながらサバイブする事が多いが「健康な娘が弱った父を助けながら」という組み合わせが良かったね。
文句付けるとすると、食い殺されるのがモブ5人だけというのは少なかった。しかも喰われる時に水しぶきの中で血煙が舞って喰われるからよく見えないし。もっと主人公父娘&犬以外の、町中の人たち何十人もが色んなバリエーションでグチャグチャに踊り喰いされた方が良かったね。父娘は何度か噛まれても逆転できるしワニも鈍いせいで「俺でも倒せるかも?」と思えてワニが怖くなかった。アジャ監督だからもうちょっとゴアな感じかと思うじゃん?小さいお子さんと一緒に観ても大丈夫だから一緒に観たらどう?
あとやっぱりワニが弱かったね。最初は親父が「奴らはよく見てるぞ!」と言ってたのに終盤では「水しぶき上げずに止まってたら感知されない!」とか言い出したので「弱体化しとるやん」と思った。こっちはワニの事知らないので正確な情報を教えてくれないと!
そこそこ楽しかったけど「そこそこ楽しかった」以外に感想書くことなかったのだが、頑張って文量をこれだけ増やす事ができた(何故増やしたいのかというと字がいっぱい書いてないとブログっぽく見えないから)。だが、さすがにもう書く事ないので早いけどここで終わっておく。ここが限界。台風19号ネタに触れれば無限に文量増やせそうだが映画に直接関係ないからやめとくわ。
だが一個だけ言うと、先日の多摩川の氾濫は10年前に地域住人が「巨大な堤防なんて作ったら町の美観が損なわれる!千年に一度の氾濫に備えるなんて馬鹿らしいw」と、町が堤防を作る事に一部のバカ市民が反対したせいで起きた(そして街は、美観どころじゃないグチャグチャの状態になった)。日本昔話みたいな話だ。
だが今の時代、悪い予感はただの予感では終わりはしない。
皆さんも防災の備えしておくように‥。

 

 

 

そんな感じでした

🌀🌊🌊🐊🐊🐊🌊🏊🏻‍♀️🧔🏻🐶🌊🐊🐊🐊🌊🌊🐊🐊🐊🌊🌊🐊🐊🐊🌊🌊🌀

映画『クロール ―凶暴領域―』公式サイト

Crawl (2019) - IMDb

www.youtube.com

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