原題: Old 監督&脚本&制作&出演:M・ナイト・シャマラン 製作国:アメリカ
原作:ピエール・オスカル・レヴィー、フレデリック・ペータース『Sandcastle』 上映時間:108分
シャマラン監督のコミックが原作のホラー映画。僅かにネタバレあり。
不仲の夫婦と幼い姉弟の4人家族、夫婦は離婚する事を子供たちに伏せたまま最後の家族旅行のため南国のリゾート地を訪れる。
家族はホテルに紹介された美しいプライベートビーチにやってくる。そこには他の2組の家族、一人でいる黒人男性などが居た。
しかし、そこで女性の水死体が見つかるが彼らはビーチから出ようとすると昏倒してしまうため出れなくなり、そして主人公家族の姉弟は少し目を離した間に5歳くらい一気に成長していた―
そのビーチは、人体にかかる時間の流れが圧倒的に早く、「一晩で約50年分、歳を取ってしまう」ビーチ。そんなシャマラン監督によるハイ・コンセプトな物語。
約50年といえば、子供は中年に、若者は老人になり、中年は……朝日を拝めない。一夜で
落ち目だったシャマランの浮上の切っ掛けになった『ヴィジット』(2015)もそうだが「シャマランも年取って、老いや死が怖いのかな?」と少し思った。……いや、まぁ作品は作品なので、ストーリーだけ観てそう決めつけるのも安直で良くない。
僕も誕生した時よりも死への時間の方が近い中年になったので、若者よりは老いを恐れる側の人間だと言える。むしろ子供時代や20代の時は自分が老いる事とか考えてなかった。割と半分くらい本気で不老不死かもしれないと願望込みで思っていた、今も少しそう思う。アホみたいだが僕は割と最低でも400年……出来れば千年くらい生きたいと思ってる男。死や老いを意識し始めたとはいえ、それでも20年以上、病気も怪我も殆どなかったせいか、あまり死にリアリティない方だと思う。
何というか、死そのものは怖くないが、どっちかというと死より老いの方が怖いかも。
たとえば死ぬ時に一人だと仮定して、孤独死そのものは怖くないのだが、それより「死にかけの時に水が飲みたくなったが身体が全く動かなくなり、その状態で数日間生きてたら?」などと考えると嫌だね。「あっ!もうアカン!」となったらスイッチを消すかのように楽に死ねたらいい。
話を映画に戻そう。
映画の中で「老い」というのは大抵ポジティブに描かれるものだが、本作は終盤くらいまで、一瞬で妊娠や死産という生の恐怖、そして逆に急激に視力や聴覚や脳が衰えていくという老いの恐怖の双方を同時に描写していて怖い……怖いというか憂鬱な気分になる。
いろんな家族が自滅する中、主人公家族は何とかこの状況を脱したり生き延びようと努力する。その努力こそが短い人生を輝かせる。人生はそういうもんだと……そう思いたいね。主人公の両親は老いによって浮気や予定されていた離婚などのいざこざを忘れる。人生の終幕を迎えて愛の前に些細なことは気にならなくなり、明け方に両親は仲直りして殆ど同時に亡くなる。本作も終盤に至っては「老い」をポジティブに描き始め、やがて主人公姉弟の逆転を描く。
終盤の夜明け、中年になった主人公姉弟はビーチの謎を解き逆転するのだが、こんなに何もかも全て明らかにして全て解決したりせず、秘密も少しだけ明かして残りは観てる人に推測させたり、姉弟の逆転も「この後、逆転するんだろうな」と匂わせただけで終わる方が個人的には良かったと思う(「あなた刑事でしたよね?」と言う姉弟を思わせる後ろ姿の手にノートが握られてるカットで終わるとか)。何でかと言うと全てが解決してしまうと映画を観た人にとって受動的過ぎるため、観た人の心に残るものが少ないからだ。
この終盤はシャマランらしくなかった。心境の変化だろうか。
キャスト的には、主人公の姉の方の少女~青年期を『ジョジョ・ラビット』(2019)、『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)のトーマシン・マッケンジーが演じている。 本作で初めて彼女を観たが、あまりに可愛くて大好きだと思った。幼女時代から一気に大きくなったため水着があまりに小さすぎてセクシー。そして主人公の弟の少年~青年期は『ヘレディタリー / 継承』(2018)の長男役や『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)、『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019)の主人公役でお馴染みのホクロ青年アレックス・ウルフが演じる。二人とも好きだわ。
毎回、重要なカメオ出演してるシャマランもここぞという役割で登場する。「そんなに登場しないと気が済まんか?」という気持ちは昔からあるが必ずこれやるので、もはや天晴というか勝手にしてくれという気持ちになった。この劇中のシャマランが脱出不能のビーチを高台から観察しているのは一体どんな謎なんだろう?と凄くワクワクさせてくれた。
黒人男性のラッパーは犯人だとミスリードさせるための怪しいキャラのムードを出しすぎてて、もはや観てる人が誰一人犯人だと思わないようなキャラで、それが逆に可笑しかった。
前述した通り、最後に謎を明かしすぎプラス解決しすぎなのは欠点だと思うが、それ以外は特に文句ない、シャマラン映画にしてはバランスが丁度良いし、若さや老いについても考えさせられるし何よりもオリジナリティ満載だし良いホラーだと思った。
そんな感じでした
『ヴィジット』(2015)/面白かったがPCカメラが壊される描写が無ければ更に良かった👵👴 - gock221B
『ミスター・ガラス』(2018)/”体制を突破して個々の人間性を世界に知らしめたい”という凄く真摯な映画だった👨🏽🦱👩🦲👨🦲 - gock221B
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