gock221B

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『PERFECT DAYS』(2023)/リアルな『ウィリーズワンダーランド』的な映画。全編小さな幸福を追求する孤立初老主人公を肯定したいが実際には緩やかな自傷行為🚻


監督&脚本:ヴィム・ヴェンダース 製作総指揮&主演:役所広司 脚本:高崎卓馬 撮影:フランツ・ラスティグ 美術:桑島十和子 スタイリング:伊賀大介 製作国:日本/ドイツ 上映時間:124分 公開日:2023年12月22日(ドイツは2023年12月21日)

 

 

公開日は昨年末だったみたいだけど近所の劇場では延々と上映し続けてるから観に行った。
ヴィム・ヴェンダース監督脚本の日本とドイツの合作。
ヴェンダースの映画ってあんまり観ないのだが検索してみたが最後に観たのってサラ・ポーリーとかティム・ロスが出てるという理由で観た『アメリカ、家族のいる風景』(2005)以来観てないから19年ぶりに観たことになるのか。
2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、役所が日本人俳優としては「誰も知らない」柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を撮ったり第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされたりもした。

「東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを世界的な建築家やクリエイターが改修するTHE TOKYO TOILET プロジェクト」とやらに賛同したヴェンダースが東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いたらしい。これが原因で一部で叩かれたりもしていた。

ネタバレあり

 

 

 

 

東京渋谷トイレ清掃員として働く独身中年男性平山(演:役所広司)。
毎朝持って帰った植物に水をやること、家の前の自販機でコーヒーを買ってトイレ清掃に出発すること、仕事が終わったら銭湯に行くこと、洗濯はコインランドリーでしている、カセットテープの音楽を聴くこと、古本の文庫本を読むこと、小さなフィルムカメラで木々の写真を撮って現像して保存すること、いつも決まった地下の居酒屋やスナックで食事すること……淡々とした同じ毎日を繰り返しているが彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちていた――

そんな映画。
もともと東京は好きだし、それがヴェンダースっぽい美しい映像で撮られている。
そして全編を通して、平山は上記のトイレ掃除とお楽しみルーティンを繰り返す。おじさんが日々のルーティンをこなす映像というのはYOUTUBEでもたまにあるが妙に中毒性ある。それをやってるのが役所広司だし撮ってるのはヴェンダースなので凄く心地良い映像で観ていて気持ちいい。
トイレ掃除も、劇中出てくるのは「THE TOKYO TOILET プロジェクト」とやらの凄く綺麗でハイテクなトイレばかりなので観ていて不快ではない。うんちとか付いてないからね(僕はどんなにリアリティのためでも映画の劇中にうんちとかゲロとかは出してほしくないタイプなので助かった)。
映画を観てたら「帰宅したら自部屋を掃除してお茶入れて読書したい!」という欲求が強烈に生まれてくる。
平山が寝る度に、その日あった事を夢で見てるんだけど、本当に平山が夢見てるシーンの回数が多すぎて面白かった。夢見るシーン10回くらいなかった?催眠にかかりそうだったわ。

 

 

役所広司演じる平山は極端に寡黙な男。だもんで台詞は極端に少ない(たまに口を開くと、あまりに発声してないせいか寝起きみたいな声になってるところがさすが役所広司と思った)。
平山には普段から会う恋人、家族、友人、ペット等は特にいない。……しいて言うなら5、6年通っているスナックのママ(演:石川さゆり)と少し良い雰囲気というくらいか。互いに淡い好意は抱いているようだが特に関係を進展させようとはしていない。そういったものをほぼ放棄しているのが平山。
あとは仕事の頼りない後輩タカシ(演:柄本時生)や行きつけの店の人達や、よく顔を合わすが会話をするわけではない舞踏ホームレス(演:田中泯)や、いつも平山が座るベンチの隣のベンチで弁当食べてるOL(演:長井短)、トイレに◯✕ゲームの紙を差し込んで平山と対局している誰だかわからない者……など「街のいつメン」くらい。
平山の年齢もよくわからない。演じている役所広司は検索したところ何と60代後半だった。だが役所広司はスタイルがよく髪ドフサのイケメンであるためハッキリ言って役所広司の容姿を見ただけでは平山の年齢がわからない。仮に60代としておこう。
映画は中盤……あたり?まで平山は労働や毎日繰り返してる趣味を楽しんでいるだけで人間ドラマは起きない。というか平山は無口なので台詞もほぼない。

 

 

柄本時生演じるやる気のないタカシが、狙っている金髪女子アヤちゃん(演:アオイヤマダ)を巡って平山の領域に(ほんの少しだけ)侵入してくるだけだ。
タカシはトイレ清掃の仕事に対してやる気がなく遅刻したりサボり気味だし金借りてきたりするので平山は少し白い目で見ている。しかしタカシは思いのほか温かみのあるところがありダウン症の少年でらちゃん(演:吉田葵)に自分の耳を自由に触らせている。これを見た平山は初めて笑顔を見せるので観てるこちらも嬉しくなった。
だがタカシはこの仕事をしたくないので映画後半で飛んでしまう。一人で夜までシフトしなきゃならなくなった平山は事務所に電話して声を荒げるし、でらちゃんは寂しそうな顔を見せるしで少し胸が傷んだ。だけど青年ってやつはバイトを飛ぶものだ。平山に電話一本入れただけマシと言えなくもない。タカシは若さゆえ自我が固まっておらず、ダウン症の子に優しくしたり良いことするのも、逆に平山にタカったり仕事飛んだりするのも、良くも悪くも純粋で空っぽゆえだろう。
また平山のカセットを無断で持ち出したアヤちゃんが平山にカセットを返しに来る。
車でもう一度だけ音楽を聞いて平山の頬にキスして去り、平山は驚く。
ここは、「中年男性~初老男性のファンタジー」って感じがして少し嫌だった。
まるで柳沢きみおの漫画『大市民』で、若者たちが妙に主人公おじを慕ってたような寒い展開だ。ただし平山は人柄や趣味が良いし演じてるのが役所広司なのでルックスも良いイケジジイなのでかろうじて成立していたが。
またアヤちゃんは少し泣いてた、タカシはアヤちゃんと上手くいかなかった的な事を行ってたしアヤちゃんは「タカシ何か言ってた?」と平山に訊いて少し泣く。少しだけ気になるが平山は突っ込んで訊いたりする性格ではないので結局タカシとアヤちゃんに何があったのかは全くわからない。
それにしてもタカシは「いい加減さ」「若者特有の厚かましさ」を誇張しすぎて若干、コントみたいなキャラになっていた。古本屋の店主(演:犬山イヌコ)もね。

 

後半くらい?平山がいつものようにアパートに帰ると少女が座っている。
少女ニコ(演:中野有紗)はどうやら平山の妹の娘……姪。家出してきたみたいで平山は最初ニコが誰だか分からなかったので何年も会っていなかったようだ。
ニコは平山文庫からパトリシア・ハイスミス『11の物語』の「すっぽん」を読んで感情移入する。支配的な母親と暮らす少年が反抗心を抱く小説らしいので、母と喧嘩したっぽい。
ニコは平山に懐いておりトイレ清掃に着いてきたり、平山と同じくカメラで写真を撮ったりカセットの音楽を聴いたり平山と自転車で銭湯に行ったり一緒に創作した歌を唄ったりして、かなり爽やかな時間が流れる。
ニコが言うには、母は「兄さん(平山)は住む世界が違う」と語り、それ以上は平山について話そうとしない事を語る。
それを受けた平山はこの世界の小さな色々を楽しんでいることを語る。
アヤちゃんの時はジジイファンタジーって感じで嫌だったが、ニコの場合は嫌じゃなかった。あとくどいようだが平山を演じてるのが優しそうな役所広司というのもデカい。それに本作をずっと観てたら、平山が死ぬ時に彼が行きた証が何もないまま平山が消えてしまう感じがして切ないので、せめてニコくらいは伯父さん(平山)の何かを受け継いでほしいと、ただの観客なのに勝手ながらそう思ってしまう。
やがて平山がこっそり電話したので、ニコの母親&平山の妹ケイコ(演:麻生祐未)が娘を迎えに来るのだが、運転手付きの車に乗っておりお金持ちだという事がうかがえる。
数年ぶりに会った平山とケイコの僅かな会話で、どうやら平山も金持ちのエリートだったっぽい雰囲気を感じた。そして平山と父は確執があり認知症になって曖昧になってしまった状態の父にさえ平山は会いたくない様子が伺える。
その後も、スナックのママの元夫(演:三浦友和)との触れ合い(これもまた影踏みとかしてかなりポエティック、だが日曜劇場ドラマみたいにおじ同士が具体的な事ばかりしても味気ないのでこれくらいは許してほしいきもちになった、三浦友和も長くなさそうだし……)

 

 

そんな感じで淡々とした平山の生活に、小さな人間ドラマが幾つか差し込まれ、いつものようにトイレ清掃に出かける平山のドアップの笑顔で映画は終わる。ただしその笑顔はやがて泣き顔に変わりそしてまた笑顔に変わり再び泣き顔になる……?すごい演技だが正直、役所広司の顔のドアップをずっと見せられてゲシュタルト崩壊気味になって平山が泣いているのか笑っているのかよくわからなくなってきた。
そういう狙いなのかな?
この最後の泣き笑いの平山の感情……というのは情けない話だが正直よくわからなかった。彼の笑顔や美しい朝日、そして流れる音楽などは正に「今日もまた彼のPERFECT DAYSが始まる……!」っていうポジティブな映像で終わるのだが、僕には逆の意味に思えた。
ニコママが平山を指して「兄さんは私とは住む世界が違う」というのは単純に、ニコママはタカシ達……つまり最大公約数的な殆どの人達と同じような幸福を追求しているが(なるべく多く儲けて、良い結婚して、良い子を育てる)、平山はそうではない、孤立しようとしてるし普通とは違う幸せに向かっている。一言で言うとニコママは兄を指して「世捨て人」と言いたかったのだろう。ラストシーンを観て、哀しみを感じたのは平山が泣いていたからではなく、そもそもラストよりずっと前の時間から……平山のささやかな小さい幸せを追求する生活を観ていても、観てると心地いい映像だし楽しかったが、全体的にこの映画は「PERFECT DAYS……ではないよ」と言ってるようにしか見えない。この映画タイトルは反語にしか思えないんですよね。
何か、父と何かがあって実家から離れ、極力人と会わない最低限の仕事をしている。だから迎えに来た妹は、否定するわけではないがアパート住まいやトイレ清掃してる事に驚いていたよね。
どう観ても、平山は別に給料の高い仕事はとても出来なかったりするわけではなく、本来は高い能力を持っていながら、わざと多くの人が嫌がりそうな単純作業に従事して安いアパートに住んでるようにしか見えない。こういう生活が悪い訳ではないが(……というかそういう僕もほぼ平山みたいなもんだし)単純に平山は、自分の小さな幸福を追求しつつも、自傷してますよね。だからケイコも平山本人も今まで目を逸らしていたその事実をまともに見てしまい、2人は泣いたのだろう。
平山は毎日働いて部屋も体型も服装も綺麗に保ち(ちなスタイリングは日本最高峰の伊賀大介)……そんな小さな幸福を追求する孤立生活で自己完結しても、姪が数日遊びに来て他人と関わらざるを得なくなっただけで崩壊する、それが平山の「パーフェクトデイズ」だったわけです。
平山は過去に何かあってこうなったらしいし彼の臨んだ幸福を否定する訳ではないですが、安易に平山に憧れるのは止めておきましょう(そういう人たまにいるらしいので……)。

ヴェンダースは小津のイメージだったらしいが小津というより、映画の方向性は全然違うんだけど僕は「厭世的な寡黙初老が単純労働して小さな幸福を追求して自己完結する」系映画としてニコラス・ケイジ主演の低予算ホラーコメディ、『ウィリーズ・ワンダーランド』(2021)に似てると思った。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Perfect Days (2023) - IMDb
Perfect Days | Rotten Tomatoes

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『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)/期待せずスルーしてたが何となく観たら過去作やアーガイルより面白かった。観ないとわかんないもんですね🕴


原題: The King's Man 監督&脚本&制作:マシュー・ヴォーン 脚本:カール・ガイダシェク 制作:デヴィッド・リード、アダム・ボーリング 原作:マーク・ミラー&デイヴ・ギボンズ 製作国:イギリス、アメリカ 上映時間:131分 公開日:イギリスorアメリカは2021年12月22日(日本は2021年12月24日) シリーズ:『キングスマン』シリーズ、マシュー・ヴォーンのスパイ映画ユニバース(仮)第3作目

 

 

『キングスマン』(2014)『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)の前日譚。
独立スパイ組織キングスマン結成秘話。
『ARGYLLE/アーガイル』(2024)を観て、そういえば前日譚のやつ観てないなと思い、アマプラ見放題にあったので観た。
公開時はコロナ禍の緊急事態宣言の時……だったかな?コロナが無くても何か地味そうだな……と思って物凄く興味なかったのだが実際観たら一番面白かった。観ないとわかんないもんですね。

ネタバレあり

 

 

 

 

国家に属さない秘密のスパイ組織〈キングスマン〉誕生秘話。
1914年〈羊飼い〉と呼ばれる怪人のもとに世界各国から集まった怪人達〈闇の狂団〉は世界各国の中枢に潜り込み、従兄弟同士であるイギリス、ドイツ、ロシアの各最高指導者を裏から操り破滅的な第一次世界大戦を起こそうと企んでいた。

何者かが暗躍している事を察知した英国貴族オーランド・オックスフォード公(演:レイフ・ファインズ)、その息子コンラッド(演:ハリス・ディキンソン)、執事ショーラ(演:ジャイモン・フンスー)とポリー・ワトキンズ(演:ジェマ・アータートン)達は秘密結社に立ち向かう。
彼らは世界大戦を止めることができるか――

みたいな話。
観る前は「なんか地味だな……主人公もレイフ・ファインズだし」とか思ってたが、第一次世界大戦当時の実在した政治家や怪人物たちがわんさか出てくる。
……という内容が、同じくイギリスの怪人アラン・ムーア(『ウォッチメン』書いた人)のアメコミの中で僕が一番好きな『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』シリーズ(1999-2012)に似てるなと思いどんどん惹き込まれていった(『リーグ……』はイギリスの童話や小説や映画など、ありとあらゆるイギリスの架空のキャラクターが一堂に会して秘密結社と戦う内容)。

主人公のオーランド・オックスフォード公は、英国軍人だったが戦いに嫌気が差し、退役してからは不殺の誓いを立てて赤十字の活動を行っていたが、やがて国家に頼らない独立した諜報機関設立を目指す。
ロシアの怪僧グリゴリー・ラスプーチン(演:リス・エヴァンス)が世界大戦の引き金になる情報を諜報員から聞いたオーランド達はラスプーチンをブッ殺すためにロシアに飛んだ。また、成人直前で戦争に行きたくてたまらない息子コンラッドもオーランドの諜報機関キングスマンの前身)に加わり共にロシアへ。
そこで、脚が悪かったオーランドはラスプーチンに脚をベロベロ舐めまわして治してもらったり、ラスプーチンラスプーチンで怪しいと思っていたオーランドの脚をわざわざ治した後で殺そうとする。オーランドは息子や仲間たちと力を合わせてラスプーチンを倒す。
本作を観た人が、やたらとラスプーチンが良いと言ってた通り、ここまでの時間は、主人公のオーランド達があまりに真面目すぎたためか興味が持てないまま観てたのだが、ラスプーチンの登場で一気に目が覚めて映画に惹き込まれた。
90年代の格ゲー『ワールド・ヒーローズ』シリーズもまた実在の英雄が戦うというゲームで、そこに出てきたラスプーチンはクルクル回転してスカートで敵を斬ったり男も女も秘密の花園に引きずり込み何やら怪しいことをしてダメージを与えるというインパクトの強いキャラだった。
本作のラスプーチンもまた、ロシアバレエをを踊りながらクルクル回転して攻撃したり、男も女も問わずSEXしまくるという感じで、ワーヒーとほぼ同じキャラクターだったので「やっぱラスプーチンってこういう印象なんだな」と思った。
ルックスもバッチリだし、そのキャラクターも死を全く恐れず、いやむしろ死ぬのも気持ちよさそうだから「できそうなら殺してくれ?」って感じでオーランドたち全員を相手にする、本当に「怪人」という異名がピッタリのナイスキャラクターだった。
あまりにインパクト強すぎたので、てっきりラスプーチンが〈羊飼い〉に下剋上を果たしてラスボスになるかと思ってたらあっさり死んで、中ボスだったので意外だった。

 

父と共にラスプーチン退治した息子コンラッドは、そのまま父のチーム入りするのかと思いきや、父の反対を振り切り軍に入り大戦に参加。英雄的な活躍をするもののあっさり戦死してしまう。これも又意外だった。
というか冒頭は、オーランドの妻が戦死してしまいオーランドは「息子は絶対に護るぞ」と誓うところから始まった。だから息子の従軍に反対してたのだが、息子はそれを窮屈に感じ、結局戦争に行って死んでしまった。
妻を喪い、フィクションでは「未来」を象徴すると言ってもいい息子まで喪うとはね、老兵が妻や子を見送ってまでも戦い続ける……という話は意外と少ない展開だし「そういえばマシュー・ヴォーンってツイストが効いた展開が得意だったな」と思い出し、本作への興味がどんどん湧いてきた。
オーランドは落ち込んで飲んだくれるが執事ポリーの激もあり、立ち直り闇の教団潰しへと再起する。
戦う映画では大抵、第二幕ラストで敗北して第三幕で再起して勝利する……そんな構成が多い。だが、まさか希望に溢れた若い息子が死ぬなんて……。しかも戦場での誤解が原因となった同士討ち……という避けられた死。息子コンラッドも死の直前、自分の戦争行きをずっと止めていた父オーランドを振り切って戦地入りした事を悔いていたり、思いがけず心を動かされた。
『キングスマン』シリーズを単純に拡張するためだけの前日譚だと舐めてたけど、オーランド父子のドラマが思いのほか分厚かった。正直言って『キングスマン』(2014)『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)『ARGYLLE/アーガイル』(2024)より本作の方がずっと惹き込まれた。それら三作は英国っぽいブラックジョークが強く、それもまた良いんだけどどれも少し引っかるところもあったんですよね。そこは個人差があると思うけど。本作の場合すごく丁度よかった。
で、いよいよラスボス〈羊飼い〉とのラストバトル。
〈羊飼い〉は劇中、ずっと顔が隠れていて正体は誰か?と観てる人に想像させる。
中盤でオーランドの盟友であるキッチナー指揮官(演:チャールズ・ダンス)が魚雷を喰らって死亡した。
で、そのキッチナーを演じてたチャールズ・ダンスって『ゲーム・オブ・スローンズ』〈シーズン1-8〉(2011-2019)で恐ろしく冷酷無比な領主タイウィン・ラニスター役してたイギリスの有名な俳優なんですね。そんなキッチナーも何もせず死んでしまったし〈羊飼い〉の髪型とか背格好もキッチナーを思わせるよう描いてたから「〈羊飼い〉は絶対、キッチナーだろうな~」と思ってました。
でも、ここも捻りを加えててキッチナー……だと思わせてキッチナーではなかった。
だが、ここは本当に「〈羊飼い〉の正体はキッチナーだと何度も観る人に思わせて……違う小者っぽい奴でした~!」という引っかけがやりたいだけだったので「ここは素直にキッチナーの人のラスボスが観たかったな」と思った。
だが後から思えば、〈羊飼い〉はやたらと家畜や部下に八つ当たりする小者っぽいキャラだったので最初からヒント出してたんだよね。
そして目的を果たしたオーランドはキングスマンを結成。そこには亡き息子の戦友(アーロン・テイラー・ジョンソン)の姿が……彼はランスロットの称号を得た。オーランドは勿論アーサーね。
アメリカ大統領はウイスキーのステイツマンをやたら飲んでたし諜報組織〈ステイツマン〉も出来るんでしょうな……それとももう出来てるのかな?もうステイツマンの設定も忘れちゃってよくわかんないけど。
で、〈羊飼い〉は一旦倒すが狂団には生き残りが居て、まだ健在。そして新メンバーにはレーニンヒットラーの姿が……という感じで続きが観たくなった。いや、はっきり言って現代のキングスマンより面白いと思うのは僕だけ?歴史上の人物や事件をいっぱい使えるってのが良いよね。
でも本作は確かヒットはしなかった気もするし、次の作品はキングスマン3っぽいし、本作の続きは今のところ作られるかどうかよくわからない。
観る前は地味だと思って観なかったがいざ観てみると、過去2作や『ARGYLLE/アーガイル』(2024)より面白かった。食わず嫌いして観もせず決めつけないでちゃんと観るべきだなと思った。
ラスプーチン戦もエレベーター攻防戦も〈羊飼い〉戦のアクションも良かったしね!
なんというか現代のキングスマン系は、装備などがハイテクすぎたりアクションが漫画チックすぎるところがちょっとなと思ってたけど本作は、昔の話のせいか割と普通のスパイものっぽかったんですよね(ラスプーチンなどの怪人以外)そこが良かったです。

 

 

 

そんな感じでした

gock221b.hatenablog.comgock221b.hatenablog.com『ARGYLLE/アーガイル』(2024)/主人公エリーの秘密が明らかになる前の平凡だった時の主人公や本編の方が面白かったし、どんでん返しが5回も6回も起き続けると「もうどうでもいいから結果だけ教えろ」という気持ちになる😾 - gock221B
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The King's Man (2021) - IMDb
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『ARGYLLE/アーガイル』(2024)/主人公エリーの秘密が明らかになる前の平凡だった時の主人公や本編の方が面白かったし、どんでん返しが5回も6回も起き続けると「もうどうでもいいから結果だけ教えろ」という気持ちになる😾


原題:Argylle 監督&制作:マシュー・ヴォーン 脚本:ジェイソン・フックス 製作会社:マーヴ・スタジオ 上映時間:139分 製作国:イギリス、アメリカ 公開:2024年2月2日(日本は2024年3月1日) シリーズ:『アーガイル』トリロジー第一作目、マシュー・ヴォーンのスパイ映画ユニバース(仮名)第4作目

 

キック・アス』(2010)一作目、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)、『キングスマン』シリーズなどでお馴染みのマシュー・ヴォーンの新作。
この人の映画はいつも凄く良い部分と、ちょっとどうかな……という部分がいつも同居している。人によってその部分が違う。
多かったのは『キングスマン』(2014)のクライマックスでギャグみたいに敵を皆殺しに描いたところが苦手という人は当時多かった。僕は、そういうところは「最初から殺人をギャグとして描きたい人なんだな」と思って気にならなかったが、『キングスマン』(2014)で生き残ったサブキャラを『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)で大して意味なくバンバン殺したのが印象悪かった(あの同級生の女の子とかその師匠やハゲの仲間ね)。面白半分の殺人は気にならなかったが仲間を適当に殺すのは嫌だったということで、この2つは根底では同じものがあるのかもしれない。彼の映画は、つまらないものはなくどれも面白いと思うのだが他にも細かい気になる事が多々あり「ハズレはなしどれも面白いけどイマイチ手放しで最高!と絶賛しきれない監督」という印象。
本作は主演のブライス・ダラス・ハワードサム・ロックウェルが好きな俳優だし、ヘンリー・カヴィルもスパイものも好きだから久々に観に行った感じ。

ネタバレあり

 

 

 

 

愛猫アルフィーと暮らす内気な人気小説家エリー・コンウェイ(演:ブライス・ダラス・ハワード)はスパイ小説『アーガイル』シリーズの著者。
スパイ小説『アーガイル』の内容は劇中で少しだけ観れるが「角刈りスパイのアーガイル(演:ヘンリー・カヴィル)やマッチョ相棒のワイアット(演:ジョン・シナ)、仲間のキーラ(演:アリアナ・デボーズ)等が大活躍する」という内容。
ところがエリーの執筆したスパイ小説『アーガイル』の内容が偶然、現実のスパイ組織や陰謀に酷似しすぎていたため実在するスパイ組織から命を狙われる。
実家に帰省しようとしたエリーは男たちに狙われるが、組織の陰謀を正したいスパイエイダン(演:サム・ロックウェル)がエリーを助ける。
こうしてエリー&猫は現実のスパイ、エイダンと敵の陰謀を探しながら逃避行する――

という内容。
ヘンリー・カヴィル演じる角刈りスパイ”アーガイル”が主人公だと思ってたら、ブライス・ダラス・ハワード演じる小説家が主人公だった。ポスターや予告でアーガイルばかり目立ってるから彼が主人公かと思った。だけどブライス・ダラス・ハワードも好きだから別に構わない。
ブライス・ダラス・ハワードは映画一家に生まれた映画サラブレッド女優。2000年代は痩せた少女を魔法で無理やり大人にしたって印象の美女だったが若い時はあまり興味なかったが約10年前の『ジュラシック・ワールド』(2015)辺りから体型がふっくらし始めてきて気になってきた。下半身が全体的に太く上半身もほどほどに太い……でも太りすぎずくびれとかはある、そして元々細いせいか顔は細いまま、そんで未だに少女っぽい雰囲気が残ってる……という中年男性が最も好みそうな中年女性の体型。ふくらんだり痩せたりを繰り返してるが本作はかなりふっくらしてる塩梅で顔も丸い。だがどんくさい小説家という役だし合っていると言えば合っている。
あと『マンダロリアン』〈シーズン1-3〉『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022)で4話も監督しており、SWシリーズの監督の一人でもある。そういう感じで色んな魅力がある。
もう一人の主人公スパイのエイダン役はサム・ロックウェルで、僕はかなり好きなのだが彼は調子に乗った嫌な奴の役が最も輝くが、こういうワイルドで強い男役はあんまり合ってないような気がした。
「おとなしい女性が、荒っぽいタフガイ男性と冒険する」という『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)とか『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984)とか最近だと観てないけど『ザ・ロストシティ』(2022)とか?、地味に昔からよく作られるタイプの映画。男はワイルド男主人公に、女性はタフガイに守られるおとなしい女性に、それぞれ感情移入して楽しむ、そんでタフガイと女性は冒険を通じて愛が芽生えてラストでキス……と、こう書いててもやはり今もうこんなハーレクイン小説みたいな筋書きは古い。今だと男も女も戦って別にくっついたりしないのが主流。
そう思いながら2人と一匹の冒険を観てると、変化があった。
ここからネタバレが増えていくので、自分で観たい人は御注意。

 

 

「小説家の書いた内容が現実の陰謀と偶然一致してたから狙われた」という事ではなく
「エリーは実は凄いスパイのレイチェル・カイルだった。敵に小説家だと洗脳されて、敵が知りたい秘密を小説として描くのを待っていた」
という事でエリー……レイチェルの知っていた現実は現実ではなかった。
そしてエイダンはレイチェルと恋人同士でもあった相棒、エリーが書いていたスパイ小説でいうとジョン・シナが演じていたマッチョ相棒。エイダンはマッチョではないがエリーの潜在意識に眠る「頼もしい相棒兼恋人エイダン」をマッチョなキャラとして書いていたのだろう。
という事で中盤は、レイチェル&エイダンというWスパイの活躍を描く映画に変化した。
ここでも「両親だと思っていた2人は陰謀組織のボスと洗脳を担当した心理学者だった」とか「エイダンと共に悪を暴こうとしていたレイチェルは実は二重スパイで本当は悪のスパイだったのでエイダンを撃つ」「いやいや本当は正義を演じつつ悪を演じてるだけの正義のスパイだった、エイダンも無事」
……といった感じでどんでん返し……ってほどじゃないけどひねりの効いた展開が続く。
で、終盤はレイチェルとエイダンがシンプルに大活躍して組織を壊滅させる。
カラフルな色とりどりの催涙弾を撃って、その煙の中で愛し合うレイチェルとエイダンが互いを見つめ合ったままダンスのようにスローモーションで回転しながら敵を撃ち殺していく。これは『キングスマン』(2014)で好評だった(そして一部に不評でもあった)上級市民皆殺し描写を思わせるマシュー・ヴォーンっぽいシーンだった。
その後は重油で滑るし引火が怖いのでナイフ・ファイティングになる。レイチェルはスケートが得意だったらしいという自分の記憶を信じてフィギュア・スケートのように滑って敵を全員斬り殺す。
そんで何だかんだ細かい捻りを加えつつ敵組織を壊滅させて一件落着する。
レイチェルが強すぎてハラハラしないので一回、猫が入ったリュックサックに敵の銃弾が命中して「ニャッ!」と猫が叫ぶ。ピンチを抜けた後でリュックを確認したら猫は無事だった。しかしマシュー・ヴォーン監督は大して意味なく味方を殺したりするので「マシュー・ヴォーンなら流れ弾で猫をころしかねない」と猫がめちゃくちゃ心配だった(本作で唯一ハラハラしたシーン)。
……と書くと何だか楽しそうな映画に思えるが(実際ある程度は面白い)「エリーは実はスパイのレイチェルだった」と明らかになって以降の、どんでん返しにつぐどんでん返しやアクションの数々!……よりも、エリーと猫とスパイが普通に逃避行してる方が楽しかった。
どんくさ小説家のエリーもエイダンに「君が書いた小説は全部、すごいスパイや敵組織の行動と一致してるくらい凄いんだ!だから、ここで小説ならどうするか考えてみて!」といった感じで「エリーが内気でどんくさくて全く戦闘はできないがスパイ小説家ならではの想像力を活かす、そしてそれをスパイのエイダンが実行する」……というこの平凡な前半の方が面白かった。
中盤以降は「エリーは凄いスパイのレイチェルだったので普通に強いし、エイダンと協力して敵を倒しました」という、こっちの方が正直つまんなかったんですよね。
スパイのレイチェルより、陰キャ猫おばっさんエリーの方が魅力的だったし。
凄いスパイにはとても見えないふっくら体型熟女のレイチェルが暴れまくる映像は新鮮なものがあったが……。
またエイダンが事ある毎に、どんくさいエリーと猫をなじったりする。本作の中に入ってエイダンになったつもりで考えたら「愛し合っていた恋人兼凄腕の相棒だったレイチェルが憎い敵組織に洗脳されて内気でどんくさい小説家に変えられた」のだから「小説家エリーとか嫌だ!猫も好きじゃなかったやん!」と嫌う気持ちはわからないでもない。だけど、さっきエリーもレイチェルも同時に知った僕から見たら「エリーの方がキャラも本編も面白かったぞ」という気持ちが強い。だからそういう観客視点で見るとエイダンがエリーを貶すのは嫌だった。
エリーの正体以外にも、本作は明らかになる真相がめちゃくちゃ多い。「スパイ映画はそういうもの」という事はあるが、それにしても多い。
「アーガイルが主人公だと思ってたらエリーが主人公だった」というスタート地点もちょっとしたどんでん返しと言えるし。
だが「実は真相はこうだった!」というのが、ここまで多いと正直どうでもよくなってきて「もうどうでもいいから結果だけ教えろよ……」という気分になってくる。やっぱメリハリが大事ですよね。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 (2022)も、最初は凄い映像や展開を面白いと思ったが、凄い展開や映像が二時間近く延々と続くから後半一時間くらいもうどうでもいいと思って眠くなったし。
やはり「以外な真相」は2、3個くらいで良かったのではないか?
あとこれは只の好みですが『キングスマン』シリーズもそうなんだけど佳境になるとスローモーションでダンスみたいな戦闘になる演出があんまり好みじゃないというのもあります。あとマシュー・ヴォーン映画でよくある人の死が軽いのも、倫理的とかは別に気にならないんですが「話の都合で敵が勝手に死んだだけ」みたいに敵を倒すことのカタルシスも減っちゃうからあんまり好きじゃないかも。レイチェルがナイフを両手に持ったままスケートみたいにスライディングしたらナイフが触れてもない敵が全員即死するんですよね。「『レイチェルはスケートみたいに滑りながら凄いナイフ・ファイティングで敵を倒した』それを楽しい感じで映像化したらこうなったんだ」という意味なんだろうけどやっぱり殺すなら真面目に殺してほしい。『ジョン・ウィック』シリーズも割と劇画漫画っぽいアホらしさがあるけど一応、ちゃんと殺してはいるじゃん。撃ち方だけはリアルだったりするし。やっぱ殺人をダンスシーンにするのは好きじゃないかも。これが楽しくて良いって人もいるんだろうけどね。

 

 

そしてラストもやはり以外な真相?が明らかになる。今まで小説家エリー(レイチェル)が創造したと思っていたアーガイル(演:ヘンリー・カヴィル)が現実世界でエリー(レイチェル)に会いに来て映画は終わる。
実在したアーガイルは角刈りではなく後ろ髪が新日レスラーみたいに長い80年代サーファー風だった。「変な髪型」というのがアーガイルの特徴なのね。
アーガイルはエリーの創作ではなく、レイチェルがスパイ時代に実際に出会ったアーガイルのことが潜在意識に残ってて、エリーがそれを書いたって事?アーガイルの真相は続編でどうぞってことかな。
そしてアメコミ映画のようにポストクレジットシーンがある。20年前の酒場で看板には「キングスマン」と描かれており、実在したアーガイルの若き姿オーブリー・アーガイル(ルイス・パートリッジ)が姿を見せて銃を受け取る。
さっき検索したら、この映画は『アーガイル』三部作の一作目らしい。
で、続編はこの若いアーガイルを主人公に描いて、完結となる第3作目では本作でレイチェル達と現実アーガイルが出会ったところから始まるらしい。
ラストでアーガイルが現実世界に出てきてどういうことかと考えてる間に、ポスクレでそのアーガイルの若い時が描かれ、更に「本作は『キングスマン』(2014)と世界を共有するシネマティック・ユニバースだ」と言われたわけで、妙な情報の多さにくらくらした……いや、情報自体は順序立てて考えれば特に複雑じゃないんだけどさ。
まず本作自体に対して「なんか最後まで楽しめるくらいには面白かったけど、でもイマイチだったな」と思ってるラストで現実アーガイルが出てきて「うわ、また観なアカンんの……?」と不安になってきたところで、そもそも「変な髪型してる」という以上の何の情報もないので「実在したアーガイル」に全く興味もってないのに、更にその「興味ないアーガイルのエピソード1だ!」と言われても「いや、まず今出たばかりのヘンリー・カヴィルを先に紹介してくれよ。いや、まて別にそれも興味ないので続き作るのやめてくれないか?」という気持ちにさせられる。しかも「キングスマンと世界を共有するシネマティック・ユニバース」と聞かされたらね。元々『キングスマン』シリーズは嫌いじゃないけどかといってそこまで好きでもないからね。「めちゃくちゃおもんなさそうだからスルーしてた『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)を観なきゃいけなくなった……」と新たな義務視聴が増えてしまった。
昨今のシネマティック・ユニバース疲れしてるライト映画ファン同様に僕も疲れてます。主にMCU全48作品観てきてるせいで……。「MCU嫌なら観るのやめたら?と思うかもしれないが基本は好きで観てるわけだし16年間観てきてる今更やめるという手はない。
結構、色んなどんでん返しやら面白バトルやおもしろキャラとか色々と面白そうな要素は満載なのに全体的につまんないという不思議な映画でした。
そういう感じでアマプラに『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)あったしタダだから今から観ます。

 

 

 

そんな感じでした

〈マシュー・ヴォーン監督作〉
『キングスマン』(2014)/愛と師によって最強の紳士に成長しレイシストを皆殺しにする映画☂ - gock221B
『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)/ファンが望む要素を推し進めた続編っぽさとユニバース化の準備☂ - gock221B
『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021)/期待せずスルーしてたが何となく観たら過去作やアーガイルより面白かった。観ないとわかんないもんですね🕴 - gock221B
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Argylle (2024) - IMDb
Argylle | Rotten Tomatoes

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『落下の解剖学』(2023)/ミステリー映画だと思ってたら人間ドラマ&法廷劇のフランス映画だった。観てる間は正直しんどくて眠いだけだけど観終わって時間経つと面白いという風呂入るの面倒な時に入浴した後のような映画👩‍⚖


原題:Anatomie d'une chute 監督&脚本:ジュスティーヌ・トリエ 脚本:アルチュール・アラリ 製作:マリー=アンジュ・ルシアーニ、ダヴィド・ティオン 製作国:フランス 上映時間:152分 公開日:2023年8月23日(日本は2024年2月23日)

 

 

全然予備知識無しだが、甥が観てイマイチがってたので興味が湧いたのとアカデミー賞に色々ノミネートされたし近所でやってたから、どんな内容か全く知らない状態で観た。いや「ミステリーっぽいフランス映画?」くらいのボンヤリした予想だけあった。
主演のドイツ人女優ザンドラ・ヒュラーは本作の演技で賞を総なめ、今年のアカデミー主演女優賞にもノミネートされている。

※追記:第96回アカデミー賞脚本賞を受賞した。

ネタバレあり(……だけど厳密に言うとこの映画にネタバレは無いと思う)

 

 

 

 

が積もる人里離れたフランス山荘
ドイツ人作家の妻サンドラ(演:ザンドラ・ヒュラー)と、この山荘を売るために改装作業しているサミュエル(演:サミュエル・タイス)と、盲目息子ダニエル(演:ミロ・マシャド・グラネール)。そして盲導犬スヌープが住んでいた。
ある日、ダニエルが盲導犬と散歩から帰ると、父サミュエルが出血して息絶えていた
パニックになるサンドラとダニエル。

検死の結果、死んだサミュエルは頭に打撲の痕があり、階下には血痕が付着している。彼は作業していた3階の窓から落ちて真下の小屋で頭部を強打したか、または何者かに鈍器で頭を殴打されて落下死を偽装されたか、この2つのうちどちらかしか有り得ない。
サミュエル死亡時は息子ダニエルは散歩していたし付近には誰も住んでおらず、妻サンドラと2人だった。そして三階の窓から落下死したとしても頭をぶつけうる落下場所(小屋の屋根の上)に血痕がない。
かくして妻サンドラは夫サミュエル殺しの容疑者として裁判にかけられる。
サンドラの親友の弁護士ヴァンサン(演:スワン・アルロー)は勿論サンドラを熱心に弁護する。

 

 

という事で、残りの映画の大半の時間はサンドラの裁判が行われる。
休廷を挟んで実に4回くらいもの裁判シーンが描かれる。法廷映画だったのね。
劇中で描写されるのはサミュエルが死んだ時以外なので、息子ダニエルや傍聴人同様に我々観客もサミュエルが「事故で落下死した」のか「投身自殺した」のか「殺された」のか、わからない。
本作を観てる人は、劇中の裁判官や息子ダニエルや傍聴人に感情移入してサンドラの裁判を聞きながら「サンドラは夫を殺したのか?それとも夫の自殺か?」と考えていく映画になっている。だからミステリー映画かと思ってたけど人間ドラマ&法廷ものだった。
ちなみに「落下死したら付いてるはずの場所に血痕がない。だからサンドラが殺したのでは?」という疑念はヴァンサン弁護士の実験の結果によって「サミュエル死亡時、雪が降っていたので息子ダニエルが発見するまでの時間で雪が痕を洗い流すには充分な時間があった」という事がわかっている。つまりサミュエルの自殺か、サンドラによる他殺かは振り出しに戻り、サンドラの運命は裁判に委ねられた。

何度にも及ぶ裁判によってサンドラはバイセクシャルで女性との不倫経験があるとか、ダニエルが失明した事故があってサミュエルが自己嫌悪で鬱になりサンドラも夫を短期間憎んだりして夫婦仲が険悪になったとか、夫が数年前に自殺未遂したとか、サンドラの著作に夫殺しの願望が書かれてる疑惑とか(これは敵弁護士の稚拙な指摘)、サミュエル死亡の前日に夫婦が殴り合いに発展する大喧嘩していたとか、サミュエルが夫婦喧嘩の音声をたくさん録音していたとか……様々な事実が明らかになる。
正直言って、これらの証拠や新情報の殆どは最初から最後まで「サンドラが怪しい」というものが多い。サンドラは自分に不利な事をたくさん隠していたし激しい夫婦喧嘩の音声も法廷に鳴り響くからね。しかしサンドラが有罪になれば盲目の息子ダニエルは一人ぼっちになってしまう、それならサンドラがたとえ無罪だろうと自分が不利になる事を自分からわざわざ言わないのも当然。サンドラが怪しい新情報が多いからと言って、それが真実には直接結びつかない。
中盤から後半にかけては、殆どサンドラとサミュエルのギスギスした夫婦仲を描いていて、殆どノア・バームバックの『マリッジ・ストーリー』(2019)よろしく、険悪な夫婦を描いたヒューマンドラマの様相を呈している。……というか本作はこのサンドラの家族の人間性を描くのがメインなんですよね。人間ドラマ:法廷劇の割合は7:3くらいかな。
で、この映画は観客を驚かせるエンターテイメントなミステリー映画ではないので「第三者が忍び込んでサミュエルを殺した」「実は息子ダニエルが父を殺した」……など、意識外のサプライズな原因は有り得ない。そして散々、家族の人間ドラマを描いといて「そういうのとは何の関係もなくサミュエルは滑って落下死しただけでした」なんてことも有り得ない。つまり「絶望したサミュエルの自殺?」か「不仲の夫をサンドラが殺したか?」の二択。この2つのどっちか、それしか有り得ない世界。法廷で明らかになる主人公家族の人間ドラマを観て感じながら想いを馳せる。それがこの映画。

 


正直言って中盤から終盤にかけて、ギスギスした夫婦関係、敵弁護士のネチネチした攻めに耐える時間など、とにかく、しんどくて喋ってばかりの法廷シーン(回想シーンも少ない)がめちゃくちゃ長いので少ししんどくなってくる……いや、ぶっちゃけ「もういいから早よ終わってくれや……なんでこれがパルム・ドールとか賞そうなめしとるんや……」とか思って眠くなった。
事件の真実同様に霧がかった雪山を脱出のあてもなく彷徨い歩いてるような映画だ。
……が主演ザンドラ氏の熱演とか先を知りたい想い等があって不思議と目が離せない……だけど同時に眠い、一言で言うと観てる間あんまり面白くないまである。だけど観終わって一時間くらい経って反芻したら凄く面白くなってくる不思議な映画だった。この今おれがやってる映画の感想書くって行為は正に反芻だから、今が一番面白い。観てる間はしんどいし「これ感想書くことないからフィルマーカスにちょろっと書いて終わりだな」とか思ってたけど今面白いからこうして書けてる。たまにそんな映画ありますね。
ラストのラスト、本当なら裁判は終わりのところだが特別に息子ダニエルが最後に証言してそれで判決が決まる。もうダニエルは自分が知らない両親の秘密を裁判所で大量に聞かされてハッキリ言って十中八九ママがパパを殺したと疑ってて、途中からサンドラと口聞かなくなる。しかも最後の証言する前日、ある実験をしてサンドラが夫を殺したかもしれない証拠を新たに見つけてしまう!
……で、これはネタバレにはあたらないと思うので言うけど事件の真相は映画の最後まで観ても結局わからない。裁判の結果は、あくまでも裁判官が推測したものに過ぎないからね。
もしこれがアメリカ映画だったら、サンドラが夫を殺す瞬間の回想したり、又はそれを匂わす何かを示して映画が終わりそうだが、これはフランス映画なのでそんなのはない。裁判が終わった後のシーンが不自然なほど長い……しサンドラと親友弁護士のいちゃつきが妙に長い……が、これも又どちらにも見えるように描いている。多分「あなたが想像したものが事件の真相ですよ」形式だと思う。
というか本作がアメリカ映画だったら別に真相も匂わせも描かれなかったとしても「殺したのはサンドラ」って事になってると思う。
でも本作の場合はマジでわからない。何か僕が気づいてない匂わせがあったのかもしれないが僕にはわからなかったし実のところ真相に興味はない。
とりあえず三人家族をつぶさに見せつけられた二時間半でした。
前述の通り、サンドラが夫を殺したかどうかはマジでわからないんですけど僕の中では「サンドラは夫を殺してない」という結論になりました。メタ読みとか色々なもの総合したら「サンドラが殺した」の割合の方が高いとは思うけど。でも多分それはどっちでもいいんだと思いますわ。
そういえば犬好きな人が観たらめちゃくちゃ焦りそうなシーンあった。
結果的に面白かった。ただしそれは感想書いてる今が面白いのであって観てる真っ最中は面白くなかったです。映画鑑賞が「過去の体験」になってしまえば面白くなるタイプの映画。
めちゃくちゃ風呂入るの面倒くさくても風呂入って出た後に「くそっ風呂なんて入らなければよかった!」なんて思うことないだろ。正にそんな映画がこれ。


 

 

そんな感じでした

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Anatomy of a Fall (2023) - IMDb
Anatomy of a Fall | Rotten Tomatoes

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『哀れなるものたち』(2023)/赤ちゃん並の知能でSEXにしか興味なかった主人公ベラが読書や知的な友人を得て自由意志が芽生えて精神年齢が一気に上がる豪華客船のあたりから一気に面白くなる!👩🏻


原題:Poor Things 監督&制作:ヨルゴス・ランティモス 制作&主演:エマ・ストーン 脚本:トニー・マクナマラ 原作:アラスター・グレイの小説『哀れなるものたち』(1992) 製作国:イギリス/アメリカ/アイルランド 上映時間:141分 公開日:2023年12月8日(日本は2024年1月26日)



この監督の映画は全然観てなくて唯一『ロブスター』(2015)しか観てないがあまりピンと来ず……というか観たけど1mmも内容覚えてない。『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)は……面白そうだと思ったが何か胸糞悪そうだったので結局観てない(でも、あまりに色んな人が話題に出すので観とかなければいけない義務感が生まれつつ、でもまだ観てない)。
この映画は原題も邦題もかっこいいし予告のエマ・ストーンや映画のビジュアルが気になるので素直に観たくなった。
エマ・ストーンも自ら制作に参加し監督と何年も温めてたこの映画を制作したらしい。

※追記:第96回アカデミー賞で主演女優賞、美術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、衣裳デザイン賞……など四冠を達成した。

ネタバレあり

 

 

 

 

知能未発達女性ベラ(演:エマ・ストーン)は、外科医ゴッド(演:ウィレム・デフォー)とメイドと共に彼の屋敷に住んでいた。
ある日、ゴッドは医学生マックス(演:ラミー・ユセフ)を助手として己の屋敷に棲まわせる。
マックスはベラの成長過程を記録するよう命じられる。
ベラとコミュニケーションを取ってる間にマックスはベラに好意を抱く。
ある日、マックスはゴッドからベラの秘密を聞く。
ベラは橋から投身自殺した知らない妊婦で、飛び降り現場に居合わせたゴッドは既にこと切れている妊婦を連れ帰り、お腹の胎児の脳を妊婦の頭に移植し、全てをリセットした女性”ベラ”として蘇らせたという。ゴッドという異名からして彼はベラを創造した神というポジションだ。ちなみにゴッドはフランケンシュタインの怪物のようなズタズタの顔をしている、また身体中も外科医の父の人体実験によってズタズタみたい。最初は可哀想なのだが父にされた酷い人体実験の話も三回目くらいからは酷すぎて笑えてくるので「あ、これギャグも入ってるんだな」と分かった。それより、ゴッドは時折「ポヨン」と音をさせてシャボン玉みたいなものを口から出す、アレ何なんだろう?なんか松本人志のコント作品や映画っぽいシュールさがある。
マックスはゴッドの勧めもあってベラと婚約する。
頭ベイビーのベラを屋敷の外に出すわけにも行かず、ゴッドとしては信頼できる若者マックスと共にベラが屋敷に永遠に居てくれたら安心という事だ。
……だがマックスは優しい男性だが、この冒頭の時点のベラの精神年齢はせいぜい3、4歳?くらいで全く自立した自我がない幼女同様なので、幾ら外見が美人だからといって脳が幼女に恋して婚約してしまうのは、マックスも少し良くないなという感じはある。
すごい速度で成長するベラは性の快感に目覚め、享楽的な弁護士ダンカン(演:マーク・ラファロ)に誘惑されて屋敷から家出してしまう。
ベラはゴッドに「私はここから出ていく」と宣言。ゴッドは勿論反対するが「このままでここに居たら憎しみが私の中にいっぱいになってしまう」という感じの事をベラが言うので、ゴッドも仕方なく家出するベラを見逃す。
ゴッドも、心配は心配だが自我が芽生えた娘の自由意志を無視して監禁するのは良くないと思ったのだろう。
とはいえ、まだベラの精神年齢は幼稚園くらいなので自由に外界に出すのは早すぎるのだが、本作はかなり戯画化された、おとぎ話っぽいテイストの映画なので(ティム・バートン映画やウェス・アンダーソン映画みたいな感じ)そう細かく文句をつけても仕方がない。本作はカメラが引くと魚眼レンズのように世界が歪んでいたり、また覗き穴から撮ってるような画面に頻繁に変わる。これは「ゴッドや後の保護者の男たちがベラを閉じ込めて監視してる」ということを表してるのかな。またこのベラがゴッドの家から出れない冒頭では画面がずっとモノクロで、外界に出て以降は画面に鮮やかすぎるカラフルな色合いになる。そういうビジュアルも相まって、本作は全体的におとぎ話っぽい雰囲気が漂う。なんか現実の世界とは違う……昔なのか近未来なのかよくわかんないしね。
ベラの脳はまだ少女レベルだが「思春期の娘のやりたい事を止めてはいけない」くらいのことをフィクションにした感じなんだと受け止めた。
ちなみにベラは本気でダンカンに乗り換えて駆け落ちしたわけではなく、ダンカンと外の世界を見て遊んで帰ってきてマックスと結婚するつもりでいる。
ダンカンもまたベラに惚れたわけではなく「幼女レベルの知能しかない美女」とSEXしまくったり遊びたいだけ。
旅行に出かけたベラはダンカンとSEXしまくる。
外の世界に触れたベラは、頭脳は子供の好奇心旺盛な女性なので酒やダンスやタトゥーやダンカン以外の男など、世界の楽しいことを覚える。
最初はベラと遊んで捨ててやろうと思っていたダンカンだったが、奔放なベラが世界に羽ばたき始めると焦りや独占欲が芽生え、激しく嫉妬するようになる。
ベラが夢中で自分とSEXしまくってくれていたのは、ただベラが自分しか男を知らなかっただけ、という事を身をもって知ったためだろう。
嫉妬に狂ったダンカンは、ベラと豪華客船の旅に出る。海の上ならベラはどこにも行けないし他の男も少ない。
こうして客船で二回目の軟禁状態に陥れられたベラは不機嫌になる。

 

 

ベラは客船で、知的な老婦人マーサ(演:ハンナ・シグラ!)と黒人の紳士ハリー(演:ジェロッド・カーマイケル)と出会う。
それまでSEXや享楽的な遊びにしか興味がなかったベラだったが、マーサやハリーの語る哲学に「SEXより刺激的だわ」と興味を惹かれて読書を始める。それと共にベラの精神年齢はどんどん上がっていく。
ダンカンは、せっかくベラを軟禁したのにあまり相手にしてくれなくなったので酒とギャンブルに溺れていく。マーク・ラファロが演じてるということもあり最初はベラを外へ連れ出す魅力的な遊び人として描かれていたダンカンだったが、船に乗ってからはどんどんどうしようもない右肩下がりの男として描かれていく。
ある日、ベラがマーサやハリーと一緒に本を読んでいると酔っ払ったダンカンが「なぁ、もう本を読むのをやめろ。君の可愛らしさがどんどん失われていく」と「ここまでダメな事言わさなくても……」というくらいわかりやすくダメな事を言い始める。
ベラの自我や自由意志には、知的な新しい友人マーサ&ハリーや読書の影響で、知性や知識がつきはじめ、もはやSEXと遊びしか取り柄のないダンカンの手に負える女性ではなくなってきた。自分のものにするため軟禁したのに、それと反比例するかのようにベラと自分の距離は離れていき、ダンカンは酒とギャンブルに溺れ、ベラに悪影響(ダンカン以外には良い影響)を与えたマーサ&ハリーを逆恨みする。
この老婦人マーサが、出番が少ないけど妙にイカしてて誰だろうと思って検索したら、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作品などでお馴染みのドイツのベテラン女優ハンナ・シグラだった。常に微笑しているがダンカンを軽蔑しきってるのがありありとわかる表情が本当にカッコよかった。
知性がついたベラだったが、ゴッドの家とダンカンのSEXと本でしか世界を知らない。ハリーは船が立ち寄った場所で、貧困のあまり死ぬしかない子供達をベラに見せる。ベラは生まれて初めて、貧しい人達、裕福な自分、しかし貧しい人達を救えない自分……などを一気に知ったことで半狂乱になりダンカンの全財産を貧しい人達に与えてしまう(というか船員に全部盗られただけだろうけど)。
ハリーは後で「君があまりに純粋だから意地悪したくなった」と謝罪する。
だがベラも、自分が知らなかった世界の現実を見せてくれたハリーに礼を言い、「貴方は、世界の残酷さを直視できない少年なんだわ」とハリーの内面を看破するほど成長した。
一文無しになったベラとダンカンはパリで降ろされる。
ベラは売春宿で自分の身を売って働きはじめ、知り合った娼婦と社会主義や解剖学を学ぶ。ベラが娼婦になったことを知った一文無しのダンカンは精神が完全に崩壊する……。

 

 

……というところから、まだ二転三転して終わるのだが、結局「女性の自由意志や自立や学び、そしてそれを何とか辞めさせて家に監禁しようとする愚かな男たち」という感じで最後まで進む。
もう、あらすじを追うだけでわかりやすすぎるほどに映画を通して言いたいことがわかりやすい。もう、そのままなので「これは◯◯を意味してる!」などと言ったら言った人が馬鹿に見えるくらいそのまんま。でも非情に明快で面白かった。
最初はションベン漏らすくらい頭ベイビーだったベラがどんどん成長していくところ、それをエマ・ストーンの演技ですぐわかるところなどが良かった。
冒頭は、頭ベイビーのベラが白痴みたいだし息苦しいので観てるのが辛い感じもあったが、やはり豪華客船に乗って読書や賢い友達によってベラが一気に賢くなった辺りからどんどん面白くなっていった。
最終的なところに話を飛ばすと、ベラはゴッドや婚約者マックスの元に帰ってくる。ゴッドは投身自殺した妊婦を手術して新しく生まれ直した女性がベラであることを黙ってたこと、マックスはまだ自我が殆どなかったベラと婚約したことなどを謝る。メタ的に見れば「頭がベイビーの時のベラにそんなこと説明してもどうせわからんからそうせざるを得なかった」んだけど、そういう問題じゃなくて前半の彼らは、それだけじゃなくて知能がないベラを自分たちの好きなようにしようとしてる部分もあったからね。

この映画に、特に欠点とか文句つけたいところは無いのだが、最後に改心してベラを支える婚約者マックス。優しい男なのだが、あまりに優しすぎて終始ベラに従いすぎるので、何だか少女漫画に出てくる優しすぎる彼氏みたいになってたな。ここまで来るとマックスの自由意志はないのか?と少し不安にもなった。だが本作はベラの自由意志やそこから生じる活躍を描くものであって、マックスはあくまでも「ベラの夫」という役割でしかないのだろう。徹頭徹尾「ベラという女」そして「ベラを通して女性そのもの」を語りたい映画だから、まぁそれでいいんだろうと思った。そんな感じでかなり面白かったです。画面もめちゃくちゃ人工的な美しさに溢れてたし。
あらすじ読めばわかると思うが全体的にフェミニスト映画的な色が強い。それを中年男性の自分が観てもこれだけ面白かったんだから女性が観たらもっと面白いんじゃないだろうかと思った。文句なし。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Poor Things (2023) - IMDb
Poor Things | Rotten Tomatoes

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