gock221B

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『透明人間』(2020)/一歩も歩む事すら叶わず即死したダークユニバースの死骸から生まれた新鮮で面白いDVサバイバーホラー👓

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原題:The Invisible Man 監督&脚本&原案&製作総指揮:リー・ワネル 製作会社:ブラムハウス・プロダクションズ 原作:H・G・ウェルズ 製作国:アメリカ 上映時間:125分 制作スタジオ:ブラムハウス・プロダクションズ シリーズ:ユニバーサル・モンスターズ関連作

 

 

 

2021年ももうすぐ終わるが2021年どころか2020年の観たかった映画&ドラマを全部観てないのでヤバさを感じた。数日以内に全部観て2020年のベストを2021年以内に決めないと翌年以内にベスト考えるという自分ルールがめちゃくちゃになってしまう。もちろん何の徳もない趣味だがルールを一度破ったら次も破っていい事になりやがて荒廃してしまう。そこで本作『透明人間』(2020)観た。これは人気の映画だったが「透明人間でDV夫を表現して低予算で面白い」という評判を聞いて内容が殆どわかってしまったのと、DV描写のある映画は可哀相で観たくないので後回しにしてた映画。
ネタバレなし

『ソウ』シリーズの脚本や『インシディアス 序章』(2015)と『アップグレード』(2018)で監督してたジェームズ・ワン一派のリー・ワネルが監督・脚本。
『インシディアス 序章』(2015)ジェームズ・ワンの作った1&2より面白かったし、観た時に忙しくて感想書いてないけど『アップグレード』(2018)も面白かった。
元々はユニバーサル・モンスターズを使ったMCUみたいなシネマティック・ユニバース〈ダーク・ユニバース〉の一本としてジョニー・デップも出演するはずだったが第一作目『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017)がバカみたいにコケて終了(殆どヒット&高評価のトム・クルーズに泥を塗った珍しい作品)、というかそれ以前に『ドラキュラZERO』が「真のダーク・ユニバース一作目」だったらしいがどっちにしてもコケてシリーズは死んだのでどっちでもいい。超金かけて「ダーク・ユニバースのオフィス」を作ったらしいが誰も来たことがないらしい、さすがにもう取り壊されたかもしれんが、この「ダーク・ユニバースのオフィス」の写真撮ったらかなり良いリミナルスペースな画像が撮れてただろうね。
「Liminal Spaces」という概念 - Neo's World
ユニバーサルは「そもそもモンスターが出会って繋がっても意味なくね?」という事に気づいて金かかるジョニー・デップ外して普通に単体ホラー映画として作ったらヒット&高評価だった『透明人間』観た。それで正解だと思う、モンスターがシネマティックユニバースで繋がってどうする?MCUみたいにチームを組むのか?ではチームを組んだとして誰と戦う?それは宇宙人だとかもっと悪いモンスターとかパワーを得た悪い人間しかいないだろうが、それではモンスターズが只のヒーローになってしまいアイデンティティが揺らぐ。かといってゴジラシリーズみたいに対決したとしても「人間を脅かす」という目的がなくなって「勝手にやってろよ」的な感じになってしまう。やはり「どんなユニバーサルモンスター映画を作るか」じゃなくて「MCUにあやかろう」と無理やりシネマティックユニバースを立ち上げようとしたのが間違いだったのだろう。かなり金がかかった上に一作もまともに作れず滅びたダーク・ユニバースは、企画の廃墟化って感じで、そういうのが好きな僕としてはもっと右往左往する様を見たかったが完全に死んだのでもう居ない。企画ではないが似たテイストの出来事としては不評だったので5年後にリブート作『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)が撮られてしまい早くも黒歴史化した『スーサイド・スクワッド』(2016)で、テンション上がった出演者達がアベンジャーズの六人がやったように記念のタトゥーを入れたというエピソード(デヴィッド・エアーは泊まり込み合宿みたいな撮り方を好むので俳優のテンションが上っておかしな事が起こりやすい)もまた見たことはないが見たら相当虚しいであろう「誰も訪れたことのないダーク・ユニバースの豪華なオフィス」同様の味わいがある。「その後タトゥーを消したのか?いや、でも映画としては失敗作でも皆と集まってワイワイした楽しさは本物だから別に何とも思っていないのか?」とか「マーゴット・ロビーは消してそう」とか色々な事が気になる。

 


感想を書くの忘れてた。
主人公の女性セシリア・カシュ(エリザベス・モス)は、恋人だった大富豪の光学科学者エイドリアン・グリフィン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)の支配DVから逃れた。
親友の家に居候させてもらってるとエイドリアンが自殺した報せが来て多額の遺産を受け取る。しかし、その日からおかしな事ばかり起こりセシリアはエイドリアンが死んでおらず、エイドリアンが光学技術で透明になって自分をストーキングしてるのではないか?という不安に苛まれる―
という話。
主演の女性は、男性社会で女性が奴隷のように扱われるHuluの人気SFドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のエリザベス・モス。このドラマで男性に虐げられる女性の演技が上手いという事で本作の主演にも選ばれたんだろう。そのドラマ辛そうで観てなかったけど確かにこの人は男性に虐げられると恐怖や怒りや様々な感情が入り混じった感じで顔がぐにゃ~と凄く歪む、このぐにゃりが確かに天下一品。
最初のH・G・ウェルズの原作からして「透明になれば欲望や暴力性が顕になっていく」というのはもう既に完成されている。「透明になったら何する?」という定番の質問も……あまり言いたくないが確かに大都市部のスポーツジム行って運動するOL女性をじっと見てしまうでしょうね、僕は昔デッサンの授業を受けてましたが全裸の女性は1mmもセクシーじゃない事を知ってるので女性が裸になる場所には行かないでしょう……リアルにいやらしい話をしてしまい申し訳ありません。だが覗きしてたら透明になった自分を一人だけ目でずっと追ってくる人が居たら逆にめちゃくちゃ怖いだろうね。そんな感じで透明になってする事を思いつくのは犯罪的な事ばかりだし「見つからないように全裸」「息を殺して物音をさせない」などと透明になった時の所作をリアルに考えていくと「それはもう人間じゃなくて只の幽霊だよね」と思う。他人から見えなくなるという事は人間社会からの逸脱に他ならないわけだし確かによほどの聖人でない限り怪物になってしまうのかもしれない。『ウォッチメン』などでお馴染みのアメコミ天才ライター、アラン・ムーアの作品でイギリスのあらゆるフィクションの登場人物がヒーローチームを組むコミック『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』シリーズ(傑作)でも、チームのメンバーである『透明人間』のグリフィンはチームリーダーである『ドラキュラ』のミナ・ハーカーをレイプしようとする卑劣漢だった(殆どハルクみたいなキャラである『ジキルとハイド』のハイドはミナが好きなので激怒してグリフィンをレイプしながら身体を引きちぎって惨殺する)。
本作は透明人間ではなく透明になった男の加害を怯える女性を主人公にしている。映画の演出も単純に面白いが、あらすじ聞いただけで「あぁ、今の時代とピッタリ合ってるな」とわかるのでヒットした上に高評価だったのも頷ける。
この映画、前半は親友の家に逃れた主人公セシリアの「透明になったエイドリアンが屋内で自分を見ているんじゃないか?」と不安に過ごす、というジェームズ・ワンの幽霊屋敷映画やJホラー的な演出なので凄く好みだった。
普通、映画で主人公が同じ部屋にいるのにも関わらず何も起きてない部屋の片隅をじっ……と撮るなんてあり得ないので、そうしてる時は透明人間がそこに居るのだが映画の撮影的には只、部屋の片隅を撮ってるだけ……というのが凄く面白かった(この記事のトップ画みたいな画面ね)。前半は透明人間が干渉して来ず、部屋の片隅で立ってるだけなので本当に部屋の片隅を撮ってるばかりなのが逆に凄く面白い。安上がりだし。
この時点では、エイドリアンが本当に透明なのか幽霊なのかセシリアの被害妄想なのかわからない。透明人間が歩いた部分が凹んだりペンキをかけたら人形が見えたりもするが、それを見てるのはセシリアの主観に過ぎず「全てセシリアの妄想でした」というオチも充分ありうる(まぁそんな結末は大抵つまんないけど)。
そしてセシリアが透明人間グリフィンを怯える様子は、DVから逃れたサバイバーの女性がフラッシュバックに苦しむ様子のメタファーであり……メタファーというかそのままか。とにかくエリザベス・モス演じるセシリアを主人公にした事で「透明の男」というモンスターを恐れる様子が全て、ホラーを飛び越えてホラー好きの間だけでなく外部の一般の人にまで届きうる映画になっている。僕も20代の間そういったものに悩まされてたのでよくわかります。
中盤以降は、透明人間の秘密や正体を探っていくサスペンスとなっている。
正直かなり無茶な展開が続くので、もし本作がつまらなければ「ここがおかしい、あそこがおかしい」と幾らでも文句言えるが、かなり面白いので粗い部分が一切きにならない。そういうもんだ。面白いという一本の背骨を通っていれば周囲の肉や皮が多少おかしくても気にならない。逆に後から脳内補正して粗い部分も楽しめたりする(結末がめちゃくちゃ良ければ、そこまでがつまらなくても全て良く感じるのと同じ)。
そういう感じで、評判通り面白い映画でした。
観て感想書くの遅かったし「男性社会に虐げられる女性」問題とかの真面目な話は散々書かれてそうだから割とどうでもいい事ばかり書きました。……というのは言い訳で公開初日に観ててもこんな感想だったでしょうけどね。

 

 

 

そんな感じでした

「インシディアス 序章 (2015)」前日譚は大抵つまらないものだが本作はめちゃくちゃ良かった👻 - gock221B

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The Invisible Man (2020) - IMDb

www.youtube.com

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