gock221B

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『MANDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022)/普通に面白いし爽やかで良いけど、それよりも全然知らない監督と全然知らない俳優が出てくるってところが一番良かった🕖


監督&脚本:竹林亮 脚本:夏生さえり 製作:野呂大介、福田文香 製作会社:CHOCOLATE Inc. 主題歌:lyrical school「WORLD'S END」 製作国:日本 上映時間:82分

 

 

なんか「邦画ばっかり観たい」というブームが久々に自分の中に来た。このマイブームは10年に一回くらいしか来ないのでこの機会に邦画をいっぱい観ようと思った。

去年、話題になってたタイムループもの。
イムループものは個人的に10代の時に観た『恋はデジャ・ブ』(1993)が物凄く好きだった。他にも『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)とか『ハッピー・デス・デイ』(2017)とか……この三本は劇中で名前が出てくるので制作者達も好きなんだろう。あと個人的には『ミッション: 8ミニッツ』(2011)とか好きだったな。映画以外だと『STEINS;GATE』のゲームやアニメも人気だね、でも『STEINS;GATE』のゲームの中で世界線を移動しまくる主人公が「自分は『恋はデジャ・ブ』主人公より大変だ」とか言ってたのでイラッとしました。

イムループものは安上がりでよく作られるので毎年目にする。タイムリープは若者人気が強いせいかNetflixとか毎月のようにタイムリープものの新作が配信されてる印象。タイムリープばっかりすな!
イムループもの作品は、その作品の特性を活かして主人公がめちゃくちゃ何回も死んだり失敗する。正にそここそがタイムループものの長所で普通のフィクションでは不可能な「序盤に主人公が死ぬ」「主人公のくだらない突然死」などを何回も見せることが出来る。そんで中盤で諦めて好き勝手やったりする(『ゾンビ』(1978)でいうと中盤で主人公たちがモールで遊んでるシーンに相当)。で、後半で自分の人生の至らなさを振り返って反省して事件を解決してタイムループから脱する……という流れがよくある。
イムループものの長所はさっきも言った通り「普通、死なないであろう主人公やヒロインを何度も殺すことができる」というところだが、これは短所にも繋がっていて展開のため、あまりに何度も死ぬために「この主人公弱いな」というマイナスイメージがついてしまうところがある。クリント・イーストウッドとかスパイダーマンは一度も死なないからね。
とは言いつつ、タイムリープで何回も死のうとも主人公なので勿論、ラストまで生き残ってちゃんと決める。だから何百回死のうとクリント・イーストウッド同様に主人公補正は働いている。ただ死ぬ姿を何回も見せるので主人公補正が弱く見えてしまうというだけの、只の印象論です。

本作は、去年ポスター見た時に「マキタ以外全然知らない人ばっかりや」と思って少し興味が湧きました。そんでポスターをネットで目にするたびに何回も「ほぅ……」と眺めたりして、とりあえず「この映画のポスターは好きだな」と思いました。
説明が難しいけど「全然見たことない日本人が表情を作って面白げな感じで写ってる写真」に興味を惹かれる。
普通、一般人ってただカメラ目線ってだけだったりナルシスティックな顔になってるだけじゃん、だけど一般的に知られてなくても芝居やってる人とか売れてないお笑い芸人とかは、めちゃくちゃ出来上がった表情で少しおどけて写ってるじゃん。そういう写真を見ると言葉で上手く説明できない感情になる。
この感覚は「小劇団のフライヤーやSNS」とかを見た時だけ味わえる。
……まぁいいや、”この感覚”の面白さを上手く文章で書けず、伝わらない気がするからこの話はまた今度にしよう。
とにかく邦画はハリウッド映画以上に「何観てもこいつら出てくるなぁ」という”いつめん”ばかりで構成されてる事が多いのに、本作はマキタスポーツ以外知らない人ばっかり。
もうそれだけで好感持ちました。

ネタバレあり。かなりネタバレしてるので御注意

 

 

 

 

Story
月曜日の朝。プレゼン資料の準備で忙しくて社員全員泊まり込みで作業している広告代理店。
中堅の女性社員・吉川朱海(演:円井わん)が後輩2人組から「僕たち、タイムループで同じ一週間を繰り返しています」と報告を受ける。
広告代理店の同僚たちは、自分たちがタイムループに閉じ込められている事を知覚していく。
それぞれの様々な思惑が交錯しながら何度も繰り返される一週間。

イムループ脱出の鍵を握っているのは部長(演:マキタスポーツ)のようだが――

そんな話。

主人公の吉川は今いる広告代理店で働くことを「停滞」だと感じており他の社員とも仲良くない。それよりも今の所より規模の大きい上の憧れの広告代理店に移るための作業に没頭しており恋人との約束も忘れてしまっていた。
社員全員、泊まり込みで月曜の朝めざめる。
鳩が窓に激突する。部長が会社にやって来る。
吉川は後輩二人から「自分たちはタイムリープの中に囚われている」という話を聞く。
もちろん、忙しい上に彼らとも仲良くない吉川はそんな話は信じないが後輩たちは一週間タイムリープの話をし続ける。「はい、今から停電します」と言った次の瞬間に停電したり後輩たちは次々と”予言”を的中させるので、さすがの吉川も後輩に耳を貸すようになる(この”予言”もまたタイムループもので一番面白いところ)。
日曜になり後輩たちは「今日が終わると、またタイムループが始まります。月曜になると今日までのタイムリープのことは夢だったかのような曖昧な記憶になります。だから、これだけ覚えてください」。
そう言って手で鳩のジェスチャーをして机にバンッ!と叩きつける。
翌朝、タイムリープによって再び社員全員が泊まり込みしている月曜日に戻る。
窓に鳩がバンッ!とぶつかる、それによって寝ぼけた吉川も前回のタイムリープのことを思い出した。

屋上で後輩たちの話を聞く吉川。
二人の後輩はもう20週くらい自分たちがタイムリープしている事を知覚しており、眼鏡の後輩はタイムリープ映画に通じていて、自分たちが置かれた状況を把握しており吉川に説明する。
「この広告代理店で働く僕たち7人は”部長を中心とした”タイムリープ現象に囚われていて、それは部長が腕に付けている呪いの数珠が原因。部長にタイムリープを知覚させて部長自身に数珠を破壊させない限りタイムリープから抜け出す事は出来ない」
そう聞かされる吉川。
「若い社員が父親ほど歳上の上司に、普通に話すだけでも難しいのにタイムリープの話するなんて無理。僕らの先輩である吉川さんが更に先輩の森山さんを説得してください。そして、その森山さんが一番上の平一郎さんを説得する。最終的には平一郎さんに部長を説得してもらいましょう」
という事になる。
その流れの通り、吉川たちは苦労して上を順番に説得し、平一郎先輩が広告会社っぽいプレゼンを行い部長を説得する。
……という、この中盤くらい?が一番面白かった。
「次に何が起こるか知っているルーパー」が、その記憶を活かして 平一郎先輩がスライドを使って部長にタイムリープのプレゼンする場面は一番面白かった。
彼女らは部長の説得に何週もかかったようだが、とにかく何度目かの日曜日に説得は成功し部長は屋上で呪いの数珠を破壊した。
しかし再び同じ月曜日が来てしまいタイムリープ脱出は失敗。数珠は関係なかった。
ここで「既に70週タイムリープを知覚している」という目立たない同僚の聖子さんが名乗り出る。「部長はやりたい夢を諦めて自分を殺してこの会社で働いている。それが心残りとなってタイムリープ現象が起きている。部長の夢を最後までやり遂げさせれば現象から脱出できるのではないか」と言う。
口下手な聖子さんは今まで同僚を説得できなかったので全員がタイムリープに気付いて一回失敗するのを待っていたのだろう。
部長がやりたかった事とは漫画家になる事だった。社員一同は部長の漫画を完成間際の状態にまでペン入れし、最後のオチだけ部長に描かせて出版社に送ればタイムリープ現象から開放されるはずだ!という話になり一同は漫画執筆作業を始める。
この辺りで吉川は「私はこんな停滞してる人達ばかりの広告代理店やめて憧れの広告代理店に移りたいのに何で部長の漫画なんてどうでもいい事しなきゃならないの」という感情を爆発させて皆と険悪になったり、憧れの広告代理店に行ってみて「ここが本当に私にとって良い職場なのか?」と思ったり、そんな混乱していた吉川が自分や周囲の人や部長の内面に初めて目を向け、心境が変わって謝罪&協力したり色々あって、やがて皆は力を合わせてタイムリープ現象を収束させる。

 


そんな感じで、タイムリープ現象の特異点は青春の時の夢に後悔の念を持ったままの部長なので、他のタイムリープ映画だったら部長が主人公になっていただろうが、部長とは遠い本来のタイムリープものならモブに過ぎないであろう吉川を主人公にしたところが本作の冴えたところだ。
吉川が自分と周りの人やりたい事……色々とタイムリープの中で経験・思案して遂に自分を見つける。それは部長が若い時に描きかけていた漫画の内容……つまり、かつて部長が諦めた夢ともシンクロしていた。吉川は部長に「夢と周りの人どちらが大事ですか?」と訊き、部長は「夢もいいけど一人で出来ることには限界があるんじゃないかな?」と応える。そして社員達からは、いつもちゃらんぽらんに見えていた部長は陰で部下達の為にお得意様に頭を下げまくっていた、その姿も目撃する吉川。部長は皆で力を合わせて生きる道を選んだ大人だった。
タイムリープ作品の中では本作の眼鏡のオタク社員同様に僕も『恋はデジャ・ブ』(1993)が一番好きだが、正に『恋はデジャ・ブ』(1993)と同じ「自分と周囲の大事さに気付いた時、止まっていた時が進み始める」という結末だった。

タイムリープ現象の楽しいわちゃわちゃは中盤までで、後半は吉川と部長の内面を探る人間ドラマとなる(……いや、他の殆どのタイムリープものもタイムリープを通して主人公の人間性を描く人間ドラマだけど)。
前半~中盤は、「何だか自分たち、毎週同じような日々を会社で送っててタイムリープしてるようだよな~」という社会人が思いそうなことや、「いきなり若い社員が上の上司に進言しても聞いてもらえないから、一段づつ上にプレゼンしていきましょう!」というタイムリープを全員に認識させる作業などタイムリープ現象と「職場や同僚と仕事」とを上手くシンクロさせた感じで良かったです。いわば本作はタイムリープというキャッチーな形態を取ったお仕事映画……いや周囲の人との絡みを大事にした「職場映画」ってことですよね。この会社の業務や吉川の心変わりをそのまま映画にしても、それは何のおかずもない白米みたいな地味な映画だから観る人は少ないだろう、だから「タイムリープ」という味付けでカレーライスのように食べやすくしてお出しされたわけだ。
同じ日に観た『ロストケア』(2022)は、「年老いた親の介護、認知症、介護疲れ、孤独死安楽死」などの心底ウンザリするが自分たちにも関わる社会問題だから無下に視聴停止する気にもならんので最後まで見させられる嫌な問題ばかりを大した工夫もなく素材のまんまぶちまけられて日本人好みの泣かせ要素で包んだだけで面白くもなかったしし、ただただ辛気臭い気持ちにされただけだったが口直しで観た本作は伝えたいことも届いたし爽やかで面白かったので良かったです。
そして後半では吉川と部長の内面に迫る解決編、これもまた「自分自身をしっかり掴み取ってこれからどう働いていくか?」と心を新たにする職場映画の一部でした。
後半は、ほぼほぼ吉川の内面と部長の内面(漫画原稿)を見つめることになる。
部長の漫画原稿は若い時のジョージ秋山永井豪みたいな、あんな感じなのだが若い時のいつ描かれたものかわからない。仮に18歳の時くらいだったとしても幾らなんでも絵柄が古すぎる。『ジョジョ』3部から4部になる時で『スラムダンク』『ドラゴンボール』の終わり際で『幽遊白書』やってた時?だと考えると一体どこに送ろうとしてた原稿なんだろう。サブカル系かな?COMIC CUEとかコミックビームとかサブカル漫画誌に送ろうと思ってたとしか考えられない。
他にも「合点承知の助」「トホホ」的な死語も言っていて「この部長、49歳じゃなくて70歳くらいでは?」と少し思った。まぁ別に細かいことはいいか。この作品自体が2000年くらいの話だと思えばちょうどいいかも。
この後半のハートウォーミング展開は照れくさくなる感じがあって個人的には好きじゃなかったけど、照れくさくならない人には心温まる映画だったと思う。

「全然知らん若手俳優が多く出てくる」「全然知らん制作者」「色々工夫して面白くしながらハートウォーミングな後半になる」……という3つの要素が何だか『カメラを止めるな!』(2018)の雰囲気に似てるなぁと思いました。しゅはまはるみ氏も出てたし。
主演の円井わん氏は初めて観たけど特徴的な顔や雰囲気が魅力でした。檀れいや若い時の松本人志みたいに鼻の頭が少しにゅっとのびている鼻。皆に心を開いて笑顔になった後半よりも誰にも心を開いてない仏頂面の時が魅力に感じました。
普通のおじさんを演じたらNO1のマキタスポーツは、今回は「いつもおどけているが実は誰よりも周囲を大事にしている部長」というこれ以上ない最高級のおじさん役で、最高でした。

そーいう感じで概ね面白かったです。

 

 

 

 

そんな感じでした

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