原題:Doctor Strange in the Multiverse of Madness 監督:サム・ライミ 脚本:ジェイド・バートレット、マイケル・ウォルドロン 製作総指揮:スコット・デリクソン 制作:ケヴィン・ファイギ 原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ 音楽:ダニー・エルフマン 製作国:アメリカ 上映時間:126分 シリーズ:『ドクター・ストレンジ』シリーズ、マーベル・シネマティック・ユニバース
👁『ドクター・ストレンジ』(2016)の続編……MCUフェイズ4の5作品目、MCU通算なら28作目(Disney+作品も合わせると35作品目)。
2019年のサンディエゴのコミコンで「今後のMCUのフェイズ4」が発表された時、僕が一番楽しみにしていたのは『ワンダビジョン』全9話 (2021)から本作に続くミスティック路線だった。
👁前作『ドクター・ストレンジ』(2016)は、ストレンジの愉快な修行やミラー次元の視覚的面白さや強大すぎる敵ドルマムゥをスコット監督好感の非常に面白い倒し方するなど……面白い場面も色々あった一定以上の面白さはあった作品で僕も好きだが「今ひとつパンチに欠けた作品」だったのは間違いない。ストレンジ役がベネディクト・カンバーバッチに決まった時「これはダウニーJrのアイアンマンに匹敵する大人気キャスティングになる!僕が好きなキャップ危ない!」と危険視してたけど現実では前作が思いのほか地味だったせいか、それほど人気出なかった(僕が知る限りストレンジの人気が出たのは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)で、トニー・スタークと良い感じで組んだりタイタンでサノスとタイマンした時から)。
前作は、ストレンジの師匠エンシェント・ワン役のティルダ・スワントン……は素晴らしかったのだが、チベットの男性の道士だったはずのエンシェント・ワンが欧米の白人女性になってしまったのは、チベットを国や歴史ごと地球上から消そうとしてるが最大の映画顧客でもある中国……へ、MARVELが忖度したようにしか感じなかった(MCU総監督のファイギは良心の呵責を覚えたのか1、2年前に誰も訊いてないのに突然「エンシェント・ワンのキャスティングでは間違いをした……」と一言だけ呟いた。
前作のスコット・デリクソン監督はガチのストレンジオタで、連日ドクター・ストレンジのツイートばかりしていた人だが2018年11月のカリフォルニア州の大規模な山火事で家が全焼した。その時にドクター・ストレンジが首から下げてる”アガモットの眼”だけを握りしめて脱出したほどのストレンジのオタ。
When evacuating for a fire, you only have time to grab a handful of things.
— N O S ⋊ Ɔ I ᴚ ᴚ Ǝ ᗡ ⊥ ⊥ O Ɔ S (@scottderrickson) 2018年11月15日
The original Eye Of Agamotto is safe. pic.twitter.com/EwlIbe2BgO
デリクソン監督に続編も監督させてあげたいが前作が「あと一歩か二歩」足りなかったのは事実。そこで監督がスコット・デリクソンから大御所監督サム・ライミに変わった。どちらもホラー映画が多い監督というのが共通している。僕も生まれて初めてレンタルビデオで借りたの『死霊のはらわた』(1981)だったし、『スパイダーマン』トリロジー(2002~2007)も当然好きだった。サム・ライミはスパイダーマンだけでなくドクター・ストレンジも好きな監督(故スティーブ・ディッコが描くキャラが好きなのか?)。スコット・デリクソンは製作総指揮に回った。デリクソンは次はストレンジのヴィラン”ナイトメア”を出したがっていた、そのアイデアが本作の”悪夢”要素になったんだろう。MCU責任者ケヴィン・ファイギはサム・ライミの『スパイダーマン』(2002)ではADみたいな下働きしていた若者だった。サム・ライミからしてみれば「映画『スパイダーマン』シリーズの時チョロチョロしてたMARVELオタの青年に優しくてたら、いつの間にか映画界の天下を獲った大覇権者になって今度はワシが起用された!ラッキ0ー」という感じ。若者には優しくするのが正解だ。若いというだけで未来。あとファイギはFOXの『Xメン』シリーズでも同様に下働きしていた事を考えると、本編では感慨深い要素が多い。
👁ドクター・ストレンジの歩みとしては『ドクター・ストレンジ』(2016)で魔術師になり、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)でソーを手助け、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)ではサノスを倒しうる14000605分の1の確率にアベンジャーズ達を導いて地球を護った。そして『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)ではピーター・パーカー/スパイダーマンを手助けしてマルチバースに手を付けてしまった結果、ピーターの人生は滅茶苦茶になりドクター・ストレンジも含めた全ての人はピーターの事を忘れた。
また我々が知るストレンジとは関係ないが『ホワット・イフ…?』〈シーズン1〉全9話 (2021)では、マルチバースのストレンジが死ぬ運命に囚われた最愛の女性クリスティーン・パーマーを救いたいがあまり世界を破滅させてしまう(どうやらどの世界においてもストレンジとクリスティーンは結ばれない運命のようだ)、道を誤って闇落ちしたドクター・ストレンジ・スプリームだったが”ガーディアンズ・オブ・ザ・マルチバース”のリーダーとしてインフィニット・ウルトロンから多くのマルチバースを救った。
👩🏻🦰本作のもう一人の主人公は情緒不安定な女性ワンダ・マキシモフ。
彼女は『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)でヴィランからアベンジャーズへとターンしシンセゾイドの”ビジョン”と出逢う、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)では一般人に被害を出してしまい元々弱いメンタルが更に揺らいでトニーに軟禁されるが脱走してスティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカに助太刀した。愛するビジョンと共にサノス軍と闘った『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)では最愛のビジョンを自らの手で破壊しなければならなくなった上に敗北して自らも灰となって五年間チリとなる。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で蘇った彼女は激怒してサノスをあと一歩のところまで痛めつけた。初の主役作品『ワンダビジョン』 (2021)では、夫を失ってまで命懸けで闘っても仲間は誰もワンダをフォローせず、政府は夫の遺体を使って兵器利用してたので彼女は遂に絶望のあまり田舎町”ウエストビュー”で「夫ビジョンと双子の息子トミーとビリー」をカオスマジックで作り出し、町民全員を自分が主人公の「シットコムの脇役」として魔力で無理やり演じさせ、偽りの幸せな日々を味わっていたが結局、家族ごと全て消えて世界から本格的に嫌われた。ワンダは魔女アガサを倒し更に強力な魔女”スカーレットウィッチ”となり、全てを失った彼女は別のマルチバースにいる双子しか心の拠り所がなくなり禁断の魔導書”ダークホールド”に手を伸ばした……。
MARVELコミックのキャラが出てるとか小ネタは省略して映画の感想だけ書きます。
公開二日目だからネタバレ少なめ。サプライズキャラについては書いてない。
Story
ニューヨーク、元神経外科医の魔術師、スティーブン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)が『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)でスパイダーマンを手助けして無限に存在するマルチバースに手を付けて5ヶ月後……ストレンジは「異世界の自分が少女を怪物から逃がそうとしているが怪物にパワーを奪われそうになるので仕方なく少女を犠牲にしようとしたら怪物に殺される悪夢」を見る。
ストレンジは最愛の女性である救急救命医クリスティーン・パーマー(レイチェル・マクアダムス)の結婚式に虚しく参列していた。
すると今朝の夢に出てきた少女が怪物に追いかけられていたのでストレンジは兄弟子のウォン(ベネディクト・ウォン)と共に怪物を撃退する。
少女の名はアメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス)。彼女はマルチバースを横断する能力を持っていた。彼女は「人が睡眠中に見る夢はマルチバースの別の自分の記憶」だと言う。
ストレンジは、怪物の身体にカオスマジックの特徴であるルーン文字が刻まれていた事からアベンジャーズのワンダ・マキシモフ/スカーレットウィッチ(エリザベス・オルセン)を訪ねた。ウエストビューでの事件以来、ワンダは失ってしまった双子トミーとビリーと幸せに暮らす夢を毎晩見て虚しい起床を繰り返していた――
そんな話。
初登場のヤングヒーロー”アメリカ・チャベス”は劇中では”アメリカ”と呼ばれてるが文章に書く時「国としてのアメリカ」と紛らわしいので僕は何時もチャベスと書いてるので今回もチャベスと書く。
本作は内容盛りだくさんっぽいのに上映時間が2時間くらいだと発表された時「盛りだくさんっぽいけど、それくらいで描けるのか?」とファンは少しざわめいた。だが普通の映画で第一幕にあたる「日常描写やメインの登場人物紹介」などはアバンから前半の僅か数分で終わってしまう。いわゆる日常描写は多分……結婚式での2、3分くらいしかなかったと思う。残りはずっとラストバトルのような展開の中でストーリーが展開される。
サム・ライミは『スパイダーマン』トリロジー(2002~2007)等でも、面白い場面やエモーショナルな感情の爆発シーンを繋げて要らんシーンの省略が凄くて、まるでピーターの人生10年を数日に圧縮してるような濃縮感だった。それを思い出した。一番面白いときのサム・ライミ。
そしてサム・ライミの映画は都道府県で喩えると絶対に「大阪」。『死霊のはらわた』シリーズ、『ダークマン』『スパイダーマン』トリロジー、『クイック&デッド』『スペル』、制作を熱心にしてたハリウッド版『呪怨』シリーズ、どれも「大阪感」が強い。過剰な映像表現やベタな結末を好むところや味付け濃いところ……監督作じゃないけど呪怨とか完全に吉本新喜劇だし。本作のホラーなワンダも勿論、濃い大阪感を感じた。
フェイズ4の『ブラック・ウィドウ』(2021)、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)、『エターナルズ』(2021)、基本MCU、アメコミどっちものファンというのもあるけど全部楽しんだけど、本作と比べてそれらを思い出すと全部かったるいとしか思えなくなりました。ついこないだのサプライズ大盛りで色んな情報量が凝縮してた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)は、確かに濃かったけど、それでも本作のほうがずっと上だと思いました。
MCUの中で、その後のストーリーテリングの流れを変えた作品……『アイアンマン』(2008)、『アベンジャーズ』(2012)、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)などの一本だと思ったし今後のMCU映画が楽しみになりました。
この情報量の割に時間が短く思える本作の冒頭「クリスティーンの結婚式」で前作でのライバル医師が思いのほか長時間ストレンジと会話してたのは何だか嬉しかった。これ以降は延々と闘い続けるので結婚式でライバル医師と花嫁のクリスティーンとの会話は「あ、そういえばこの人は魔術師の前に外科医スティーブンだった」と、貴重なスティーブンの人間っぽい日常が観れる一コマ。ストレンジが「普通の人間社会」と繋がっていた部分は、もうクリスティーンしかなかったし。
ちなみに結婚式を中断した怪物”ガルガントス”は実際のところ只の”シュマゴラス”。90年代のカプコンのMARVEL格闘ゲームでカプコンが謎の起用して何作も出演したから世界の30~40代男性にだけ有名。”シュマゴラス”の名前の著作権は他の小説から勝手に借りたものだったので仕方なく過去のコミックに一瞬出た単眼タコ型モンスター”ガルガントス”の名を充てがわれた、誰がどう観てもシュマゴラスだが。漫画『BASTARD!!』でビホルダーの名前が使えず”鈴木土下座右衛門”と改名されたような事か。だが本来シュマゴラスはかなり強いのだが割とあっさり死んだ、強さ的にはガルガントス。たぶん今後もシュマゴラスの名前は使えないだろうし僕の脳内のこいつの名前も”シュマゴラス”から”ガルガントス”にゆっくりと変わった。
そしてガルガントスの身体にルーン文字があったので最強のカオスマジックの使い手であるワンダに力を借りようと訪ねたストレンジ。
……しかし、アベンジャーズでもあった地球を代表するスーパーヒーロー、ワンダこそがチャベスのマルチバース間を移動するパワーを狙っていた黒幕だった。
まだチャベスの話を殆ど聞いてないのに「ところでアメリカは……」とうっかり名前を言ってしまう「……失敗した、まだ名前聞いてなかった笑」というヴィラン仕草は面白かった。
ストレンジやウォンを頂点とする魔術師の梁山泊”カーマタージ”に単身、攻めてくるワンダ・マキシモフ……いや緋色の魔女スカーレットウィッチ。
こんな感じだが、このワンダが攻めてくる場面は、他の……たとえばソニーのヒーロー映画だったら多分ラストバトルに相当する。そこに冒頭10分いってないあたりで到達し残りのストーリーは、このラストバトルの最中のようなチェイスや闘いが続く中で同時に展開される。だから情報量が異常に多い割には実時間は短く満足度は充分あった。サム・ライミは子供の頃から大好きだったが正直、お歳だし最後に撮った映画がイマイチで眠ってたので期待は少なかったのだが長大化の一途を辿っていたMCU作品をここまでタイトにしつつ満足させる新たな物語作りを提示してくるとは驚きだった。
それで居て、昔から良い意味で古臭かった怪奇映画のようなホラー描写などの珍妙なカットも本作の怪奇っぽさをアップしてて良かった。
それでストレンジ&チャベス&ウォンは、残りの時間ずっとスカーレットウィッチと闘い続ける。
スカーレットウィッチは制作陣の話では、サノスやキャプテンマーベルをも超える「エンド・ゲームのラストバトルの場で一番強い個人」だった。更に禁書ダークホールドでマルチバースにまで手を伸ばしておりストレンジ達に歯が立つ相手ではない。
スカーレットウィッチの目的は愛する双子の子供、現世の子供は消えてしまったのでマルチバースで別の自分と入れ替わって双子と暮らしたい「その為ならどんな犠牲も厭わない」という「母性で気が狂った女性キャラ」になっている。
『キャリー』のキャリー、『リング』の貞子のようなホラー映画の非人間女性キラーのような恐ろしいキャラになってしまったワンダはゾンビや幽霊のような挙動でターミネーターのようにチャベスを追ってくる。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で、ホークアイに導かれてヒーローになった女の子がこんな事に……、思わず武藤に敗れた高田にかけられた「前田が泣いてるぞ!」の叫びのように「ホークアイが泣いてるぞ!」という気持ちになった。だがよく考えるとヒーローになった『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)の時も「兄のピエトロを殺したウルトロンをブッ殺す!」という私怨であったし、その強さが目立った『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でも「夫のビジョンを殺したサノスをブッ殺す!」という私怨の方が利他的なヒーロー性より多く出ていた。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)でワンダを危険視して軟禁したトニーの彗眼だったのか?彼女の元々弱かったメンタルは、少し幸せがある度に深く突き落とされてかなりヤバい状態に保たれていた、途中まではホークアイがフォローしてくれていたが、サノスとの闘い以降それもなくなった。
そもそもワンダの自体、コミックでも本格的に目立つ時というのは発狂してアベンジャーズを何人も殺害した『アベンジャーズ・ディスアッセンブルド』や暴走したワンダが世界の全てを自分の望むものに書き換えてしまった挙げ句に9割のミュータントのパワーを消失させた『ハウス・オブ・M』などやらかした時の方が有名。もちろん熱心なファンからしたら「ずっとヒーローだったし、それらはたまに起きた事件に過ぎん」と言うかもしれないがファン以外がワンダと聞いて思い出すのは「発狂してとんでもない事する女性」という印象。たまに本気で怒る人も居るが僕は割と好き(面白いことになるから、この映画も)。MCU版ワンダを演じるエリザベス・オルセン本人も割と「『ハウス・オブ・M』みたいなのやりたい」と言ってたし(何故なら一番目立つから)そういう意味では今回の役は願ったりだったのかもしれない。
本作を観る前は「予告だとワンダがヴィランっぽいが、でも悪堕ちストレンジも出そうだし、やっぱりナイトメアや違う奴が隠されてるのか?それともマルチバースのプロフェッサーX率いるイルミナティが実は悪いバージョンの彼らでラスボスになるのか?」と読めなかったが最初から最後までワンダがヴィランだった。
それでも「ダークホールドに侵されてヴィランになってる」のか、実はマルチバースのスカーレットウィッチに入れ替わられてるのか、それとも正体は別人……といった展開もありえたが本当に我々が観てきたワンダ本人だった、『ワンダビジョン』全9話 (2021)のポストクレジットシーンでダークホールドを読んで不穏な空気は出していたが、こんなに最初から最後まで完全なヴィランになるとは思ってなかった。「禁書ダークホルドを使えば影響を受けてダークになる」……的な雰囲気ではあるが、はっきり言ってワンダの元々の願望が増幅されているだけだしダークホールドのせいではなくワンダの持っていた過激さだろう。
前半、ワンダはカマータージでサノスから地球を護った正義の魔術師軍団を惨殺しまくる。MCUの少ない欠点の一つとして「撃たれたり刺されたりは勿論、眼をえぐられても血の一滴も出ない」という部分があったが、サム・ライミはそのアホらしさに呆れてMARVELスタジオに交渉したらしく「血が一滴も出ないMCU」の禁を破り本作のキャラはどんどん血が出る(予告でワンダが返り血を浴びてるの観て期待が高まった)。女性魔術師は自分の命と引き換えにダークホールドを破壊した結果、黒焦げになって死ぬ(これもまた彼女の死やワンダの悪事を悲しむ一方で「あっMCUなのに黒焦げ死体が映ってる!」と嬉しかった)。
だが、そのダークホールドは実は写本だった。スカーレットウィッチは本物の場所をウォンに吐かせるため倒れている魔術師に拷問する。
僕は魔術師が何人か死んでたよりも、この拷問してるの観て「あ、もうワンダはアベンジャーズに絶対戻れないな……」と思った。「あの時はダークホールドに操られてた」という設定が後で付けられても無理だろう。
その後もワンダは本当に、MCU世界とは別のマルチバースとは言え有名な正義のスーパーヒーロー達をグチャグチャに惨殺しまくる。マルチバースとはいえ名前もキャラもあるヒーローを殺した数は既にサノスを越えている。
登場から7年間応援してたが同時に闇落ちも期待していたが(目立つから)実際に後戻りできなくなってしまうと悲しい気持ちもある、だが同時に血まみれでターミネーターのように追ってくるワンダは美しい。ワンダはパワーが強すぎてヒーローよりヴィランの方が本領発揮できる……というのは原作も同じ。ヒーローのワンダはふわふわ浮いて赤いモヤモヤを投げつけて、下手に強いから何かの拍子に頭を打って気絶する役割しかない。だがヴィランだとこのように大暴れさせる事ができる。
こうして観るとイルミナティは、今後も使ったりファンサービスだけで無くワンダに試し斬りさせるために出したんだろう。何しろワンダは冒頭からストレンジ&ウォン&チャベスと闘っているが、この3人は殺すわけにはいかない、そこで出したイルミナティだ。「囁くだけで山を吹っ飛ばす男……はい殺した!」「世界一の天才軟体パパ……子供には母親がいるからお前は死ね!」「いつまでだってやれる奴をいつまでもやれなくしました」「キャプテンマーベルと同じくらいパワーを持った奴も倒した!」「世界最強のテレパスを彼の土俵で倒した!」などと、イルミナティの各キャラの強さは事前に見せたりMCU世界の同一キャラや別のMARVEL映画で大体周知されてるから、それをワンダが次々と敵の得意分野で潰していくという展開。メインキャラのストレンジやウォンやチャベス達を惨殺するわけにはいかんのでイルミナティを思う存分惨殺してワンダの強さと怖さを見せる事ができた。「大物ヒーロー達だけどマルチバースの違う人達だから幾らでも殺してOK」というのは非常にコミック的でもあった。公開前に噂されていた「トム・クルーズ演じるマルチバースのトニー・スターク/アイアンマン」は出なかった。だが出なくても良かった気がする。トムのトニーとか、魅力的過ぎて殺されたら惜しいし……もし出るならMCUの正史世界……アース616に来て欲しいくらいだ、だが来たらトム版『アイアンマン』が始まっちまう。いや俺は始まってくれたら嬉しいけどそうなると「じゃあキャップやナターシャもマルチバースから連れてくりゃいいじゃん」みたいな空気になったら良くない。マルチバースから616に来るのはあまり良くない。もし次にトム版アイアンマンが出るならシークレット・ウォーズ的な大イベントの時のマルチバースのヴィラン側としてくらいが丁度いいかも。
話は前後するがストレンジとチャベスは、スカーレットウィッチを倒す方法を探すべくマルチバースを次々と横断する。ストレンジはその過程で「赤信号で横断しピザボールが流行っていて植物が豊富な、イルミナティがサノスを退けた世界」に辿り着く。ストレンジはこの世界でも最愛の女性クリスティーン・パーマーと出逢い行動を共にする。この世界の彼女はイルミナティで科学者をしていた。
ストレンジ&チャベス&(マルチバースの)クリスティーン、現世でワンダと闘うウォンは二転三転と試行錯誤しながら、スカーレットウィッチを追い詰め、野望をくじく。
ここまではホラー風味のファンタジー映画を観てる感じだったが、この最終段階でストレンジが冒頭の伏線回収してスーパーヒーローとしての資質を見せる。「あっそういえば、これMCUのヒーロー映画だったわ」と思い出した。原作でもそうなりがちだが一作目もサノスとの闘いでもストレンジは正義のために戦ってはいたが彼の視界は広すぎるし能力も強すぎるせいかヒーローというより舞台装置みたいなキャラという印象だったが、本作では終盤、確かにヒーローとしての存在感を見事に出した。
チャベスもヤングヒーローとして見事なデビュー。両親や本人がレズビアンというキャラであるため映画が公開されない国があり、演じてるソーチー・ゴメス氏はSNSで不当に叩かれている、叩くなら同性愛を悪と断じて本作の公開を禁止した自国の政府を叩けばいいのにチャベス役を演じてるだけの10代俳優を叩くとか最悪だし本当にヒーロー映画が好きなのか疑問だわ。彼女はパンチでマルチバース間に星型のポータルを開けるという唯一無二の能力を持つが「星型のポータル」って漫画っぽすぎて間抜けに見えがちな能力だがエフェクトと音がカッコいい処理されてて良かった。原作だと飛行や怪力も持ってたけど、そうするとスーパーすぎるのでこれくらいで良い。だけどチャベスのママ二人だけじゃなくチャベスもレズビアンって事を隠してたのは性的マイノリティ大嫌いなディズニーだからか。
あと、もはやアベンジャーズを勧誘したりして最近ストレンジより他MCU作品に出てる気がするウォンの安定感も凄かった。vs.ガルガントス戦でも相当、身軽な大柄感。
”イルミナティ”はさっきも言ったようにワンダに試し斬りされる今回限りの使い捨てキャラだったが(リードとかは同じ配役で本物が出るのかな?)、予告にも出ていたエグゼビアは結構かっこよかった……と言っても普通に騙されて殺されただけだが白い空間で「どうなるんだろう」感はワクワクした。やはりあの90年代アニメでお馴染みだが今度出てきそうにないわざとらしい黄色い椅子が見れたし。
でもピエトロはまた出てこなかった、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)、『ワンダビジョン』(2021)、本作……と出れそうなチャンスでも出ない、もうないな。まぁワンダがこんな状態で出てきても悲しいからもういいわ。
ホワイトビジョンも出てこなかったのは『ワンダビジョン』(2021)観てない人の「え?何この白いの?死んだんじゃ?」と話がよりややこしくなるからだろう。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で死んだと思われてるコールソンが助けに来なかったのと同じ。
本作の公開直前、MARVELスタジオ公式は予告やTVスポットでやたらとイルミナティ中心にネタバレし始めて「ファイギはネタバレ嫌いなのにどうしてネタバレしまくってるの?やめて」と観るのやめたけど本編見たら理解した。『ワンダビジョン』(2021)でのピエトロ、『ホークアイ』全6話 (2021)でのキングピンみたいに肩透かしさせて炎上したくなかった為だったんだね。エグゼビアのファンとか怒るかもしれないしね。観終わったら公式がネタバレしたがってた気持ちが理解できた。
今回のイルミナティは使い捨てだが、ポストクレジットのキャラとそれを演じる俳優は興奮した、確か彼女は自分で頑張りたくてMAEVELの誘いをずっと断ってたはずだが遂に受けたのか!と興奮した(ちなみに僕はフェイズ3頭あたりでこの人はキャプテンマーベル役なんじゃないか?とか妄想してました)。早くもストレンジ三作目は一番楽しみになった。
ライミといえばホラー定番の悪夢は思わってないENDからの数分で克服とか、ブルース・キャンベル使い良かった、最後のブルース・キャンベル、アメスパがマスク取った時よりウケてた。
続作もサム・ライミだろうし単純に楽しみ。ストレンジ続編とか『ブレイド』などのミスティック系やオカルト系ヒーローものが楽しみですわフェイズ4は。なんならアベンジャーズ的な次のクロスオーバー大作もサム・ライミでいい。
だがそれにしても今後ワンダはどうなるのか……『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) のヘラみたいな曖昧な死に方したけど……。死んだかどうかよくわからない。
だけどチャベスやマルチバースの自分自身に説教されて心も折れたし、本当に終わり?こうなると悲しいものがある。『ワンダビジョン』 (2021)でも完全にやってる事はヴィランで、ヴィランだったアガサがむしろヒーローみたいな事してたが、本作ではいよいよもって罪もない人や正義のヒーローを惨殺しまくってしまった。
マルチバースで双子を育ててる綺麗なワンダはいたが、やはり616バースの我々のワンダが救われるべきだ。だがどうすればいいのかわからない。
だが仮に生きてて出てきたとしても、もう『ホワット・イフ…?』〈シーズン1〉 (2021)の闇落ちストレンジみたいに永遠に何かを管理する役割くらいしか許されないだろう。
とりあえずワンダに封印されたアガサのDisney+単独作『アガサ ハウス・オブ・ハークネス』があるから、ここで少しでもフォローされる事を期待するしかない。
本作でのサム・ライミの手腕(30分以上短くてもエンドゲームやノーウェイホーム並みの長い作品と同じくらいのボリュームを出せた)や、ストレンジやチャベスやウォンのヒーロー性、ターミネーターみたいな恐ろしいスカーレットウィッチには満足した。だがワンダがこのままで終わるのは悲しい。
このようにワンダが発狂して強いヴィランとして大暴れするところをずっと観たかった部分はあるが、ワンダ自身は子供を失って暴走する悲しきモンスターで、そんで描き方は完全にバケモノ扱いだからね、ストレンジがチャベスを勇気づけるために「元気出せ、あの魔女のケツを蹴り上げに行くぞ!?w」とか言って……ストレンジとチャベスはそれでいいけどワンダ、マジでバケモノ扱いじゃん!……と同時に悲しくなったね。「こういう女がキレたら怖いぞ~笑」というのは非常にサム・ライミが無邪気にやりそうな事でもあるし。
それを観たかったし面白かった気持ちと、ワンダ本人に同情するという矛盾した気持ちが未だに同居している。ファンって勝手なもんだね。
何だか、小学校のクラスの陰気な虐められた女の子が発狂して暴れてるのを観て喜んでるようで罪悪感がある。だが「ワンダ可哀想、幸せになって欲しい」「闇落ちして大暴れしてヒーロー連続殺人して欲しい」という相反する気持ちが同時に自分の中にあり、どっちも譲りたくない。この問題は解決しないが、ワンダはそんな複雑な感情を呼び起こさせて定着させる希少なヒーロー……いやヴィランだと思うし依然として好きだ。
本作は『ワンダビジョン』 (2021)を観てなくても理解できると思うが、ワンダが何故発狂したのかという流れまではわからないので本作だけ観ただけじゃやはり理解が薄いと思う。
最後に反省して後始末したのは偉いし、これで終わりの可能性が高いけど、それでも何か救いが欲しい。アガサだけが頼りだ(記憶と能力を失ったワンダがアガサに弟子入りするとか)。もしくはトミーとビリーが成長してアース616のワンダを助ける?後はインカージョンによるシークレット・ウォーズ的な大イベントで何らかの方法で現れて闘う?その次はX-MENとの合流しかない(ワンダ&ピエトロの初期設定はマグニートーの娘)とにかく、これで終わりでは哀しすぎる。絶対に良い形で再登場して欲しい。
次のMCUは……本作公開日と同日に『ムーンナイト』(2022)が最終回。まだ観てない。そして6/8にDisney+ドラマ『ミズ・マーベル』(2022)開始、※MARVELの中でもベスト3に入るくらい大好きなヤングヒーローです。映画は7/8に『ソー ラブ&サンダー』(2022)が公開。
次は、明日あたり?更新予定の『ムーンナイト』(2022)の感想でお会いしましょう。
そんな感じでした
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Doctor Strange in the Multiverse of Madness (2022) - IMDb