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『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)/SNSが嫌いでやっていないというガーランド監督の溜まったポストをまとめて放出したかのような映画。良かったです🗽


原題:Civil War 監督&脚本:アレックス・ガーランド 製作:アンドリュー・マクドナルドほか 撮影監督:ロブ・ハーディ 編集:ジェイク・ロバーツ プロダクション・デザイン:キャティ・マクシー 音楽:ジェフ・バーロウ、音楽:ジェフ・バーロウ 製作&配給会社:A24 製作国:アメリカ/イギリス 上映時間:109分 公開日:2024.04/12(日本は2024.10/04)

 


小説家、映画製作者、脚本家でもあるアレックス・ガーランド長編映画4作目。
時流に合ったためか、めちゃくちゃヒットした。
『エクス・マキナ』(2015)
とか『アナイアレイション -全滅領域-』(2018)の監督。
『MEN 同じ顔の男たち』(2022)だけ観てなかったから近いうち観よう。
脚本は『28日後...』(2002)、『サンシャイン 2057』(2007)、『ジャッジ・ドレッド』(2012)……何かこうして並べると「切迫した状況で複数人がサバイバルする」作品が妙に多い。『ジャッジ・ドレッド』(2012)めちゃくちゃ好き。ちなみに『28年後...』の脚本も書いてるらしい。小説は読んでない。
なんか、メッセージ性が高くてカッコいい映像で切迫した状況で複数人がサバイバルするSFやホラーを撮るイメージが強い監督だが、「現代のアメリカで内戦が起こる」という一言あらすじだけで観たくなる本作はアメリカ国内での対立や諸外国の紛争が激しい現在の時流にピッタリ合ったためか本作は大ヒットした。というか「Now!」性が非常に高いので日本公開が半年遅れただけで何だかめちゃくちゃ待たされた気持ちになった。大統領選がちょうど一月後、という時に公開されたのはタイムリーだったかもしれない(だが、もし仮にトランプが勝ったりしたらそれはそれでタイムリーな日本公開になる)。

「ある日突然アメリカ国内が内戦状態になっていた」というあらすじで思い出したが、 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのドラックス役などでお馴染みのデイブ・バウティスタ主演『ブッシュウィック -武装都市-』(2017)。これはテロかなんかでアメリカ国内が襲われる内容だったと思うが本作に割と似ている。本作に比べると政治色控えめでアクションサバイバル色が強めだったが、あまりに無名すぎるのと反比例してなかなか面白かったので機会があったら観て欲しい。

ネタバレあり。割とネタバレしてます

 

 

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アメリ内戦勃発。
合衆国大統領(演:ニック・オファーマン)は就任3期目に突入して司法省機関FBIを解体するなど専制政治の兆しが見えたため、共和党支持が多いテキサス州民主党支持が強いカルフォルニア州が手を組み、そこへ合衆国を離脱した19の州も合流した西部勢力(WF)を形成。
合衆国連邦政府軍はWFに対抗して、アメリカ各地では激しい武力衝突が繰り広げられていた。大統領はTVで繰り返し自分たちが勝利すると国民に繰り返し訴えるが政府軍は劣勢でワシントンD.C.陥落は目前に迫っていた。

ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは14ヶ月一度も取材を受けていない大統領に単独インタビューを行うため、無政府状態で恐怖が渦巻く地、932マイル(1500Km)を抜けてホワイトハウスを目指すが――

そんな話。ホワイトハウスという目的地を目指す4人の”旅の仲間”は、

最年少で著名な報道カメラマンとなった、リー(演:キルスティン・ダンスト)。
リーの同僚のジャーナリストジョエル(演:ヴァグネル・モウラ)。
リーやジョエルのメンターであるベテラン老ジャーナリスト、サミー(演:スティーヴン・ヘンダーソン)。
リーに憧れる新人カメラマンジェシー(演:ケイリー・スピーニー)。

師弟リー&ジェシーが主人公格で、仲間のジョエル、皆が頼る大長老サミーといったところ。
主人公リーを演じるキルステン・ダンストティーンの頃から老け顔ではあったのだが本作では実年齢を超えて老けて見える。だが俯いているところを下から撮ったりなど、彼女が老けて見えるようなシーンをわざと撮ってるので「数多くの酷い現場を目の当たりにしてきたので顔つきが変化した」というところを見せたくて余計に老けて見えるように撮ってるのかも?と思った。
戦前・戦中・戦後、若い兵士たちの顔の変化がわかる比較画像「Marked」 – カラパイア
だが彼女は元々老け顔の方なので意図がわかりにくい……なんか別に貶す意図があるわけじゃないんですがこんな事ばかり言って良くないですね、やめましょう。もう一つだけ、後でキルステン・ダンストの夫であるジェシー・プレモンス演じる本作の人気キャラ「赤い眼鏡の民兵」が出てくる。似たもの夫婦って言葉あるけど、この2人って本当に顔の感じが似てるよね。二人とも野生のネコ科の獣みたいな顔してる。
リーのファンで押しかけ弟子になるジェシー。彼女を演じるケイリー・スピーニー、特に本作の彼女は単純にめちゃくちゃ可愛い。『エイリアン:ロムルス』(2024)の主人公でもあるのか、大ヒット作ばかり出てるね。エイリアンは観たいがまだ観れてない(近所でやってないから)。ケイリー・スピーニーは本作でしか観てないけど死ぬほど可愛い。特に恐怖に限界が来て「ああぁ……あ……」とビビリ倒してる時の顔が凄く良い。『極悪女王』(2024)唐田えりかもめちゃくちゃ可愛かったが、自分はこういう着の身着のままみたいな汗臭そうな女性キャラが好きなんだなと思った。そして兵士はジャーナリストに危害を加えない事になっているが本作では民兵が多いし便乗して人殺す頭おかしい奴とか多そうじゃん。だから「こんな可愛い子が大変なUS内を通り抜けるとか……無事でいてくれ」と必要以上にハラハラさせられる。別にオッサンなら殺されて良いわけじゃないけどさ、可愛い子とか犬とか猫が酷い目に遭うところはもっと見たくないじゃない。
ジョエルは、あんまり際立つ場面ないんだけどラストでおいしい役もらってたのが印象的だった。
サミー役の人は監督の過去作にも出てたね、いや他の人も出てるかもしれんが思い出せない。サミーはあまりに大柄すぎるし危険な道中で大丈夫か?と思ったが後半まさかの大活躍する。というかよくよく思い返すと彼が言うことはほぼ真理だったりしてたので理想的な老師キャラ的な心技体揃ったキャラだった。
そんでこの監督の映画に必ず出てくる俳優ソノヤ・ミズノホワイトハウスでちょっと会う皆の顔見知りの役のTVレポーターと思われるアニャ(演:ソノヤ・ミズノ)で出てた。兵士の格好に見えたから兵士役かと思ってたらレポートしてたのでTVレポーターかな?ちなみにソノヤ氏はガーランド監督のリミテッド・シリーズのTVドラマ『DEVS/デヴス』(2020)で主演してるらしいので、まだ観てない『MEN 同じ顔の男たち』(2022)と合わせて近々観みようと思う。

 

 

内戦が起きた理由は劇中では語られないが、監督のインタビューなど読むと、
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』アレックス・ガーランド監督が語る「右派と左派が喧嘩せず議論できる映画を」 | CINRA
本作に出てくる「無能な大統領」は、やはりモロにドナルド・トランプ
「トランプみたいな奴が三期目に突入して都合の悪いFBIも解体して専制政治やり始めたら普段は仲悪い右と左が結託してブッ殺そうとする」という図を提示して、映画を観る色んな人に考えてもらおう、そんな感じか。
ちなみに映画製作が始まった時はウクライナパレスチナなどの事が始まる直前だったようなので、それらの事は念頭になく、監督が若い時に本作のジェシー同様に報道ジャーナリストを志していた記憶や、トランプのホワイトハウス襲撃の先導や色々やらかしてるトランプが再び大統領選で元気よく戦ってる姿などを念頭に置いたものだろう(またトランプだけでなく、トランプをベースに歴代合衆国大統領の要素を取り入れている)。
と言っても本作の大半は四人がホワイトハウスを目指すロードムービー的な内容なので、それらの事は劇中で具体的に語られてるわけではないけど。
単純にこれ書く前に上のCINRAのISO氏の監督インタビュー記事読んだら面白かったので今言ってみただけ。

 

 

一行はホワイトハウスを目指す道中で様々なものを目撃する。
略奪者?だという者を私刑にして吊るしているガソリンスタンド。WFが大学?のような建物で敵兵を銃殺するモンタージュ。内戦など自分には全く関係ないと言わんばかりに普段通りの平和な暮らしをしている町。遊園地のような脳天気な曲が流れる中で謎の狙撃者と膠着状態になっているWF狙撃者たち。赤い眼鏡の恐ろしい兵士。燃える森。そして終点ホワイトハウス
中でも大学っぽい建物でWFが敵兵を銃殺する時にデ・ラ・ソウル流れるが、曲も映像も編集もカッコよすぎてヤバい。そして同時に敵兵も別に悪人というわけでもないので純粋にカッコよがっていいのだろうかという複雑な感情にもなり、でもその気持ちを下から押し上げてくる抗いようのないカッコよさがある。真顔で観ているサミーとか高みにいるリーとか銃乱射する知らん狂乱WF民兵のスローモーションなど凄く良い。というかこの曲だけでなくED曲とか遊園地っぽい曲とか本作の音楽は全体的に良い。

WFと謎の男が膠着状態になってるシーンは、撃ってきてる奴がリー達の「報道」って書いてる車を遠慮なくバンバン撃ってるし、彼を殺ろうとしてるWFも「あいつが何なのか知らん」と言う。殺した後でも結局彼が何だったのか、狂った合衆国シンパなのか、乱世を利用して人殺ししてる只の狂った奴なのか最後までわからない。顔すら出てこないところを見ると、監督が「大嫌いだからやってない」と言っていた「SNSによくいる悪意の匿名投稿者」ではないか?と、安易ながらそう思った。
「”平和”な町」は「こんな大変な事になってるのに”ていねいな暮らし”して冷笑とか決め込んでて良いのか?」とかいったものを感じた。
で、本作の予告編が公開された時点で「お前はどういうアメリカ人だ?」という”わかめラーメン”の石立鉄男みたいな台詞がバズったという、赤い眼鏡の民兵(演:ジェシー・プレモンス)のシーン。

youtu.be

こいつもまた何なのかよくわからない。その得体の知れなさと行動が怖いキャラ。キャスティングされてなかったけど近くにいたから主演のキルステン・ダンストが「使ったら?」と監督に言って殆ど即興でこのキャラが出来たっぽい?
得体の知れなさと「自分が認める生粋のアメリカ人」以外は凄い勢いであっさり殺すし、物凄くレイシストだという事だけはわかる。中国系の人を思い切り殺すし現代アメリカ映画の登場人物としては最も恐ろしいキャラクター。レイシストってだけでなく物凄い数の人を殺してる!戦地かってほど殺しすぎて専用の穴を掘らなければいけなかったほどだ。よく数人でこれだけ殺せたな……ジョエル達は割と助かりそうな感じでいってたけど最終的には殺されていた気がする。というかサミーが事前に「あの死体の山を見たか?私の勘では絶対に殺されると思う!」と言っていた。サミーが言うからにはもうそうなっていたのだろう。
この修羅場どうするんだろう……と思ってたらサミーのまさかの行動で切り抜ける。
それにしても赤眼鏡が一瞬にしてこの世から消えたかのように消されてしまったのが今思うと少し可笑しい。
そして美しい森のシーンの後、遂にリー達はホワイトハウスに辿り着く。
もはやWF民兵たちも辿り着いており、ホワイトハウスは98%くらい堕とされている。
大統領にインタビューするのが目的だったジョエルは「苦労してきたのに無駄だった!」と苛つくが、腐ってても仕方ないのでWF民兵達に護られながらリー達もホワイトハウスに突入。ここからは今まで少なかった銃撃戦メインで一気に最後まで行く。
民兵に護られてるとは言いつつ銃弾が飛び交ったり車輌が爆破されてる現場なので、いつ死んでもおかしくなくて単純に恐ろしい。
ちなみにジェシーが写真を撮ると、どんな写真が撮れたかパシャッ!という音と共にモノクロ写真がスクリーンに表示される。この旅(本作)自体がジェシーの主観という感じがある。
そういえば酷い現場を多く見てるから常に動じなかったリーがホワイトハウス突入前にジェシーより取り乱してた場面は何なんだろう。俯いた顔面を下から撮ったショットとか、何を考えていたんだろう?正直今もよくわからない。
※追記:溜まっていたPTSDが師サミーの死で極限に達していたかららしい。
で、いよいよホワイトハウスに突入。叶わないと思われていたジョエル怒りのインタビューも出来て〆。
クライマックスの悲劇は、まぁフィクション好きな人なら割と全員映画が始まった瞬間に想像すること。だが、定番なら殆どの場合先達である師(過去)が死ぬ、だが虚しさを伝えるために敢えて若者(未来)を殺すパターンもありうる(特に戦争映画はこっちが多い)。だからその瞬間までわからなかった。

そういう感じで最初から最後まで面白かったし良かったです。
監督が思ってることが優れた長編映画の各シーンになってることを思えば「SNSが嫌いで一切やってない」というガーランド監督のされなかったポストが集結して長編映画化されたのが本作かもなと思った(……というか芸術自体がそうか)。
今朝も、ガザで護られるはずの記者がイスラエル兵士に殺されてバラバラにされてビニール袋に入れられてた記事を読んだ。もし続編があるとすれば必ずしも兵士に護られるだけではないという内容になるのかなと思ったりした。

 

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そんな感じでした

アレックス・ガーランド監督作〉
『エクス・マキナ』(2015)/面白いSF映画だけどソノヤ・ミズノ演じるキョウコが完全に主役を食ってた👩 - gock221B
『アナイアレイション -全滅領域-』(2018)/『アンダー・ザ・スキン種の捕食』っぽい。熊のシーンが秀逸🐻 - gock221B
『MEN 同じ顔の男たち』(2022)/別につまらないとまでは言わないが観る前に想像した通りの内容でしたわ👩🏻 - gock221B
『DEVS/デヴス』(2020) 全8話/面白いがラスボスの結末それでいいのか感。決定論と多世界解釈とシュミレーション仮説いっぺんに扱い盛りだくさん🧒🏻 - gock221B

 


 

happinet-phantom.comCivil War (2024) - IMDb
Civil War (2024) | Rotten Tomatoes
シビル・ウォー アメリカ最後の日 - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

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