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『オールド・ガード』(2020)/妙にうかつで全編はめられっぱなしの不死者たちとブッカーの不憫さの魅力🧑🏻

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原題:The Old Guard 原作&脚本&製作総指揮:グレッグ・ルッカ
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド 制作&主演:シャーリーズ・セロン
制作局:Netflix 製作国:アメリカ 配信時間:125分

 

 

 

DCやMARVELでも作話していたアメリカンコミックライター(アメコミ原作者)、小説家のグレッグ・ルッカがイメージ・コミックから出版したグラフィック・ノベル(大人向けアメコミ)『The Old Guard(2017)を実写映画化してNetflixで最近配信されたのがこの映画。原作者グレッグ・ルッカは本作の脚本や製作総指揮なども務めており、配信してるのはクリエイターに自由に制作させる事で定評のあるNetflixなので漫画原作者がガッチリと実写化を掌握したかたち。本作がウケたら本作の続編や他のコミックも映像化しようと思ってるのだろう。
監督は、こういうエンタメ映画ではまだ珍しい女性監督(これもまたNetflixらしい)。
主演は今最もヒーローのオーラが出ている女優シャーリーズ・セロン。セロン氏は『イーオン・フラックス』(2005)『アトミック・ブロンド』(2017)などマイナーなアメコミの女性ヒーローを主演している(イーオン・フラックスは海外コミックじゃなくて海外アニメが原作だけど)。『アトミック・ブロンド』は力作だったが大ヒットこそしなかったがセロン氏のヒーロー性やプロップスはより高まった。
ネタバレあり。

 

 

 

いつ生まれたのかもわからないほど長く生きている不死者アンディ(シャーリーズ・セロン)をリーダーとする不死者の小隊。
他のメンバーは、十字軍時代に宿敵同士だったがやがて互いを永遠に結びついた魂のパートナーだと想うに至ったジョーとニッキーという男性同士のカップル。彼女ら彼らに比べると最も新しく不死者に加わった頭脳担当?のブッカー。そして本作の前半の時に加わる新たな若い黒人女性海兵隊員の不死者ナイルを加えた5人のチーム。
不死者たちは、傷を負ってもすぐ治癒してしまう不死身の肉体や膨大な経験を活かして何世紀にも渡って人々を助けるため戦い続けていた。
ある日彼らは、元CIA工作員コブリー(キウェテル・イジョフォー)に嵌められて不死身である事実を撮影されてしまう。コブリーは製薬会社に映像を売り込み、その製薬会社CEOは不死者の肉体の秘密を知るため捕獲のための私設工作員を送り込む。
……という話。
劇中で彼女らは「私たちはオールド・ガード!」などとは一度も言わないので作品内で彼女らがそう自称してるわけではないらしい。多分、作者が作品タイトルとして彼女らをそう名付けただけで作品内ではそういった名称は使われていないと思う。
彼女らは不老の上に、撃たれても爆破で内蔵がまろび出ても高所から落下して複雑骨折しても1分もせず全快する肉体を持っている。一体どこまで損壊しても全快するのかはよくわからない。さすがに水爆等で一瞬で蒸発したら分裂する細胞が残ってないので回復できない気もするが、彼らが科学的な要因で治癒するのか、それともオカルト的な理由で全快するのか、本作を観ただけではよくわからないので原爆喰らっても回復する可能性もゼロではない。他のアメコミヒーローで言うとウルヴァリンデッドプールみたいな感じか(ちなみにウルヴァリンは一瞬で肉体が消し飛ぶ爆破を喰らってもアダマンチウム性の骨は残るのでそこから蘇生可能らしい)。
だが不死者たちの長い歴史の中で、かつてアンディと共に戦っていた黒人男性の不死者は、ある日突然、ヒーリングファクターが機能しなくなり普通に死んだりと、その不老不死には何百年か何千年かはわからないが限界があるようだ。
また、同様にアンディと共に闘っていたアジア人の女性クインという相棒も、魔女裁判の時に魔女として〈鉄の処女〉のような鉄の檻に入れられ海中に沈められてしまったらしい。
そのクインが海中で苦しんで頭がおかしくなっている様子を新人ナイルが夢で視たと言う(不死者は他の不死者の事を、まだ出会ってもいないうちに前に夢で視る)。
それで「まさかクインは海中で死ねずに500年以上、溺れ続けている……?」という恐ろしい予感が不死者たちを震撼させる。アンディ達はクインを必死に捜索したが見つからず、やがて諦めてしまいアンディの罪悪感となったという。沈められた場所も大体わかってるのに、そんなに見つからないもんかね?でも、とても潜水艦でも行けないくらい深い場所に沈んでいってしまってダメだったのかな?
このクインがどうなったかはラストまで語られないのだが、クインに起きた出来事が悲惨すぎて「クインどうなった!?」「クイン何とかして!」と凄く気になって本編に集中できなかった。だから、このクインのエピソードは、クインの話になると思われる続編の冒頭で語れば良かったのでは?
前半では、不死者の戦闘と、騙されてしまうくだり、アンディが新人不死者ナイルをスカウトするくだりなどが描かれる。
シャーリーズ・セロン以外の俳優はよく知らない人が多いが他に知ってる人は、彼女らを騙した元CIA工作員コブリーは『それでも夜は明ける』(2013)とかMCU『ドクター・ストレンジ』(2016)のモルド役の人が一番有名な俳優か。あとオールド・ガードのニッキー役は『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015)でロン毛の悪役マフィアのイタリア人俳優だった。可哀相なクインは『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)の冒頭で戦死したローズの美人の姉の役してたベトナム人女優の人。
といった感じで、不死者たちのキャラ紹介や、彼女らの肉体の秘密を知りたい製薬会社が接近してくる様子が描かれる。

 

 


不死者の秘密のアジトが何故か製薬会社に知られており、アンディとナイルが留守にしていた時、奇襲を受けてジョー&ニッキーは攫われ、ブッカーは内臓ぶちまけて放置されていた(でもすぐ生き返った)。
連行されたジョー&ニッキーは、殆ど拷問のような研究されるモルモットとなる。
ちなみに本作のヴィランと言える製薬会社CEOは、とんでもなくムカつく顔している。GOTの悪役として出てきそうな面構え。シェイクスピアの舞台に多く出て演技が大仰な英国人俳優によくいそうな顔。何も憎まれ口叩いてない時ですら常に「ハァ?僕の何が悪いの?下級国民が(嘲笑)」って顔面自体が語りかけてくるような顔している。こいつがまだ何も悪い事してなくても逮捕覚悟でダッシュして殴りつけたい顔をしている。コイツが登場して本作への集中度がぐっと上がった。こいつが死ぬところを観ないと俺はもう夕食作ったり次の事ができない!そう思わせる顔だ。お前が捨てられて凍えている仔犬を助けた事があるとしよう、でも死ね。
だが連行される途中で、ゲイを嘲笑う工作員たちにジョーは、ニッキーが如何にかけがえないパートナーであるかを詩的に述べるロマンチックなシーン。そして輸送車両が製薬会社に到着した時、工作員達は両手両足縛られたジョー&ニッキーに皆殺しにされていた。ここが非常に熱い場面(どうせなら殺すところも観たかった)。原作者兼脚本家兼製作総指揮者のルッカはインタビューで、ここに凄く力を入れたと言っていた。確かに大作エンタメ映画でこんなにLGBTQ+カップルが堂々と愛を語ってキスして暴れるのは観たことないかも。アメコミ映画だと、MCUだとヴァルキリーがレズビアンらしいが、その描写や言及はカットされてしまったし『デッドプール2』でネガソニ&ユキオという女性同士のカップルが出てきたくらいか、その出番も凄く少ないのに「同性カップルが普通に出てた!」という理由だけで熱狂されてたから如何にそういうキャラが大作に出てこないかって事を物語ってますよね。MARVELやDCより遥かにマイナーな出版社原作のアメコミ映画である本作が意外な分野で先んじたな、と感じた。
「家族と暮らしたい」と不死者の部隊加入に戸惑っていたナイルを残し、アンディとブッカーはジョー&ニッキー救出そして自分達の存在の痕跡を消すために、敵の居場所を知るために元CIA工作員コブリーの住まいを強襲。しかし不死者を売ったのはブッカーでアンディは工作員に捕らわれる。
永遠に思える長い時間を共有できる友を裏切って金なんか貰っても仕方ないよね?と不可解だったが、ブッカーはどうやら「不死身の肉体の秘密がわかれば死ぬこともできる」ついでに世の中のためになればいいって動機だったらしい。アンディ達を嵌めたのは言ったら反対されるためだろう。
しかし製薬会社CEOは不死者を人間だと思ってないので、そんなブッカーも与沢翼が1億円を稼ぐよりも秒速で捕獲された。ブッカー「ぐわあああ!」。わぁ頭脳担当()のブッカーも捕まったあぁ!。
というかジョー&ニッキーが攫われたのにブッカーだけ置いていかれた事を不審に思わなかったり空の銃を渡されても残弾を確認しなかったアンディがぼんやりしてたのだが、そんな感じで不死者たちは色々とうっかりしていると思われる。
そもそも何千年も生きて人々を救いたいなら近代に入ってからはもっと財団や企業を作って社会的に働きかければいいものの、いつまでも現場主義のガテン系だったところからして「考えるより身体動かせ!」ってチームなんだろうと思われる。
仲良く全員捕まって「ブッカーの裏切り者!」「お前らは孤独の辛さを知らん!」などと罵り合う不死者たち。何だか彼女ら彼らが愛おしくなってくる。
だがブッカーの挙動が変だった事に気付いたナイルが、家族を捨てて不死者たちを救いに戻ってきて皆を救出!ブッカーも気まずい表情でチームに復帰!ここのブッカー今、気まずいだろうなぁ。脱出のための戦闘っていうやる事があって良かったよな。たまに治癒力が消えつつあるアンディの弾除けになって撃たれたりするのも「痛いけど気まずくなくて助かる!」と思ってるんだろうなぁと可笑しくなった。
弾が切れたのでアンディは彼女のトレードマークかつ得意な武器らしい斧を使っての戦闘、これがかっこいい。シャーリーズ・セロンは何千年も斧を使ってる雰囲気を出すために日常生活でも暇さえあれば本物の斧に見えるプロップを持ってたらしい、そしてホテルだかレストランだかの店員が「シャーリーズ・セロンがデッカい斧持っとる!」とクソビビリ散らかしてたというエピソード好き。
何だかんだあってムカつく顔のCEOや工作員を全員ぶっ殺し一件落着。
バーで打ち上げしてる時、アンディがブッカーに近づき
アンディ「ナイルは謝罪で許す気みたいだけど私達からアンタには一応、罰がある」
ブッカー「ああ……当然の報いだ……なんだ?」
一体どうするんだ?痛めつけるのも違うし
アンディ「100年間、私たちと会うのを禁ずる
ブッカー「……!あ、あぁ……わかった……
三ヶ月後、「100年間一人ぼっちの刑」に処されて酔っ払いになったブッカーの姿が!!
これが只の人間なら恋人や友人を作れば気も紛れるだろうが、ブッカーの場合「人間と知り合っても彼らが老いたり死ぬのを見る事になるから辛い」って熱弁してたから多分、不死者じゃない人間の知り合いは作らないタイプだよね。それを思うと思いのほかキツい罰ですよ、これは。マッツ・ミケルセンみたいに端正な顔もあいまって絶妙に可笑しくて笑ってしまった。
そして最初に彼女らを嵌めた元CIA工作員コブリーもまた、彼女らの肉体研究がガチで世の中のためになると思ってした事だったが製薬会社CEOが想像以上のヤバい奴だった事で罪悪感を感じており、アンディ達が無数の戦争で多くの人を救い人類滅亡の危機も何度も救い、救った人の中から多くの偉人を排出してる事などをアンディ達に伝える。
アンディ達は「へーそうなんだ。思いもよらんかったわー」って感じの顔をしている。本作のシャーリーズ・セロンはめちゃくちゃ美しいので最初はその様に観てるが、こういった感じで「何千年も生きててそこに気付かん?」って事が多すぎて、その美しいルックスとのギャップで、本作の後半ではずっと可笑しい感じを醸し出している。
そもそも映画の後半で「アンディの治癒能力は切れつつある」という展開でハラハラさせようとするのだが、これは映画なのでメタ的に言えば不死者だろうが普通の人間だろうがクライマックスになれば死ぬか生きるかのどちらかになるので、不老不死だろうが余命1日だろうが実は映画にとってはあまり関係ない設定だと乱暴に言うこともできなくはない(少年漫画で「この技を使えば寿命が10年縮む」という設定が何の価値もないのと似ている)。だから、数千年の経験から来る常人では不可能な思考やスキルをもっと観たかったのだが、原作を書いた作者も監督も俳優も不死者じゃないので、ガチな不死者感を出すのはなかなか難しいんだろうなと感じた。
そしてコブリーは今回みたいな事が起きないように、不死者たちの痕跡を消す役目として不死者チームの一員に加えられて終わる。
で、ポストクレジットシーンで500年溺れ続けてたクインが「100年、仲間はずれの刑」にされたブッカーの前に現れてヴィラン的な笑みを浮かべる。続編では彼女がアンディに復讐するのだろう。そこで何が起きるかは何となく想像つくけど、だがその場合ブッカーは?クインと共にアンディと戦う?罪悪感を抱いてるみたいだし、それは考えにくいな。とにかく続編でのブッカーが気になる。
何か、感想は数行で、後はあらすじ全部書いてしまう系の俺の嫌いな感想になってしまったが、そんな感じで結構面白かった。再生されてる回数も『タイラー・レイク -命の奪還-』(2020)には及ばないまでも『アイリッシュマン』(2019)を超えたらしいしセロン氏もやる気まんまんみたいなので続編はあるでしょう。

 

 

 

そんな感じでした

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The Old Guard (2020) - IMDb
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