原題:The People vs. George Lucas 監督:アレクサンドレ・O・フィリップ
制作国:アメリカ/イギリス 上映時間:92分
一回観てるけど、GYAO!で配信されてたので久々に再見。これは間違いなく面白い。
ちなみに僕はSWに過剰な思い入れを持ってるSWマニアではなく、一応全部観てて数年に一度観たりする「普通に好き」程度のライトなファン
Story
若きジョージ・ルーカスが情熱を捧げて創ったSF映画「スター・ウォーズ (1977)」!
それは社会現象を巻き起こし空前の大ヒットを記録するとともに、熱狂的なSWファンをも生み出すこととなる!
ところがルーカスが「スター・ウォーズ 特別篇 (1999)」を発表し、世界中のファンが愛した以前のバージョンを封印するとSWファンは猛反発!
そして、続く「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス (1999)」で、ついに両者の亀裂は決定的になる。
本作は、そんなオリジナルへの愛が強すぎるあまり、作品の生みの親であってもオリジナルを尊重しないルーカスは許せない!‥というファンの言い分と複雑な心情をユーモラスな筆致で明らかにしていくドキュメンタリー ――
色んな業界人や著名人や素人などのピープル‥SWオタク達が熱く話っていく。
ニール・ゲイマンとかも出てくるし、よく知らないSWオタクの人達も面白い。
実際のSWの本編やニュース映像、SWのファンが作った膨大な二次創作動画やアニメ(エドガー・ライトが作ったものも出てくる)などがテンポよく編集されてて楽しい。
序盤はルーカスが映画製作会社の元で働く事に限界を感じた後、SWが大ヒットする様を見せる。
SWおじさん達は「SWは優れた娯楽映画というだけでなく、皆で参加して遊びたくなる砂場のようなもの。それを提供してくれた」とルーカスを称賛。
前半はルーカスとSWがガンガン出世していく様が語られるので景気がよく楽しい
特別編
時は過ぎルーカスはSW特別編を作る。
フィルムを綺麗にするだけならまだしも、細部をCGで色々と変えていき、それだけならまだしも公開時のバージョンを封印したことに異を唱えるSWファン。
その最たるものは、ハン・ソロがグリードを不意撃ちで殺すカッコいいシーンが、子供の視聴者を考慮して「悪役グリードが先に撃ったからヒーローのソロが撃ち返した」というダサい場面に変えられていた件。
ベテラン賞金稼ぎのグリードが1mの距離から銃撃を外すのと、ハン・ソロがCG加工で申し訳程度にカクッと首を動かして光弾を避けてるのがいつ観ても間抜けだ。
SWおじさん「当時の特撮はアカデミー視覚効果賞を受賞した。しかしその視覚効果はCGで上書きされて観る事ができない。当時の特撮作ってくれた仲間に失礼じゃないか?特別編のCGが視覚効果賞を取れるとはとても思えないのに」
「E.Tやブレードランナーなどのディレクターズ・カットが作られた映画は、ディレクターズ・カット版と同時にオリジナル版もソフトに入っている。SWもそうするべき」‥という意見は、SWおじさん達の方が正しい。
「アカデミー視覚効果賞を獲った超ヒット作が流通されていない」という異常事態。
ルーカスの先輩フランシス・フォード・コッポラは悲しそうに言う。
コッポラ「ルーカスは自分の作ったSWによってがんじがらめとなり一切、撮りたい映画が撮れなくなってしまい只の実業家になってしまった」
見えざる脅威
👨非難轟々だった特別編の直後、ルーカスは「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス (1999)」を撮り始める。
ルーカスが「久々にSW作るぞ~!映画撮るぞ!」と張り切ってる様子や、SWファン達の凄まじい熱狂状態が語られる。
「ファントム・メナス」の予告編を観るためだけに映画館に押しかけたり、いかに楽しみにしてるかを興奮状態で口々に話す当時のファンたち。
この辺は、観てられないものがある。
遂に公開されたが、微妙な出来にショックを受けるSWファン達。
当時の20代前半だった僕も、僕も友人たちと観終わった後、誰も「ファントム・メナス」について語らず、自分も「面白くないはずないよな?自分が何か見落としたのかも」と思ってパンフレットを読み返して色々妄想したりして(現実逃避)心の隙間を埋めようとした。そして後日こっそりまた観に行った覚えがあった。何度か観るうちに「どうやら微妙だな‥」と心の奥で結論付けられた(その後のエピソード2~3はもう劇場に行かなかった)
こんな現象は全世界的に起こったようだ。
「ファントム・メナス」を何度も何度も観に行くSWマニアたち!
SWマニア「面白いから何度も観に行ったわけじゃなかった。面白くないのは心の奥でとっくに分かってた。自分の妥協点を見つけるために通った」
悲壮なコメントだ。
マニアではない僕は、そんな話を聞くと可笑しいが、彼らマニアにとっては心の中の大事なものに関わる重要な事だったんだろうと思う。
ここを読んでるあなたもSWの大ファンじゃなかったとしても何か大好きなものがあるだろう。そこに当てはめれば誰でも本作を楽しめると思う。だから本作は素晴らしい。
👨「ファントム・メナス」について割かれた時間は長く、まだまだ続く。
ジャージャーを始めとする魅力がない新キャラ達。
ジャージャーが如何にムカつくかの映像が延々と流れる。
不評すぎてエピソード2以降で出番減ったジャージャーがカメラ目線でマニアたちを挑発するかのように不敵に笑うカットで笑った(知らんかった)
ファンはジャージャーをブッ殺す二次創作を競って創る。
しかしジャージャーやプリクエルが大好きな子供たちのコメントも流れる。
子供達「SWおじさんたちはジャージャー嫌いだよね‥、新しいキャラだから‥」
純粋な瞳のプリクエル大好きキッズのそんな意見を見せられると、SW好きおじさんの方が大人げなく見えてくる。そしてプリクエルあまり好きじゃない僕も心が痛んだ。
ルーカス「子供のために創ってる。だからマニアに嫌われても構わん」
一理ある。ではSWマニアが間違ってるのか?
SWおじさん「本当に子供のためにって言うなら何で『関税がどうとか貿易連合がどうとか』みたいなクソつまんねえ設定やストーリーなんだ?『禁輸』について息子に訊かれたから説明したが全然理解できなかったぜ?ルーカスは子供を盾に逃げてるだけだ」とファンは言う。
こっちの方が説得力ある。これもSWファンに軍配が上がったかな?
👨他にも「ファントム・メナス」から出てきた「フォースはミディ=クロリアンと呼ばれる血中の微小生物から生まれる」という、不評すぎて即、無かった事みたいに扱われるようになった設定についてなど‥。
SWおじさん「SWは色んな人の才能が結集して成功したのにルーカスはSWを自分の思い通りにしようとしてSWがおかしくなっていく‥。ルーカスは自分の帝国に引きこもってしまい誰の声も届かない‥」
SWおじさん「『THX』や『アメリカン・グラフティ』を制作会社に勝手に編集されて傷ついたルーカスは『絶対に自分の作品は自分で管理しよう』と誓った。最初はそのように思い通りに作って成功したのが『スター・ウォーズ』だったが、今では彼自身が自分の作品を破壊している」
しかし悪い要素だけではない。
ファンの声を無視して自分の作品をコントロールしたがる独裁的な一方で、ファンが作ったSW二次創作を一切禁止せず容認するという懐の深さも併せ持っている。
そして本作の映像面も、そんなファンのSW二次創作の映像の数々が作られている。
映像はファンの二次創作、語りはルーカスへの愛憎が詰まっている。
何かSWだけじゃなくて色んなヲタが多い作品の「ピープルvs◯◯◯」が観てみたいね。アメコミとかガンダムとか‥色々
ルーカスの悲劇
少年時代、SWが大好きだったはずのファン達はやがてアンチのおじさんとなって、いつしかSWを叩くのが生きがいになる‥。
そしてルーカスはスピルバーグと再び組んで創った「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 (2008)」もキツい出来栄えになってしまった(それにしてもそれら失敗作も全て大ヒットしてるのが面白い)
「サウスパーク」でルーカスとスピルバーグがインディをレイプする回が作られ弄られる。
SWおじさんの間では「ルーカスは俺たちの少年時代の思い出をレイプしている!許せん」派と、「ルーカスにさんざん楽しませてもらったろ?充分だよ」派、というルーカス否定派と擁護派、双方の意見が展開される(僕は前者の意見も持つ後者かな)
SWおじさん「俺たちはまるでDV夫の妻みたいだ。殴られるのはわかってるのに‥ルーカスから離れられないんだ!」
ファンの息がデカくて長く続いてるジャンルには、よくある話だ。
ルーカス「制作会社の言いなりになるのが我慢できなかった。しかし必死に頑張って気付くと僕は自分が最も嫌いだった独裁者になってしまっていた‥」
SWおじさん「彼は肥大した億万長者だ。その内部には理想主義的なヒッピー青年がいる。更にその内部にはガレージに逃避して車をいじる孤独な少年がいる。"彼"はデス・スターの様な巨大な企業体の中で闘っている。勝って欲しいね、ルーカス少年に」
その後、最後の数分間で、
SWおじさん「何だかんだいって楽しませてくれたよ、ありがとう」
‥と、ルーカスへの感謝の言葉が多く語られて終わる。
本編の殆どの時間、ルーカスへ批判言いまくってたのに、たまにルーカスをフォローしつつ、最後の数分で称賛して何となくいい感じに着地して終わる感じが可笑しい。
まるでSWおじさんの心の中を集合させたかのような素晴らしいドキュメンタリーだ。
そしてルーカスへの批判だらけSWいじりまくりの本作も、ルーカスが許可したから公開できたんだし、批判し合ったり褒めたりしつつの、こういうアメリカ文化は爽やかで憧れる(日本人は反対意見言ったらすぐに「悪口言うな!」とか言う事が多いし)
それにしても本作の映像はポンポンとテンポよくて、かなり面白かった
そんな感じでした
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