原題:The Falcon and the Winter Soldier 製作総指揮:ケヴィン・ファイギほか 原案&脚本&製作総指揮:マルコム・スペルマン 監督:カリ・スコグランド 脚本:デレク・コルスタッド 原作:スタン・リー、ジーン・コーラン、ジョー・サイモン、ジャック・カービー、エド・ブルベイカー、スティーブ・エプティング 制作スタジオ:MARVELスタジオ 配信サービス:Disney+ 配信時間:各話約50分、全6話 製作国:アメリカ シリーズ:MARVELシネマティック・ユニバース(Disney+制作ドラマシリーズ)、『キャプテン・アメリカ』シリーズ
随分、遅れてだけど『ワンダビジョン』→『ブラックウィドウ』→『ロキ』→本作と、今年から始まったMCUフェイズ4の四作品を一気に観た。
MCUは開始時から好きだが23本からなる『インフィニティ・サーガ』が終わったところで丁度、コロナで新たなるフェイズ4公開が一年以上ストップしてたので、しばらくMCUの事は忘れてたのだが媒体が劇場公開作品だけだった以前までならば、この「4作が公開された」という時点だけで既に「2021年のMCU作品は4本か、随分多かったなぁ」という感覚だったのだが、今年のMCU作品はまだ映画とDisney+作品合わせて、まだあと『ホワット・イフ…?』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『ホークアイ』『エターナルズ』『ミズ・マーベル』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』と、まだあと6本も残ってるんだから完全に狂ってる。今まで「一年間に4本でも多め」という感覚だったのに一気に4本観てしまい更に、それ以上の分が今年中に公開されるのだから脳が壊れそうだ。今まで、一本観ては感想書いたり友人と語ったりMCUニュースを日々チェックしたり腐女子のMCUのBLを読んだりして埋めてた感じですからね……(男の感想は俺が男だし想像つくから読む必要なし、それより腐女子の感想の方が面白い)。
MCU好きなので連発されるのは有り難いが「ライトなファンに飽きられるのではないか?」という不安がたまに湧き上がってくる。とりあえずMCUが始まった時に思ってた「アベンジャーズ完成」「キャップが人気出る」「ミズ・マーベル映画化」という三大欲求は叶えられたので後はMCU版ファンタスティック・フォーとMCU版X-MENを見届けたら俺もMCU卒業してもいいかなと思った……でも、MCUのFFとX-MENが一段落するって10年後くらいじゃないか?と思った。まぁMCUが終了するか何か不測の良くない出来事が起きてMCUがすっかりダメになってしまうか又は自分が死亡するかするまでは観てるんでしょうね、きっと。そのためにもコロナに罹らないようにしないといけませんね(オリンピック関係なしに3千人近く羅漢者が出たので、来月あたり医療崩壊して9月以降はエグいくらい都内の人が死ぬ気がする。このブログが一ヶ月以上更新されなくなったら私も死んだと思って下さい)。
『ワンダビジョン』も本作も、観るのが遅かったこともありネタバレ食らった状態で観たけど面白かった、ネタバレなしリアルタイムの方が面白かっただろうが大学生でもないので映画やドラマだけ最優先に生きてはいけないので仕方ない。
ネタバレあり
今回は自分の中でまとめきれなかったので長いです。サムやバッキーについて書いてる中盤くらいまではネタバレ少ないので未見の人もその辺までは読んでOK。
物語の舞台は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の半年後。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)のラストで、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカからシールドを受け継いだサム・ウィルソン/ファルコン(アンソニー・マッキー)。サムはスティーブの気持ちを汲んで一旦は受け取ったが、サムはキャップの後継者になる事に思うところがあって自分には無理だと判断しアメリカ政府にキャップの盾を寄贈。2代目キャップにはならずフリーランスのファルコンのまま、協力者のホアキン・トレス中尉(ダニー・ラミレス)と共に犯罪者と闘っていた。
一方、初代キャプテン・アメリカの親友、ジェームズ・"バッキー"・バーンズ / ウィンターソルジャー(セバスチャン・スタン)。彼は秘密結社ヒドラに超人血清で超人兵士(スーパーソルジャー)化された上に洗脳され、操られるがまま暗殺させられまくっていた。バッキーは、ワカンダの治療でその洗脳を脱した今も、過去のPTSDを抱えて孤独に暮らしつつ、暗殺者だった時に傷つけた人達を尋ねたりヒドラ残党を捕まえたりして過ごしていた。
本作は、そんなキャプテン・アメリカのサイドキック(ヒーローの相棒)だった2人、ファルコンとウィンターソルジャーを主人公とした新しい闘いを描く。新規のタイトルではあるが内容としては実質『キャプテン・アメリカ』シリーズの4作目と言える。
アメリカ政府はサムが寄贈したキャプテン・アメリカの盾を、優秀なアメリカ陸軍兵士ジョン・ウォーカー(ワイアット・ラッセル)に持たせ、二代目キャプテン・アメリカを誕生させる(この様子をTVで見るバッキーの呆れ顔とサムの哀しい顔があまりに最高だったので俺は一時停止してこの場面観ながら一晩、酒飲んだ)。
本作の舞台となるアメリカの現状。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)でサノスが行ったデシメーション(指パッチン)によって全世界の半数の人が消滅し5年が経過、その間アメリカは難民を受け入れ仕事や住処を与えた。しかし5年後の『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)にて、アベンジャーズが「消えた人達を元に戻す指パッチン」を行い消えた人達は元通りとなり、サノスも打倒し地球には平和が戻った。
だが、そうなるとアメリカ政府は、「アメリカ人が半数になった時に受け入れた2500万人もの難民」が要らなくなったので、戻ってきたアメリカ国民を優遇し難民たちを冷遇した。難民たちは仕事も居場所も無くなりアメリカ国内から追い出されようとしていたが難民たちは行くところがなく帰る所がない。
アメリカに憎悪を燃やした難民たちは自分たちの居場所を取り戻すために、リーダーである少女カーリ・モーゲンソウ(エリン・ケリーマン)率いる武装集団〈フラッグ・スマッシャーズ〉が結成され、アメリカ政府に無差別テロを仕掛けた。
しかもフラッグ・スマッシャーズは只のテロリストではなく、カーリを始めとするトップの十数人はキャップやウィンターソルジャー同様、肉体が超人血清で強化された超人兵士(スーパーソルジャー)だった。
通常の警察や軍では対処しきれないスマッシャーズのテロを鎮めるためフリーで動くファルコンとウィンター・ソルジャーは、 かつてアベンジャーズを分断させた超人兵士に詳しい犯罪者ヘルムート・ジモ(ダニエル・ブリュール)や、『シビル・ウォー』でキャップ達を手助けしたため国を追われたままの元SHIELD元CIAエージェントのシャロン・カーター(エミリー・ヴァンキャンプ)に協力を求める。一方、アメリカ政府が派遣した二代目キャプテン・アメリカのジョンとその相棒バトルスター(クレ・ベネット)の二組が、スマッシャーズのテロを鎮めようとする……というのがメインストーリー。
そこに「サムは本当にキャップを継ぐのを諦めてしまったのか?」「バッキーのトラウマは?」「ジョン・ウォーカーは二代目キャプテン・アメリカを全うできるのか」「超人兵士計画に隠された恐ろしい真実」などのドラマも詰め込まれている。
たった6話しかないのに色んな事がギュウギュウに詰め込まれ、一気に終わる。
MCUのミニシリーズドラマは、映画並みの予算もかけられてるし話数が少ないこともあって「6時間の長い映画」といった感覚がある(実際にMCUドラマは6時間の映画として作られている)。そして毎回のラストはクリフハンガー(続きが気になる終わり方)で終わる。僕は元々、後から展開を付け加えて人気なくなるまで延々と続ける海外ドラマがあまり得意じゃないんだけどMCUドラマは短いので有り難かった。
昔、アメコミ好きの人とアメコミ映画について話すと「アメコミ映画は本来ドラマの方が向いてる」という人が多かった。確かに毎話毎話ラストでクリフハンガーで終わるというのはアメコミの毎号の終わり方と似てるし、全6話だとしたら5回もハッとさせつつ6時間の長い映画を視聴者の脳に効果的にブチ込めるんだから効果的。一昔前の海外ドラマみたいに「先の展開何も考えてないけどクリフハンガー入れとけ!」というノリだと大抵、後で破綻してたがMCUドラマの場合、結末まで考えて……というか広い目で言うと10年後までの影響を考慮に入れて作ってるだろうから破綻する心配も少なく安心して観れる。……とは言えMCUドラマ第一弾『ワンダビジョン』では思わせぶりで期待させるクリフハンガーや伏線をブチ込みまくってたが最後に数々の伏線がクソどうでもいい感じで終わったせいで全体の3分の2くらいまでは死ぬほど面白かったけど最後にテンションが大幅に下がって終わった。『ロキ』は殆ど面白かったけど幾つかの謎を残したままシーズン2に続いてしまった。『ロキ』はコロナによるロックダウンで当初やりたかった事や撮影が出来なくなり本来1シーズンで済ます予定だったものの途中までを配信して残りがシーズン2になってしまった……というのは公式のコメントではなく僕の推測だが、多分合ってると思う。完成したのもギリギリだったし多分そうだろう。
とにかく今んとこ作られたMCUドラマ三作の中では本作が一番完成度高かった。
という前置きだけで長くなってしまったが、全体的な感想の前にキャラクター別に書いていくことにした。
🦅⛄⭐
🦅 サム・ウィルソン/ファルコン
まず主人公のサム/ファルコン、今までの彼は「キャップの良き理解者」という面のほか、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』等で尋常じゃない空中戦の強さ(羽付けて飛んでるだけなのに戦闘機に余裕で勝つ)が印象的だった。同じ黒人サイドキックのローディと比べると「破壊力のウォーマシーン、空中戦のファルコン」という印象。飛べるMCUキャラは他にもいるが最も空中戦が強い印象。本作冒頭のバトロック達との空中戦も凄く強かった。
だが『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でウィンター・ソルジャーに翼を引きちぎられたり、『アントマン』でヒーローなりたてのアントマンにいいようにやられた印象も強かった、空中戦だと強いが地上戦になると、あまり強くない印象。そして良い奴なのはわかるがこれといった人間ドラマは感じてなかった。ざっくり言うと今までは正直あんまりパッとしない印象だった。
キャップが後継者にするのはバッキーかサムかは『エンド・ゲーム』観るまでわからなかった(原作では両者ともキャップになった事あるので、どちらもありうる)。キャラが立ってたのはバッキーだが彼は洗脳されてたとはいえアイアンマンの両親を始めとして数多くの人達を暗殺してるのでちょっとキツいかな?というのがあった。サムは、キャラや活躍は薄いが問題ない良い奴、しかも黒人男性というのも大きい。だからサムが後継者に選ばれた時も「まぁ、ええんちゃう?」という感じだった。
本作のサムも、その「良い奴だが今ひとつパッとしない」という今まで通りの印象のまま後半まで進む。正しいことのため頑張ってはいるのだが心に常に迷いがあり言動と行動が伴っておらず説得力もなく上手くいかない、これではキャップと言えない。ドラマ自体は面白いのだが「サムいつまで経ってもパッとしない……これ最終話で彼がキャップになるのを本当に心の底から祝えるようになるんかな?」と、観てて心配になっていった(結果から言ってしまうと本作の後半までサムがずっと頼りないのは、そういう演出でわざとそう描いてただけだった)。
前述したあらすじにもあるように本作のサムは、せっかくキャップから受け継いだ盾をあっさり政府に寄贈してしまい「キャップを継ぐまでの心の変化を描くために盾を手放したのかな?」と、少し視聴者を落胆させた状態でドラマが進む。バッキーはサムに対して事ある毎に「なんでスティーブから受け継いだ盾を手放した?」とおかんむりだったが正に観てる僕もバッキーに感情移入して見てた。
この続きは後半でちょっと書くとして、バッキーの印象に移ろう。
⛄ ジェームズ・"バッキー"・バーンズ/ウィンターソルジャー/ホワイトウルフ
本作のバッキーは控えめな立ち回りでサムを補佐していた印象。
彼は心の安定とサムとの共闘、あとは心を開いて他人を受け入れられるかどうかというのがテーマになっている。
その代わり本作のバッキーもあまり強くない。「左手で重いものが持てるエージェント」程度の描かれ方なので「もうちょっと強く描いてもよくない?」と感じた。超人血清を打ったフラッグ・スマッシャーズは「反政府活動してる大学生」みたいな感じなのに、元軍人&元伝説の暗殺者という経験値半端ないバッキーがカーリらに苦戦するのがちょっと納得できなかった。同じ軍人のジョンは割とスマッシャーズを圧倒してただけに納得いかない。仕方ないので「改良した超人血清は昔のヒドラのものより強力なんかも」と脳内補正して観た。
どうもヒーローターンしてからのバッキーの微妙な強さが気になる。『ウィンター・ソルジャー(ヴィラン)』→『シビル・ウォー(ヴィランからヒーローへ移行している状態)』→『インフィニティ・ウォー』&『エンド・ゲーム』(ヒーロー)→本作(ヒーロー)と、登場するたびヒーローに近づくたびに強いイメージが薄れていった印象。
やはり周囲の一般人が巻き添えで死のうと構わない洗脳ヴィラン状態と、護るものがいっぱいあるヒーロー状態とでは思い切りの良さに差があるのかもしれん。またサノス戦では周囲に人を超えたパワーを持ったキャラが多すぎたせいかバッキーの役目は何もなく戦場を銃持ってウロウロしてロケットと仲良くするだけのロン毛でしかなかった。昭和の少年漫画で強い敵が味方になると普通の強さになってしまう事が多かった事のを思い出した(バッファローマンとかピッコロ)。
冒頭、洗脳されてた頃の懐かしのウィンター・ソルジャーが見れる。あの「キィェエーン!」といった怪鳥音のようなウィンター・ソルジャー登場SEも久々に聞けた。
これはバッキーの悪夢だった、彼は昔手にかけてしまった人や親族を訪ねて償いをしていた。
そう、もう「バッキー、前の方が強かったな」とかそんな子供みたいな事を言っとる場合ではない。バッキーはサムと共闘しながら自分の平和を取り戻すため戦う。
強さは微妙だが、髪切って自分の心や現代社会から逃げなくなったバッキーは今までで最もカッコよかった。最後、サムの実家に2回行ったバッキーの爽やかさも尋常じゃなく素敵。
本作を観る前はポスターの短髪バッキー見て「やっぱ90年代的なロン毛&目の周り真っ黒ヴィラン時代の方がカッコよかったな」とか思ってたが、本作のバッキーがしみじみ良いので「あんな風に思ってたが、短髪のセバスチャン・スタン丸出し爽やかバッキーの方がカッコいい……今どきロン毛の中年とか変だし」などと、すぐに180度考えが変わった。というかむしろ今の時代にロン毛の方が不自然だし何故ああ思っていたのかよくわからなくなったほどだった。
後半のサム同様、バッキーのイメチェンも怒涛の説得力で「これがむしろ正解だ!」と印象が刷新させられた。
洗脳や後遺症から脱却できて心の壁も無くなって万全になったバッキー。キャラクターとしてはドラマがなくなってしまった気がするが今後どうするんですかね?次回作で何するのか想像できない。イザイアの孫を鍛える?それはサムの方が適任か。
この『キャプテン・アメリカ』シリーズは現実のアメリカ社会をモロに反映したストーリー作りしている……いやそれは他のMCU作品も全部そうなんだがキャップシリーズは特にそれが濃い、だから無限に続けられるのでそのメインキャラであるバッキーはむしろ安泰と言えるのだが、サムと違ってバッキーの今後って、やる事あんのかな?と少し心配。次はスティーブやサムのサイドキックとしてだけではなくもっとバーン!と目立って欲しい。
⭐ ジョン・ウォーカー/二代目キャプテンアメリカ/USエージェント
二代目キャップになったジョン・ウォーカー、こいつはとにかくMCU屈指の良いキャラだった。
アメリカ政府はサムが寄贈したキャップの盾を、これ幸いと米軍兵士のジョンに持たせアメリカのプロパガンダとして、最も敬意を集めたヒーロー、キャプテンアメリカを大々的に復活させる。
この二代目キャップは「政府のキャップ」それが初代スティーブと決定的に違うところ。そしてスティーブとの違いは後からどんどん出てくる。
ジョンは汚れ仕事をこなして勲章を3つも授与された優秀な兵士。だが国の英雄の後継という立場にプレッシャーを感じており功を焦ったり迂闊なところがあり悪気はなさそうだが他人を舐めてかかり上から目線で物を言う悪癖がある。サムやバッキーが盟友スティーブの盾を持って勝手にキャップを名乗る彼に協力するわけもなく(まぁ手放したのはサムなので自業自得だが)、前述した性格のせいでフラッグ・スマッシャーズ壊滅というミッションが全く上手くいかない(全話見渡してもジョンが活躍したのは最終話のみ)。ますます焦りは募るがフラッグ・スマッシャーズと対峙しても何しろ相手は超人血清打ってるので全く歯が立たない。そこで意気消沈してる時にサム&バッキーが連れ回してるジモを追ってきたワカンダ国のドーラ・ミラージュのアヨ(フローレンス・カサンバ)にも完膚なきまでに叩きのめされる。ジョン「ははは……超人兵士でもない普通の女に俺が……」と完全にメンタルブレイクしてしまう。「ドーラ・ミラージュはリーダーがサノス四天王を殺すくらい強いから気にしなくてもいいよ」と慰めたいところだが、ジョンはそんな事知らない。「キャップにさせられた普通の人間」が行き着くのは実力以上の結果を生む禁断の果実、超人血清しかなかった。
そんな時、今までジョンの迂闊さをカバーしてくれてたバトルスターに起きた出来事を切っ掛けに、ジョンは最悪のタイミングで壊れてしまう。
……というジョンは、第三の主人公とも言えるくらい重要なキャラで本作は彼のオリジンでもあった。キャラとしてはサムやバッキーを食いそうな勢いで目立ってた。
まずカート・ラッセルの息子演じるジョンの絶妙にうさんくさい顔。登場して1秒でこいつが「ダメなバージョンのキャップか」と、わかる面構えが最高。
予告編やポスターで、後でUSエージェントになるコイツが出るのはわかってたので「ダメなキャップ」としてヘイトを集めるんだろうなと思ってて、まぁ「ダメなキャップ」役だったのは合ってたが、ジョンのキャラが思いのほか一人の人間として立体的に創られてたことに感心した。
確かに、上から目線で偉そうにものを言ったり、焦って強硬策に出てサム&バッキーの作戦を全部ダメにしてしまったり嘘ついたり調子に乗ったり……と「ダメなキャップ」役をこなしてはいたものの、悪人やレイシストではないし「キャップの野郎の座を貰ったから利用してのし上がってやるぜ」などと思ってるわけではなく「偉大な初代キャップに近づけるよう俺も頑張りたい」「世間に貢献して皆に認められたい」と本気で思っている。ここが面白い。親友の黒人兵士バトルスターとの友情も厚い。
要は「普通の、運動神経いいだけの一般兵士がキャップのポジションにさせられたら?」という気の毒なキャラでもある。
このジョン、他の作品だったら確実に「キャップを騙ったクソ野郎キャラ、後半ヴィランになって大暴れしてサム&バッキーに倒されて死ぬ」というキャラにするはず。「ファンが大好きなキャップを騙ったクソ野郎を、やはり皆が大好きなサムorバッキーが倒して盾を取り返す」という単純な展開は絶対にウケそうだし。まぁ半分くらいはそうなんだがジョンは只の嫌な奴ではないし最後が違った。テロリストとはいえ超人血清を打ったスマッシャーズを憎悪に囚われて惨殺→それが衆人環視の中だったので二代目キャップとして社会的に死亡→破れかぶれで狂気に囚われたままサム&バッキーと死闘!→ボコボコにされて盾も奪われる→2代目キャップどころか軍も退職金出ないレベルの酷いクビ……という頂点から最底辺まで落とされて、鉄板でキャップの盾をDIYしたから「もはや完全に狂った、サムバッキーと闘って死ぬ?」……と思ったら復讐を途中で止めて、徹夜で作った盾を放り捨て市民を事故から助ける……これは完全に予想外だったので良かった。盾を捨てるために盾をDIYするシーン入れてたとはね!
だが本作でジョンはもう完全に堪能しきったので今後のUSエージェントは正直どうでもいいんだがエレーナのチームのリーダーこいつだろうから引き続き頑張ってほしい。
MCUへのカウンター的な感じで好評を得たメタヒーロードラマ『ザ・ボーイズ』、シーズン3にキャップを揶揄したキャラ「ソルジャーボーイ」が出るんだけど(『インフィニティ・ウォー』のワカンダ盾を付けたスティーブそっくりのルックス)本家本物のMCUが、このジョン・ウォーカーをやった後でやれる事まだあるの?と少し心配になった。
👴🏽 イザイア・ブラッドリー
割とのんびり始まった本作だが、隠された黒人の超人兵士の老人イザイア・ブラッドリー(カール・ランブリー)が出た時、このドラマのガチ度が伝わって、やべぇ……と誰しも姿勢を正される。
土深く埋められた信管を抜いた不発弾の様なキャラクター。
イザイアは、キャップのような超人兵士を再現しようとした政府が黒人を300人集めて超人血清を打ちまくったら皆死んだ。唯一、成功した黒人の超人兵士がイザイア。キャップ同様ヒドラに恐れられる獅子奮迅の働きをしたが30年間独房に入れられ身体実験され現在は死人扱いで、孫のイーライ・ブラッドレー(エリヤ・リチャードソン)と共に隠遁生活している。
「ブラック・キャプテンアメリカが居たなどあってはならない」と政府に抹殺されたという衝撃のエピソード。
イザイヤを尋ねたが追い出されたサムはバッキーに「なぜ彼のことを今まで黙っていた!?」と叫んでると、すぐに白人の警察がやってきてバッキーに「大丈夫ですか?黒人に絡まれてます?」と訊いてくるが、目の前の黒人がアベンジャーズのファルコンだと気づき「あ、気づきませんでした!失礼しました」とヘコヘコと態度を変える、ここまで含めて圧巻の流れ。
イザイアは2度尋ねてきたサムに決定的な影響を与え、サムをキャップの盾が似合う男に変貌させる切っ掛けとなる。ジョン同様このイザイアも出番は少ないがMCU屈指の凄いキャラクターだった。その結末もね。
それにしても朝鮮戦争で闘ったウィンター・ソルジャーのメタルアームを引きちぎったイザイヤってキャップより強かったんちゃうかと思わされる。
👧 カーリ・モーゲンソウ
スマッシャーズのリーダー、カーリは只のそばかす少女に見えるのだがウィンターソルジャーを圧倒するくらい強い。
「この新超人血清は急激な肉体の変化なしに、小柄な肉体のまま剛力を発揮する」みたいな事を開発した研究者が言ってたけど、筋肉を進化させずに剛力を発揮するって物理的におかしくない?……と思ったが飛び立つヘリを引っ張って止めたり戦闘車両をひっくり返す超人兵士の剛力自体が自然に反したパワーなんだから野暮な事言うのはやめとくか。
母親だか恩師だかが亡くなってアメリカ憎しみ少女になってしまったカーリは反抗活動していたが、議事堂的な建物を爆破して死者を出すという、もう引き返せないヒーローにはなれない決定的な一歩を踏み出してしまう。
服用者の良い部分はより良く、悪い部分はより悪く増幅される超人血清は、カーリの過激で切羽詰まって融通効かない面を増幅してしまい、テロはどんどん大きくなっていく。
要するにカーリは「銃を拾ってしまった行き場のない子供」という気の毒なタイプのヴィラン。
黒人というマイノリティ出身のサムは、追い出される難民カーリにシンパシーを感じカーリが死者を出してしまった後も「君の気持ちわかる」と言って説得しようとする(ジョンの奴が邪魔しなければ説得したのかな?)
カーリの、テロリストに見えない、どこにでもいそうな少女っぽいルックスは彼女の「普通の気の毒な少女がパワーを手にしてしまった」感を増幅させてて演じてる俳優のルックスはベストだと思った。「元気なあんちゃんがキャップにさせられてしまった」ジョンと対を成してるというか。
🍬 ヘルムート・ジモ/バロン・ジーモ
ジモは『シビル・ウォー』で、無意味に複雑すぎて誰にも理解できない「そんなに複雑な意味ある?」って感じの作戦で、単身でアベンジャーズを半壊させたというサノスの次に打撃を与えたスーパーヴィラン。
バッキーを洗脳状態にするキーワード「熱望、錆びつき、17、夜明け、灼熱、9、温情、帰郷、1、貨物車両。らせん階段…!カブト虫!廃墟の街!イチジクのタルト!カブト虫!…ドロローサへの道!カブト虫!特異点!ジョット!天使(エンジェル)!紫陽花!カブト虫!特異点!秘密の皇帝!!」という後半は違うけどそんなキーワードでバッキーを操った。本作でもバッキーが刑務所に来たら早速「熱望……」と始めるが、バッキーの洗脳はワカンダで解かれ全治していたためバッキーが「やめーや」と言って終了。
本作にジモが出るとわかった時「裏コードみたいな暗号でバッキーをまた洗脳するんやろか?」とファンの多くは思ったが、そんな安い展開になんなくて本当によかったよね。
超人兵士に最も詳しいのはジモ。サムとバッキーは、レクター博士よろしく凶悪犯ジモの脱走を手助けし、連れ回して調査を進める。……サムとバッキーめちゃくちゃ違法な事やってる!まぁテロは抑えられたのでOKとしとこう。
ジモは、紫のマスク被ったので本作から正式にスーパーヴィラン、バロン・ジーモ。
レクター博士役をこなしサムとバッキーにはない交渉術で子供を懐柔し、遂には目的を完遂してしまう。
前はもうちょっと深刻で陰気なキャラだった気がするが本作で急に、ジョーク言ったりダンスしたりする陽気なキャラになった。あと大富豪要素も付け加えられた。もともとパワー持ってない普通の犯罪者なのにアベンジャーズ分断させる頭脳があったが、本作で大富豪キャラも加わってMCU屈指の強キャラになった。バットマン的な強さだ。こいつが格ゲーのキャラになったら執事のジジイを飛ばしてきそう。
⭐ サム・ウィルソン/キャプテンアメリカ
まぁ、そんな感じでキャップの盾はジョンから取り返したが、テロの調査は上手く行かないしジモにも逃げられイザイアにキツイこと言われたサムは、第5話で一旦、姉ちゃん一家がいる港町の実家にションボリして帰ってくる。
スマッシャーズのテロも未解決だが、父が残したボロ船を姉が売るという。姉は財政的に厳しく、アメリカのヒーローのファルコンも、今はフリーター扱いなのでこういった事に無力だった。
リハビリがてら近所の人達と船を修理するサム、そこにバッキーがやって来る。彼はアヨに頼んでワカンダ製のサムの新しいスーツを持ってきた。
スーツは一旦置いといて、バッキーはサムの船の修繕を手伝う。サムの家に泊まり、2人はキャッチボールのように、キャップのシールド投擲を通して互いの腹の底を語り合う。
今までバッキーは、サムがキャップの後継者になるのを渋ってた理由を理解できなかった、ついでに観てる僕も理解できず「このドラマのサムも頼りないな」と思ってたけど、ここまで観るとサムが懸念していたのは「黒人のキャプテンアメリカなど誰も歓迎しない」というのがネックだったんだとわかる。何しろイザイアという「無理やり人体実験されてキャプテンアメリカみたいなパワーを得たら、今度はそれを恐れた白人に30年間、鎖に繋がれて実験動物にされた」という体現者が実体を持って目の前に座ってるんだからサムのショックも相当だっただろう。
盾を授けたスティーブも、盾を手放したサムを責めたバッキーも自分が白人男性な上に全く黒人を差別しない性格してるが故に、そのサムの気持ちに気付かなかった。「黒人がキャプテンアメリカになったら責められる」等と考えもしなかったのだ。バッキーはそんな自分の考えなしだった部分をサムに謝罪する。
バッキーが帰った後、シールド投擲の訓練を繰り返し、超人血清を打ってないサムは腕立て伏せやジョギング、甥のチビっ子たちと爆走……ロッキーだこれ!
こうなるともはや『キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー』で登場して第5話の中盤までの「そこそこ強いし良い奴だけど、どこか頼りないサム」はもう居らず、隼の目をした汗だくの黒人男性が立っているだけだった。
何だか今までファルコンが今ひとつパッとしなかったのも全部、伏線に見えてくるから凄い。少なくとも本作の後半までサムがパッとしなかったのは全部伏線ですよね。
この第5話はアメリカ映画や香港映画でよくある中盤で敗れるが復活するくだりなわけだが、その復活パートが「サムとバッキーがサム実家で周囲の人達と触れ合いながら腰を据えて語り合う」……というものだったのが本当に最高。
「分断されたアベンジャーズがサノスに敗北したけど、アッセンブルしたら勝った」というのと同じ事で、今まで仲悪かったサムとバッキーが今度こそ真に通じ合ってファルコン&ウィンターソルジャーという強いバディがアッセンブルする展開。
そしてフラッグ・スマッシャーズのテロが行われる場所に、気持ちが吹っ切れたサムとバッキー、そして全てを失ったジョンや逃亡中のシャロンも急行して最後の闘いが行われる。
何かちょっと多く書きすぎたので最終回について書くのはもう止めときますが、最後のサムの演説がMCU史上で最高に良かったし感動しました。サムは空中戦№.1だけでなく演説№.1にもなったね。あと最終回で新しくなったサムが降り立つ姿が神々しすぎるので「サムって天使やん……」と思った。
ついでに全てが解決した後、再びバッキーがサム実家に来てパーティ。勝利後の打ち上げシーンだ!そしてサムとバッキーは満ち足りた笑顔で水平線を眺める……水平線じゃない未来を眺めとるわけですよ。
やっぱキャップ系シリーズは好きです。この続きは映画『キャプテン・アメリカ』4作目で観れるらしい。
ジョンは次何に出るか謎『ホークアイ』にエレーナ出るけどジョンは出ないかな。イザイアの孫イーライは当然ヤンアベ行き。シャロンは皆も思っただろうがスクラルだろ、逆にスクラルじゃなければ意味わからんレベル、『シークレット・インベージョン』原作でスパイダーウーマンがやった役回りを、MCU版『シークレット・インベージョン』でシャロンがそっくりそのままやるんじゃないか?シャロンの顔を剥いだらエミリア・クラークかもしれん。
MCUとしての次回作は、8/11からDisny+でアニメのミニシリーズ『ホワット・イフ…?』が始まり、9/3に映画の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』か。
そんな感じでした
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ファルコン&ウィンター・ソルジャー (TV Mini-Series 2021) - IMDb