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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム エクステンデッド・エディション』(2022)/20年越しのお祭りで最高に面白いが中盤以降があまりに哀しい+後日に追加版追記🕷️


原題:Spider-Man: No Way Home 監督&脚本:ジョン・ワッツ 製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル 原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ 制作スタジオ:MARVELスタジオ、コロンビア ピクチャーズ 製作国:アメリカ 上映時間:148分 シリーズ:マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)第16作目。MCUの『スパイダーマン:ホーム』シリーズ第3作目。SONYの『スパイダーマン』シリーズ

 

 

MCUの『スパイダーマン』シリーズ3作目の完結編。MCUフェイズ4の4作目(通算27作目)。トム・ホランド演じるピーター・パーカー/スパイダーマンの活躍としては5作目。
なんか知らんが日本だけ大幅に遅れて公開。ネタバレを防ぐためTwitterのミュートワード60個くらいブチ込んで護身した。だがミュートワードをそんなにも打ち込んでる時点で「○○が出てくるだろうな」と強力に予想できてるわけで、実際本作を観たらミュートワードに入れた奴が全部出てきた。本作の予告編……本作に限った話じゃないけど映画って予告編で観せすぎですよね。全部見せてるわけじゃないけど予告見たら「……って事は、きっとこうなるな。アイツもアイツも出てくるな」と予想した事が全部出てきたので正直あまり驚きがなかった。
アメコミヲタのケヴィン・ファイギが「ドクオクなど過去のヴィランとかすらも予告編で隠しましょう」と隠したがってた理由がよくわかった、ドクオクとかすらも隠しとけば他のアイツやコイツも予想できないので驚きが10倍になっていただろう。ちなみにSONYヴィラン以降の隠しキャラも全て予告に出したがってたという、僕は圧倒的にファイギに同意だがSONYのやりたかった事もまた老若男女向けの商売としては正しい。勘の良い人は予告観たら結末まではおろか本作のラストでピーターがどうなるか殆どわかってしまう。実際その通りだったが、それでも想像してなかった出来事も幾つかあった。
当たり前だがサム・ライミ版『スパイダーマン』三部作(2002-2007)、マーク・ウェブ版『アメイジングスパイダーマン』二作(2012-2014)のヴィランが出てくるため、それら5作を観ておく事も忘れてはいけない。『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)も、薄く関連する台詞が一個あるので観ておくことに越したことはないが別に観なくてもいい。旧作スパイダーマン5本は観たほうがいい。観なくても楽しめるように作ってるが、観た方が数倍面白い(『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)と一緒)。過去のシリーズからキャラがゲストでポンと出ただけじゃなくて本作は、旧作の各ストーリーの続きにもなっている。
ちなみに僕はサム・ライミ版が尋常じゃないくらい好きでした。特に1と2。
2000年代までは今と違って「作られるアメコミ映画の90%が駄作」という長いアメコミ映画冬の時代だった。MCUの中でも一番つまらない作品が「よく出来てるアメコミ映画だなぁ」と思えるほどに。その中で『スパイダーマン2』(2004)と『バットマン・リターンズ』(1992)は、未だに色褪せない傑作。「でもアメコミ映画にはこれがあるから……」というアメコミ好きの心の拠り所となっていた作品でもありました。あまりに何十回も観て好きだったが余り逆に、ここ10年くらい観てない。
アメージングなマーク・ウェブ版はサム・ライミ版ほど好きではなかったが、ピーターがスパイダーマン状態になってジョーク交じりでチンピラをボコボコにして屈辱を味合わせる要素は原作のスパイダーマンっぽかったし、ライミ版で描かれなかったグウェンの死を描ききったところ。あと『アメスパ2』ラストなど部分的には好きでした。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)
で初めてマルチバースの概念だけ説明して一旦はスカし、その後 『ロキ』〈シーズン1〉(2021)『ホワット・イフ…?』〈シーズン1〉(2021)など何作も何作もかけてSFやアメコミ好きな人にはお馴染みの「マルチバース」の概念をこれでもかと2年に渡って説明してきたMCUMCU外だけどSONYアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)でも思いっきりマルチバースを扱ってた)。『ロキ』あたりでは最終回になっても「マルチバースって何なの?」とか言う人がいて何でわかんないの?と思ってたが、本作公開時にはMCUが何年にも渡って展開していた「マルチバースとは何なのか」教育が行き届いてて、わからん人はもう居なくなっていた。既にお馴染みの過去スパイダーマン2シリーズのヴィランを予告で出したのが「あぁ、マルチバースってそういうこと!?」と一発で周知できた気がする。そう思うと予告で旧ヴィラン出したのは正解だったのかもね。
ちなみにトム・ホランドMCUの契約はここで一旦終わり。SONYは続けてトムホのスパイディ新三部作を作りたがってる、2年くらい前には「いつまででもスパイダーマンやりたい!」と言ってたトムホは本作完成した辺りで「そろそろ卒業したい、実写版マイルズ・モラレスとか出したらどう?」とピーター役継続に二の足を踏んでいる感じ?
公開初日なのでいつもより大きな字でネタバレあり感想、と書いとこう。

 

 

 

 

本作はドラマ『ホークアイ』(2021)と殆ど同時期の、劇中で2024年の冬の話。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)のラスト直後から始まる。
加工された立体映像を操るヴィランミステリオを倒したピーター・パーカー/スパイダーマントム・ホランド)だったが、ミステリオが作りニュースサイト「デイリー・ビューグル」の放送局長J・ジョナ・ジェイムソンJ・K・シモンズ)が広めたフェイク・ニュースによりピーターそしてスパイダーマンは”新ヒーローのミステリオを殺した殺人犯”として「ピーター・パーカーの名前と顔」……正体が全世界に知られてしまう。
殺人容疑をかけられたピーターだけでなく、母親代わりの叔母メイ・パーカーマリサ・トメイ)、恋人MJゼンデイヤ)、親友ネッド・リーズ(ジェイコブ・バタロン)らも共犯者として尋問されるが、異常な空間把握能力を持った盲目の敏腕弁護士マット・マードック(チャーリー・コックス)が1秒で不起訴にしてくれた。
しかしピーター達の生活はどうにもならないほど混乱しきっていた。
3人組のスキャンダルを嫌ったMIT大学は成績優秀な三人を不合格にする。三人組の人生終了状態(辛い展開を超ハイスピードのコメディで描いてる手腕が秀逸)。
進退窮まったピーターは、サノスの侵略から共に地球を護った元ソーサラー・スプリーム(至高の魔術師)のティーブン・ストレンジ/ドクター・ストレンジベネディクト・カンバーバッチ)を訪ねる(現在のソーサラー・スプリームはウォン)。
ストレンジは「全ての人からスパイダーマンの正体の記憶を消す」という世界規模の秘術を使おうとするが、身内の記憶も消えたら嫌なピーターに邪魔されて魔術は失敗……楽しい場面だが、この瞬間すべての運命は決定された。
魔術の失敗は時空に決定的な歪みを生じさせてしまい「スパイダーマンの正体を知っている者」を他の異なるマルチバースから、この世界に続々と召喚してしまった。
サム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズ(2002-2007)からノーマン・オズボーン/グリーンゴブリン(ウィレム・デフォーオットー・オクタビアス/ドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)、フリント・マルコ/サンドマントーマス・ヘイデン・チャーチ)を。
マーク・ウェブ版『アメージング・スパイダーマン』シリーズ(2012-2014)から、カート・コナーズ/リザードリス・エヴァンス)、マックス・ディロン/エレクトロジェイミー・フォックス)を。
マルチバースから、スパイダーマンヴィランがピーターの前に立ちふさがる―

そんな話。

 

 

 

過去のスパイダーマン映画シリーズ2本からやって来たヴィラン達。
MCUピーターからしてみると初めて見るヴィラン達だが我々観客はよく知る者達。
とりあえず彼らを一人づつ捕まえてドクター・ストレンジの魔法の檻に収監し、元の世界に戻そうとするピーターとMJとネッドのチーム。
……本作は情報量が多すぎるため凄いスピードで事態の推移が展開する、面白いに決まっている。ピーター達が困りまくる様を凄いスピードで見せていき、Netflix『デアデビル』(2015-2018)のマット・マードックがピーターたちを不起訴にする場面などは1秒くらいで完了する。……ちなみに本作は本来もう少し早く公開するはずだったので『ホークアイ』全6話 (2021)Netflix版『デアデビル』のマットの宿敵キングピン(ヴィンセント・ドノフリオ)が出てくる……より先に本作でもマットが出てくる展開をやってくれていたのだが、アホのSONYが日本だけ本作の公開を遅らせたので「キングピン出たしマットも出るかな?」と予想できてしまっていた。スパイダーマンだけじゃなくMARVELスタジオは公開日とか全部、計算してるんだから、しょうもない理由で公開日を遅らせるなよと強く思った(この公開日の遅れはデメリットしか生んでいない)。
ちなみに僕はMARVELコミックのキャラでも実写アメコミでもデアデビルが一番好きだしNetflix『デアデビル』(2015-2018)の大ファンだったので本作でマットの杖がズンッと出た瞬間に「おっ?」と思った0.5秒後マット本体が出てきて「おおっ!」と思い、更にMARVEL市民がヒーローに不信感を抱いた時に飛んでくるオブジェクトでお馴染みの「MARVEL市民レンガ」が飛んできたのをノールックでキャッチ!したシーンでも「おおおっ!」と喜んだ。でも『ホークアイ』全6話 (2021)でのキングピンの扱いが尋常じゃなく悪かった、そっちは素直に喜べなかった。
マットがピーターたちをどう弁護したのか詳しく観たいが本作はこんなところをじっくり描く時間はない。なにしろハッピーやベティやフラッシュや一作ごとに一人づつ増えていく変な担任教師などのサブキャラは各数十秒しか出番がない。猫を飼ってるコンビニのおじさんは……店だけ一瞬だけ出たがおじっさんと猫は出れなかった。このシリーズ、サブキャラも皆すごく良かったのだが全作の情報量が多すぎて皆、出番なかった、もっと学園生活が観たかった(そう思うとスパイダーマンはドラマ向きかも)。
とにかくスピードだけでなく、本作の特徴として物語を展開させるため、ストレンジやピーターの決断や行動が尋常じゃなく強引だという事もある。
事の発端となる「世界中の人間から『スパイダーマン=ピーター』という記憶を消す」というストレンジの魔法……原作で言うとメフィストがやって編集長が「魔法だからいいじゃん」と言って叩かれたアレ……とにかくこの世界規模の秘術をストレンジが始めた途端ピーターが「いや恋人MJの記憶はいじらないで!」と言いストレンジが「途中で止められないんだぞこれは!……よしMJの記憶はそのままに……」するとピーターが「ネッドの記憶も……」「あっメイおばさんの記憶もそのままに……」と邪魔をして中断しまくる。このせいで秘術が不完成になり時空が歪んでマルチバースからヴィランがやってきてとんでもない事になる。
観てるこちらからしたら「ちょっと待って、そんな危険な魔法まずやる前にストレンジがピーターにホワイトボードで説明して相談して……段取り全部決めた後にやるべきだろ」とは思うのだが、本作はそういった「強引な行動」が他のアメコミ映画に増して多い。『アベンジャーズ』(2012)の前半でヒーロー達が突然大喧嘩する時の強引さだ、あの時は「ロキの杖で精神を少し操られている」という言い訳があったが本作は……?本作ではストレンジが「共闘したから忘れてたが、こいつ……まだ子供だったわ」と言う。本作の強引さは「ピーターはまだ子供だから感情的ですぐ行動に出る」「ストレンジは天才でエゴイスティックだから思ったらすぐ行動してしまう」という2つの要素が悪い方程式で結びついてしまった。冷静に考えると、これら強引なのだが映画が面白いから多少の強引さは許される。
「そういえばサム・ライミ版もこんな風に超強引に話がハイスピードで進んでたな」と懐かしくなった。スパイダーマン映画はいつも生き急いでいる。サム・ライミ版は思春期ヒーローであるスパイダーマンの「力がない子供だし現実は思い通りにならないが時間はハイスピードで通り過ぎていく……」という様がストーリーやアクションにそのまま反映されていた。本作の強引な展開のあれこれもやはりトムホピーターの性急に事を進めたがる思春期特有の安定しない思考や行きあたりばったりな行動が、そのままストーリーやアクションに反映されている。
とはいえピーターやストレンジだけでなく、メイおばさんが今まで大して描かれなかった博愛精神を数十倍に増やしてとんでもない事になるのは唐突だったけど。
そもそも本作は「過去2シリーズの別世界のキャラクターを召喚させる」「そして彼らを元の世界に還す」「やっぱそれを止める」「止めて治療する」「そして還す」「ピーターの事を世界中に……」など、普通の映画ではありえない無茶苦茶な事を破綻なく次から次へと展開させていく話なのでメインキャラが多少強引に行動しないとこれらの事を実現させることができない。だから多少の強引さや粗には積極的に目を瞑って楽しんだ。
ドクオクを始めとするヴィラン達も、ピーターに対して割と聞き分けが良かったり突然ピーターに襲いかかったりと情緒が安定してない、特にヴィランの中で存在感薄いサンドマンリザードに至っては殆ど性格破綻者ってくらいアホ。だが彼らヴィランは「精神と肉体が安定してない」という説明が入るのでOKです。
それにドクオクにナノアーマーを奪われ、逆にピーターがドクオクのアームをハッキングして行動不能にする等、アクション面は流れるように展開していき面白い。
特に一番好きだったアクションは、中盤のトムホピーター vs.グリーンゴブリンですね。ビルを使って上下左右にアクションが展開して素晴らしかった。
最初はストレンジの指示でピーター&MJ&ネッドの仲良し三人組がヴィラン達をポケモンよろしくGETしていく。冷静に「何故、危険なヴィラン達を捕まえるのに普通の高校生のMJとネッドが必要なのか?」と考えると疑問が深まるが、まぁ彼女ら彼らは秀才だし信頼もしてるから納得できる。それに彼女ら彼らをラストバトルまで付き合わせるために必要な展開というメタ的な理由もある。
メイおばさんがヴィラン達を「彼らはヴィランではなく『困ってる人たち』」と言い出して元の世界に送り返すのを止めるという危険な優しさ。それがきっかけで「イアのピーターが世界一頼りになるストレンジをミラー・ディメンジョンに封印する」という展開も、普通に考えると異常な行動なのだがストレンジが居たら色んな事が解決できてしまうのでメタ的には一時的に退場して貰う必要がある。
とにかく、あらゆる要素が強引な行動で進むのだが、さっきも言ったように面白いのでOK。ピーターがミラーディメンジョンのオブジェクトを観て難しい計算をして「数学でストレンジを捕縛する」という展開もよくわからんが、面白いのでOK。

 

 

 

メイおばさんとラスト
ここから予告編にはないネタバレが増えます。
ストレンジに一時退場して貰ったピーターは、天才科学者ノーマン・オズボーンに助けてもらい、トニー・スタークのハイテク開発&工作製造マシーンを使ってタコのアームに支配されたドクオクの精神を元の立派な紳士に戻す機械、エレクトロの電力を消す機械、ノーマンの中からグリーンゴブリンを消す薬品、サンドマンリザードを元の男に戻す装置などを次々と発明する。
途中、ピーターの「第六感で危険を予知する」スパイダーセンスが長めに発動する(ここはホームカミングで覚悟を決めたピーターの場面を思い出して凄くカッコいい)。
善良なノーマン・オズボーンの中の邪悪なグリーン・ゴブリンの人格が目覚めてしまった。ゴブリンの悪のスピーチに感化されたエレクトロやサンドマンも建物を破壊して脱出。一足先に善人に戻ったドクオクはストーリーの邪魔だからビルから落ちて生死不明になる。
メイおばさんはノーマンの中からゴブリンを消す薬品を持って逃げる。
やばい!メイおばさんが危ない!
ゴブリン治療薬を持って逃げるメイおばさんをゴブリンから護りながら逃がすピーター。しかしスパイダーマンと互角のパワーを持ち、悪知恵や殺人への躊躇がないゴブリンに優しいピーターは苦戦する……この戦闘シーンは凄く良かった。
ゴブリンのグライダーに轢かれた上にパンプキン爆弾の爆風に吹っ飛ばされるメイおばさん……、グライダー突撃シーンの雰囲気があまりにシリアス過ぎて「やばい……メイおばさん死ぬ……」と思った。スローモーションにならないのがよりヤバさを感じさせる。あまりにもメイおばさんへの殺意が高すぎる、非常にざわっとする覚悟を迫られる流れ。
メイおばさんはフラフラしながら「大いなる力には大いなる責任が伴う」と例の台詞をピーターに告げる。やばいやばい!
ちなみに原作や旧作では「パワーを得たピーターが慢心してたら愛するベンおじさんが殺されて死に際にピーターに言う名言」ね。これを聞いたピーターは自分の甘さを悔いて一生、利他的な正義に身を投じる事になる、ヒーローになるためのイニシエーション(通過儀礼)的な台詞。MCU版ではベンおじさんが既に死去してしまっているし、この台詞も今まで出てきた事がなかった。ベンおじはサム・ライミ版、マーク・ウェブ版と2回も死んで「大いなる……」言っており「なんでベンおじさんすぐに死んでしまうん?」というムードが充満していたためMCU版でベン叔父が既に退場してても誰も気にしなかった。「大いなる……」もあまりに有名過ぎて「逆に言わんでいいだろ」というムードだったのですっかり忘れていた。
油断して忘れていたが、どうやらMCU世界ではメイおばさんが「死んでピーターを成長させる」というベンおじさんの役割だったようだ。
グライダーに轢かれ、爆弾で吹っ飛ばされ「大いなる……」言って「逃げる前に休ませて……」と言って、おばさんを触ったピーターの手にメイの血がべったり付いている(レイティングを上げたくないMCUでは流血自体が珍しい、MCU世界での流血は致命傷に近い)数分で死亡フラグを5つも立てて、既に5回くらい死んだも同然のメイおばさんは本当の死を迎える。
この後、2人の旧スパイダーマンが出てくるのもデアデビルが出てくるのもわかってたしピーターの事を全ての人が忘れるのも予想してたが、しかしまさかメイおばさんが死ぬのは予想してなかったので驚いた。しかもこんなに完全に死んだ雰囲気の迫真の死に顔のドアップが長い時間スクリーンに大写しになる(トニーが死ぬ時に似てた)。
メイおばさんは原作でも「MARVEL世界の聖域」という感じで「絶対に死なないキャラ」という印象だった……いや、もちろん作品やゲームによっては死ぬこともある(だが後で生き返ったりして、総合的には死なない印象が強い)。
これは思いのほかショックでした。
ただメイおばさんが死んだからってだけでなく、観終わって何時間か経っても「何でメイおばさん死んだん?」と釈然としないものがあるというのがある。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でナターシャが死んだ時も若干、腑に落ちないものが未だにあるが、同じ様に腑に落ちないものがあった。
メイおばさんやナターシャが死ぬ、という展開自体には文句ないが殺し方が納得いかない感じだ。
「『大いなる……』を死に際に言う」年上キャラは、ピーターを真に利他的なヒーローとして成長させる役割なので、メイおばさんが死ぬのが『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)のクライマックスとかならわかるんですよ、「メイおばがベンおじ役になってピーターを覚醒させたんだな」と思うだけだから。
だけどMCUピーターは、師匠のトニー・スタークと出会って『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で失う、そんなトニーが「MCUにおけるベンおじさん」の役割だと思ってたし、そもそもトムホスパイディーは『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)で一人で重い瓦礫を持ち上げて敵であるバルチャーをも救ってたし、キャップと戦ったりアベンジャーズに参加してサノスと戦ったりミステリオに正体バラされたり色々してたから「MCUピーターは、身内が死ななくても真のスパイダーマンになってるんだろう」と思ってたんですが、メイおばさんのくだりを見て「えっ!?あんだけ色々してて、MCUピーター、まだ真のスパイダーマンになってなかったの?」と呆気に取られた。どうやら『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)がオリジンなのではなく。ホーム三部作+ゲスト出演したMCU作品3作を足した合計6本が長いオリジンだったようだ。
ピーターは、どうしても油断して大事な人が死んで「大いなる……」言われなきゃ通過儀礼が終わらないのか?ストレンジが「そういえばこいつ、まだ子供だった」と繰り返し言うからピーターの子供っぽいところがメイおばさんの死で抜け、今度こそ大人のヒーローになるためにメイおばさん死んだのか?MCU版は何となく「ピーターの貧困」「ピーターの身内の死」などの不幸オンパレードがなくても物語を描ける、楽しく新しいピーターだと思ってたので本作で不幸が一気にピーターを襲うので突然、死神に捕まったような……軽い気持ちで人間ドックに行ったらガンが見つかったかのような気持ちでした。
最初の方で「過去の2つのスパイダーマンシリーズをリアタイで観てる人ほど面白いはず」と言ったが、このメイおばさんに限っては逆で、コミックも合わせるとメイおばさんって見た目や演じる人は変わってても……30年くらい?下手したら自分の両親よりもメイおばさんを見てる時間が長いのでちょっとダメージがデカかったです。逆に「ノーウェイホーム観に行く日までに過去のスパイダーマン5本を数日で一気観して準備できたぞ」って人の方が素直に本作を楽しめてるよね。
この後、突然ポータルを開けるようになったネッドが、ピーター・パーカー3/スパイダーマンアンドリュー・ガーフィールド)、ピーター・パーカー2/スパイダーマン(トビー・マグワイヤ)らを召喚しトリプルスパイダーマンとなってヴィラン達と闘う……という20年越しの制作会社を越えた『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)以上の一度きりの大ネタが終盤である。
ラストバトルはMCU集団戦でよくあるつまんない原っぱでのシバきあいではなくスパイダーマンのスイングアクションを活かした自由の女神での上下左右の立体的な戦いで、とても良かった。ミラー次元でのvs.ストレンジ戦もコンドミニアムでのvs.ゴブリン戦も重さを感じる戦いで良かったしアクションは全体的に良かった。そして、ありとあらゆるスパイダーマン三作またいだファンサービスもたっぷりあり何度か行われるスパイダーマン座談会も楽しい実写スパイダーバース展開……だったが、正直なところ観終わっても「メイおばさん殺す必要あった?」という事が最後まで頭に残ってトリプルスパイダーマンの楽しいシーンや感動すべきシーンで味がしませんでした(※追記:後日、三回観てたっと感動できた)。
落下する『ピーターの恋人』を今回は助けた!」等の本来なら感動する場面でも「今回は助けたね……それよりメイおばさんを……」という感じでメイおばさんが邪魔になって後半は只、起きてる出来事を目で見て確認してるだけみたいな感じになってしまいました。将来的にメイおばさんやベンおじさんを助ける映画も作って欲しいくらいだわ。
また、メイおばさんが利他的で献身的な強固な精神を持ってるというのも原作通りだが、MCU版メイおばさんはボランティア団体で働いてるって設定以外は「明るくホットなセクシー熟女」という印象しかなかったから唐突でした。このマリサ・トメイ演じるメイおばさんは「ヴィランをさっさと送り返すスイッチ押したら?」と言っても違和感ない。こんな献身的なメイおばさんを描くなら過去二作で、もう少し描くべきでした。
そういえばアメージングなスパイディーがマスクを脱いでアンドリュー・ガーフィールド顔を晒した時は映画館が「ざわっ……」として楽しかった。
まぁ色々あって、サム・ライミ版とマーク・ウェブ版のヴィランたちは「治療」されて「スパイダーマンと殺し合う」以外の運命を手に入れて元の世界に還っていく。これは「悪人の悪事を病気だと診断して身を削って治療する」「悪を憎んで人を憎まず」的な尊い行為で良かったと思う。実写版スパイダーバースというだけでなく5作品それぞれの、より良い未来が見れたというのも良い。
そして主人公、トムホ演じるMCU版今までで最も恵まれていたスパイダーマン……ピーター・パーカーは家族、恋人、親友、知り合い、ヒーローの戦友、学歴、進学、国籍、貯金、社会保障番号、知り合いからの思い出、住処……自分の記憶とスパイダーパワー以外の全てを失ってホーム三部作は幕を下ろすNo Way Home
最初ストレンジが展開しようとしていた「『スパイダーマンの正体がピーターだったという事を』皆が忘れる」どころではなく知り合いの記憶からピーター・パーカーの存在自体を忘れている。という恐ろしい結果になった。
幾ら何でも可哀想過ぎる。原作でもなかなかない悲惨な運命。
「術者ストレンジですらピーターの事を忘れる」という強烈な魔術だったが「スパイダーマン」の事は皆覚えてるんだよね?だから皆、スパイダーマンの事は「NYクイーンズで犯罪者を捕まえてYOUTUBEで話題になり空港でチーム・キャップと戦いバルチャーを捕まえサノス軍と戦って地球を救ってミステリオ殺人疑惑があったがマットに弁護されて自由の女神像で正体不明のヴィラン達とシバきあってJJジェイムソンに憎まれてる正体不明のヒーロー、スパイダーマン」の事は覚えてるんだろう。
従来のスパイダーマンと言えば、ピーターはとにかく不幸に次ぐ不幸で「スパイダーの蜘蛛は曇らせのクモ」ってくらい酷い目に遭うのがスパイダーマンだが、さっきも言ったがMCUスパイダーマンは明るい世界なんだろうと思ってたら、この寂しいラスト。
メイおばさんに続き、このラストもまた「ここまで酷い仕打ちの必要ある?」と疑問が残った。それとも「この曇らせこそがスパイダーマンの本質」だとでも言うのだろうか?。
ピーターはMJとネッドが記憶を失う前の約束通り2人に会いに行くが、ピーターはMJの額の傷を見て今後の2人に危害がいく事を案じてMJとネッドに自分のことを明かす事を途中で止めて去る。
MJの首には前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)でピーターがプレゼントしたネックレスがある。だから将来的にはピーターを思い出す希望だけは残ったもののトムホの楽しいスパイディがこんな寂しい終わり方すると思ってなかったので動揺しました。
クロスオーバーやサプライズ等の「豪華な装飾」を取り外した本作のあらすじは「病院から脱走した精神異常者を、困ってる人は誰でも救いたいメイおばさんが匿う。最初はおとなしかった精神異常者は精神に異常をきたして匿ってくれたおばさんを殺す。だがピーターは怒りを抑えてメイおばさんの想いを受け継ぎそんな精神異常者をも救う。だがピーターは全てを失う。そして誰もそれを知らない」って話だと言えなくもない。
これはこれで一つの筋の通った主張なので、この筋書き自体には文句はない。ただ寂しい。
そして「如何にもスパイダーマン」って感じの鮮やかな赤と青のコスチュームで、如何にもスパイダーマン的なアパートの窓から助けを求める人の所に飛んで終わる……。
ピーターのブランニューデイな続きが気になる。続きは大学生編かな?
次の監督はプレッシャーですね。
ゼンデイヤが本作について「この結末は寂しすぎる……」と悲しんでたのもわかる。
なんだか「明るくて今までとは違うと思ってたMCUスパイディも曇らせに捕まってしまった……」という絶望感が凄い。新三部作の大学生編が面白かったとしても三作目でピーター死んでマイルズに受け継いで終わりそうで怖い。
でも本作も別に筋が通ってないわけじゃない、「大いなる力には大いなる責任がある、だから困ってる他人には親切にすべきだ……という行動の結果たとえ人が死んでも行いを変えない、それによって救われる人がいれば犠牲は無にならない」というのは一貫してるので。最終的には大勢の人を救い、だがピーターは貧困の一人ぼっちで通りに投げ出されそれでも他者を救いに行く……それはきちんと筋が通ってる。……ただ、トムホピーターがこんな寂しい感じになるとは……と思うだけで。
「親離れや幼馴染と疎遠になって大人になる成長」のメタファーなのかもしれない。

MCUが得意なクロスオーバーやサプライズは勿論いいし、メイおばさん殺しやラストの展開に納得いかん部分もあったが傑作なのは間違いない。

 

次は、5月4日に『ドクターストレンジ イン・ザ・マルチユニバース・マッドネス』(2022)。本作とは逆で日本は2日早い公開。これはタイトル発表時された時にフェイズ4で一番楽しみにしてたやつ。Disney+作品は何をいつやるのかよくわからん(正直興味なくなってきました)

 

 

 

 

※追記(2022.11.15)

原題:Spider-Man: No Way Home The More Fun Stuff version  監督&脚本:ジョン・ワッツ 製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル 原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ 制作スタジオ:MARVELスタジオ、コロンビア ピクチャーズ 製作国:アメリカ 上映時間:157分 シリーズ:マーベル・シネマティック・ユニバースMCU)第16作目。MCUの『スパイダーマン:ホーム』シリーズ第3作目。SONYの『スパイダーマン』シリーズ


二ヶ月前に、一日だか数日だけだか公開されてた、11分の映像が追加された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム エクステンデッド・エディション』(2022)観ました。
劇場公開時は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム THE MORE FUN STUFF VERSION』(2022)という名称だった(ややこしいから変えるなよ)。
本作を観たのは劇場公開、配信開始、それと今回の三回目なので初見時のショックも擦れて飲み込みやすくなり「すごく面白いし感動するしピーターは不幸にした方が映えるのはわかるが、ここに来て突然メイおばさんの博愛思想を急に押し出してピーターの成長のために殺すのはやっぱ納得できないな」という「メイおばさん殺し」はまだ納得いかなかったが、ピーターの事を世界が忘れるのはアリだと思った。そこ以外は好きかな。さすがに三回目なので初見では味わえなかったMJらとの三人組やスパイダーマン三兄弟の場面は素直に感動できた。
このバージョンで追加されたのは「ベティの楽しい校内放送」が大幅増量、「マットによるハッピー弁護」「スパイダー三兄弟の楽しい会話」……など割と他愛もない楽しいシーン追加が多かった。
最大の要素は最後の最後のポストクレジットシーン後、「ベティが、スマホで撮られた写真や映像で楽しく振り返る『高校の思い出』の校内放送。その全ての記録からピーターの存在が消されてる」というものだろう。

映像ではピーターが見切れてる映像になっているし、写真ではピーターの顔に飛翔する鳥が被さって顔が見えない。殆どホラーに近い演出。
その直前に「食堂でこけて食事をひっくり返しても存在しなくなったのでピーターが助けてくれない」というサム・ライミ版『スパイダーマン』(2002)からインスパイアされた渋い匂わせも良かった。ドクオク達ヴィランズを連れたピーターとメイおばがエレベーターで「気まずい時間」を真顔で過ごすギャグもサム・ライミ版からのインスパイア。
僕的には正規版より、この長いバージョンの方が良かった。
問題のラスト「忘れられたピーター」の悲惨さ哀しくて良いし、ベティやフラッシュやマットやメイおばさんや旧ヴィランや旧ピーター達……など好きなキャラの追加が多いのも嬉しかった(それでなくてもサブキャラの出番が少なすぎたし)。一作目の恋人リズのカットが増えてたのも良かった。
次また本作を観る時は、毎回このバージョンで良いと思った。
「これだけの大作なら2時間半くらい平気だろうし、何で、このバージョンを正規版にしなかったのか?」と考えたけど、本作は「メイおば死亡→ピーター忘れられる」という展開が辛すぎたので更にピーターの悲惨さに追い打ちをかける悲惨なポスクレの公開に躊躇したんだろう。
でも色んな展開踏まえた僕にはこのバージョンが丁度よかった。
だから未見の人には「正規のバージョン観た後で、この長いバージョン観る」というのが丁度いい鑑賞方法かもしれない。だからSONYの判断で良かったのだろう。
今後のスパイダーマン、現在、燃え尽き症候群で?休養中のトムホが5作分のスパイダーマン契約をしたという噂がある。噂については取り上げない事にしてるが多分ほんとだと思った。

 

 

そんな感じでした
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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)/予想を裏切り期待に応えるMCUの到達点🎨 - gock221B
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)/なんで真田広之すぐ死んでしまうん?🎨 - gock221B
『ホークアイ』全6話 (2021)/大部分とても楽しく観てたが最後にガッカリして全てどうでもよくなるというワンダビジョンと同じパターン🏹 - gock221B
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)/老兵サム・ライミが御法度の流血を解禁して情報量はそのままに僅か2時間足らずで描ききった。だけど彼女を救ってよ👁 - gock221B

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)/元々スパイダーマンの運命が好きじゃなかったからマイルスが抵抗するのは嬉しい。内容もクオリティも良いんだけど一つ一つの場面が長くて疲れた🕷 - gock221B

 

 

『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)/情報量多くて疲れたが傑作でしょう。キャラはプラウラーとグウェンが特に良かったです🕷 - gock221B
『デアデビル』〈シーズン1-2〉(2015-2016) 全26話/シーズン1はストーリーもワンカットアクションも全て傑作/ついでにS2と『ディフェンダーズ』👿 - gock221B
『デアデビル』〈シーズン3〉(2018) 全13話/S1以上の傑作。映画のMCUにないものが全てある👿 - gock221B
『ヴェノム』(2018)/2000年代の古いアメコミ映画みたいだったがトム・ハーディと元カノカップルの魅力が高かった⚫ - gock221B
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021)/前作とほぼ同じ話だったが主人公の元カノの婚約者ダンの魅力がすごい⚫🔴 - gock221B

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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム エクステンデッド・エディション | ソニー・ピクチャーズ公式
スパイダーマン: ノー・ウェイ・ホーム (2021) - IMDb
 

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