原題:Southpaw 監督:アントワーン・フークア 制作国:アメリカ/香港 上映時間:124分
「イコライザー(2014)」の監督の最新作。
美しい妻と可愛い娘に立派な家を持つライトヘビー級チャンピオン、ビリー(ジェイク・ギレンホール)。今夜も防衛した。
そこへ若くて強そうなチンピラボクサーが「俺と闘え!」と煽って来る。
こういう主人公がチンピラに会見中に挑戦されるシーンは盛り上がる(そして負ける)
こいつと闘って負けてリベンジする映画か?
優しくてセクシーな妻は、ビリーのマネージメントも務めて有能。
ちなみにこの妻はビリーと子供の時からずっと一緒だったようだ。
孤児院のパーティかなんかでスピーチするが、例のチンピラボクサーが絡んでくる。
妻をビッチと罵られたビリーはキレて乱闘、チンピラボクサーの仲間が誤って発砲
流れ弾が当たった美しい妻は即死。死亡。えっ!
嘘だろ!?
「ロッキー3」っぽく始まったから、チャンピオンが調子に乗って負けて妻子と険悪になって、再起して勝って妻子と抱き合って仲直りしてキスして幸せに暮らす映画かと思ってたらとんでもない事になったぞ
ビリーはもう全然ダメになってしまい、例のボクサーを殺しに行こうとしたり、やる気ない試合してレフェリーに頭突きして出場停止処分を受け、仲間や取り巻きにも去られる、そのまま飲酒運転で親権もはく奪。諸々の支払いで資産も豪邸も高級車も全て失う。
たった数十分間で、流れるように転がり堕ちていく。
絶頂から底辺までの落下があまりにも早すぎて頭がくらくらした。
「イコライザー」は「デンゼル・ワシントンが強いのは良いとして あまりにも強すぎる」という要素がエクストリームな映画だったが、本作はジェイク・ギレンホールの失脚と浮上という高低差のスピードがエクストリームな映画だった。
ここまでの流れを見てると、ビリーはボクシング以外の事は全くできない。
身の回りのことは全て有能な妻がやってたんだなとわかる。
そもそもビリーは精神年齢が10歳くらいにしか見えないほどピュアな男だ。
裁判が始まっても一体何が起きてるかわからず「え、俺はパパなのに娘と喋ったらおこられる‥」というキョトン顔をしている。「怒りを抑えるプログラムを受けるように‥。それと娘さんには30日間会えません」と言われたら即、怒りを抑えられずにブチギレて更に娘と会えなくなった。
面白い前半だった。
ジェイク・ギレンホールの顔
ジェイク・ギレンホールは当然仕上げていて凄い筋肉だし目のアップとか本当に凄い。
というかジェイク・ギレンホールの顔がいちいちヤバい。
↑このGIFの叫んでるカットとか、別にいいシーンでも何でもないんだが顔が凄すぎてハッ!となる。
「ナイトクローラー」の時も思ったが個人的に心に一番響く顔をしてる。
「はははは俺はボロボロだよハハハハハ」と本当にブッ壊れたヤバい顔で泣き笑う。
まあ人には好き嫌いがあるが自分のツボにはまる顔なのかも。男の俳優で今一番好き
中盤1
一人になった彼はカウンセリングや求職やら色んな手続きを受ける事になるが、社会の仕組みを全く理解しておらず、中一でもわかるような世間の常識が何一つわかっておらず上手くいかない。
本当は社会は彼に手を差し伸べているのだが、彼にはそれがわからず全てが敵にしか思えず救いの手を全て はね除けてしまい、ますます窮地に落ちる。
彼は悪人ではなく本当にただ純粋に何もわかってないだけの男なので見てると段々可哀想になってくる(「初めてのおつかい」見てる時みたいな感情)
娘に会いに行っても嫌われて話をして貰えない。10分くらい前まで笑顔だったのに‥。
というか娘は保護施設にいる間、メガネの良い子だったのに段々やさぐれていき終いには眼鏡を外しゴスっ子みたいなメイクになるので笑った(施設で子供が化粧していいの?)
しかし後で施設を出ると何事もなかったかのように一瞬で元の眼鏡の良い子に戻った。
これは彼女の心の荒廃具合がそのまま外見に反映されてたんだろう。良い様に取れば
中盤2、二代目モーガン・フリーマンのフォレスト・ウィテカー登場
ビリーはもう他に何もないのでフォレスト・ウィテカーが営む小さなボクシングジムでトレーニングしてジムの手伝いをして小銭を貰う(最初は「掃除なんかできるか!」と癇癪を起すが他に行く当てがないので戻ってきた)
フォレスト・ウィテカーはビリーに最初に言う。
「ボクシングはここ(拳)でやるんじゃないんだ。ここ(脳)だ。チェスと同じだ」
この男、ただものではない
ビリーは彼に「お前の妻は何故殺された?」という質問をしつこくされる。
ビリーは「だからぁ、カスに撃たれて‥」と答え始めるがフォレスト・ウィテカーは遮って「質問が聞こえてなかったらしいな笑」と嘲笑う。ビリーはいつもの様にキレるとフォレスト・ウィテカーは言う
「それだよ。」「それが原因でお前の妻は死んだ」
更にフォレスト・ウィテカーは守護天使の様にビリーに色々教えてくれる。
「娘がお前を嫌うのは娘の問題だ。嫌わせておけばいい。それで彼女は楽になれる。上手くいってない自分の問題と、自分を嫌うという娘の問題を混同するな」
なるほど~!と思いました。
彼のもとで真面目にボクシングと社会を学び直しはじめたビリー。
普通だったら10、20年くらい生きてやっと学べるような事を、フォレスト・ウィテカーと出会ったおかげで一ヶ月くらいで全て教わったビリー。
個人的に、この中盤が この映画のピークだと思う。後はおまけだ
トレーニングが始まるが、ビリーは社会だけでなくボクシングの事もあまりよく知らないように見える。
直情的な彼の性格を反映してかディフェンスや避け方をよく知らないキャラのようだ。
フォレスト・ウィテカーが彼に人生を教えるという事が、そのままボクシングに繋がりビリーの身体も少しづつ動くようになっていき人々にも信用され始めていく。
そもそもビリーはこれまでの人生、妻がいたとはいえよく生きてこれたな‥と思った。
まるで映画の始まりと同時に天上で生まれ堕天使の様にそのまま落下したみたいな男。
実際そのように考えて間違いないだろう。
後半
そうこうしつつビリーの復活、娘とのコミュニケーション、無敵と思われていたフォレスト・ウィテカーにも試練が伸し掛かりクライマックスに行く。
かつてビリーがチャンピオンだった時は着いていたが金が無くなると去ったプロモーターが現チャンピオンとの試合の依頼でやってくる。
現チャンピオンの敵は 勿論、冒頭で妻が死ぬきっかけになったチンピラ出身ボクサー。
ビリーに付いてたプロモーターやトレーナーも全部、チンピラ側に付いてる。
ビリーを面談してた精神科医が娘を連れて試合を見に来た。
試合会場にはスポーツ系少年漫画の様に全登場人物が勢揃いしている。
ここまで何から何まで揃うと、作り話臭が増してくるが勢いと凄味でラストまで行く。
ビリーの堕落の超スピードといい娘の変化といい、この監督はこういう誇張されて戯画化されたエンターテイメント表現が特異なんだな。
「イコライザー」の時も思ったが、その誇張された様が面白いが、ギャグすれすれだ。
個人的には第二幕まではこのエクストリームなノリで良かった気がするけど、終盤はノリを切り替えてもう少しシリアスにして欲しかった気もする。何だか終盤で一気に作り話に思えてしまった。
正直、トレーニングで更生すると共に全てが終わりすぎてしまっていて、最後の試合であまり盛り上がれなかったのもある。
何というか、何もかもがあまりに過剰過ぎてレディスコミック読んでる気分になった。
とはいえ誰が観ても判りやすく面白い映画なのは間違いない。
やっぱり中盤のフォレスト・ウィテカー無双が凄かったね。
ここがあまりに凄すぎて「これウィテカーの映画にした方が‥」と思えるほどだった。
あと、さっきも言ったが保護施設にいた娘が急にゴスメイクしてグレて、施設を出た瞬間にまた眼鏡をかけた良い子に戻ってた事を後から思い出すとめっちゃ笑えてくる。
エクソシストや「八つ墓村」の小川眞由美を思い出した。
本作のレディスコミックっぽいノリは、何かに似てるな‥と思ったがダーレン・アロノフスキーの「ブラック・スワン」に似てるなと思った。
それならもっと誇張すれば良かったのかもしれない(イコライザーでデンゼル・ワシントンが何かのついでの様なノリで悪を全滅させたように)
そんな感じでした
〈アントワーン・フークア監督作〉
『イコライザー』(2014)/デンゼル・ワシントンが本当に強すぎる!都会でならランボーやジョン・ウィックより強い。イーストウッド級👨🏾🦲 - gock221B
『イコライザー2』(2018)/今回もまた1mmもピンチにならん強さにスカッとしたものの「こんなに法を無視して気に入らん奴を惨殺しまくっていいのか?」と少し思わなくもないがOKです👨🏾🦲 - gock221B
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