gock221B

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『ザ・キラー』(2023)/思うように事が運ばないエキスパート暗殺者の話……ってことでいいのか?よくわからないが面白い不思議な映画🕵️


原題:The Killer 監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー 原作:アレクシ・ノラン&リュック・ジャカモンのフランスのグラフィックノベル『Le Tueur (en: The Killer)』(1998) 音楽:トレント・レズナーアッティカス・ロス 製作:プランBエンターテインメント 制作&配給:Netflix 製作国:アメリカ 上映時間:119分

 

 

デヴィッド・フィンチャー最新作。Netflix映画だが短期間だけ劇場で公開された。
今や大御所のデヴィッド・フィンチャーだが監督作の感想をブログに全く書いてない。
前作『Mank/マンク』(2020)も本作同様Netflix映画だったが「『市民ケーン』(1941)観てないと面白くない」と誰かから聞いたので観てない。その前は『ゴーン・ガール』(2014)だが丁度このブログを始める前、以降、他に観返したフィンチャー作品もなかったのでブログに感想ないんだなと思った。
Wikipediaで確認したところ『Mank/マンク』(2020)のほか『ゲーム』(1997)、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)も観てないみたい。
始めて観たのは高校の時に『エイリアン3』(1992)観に行ったのが最初で、一番良かったのは……やっぱ『ファイトクラブ』(1999)かな(そもそも『ファイトクラブ』が好きじゃない人の方が少ない気もするが)。
あと一体どこまで関わってるのか不明だがフィンチャーが製作総指揮した『ラブ、デス&ロボット』〈シーズン1-3〉(2019-2022)も観てます。
こんな事はどうでもいいが前フリの文章を書かないと感想書いちゃだめな感じにブログを育ててしまったので一応書いておいた。

本作はフランスの大人向けコミックが原作らしいが当然読んでない。

ネタバレあり

 

 

 

 

主人公の暗殺者(演:マイケル・ファスベンダー)は、ターゲットの億万長者を撃ち殺すため向かいのビルでスタンバイし、スマートウォッチで心拍数を絶えず確認し、自身の信条らしき「予定どおりやれ、アドリブすな」「他人に情をかけず、誰も信用すな」といった事を唱え続けている。
本作は、この主人公が劇中、常にモノローグで喋り続けている。
長時間、見張っていたターゲットの億万長者が現れ、慎重に狙いを定めスナイプ……したら、億万長者が招いたコールガールに弾が当たった。痛恨のミス。主人公の暗殺者は仕方なく現場から逃走。
自宅に帰ると、何者か侵入して同棲していた恋人が殴られて重症を負っていた。しかし恋人は健気にも主人公の情報を漏らさなかった、そのため酷く殴られてしまったようだ。
主人公は、恋人を襲った暗殺者たちや、その依頼主を探して殺すことにした――

という話。
とにかく、ハンサムなプロフェッショナル然としたマイケル・ファスベンダーがいきなり暗殺失敗する冒頭が印象的。
誰も邪魔してないのに失敗。何も言い訳できん自業自得系の大失敗。
こうなっては、警戒したターゲットを殺すことはできないためか速攻で帰宅。
すると暗殺者返しされており恋人が負傷しており激怒。
主人公は、暗殺者を自宅まで乗せたタクシー運転手から情報をGETして殺害(タクシー運転手は何も悪いことしてないので気の毒)。次に暗殺を請け負う暗殺の中間業者をしている弁護士の男とその秘書らしき女性を襲撃し、暗殺者たちの身元をGETする。
ここでも主人公は、暗殺の中間業者に重症を負わせて「口を割れば救急車を呼んでやる」と脅そうとが、計算が間違ってたのか中間業者の男はあっという間に死亡。別に第三者が襲ってきたわけでもなく主人公による単純な計算ミス。そして秘書を殺す際も「息子に生命保険が降りるように事故に見せかけて殺して死体を放置して欲しい」という彼女の願いを聞き、そのように殺害する。優しさによるものだろうが、よく考えると「相手に情をかけない」「相手を信用しない」という大事な信条を破っている。というかそもそも「恋人の仇打ち」という彼がずっとやってる逆ギレ暗殺行脚自体がそもそも情に流されての行動だから主人公の行動は「全て間違ってる」ともいえる。
自宅を強襲して恋人を殴った暗殺者は男女の2人組。その男の方の家に夜間、忍び込むが待ち伏せされており怪獣同士の戦いのような大シバキあい対決に発展。あやうく返り討ちされそうになるが何とか殺害に成功、家も放火。万全を課して忍び込んだはずがバレていた。何故バレたのかは謎。事前に番犬に薬を飲ませて寝かせたので、犬の様子を見た相手が「怪しい」と思ったのかもしれない。主人公は「予定通りに行動してアドリブすな」という己の大事の信条を(待ち伏せされてたので仕方ないとはいえ)またしても破った。

……という感じで後半まで、とにかく主人公のミス、思うように計画が進まない、信条を唱え続けてるが相反した行動ばかりしている描写が続く。
だから最初は「『自分はエキスパート』だと思い込んでるドジな暗殺者の話?」と思ったが、後の描写を見るとエキスパートなのは間違いないようだ。
そういうことで最後まで観て「プロフェッショナルである事は間違いないのだが、思うように計画が進まないエキスパート暗殺者の話」なのかなと思った。
待ち伏せして大バトルした後は、自宅を襲ったもう一人の暗殺者”綿棒のような女”(演:ティルダ・スウィントン)を高級レストランで襲撃。……ここは銃を向けられた”綿棒のような女”が延々と「熊と猟師の話」を話し始める。『トゥルー・ロマンス』(1993)の”デニス・ホッパー vs.クリストファー・ウォーケン”めいた凄い迫力でのトークなので聞き入ってしまったが一体なにを言ってるのかよくわからなかった(おそらく殺されるのを引き伸ばしてチャンスをうかがっていただけだろう)。話の内容は「猟師は狩りに失敗しまくって熊に連日犯される。猟師、ファックされたくてわざと失敗しとるやろw」という話。何が言いたいのかよくわからないが主人公がドジなことを言いたいのかもしれない。
よく知らない出演者が多い中、この”綿棒のような女”は「あっ!ティルダ・スウィントンだ」とわかりやすかったし、訳のわからんたとえ話や四連ウイスキーも純粋に美味そうで良かった。
主人公のザ・キラーは、自信の信条に反して必要以上にティルダ・スウィントンに接近しすぎたのだが「誰も信用しない」という自戒のおかげでナイフによる返り討ちを防いで暗殺に成功した。
最終的には自分を狙ってきた暗殺対象を狙う。それは冒頭、主人公が暗殺に失敗した億万長者だった。
主人公はスマートキー攻略のためにAmazonで速攻購入したり非常に手際が良い。「どんなものでも翌日にはGETできる」というAmazonの凄さを再確認。ある時期から映画の中のエージェントが使う機械が、訳のわからん凄い装置ではなく全てスマホになった時に「スマホすごい」と思ったものだがAmazonも凄いわな。
主人公は難なく彼の自宅に侵入する(主人公は、殺し以外は非常に手際が良いので暗殺者以外の仕事をした方がいいのかも)。
主人公の信情的には足がつかないよう、この億万長者も殺して終わった方が間違いないはずだが、たっぷり脅して終わりにして帰宅して恋人と寛いで映画は終わる。
主人公による最後の億万長者への脅しは「銃を持った私はセキュリティ万全なお前の家に侵入できた」「次ここに来た際は銃撃などといった生易しい方法ではなく、お前が口をつける皿に放射性物質を付着させて地獄の苦しみを長時間味あわせて殺す」といった脅しで、億万長者はもう主人公を狙う気は起きないだろうし今後も食事する度に思い出しそうで、これぞ現代の”呪詛”だなと思った。
ティルダ・スウィントン演じる”綿棒のような女”も、自分を殺す主人公に対して呪いとなりそうなことを言ってた。この世に残せるものが何もない者は、最後にせめて自分を殺す者の中に自分を残したくなるのかも。
だが幾ら、たっぷり脅したとは言っても、億万長者も図太い神経をしてるだろうから再び主人公を狙ってもおかしくない。本作ラストの数秒後に、億万長者が雇った暗殺者が主人公を暗殺しても全く不思議じゃない。そう思うと、主人公が億万長者を殺さなかったのは凄く変だよね。恨みはなかったとはいえ自分を直接殺そうとしたし、恋人もそのせいで怪我したわけだし、何の罪もないタクシー運転手や中間業者の秘書を殺してるのだから大元の億万長者はなおさら殺しといた方が良いだろう。生かしておく意味がない。

本作は一体なにが言いたかった映画なの?と言われても一言ではよくわからない。
「10%の才能と20%の努力…そして、30%の臆病さ…残る40%は…運だろう…な…」と、いう『ゴルゴ13』みたいな話だったのか、そして「色々と万全に備えていても不測の事態で予測不能な事が次々と起こる、それが人生」……とでも言いたいのかな、と思ったくらいだ。映画に対して「これが人生だと言いたいのかな?」という感想を抱くのはかなりアホっぽい(だってどんな内容の映画でも全て人生に当てはめられるから)。しかし他に思いつかなかったんだから仕方ない。単純に「暗殺者、しっかりしなさい」というブラックコメディだったのかも。
しかしフィンチャーなので画面は美しいし演技も素晴らしい。
あと単純に一番好きなゲームは『ヒットマン』(2016-2022)三部作という暗殺ゲームを何年もずっとやってるので素直に殺しの段取り自体が面白かったというのもある。
そういう感じで、フンワリしていた映画だったけど面白かったです。「これ何の映画なんだろ?」と考えさせられること自体が楽しかった。そしてそういう何が言いたいのか明瞭でない映画は大御所しか作れない(無名の人が作っても話題にならず届かない)。だからそういう内容の映画こそ得難い魅力があるのかも、と年取ってそう思うようになった。
今年の映画だと『君たちはどう生きるか』(2023)『首』(2023)なども「何が言いたいんだ?」と”豊かさ”を感じさせる良い大御所映画だったね。
思い返してみるとブラックコメディでしか、あり得ないんだが主人公の殺し以外の段取りは有能だし映画や演技の雰囲気がシリアスすぎるので「これはブラックコメディだ」と確信させきらん、その微妙な湯気みたいな雰囲気が魅力の映画だった。

 

 

 

 

そんな感じでした

〈デヴィッドフィンチャー製作総指揮のアニメシリーズ〉

『ラブ、デス&ロボット』(2019) 全18話/全体的に楽しかったがセンスが抜きん出てる三本が特にお気に入り💓💀🤖 - gock221B
『ラブ、デス&ロボット』〈シーズン2〉(2021) 全8話/今回はRobert Valley作品とバラード原作とランズデール原作作品が良かった💓💀🤖 - gock221B
『ラブ、デス&ロボット』〈シーズン3〉 (2022) 全9話/好きなシリーズだしアルベルト監督作あるからネトフリと再契約させられた💓💀🤖 - gock221B ※第2話(通算第28話)「最悪な航海」がデヴィッド・フィンチャー監督回

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www.netflix.comThe Killer (2023) - IMDb

www.youtube.com

The Complete The Killer (English Edition)

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The Killer Vol. 1: Long Fire (English Edition)

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