gock221B

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『ファイティング・ファミリー』(2019)/わかりやすくしようとしすぎたがWWEの光と影をピュー氏の演技力一発で明るく描いてて良いです👩🏻

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原題:Fighting with My Family 製作国;アメリカ 上映時間:108分
監督&脚本&製作:スティーヴン・マーチャント

 

 

 

これはデビュー以来好きなフローレンス・ピュー主演、しかもプロレスの話、しかもWWEの実話って事で楽しみにしていた。
コロナで大打撃を受けてるエンタメ業界だが、WWEは期間限定で過去数十年間の放送を無料で配信したり、無観客試合を逆手に取って映画みたいな試合「シネマティック・マッチ」(深夜の墓場で闘って敵を墓穴に落としてショベルカーで土かけて埋めたり)したり「WWE本社ビルの一階から屋上へと闘いながら登ってって最後に生き残ってアタッシュケースを取った者が勝ち」というキン肉マンファミコンゲームみたいな試合を組んだりしてる。WWEはアフターコロナを生き残れそうだね、トランプとも繋がりあってアメリカ政府とも仲いいし……。
主演のフローレンス・ピューはデビューして僅か数年なのに『呪われた死霊館』『ミッドサマー』など話題作に多く出て『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でアカデミー賞ノミネートされ、最速でスターへの階段を登っている。今月公開されるはずだったMCU『ブラック・ウィドウ』でいよいよ大作エンタメも抑えてスカヨハレベルの完全体のスター女優になると思われたがコロナでブラック・ウィドウは延期中。まぁ別に彼女だけストップしてるんじゃなくて世界のすべてが一時停止しているので問題はない。高い演技力と顔芸それにチンチクリンのボディが魅力的。
本作は、WWEで活躍したイギリス出身の女性スーパースター・ペイジのデビューまでを家族との絆とともに描いた伝記映画。
ペイジが活躍してた時(2012~2018年)は全然WWE観てなかったので彼女の試合は全く観てないし彼女の事もよく知らんかった。だけどネット記事とかで「何だか今までのWWEには居なかった黒い格好で肌が白いスリムな女子レスラーが人気みたいだなぁ」と存在だけ知ってた。そんでそれまでのWWEの女子レスラーは〈DIVA〉という呼び名で、彼女たちの殆どはセクシーなお色気要員だったり男子レスラーと色恋沙汰を繰り広げるマネージャーだったりと、所謂、男子レスラーの添え物に過ぎなかった。このペイジが人気出たあたりから「DIVA」という呼称はなくなり男子レスラー同様に〈スーパースター〉と呼ばれるようになった、という情報だけは観てなくても知ってた。ただほんの10年前の近過去なのにも関わらず女子レスラーの地位は非常に低く、まともなストーリーまともな試合は番組でやらせてもらえてなかった(と言っても過去のセクシーなDIVA達がプロレス全然出来なかったわけじゃなくて番組収録じゃない興行では普通に試合してた)。
ネタバレあり。

 

 


イギリス人の主人公、後のWWEスーパースターとなる〈ペイジ〉本名サラヤ・ナイト(フローレンス・ピュー)は、両親と二人の兄、全員プロレスラーというプロレス一家に生まれた。父は元強盗、母も元ジャンキーだったがプロレスを通して更生して元気になった。彼ら一家は地元の体育館で小規模なプロレス興行を行ったり、プロレス教室で近所の若者たちにプロレスを教えたりして生計を立てており貧しいながら幸せに暮らしていた。
長男は服役中だが、サラヤは次男と組んで地元を盛り上げていた。
ちなみに父親役はニック・フロスト、サイモン・ペグの相棒の歯茎の長い大柄と言った方が早いか。最近はこういった気の良い大柄おじさん役を多くしている。母親役は『ゲーム・オブ・スローンズ』サーセイ役でお馴染みのレナ・ヘディ
ある日、サラヤと兄は憧れのWWEのトライアウトに参加。合格したのはサラヤだけ。
以降、サラヤの苦難のトレーニングの日々と、地元で兄がいじけていく様子を描く。
サラヤは子供の時に観てた人気ドラマ『チャームド 魔女三姉妹』の主人公の名前から取って「ペイジ」を名乗り始め、NXT(WWEのスター候補を育てる二軍的な団体)に入団して特訓の日々。ペイジはプロレスは得意だったものの自分のキャラを押し出したりマイクパフォーマンスが苦手だった(WWEの番組で、ストーリーを紡いでいくためのマイクパフォーマンスはプロレス技術と同じかそれ以上に重要)。また、ゴスっぽい黒尽くめの格好を野次られたら半泣きになって固まってしまうほどメンタルが弱い。
どうやら「私はゴスっ娘キャラで行くぞ」と、黒い服やメタルが好きそうな格好してたんじゃなく、単純に自分の趣味だったのね。それを野次られて半泣き。シクシクでワロタ。
他の女子選手は、黒尽くめのペイジとは違い金髪に日焼けしたセクシーボディ。当時DIVAと言えば全員このスタイルだったからね。
NXTで上手くいかないペイジは、自分の個性である黒髪&黒づくめ&青白い肌を止めて金髪&日焼けボディという有象無象と同じスタイルにしてしまう。ひと目で「自分を見失った」事がわかる、わかりやすい迷走。
同時期、妹は入団できたのに自分は落とされた兄も、本心では妹を応援したいのだが、やはり自分が惨めで、イギリスの田舎で徐々にやさぐれていく。
そんな迷走中だったペイジと兄は、ペイジ里帰りの際に衝突。何やかんやあって仲直り。立ち直った兄は「名プロレスラーを育てる事のできるプロレスラー」という自分の資質を受け入れてプロレス教室を再開。そしてペイジはWWEの一軍の番組「RAW」で華々しいデビューを迎える。その生放送をイギリスの田舎で観て大喜びするナイト一家やプロレス教室の仲間たち。そして今までは家族や世間の風潮に流されてただけで自分というものが無かったペイジだったが遂に「社会に居場所がない黒づくめで日焼けもしてない変わり者のプロレスラー」という自分だけのキャラクターをつかみ取り、苦手だったマイクパフォーマンスで喝采を浴びスーパースターになる……というハッピーエンド。
最後は、WWE製作だけあって本物の観衆や会場、タイタントロンの前でフローレンス・ピューがズンズンと入場してくるのは不思議な感じだ。
ちなみにペイジは今現在まだ28歳。本作のラスト(2014年)にWWEデビューして2018年に首を負傷し、レスラーとしては随分早い引退を迎えた。現在はGM(「番組の責任者」という役割のタレント)として活躍中、僕が好きな日本人女子選手のカイリさんがRAWでデビューしてASUKAとカブキウォーリアーズ結成した時に一瞬だけマネージャーしてたね。

 

 

この映画は「女子プロレスラー・ペイジと彼女の家族との愛」「WWEという団体の素晴らしさと厳しさ」といったものが同時に描かれる。そういえば今後は映画産業にも打って出たいらしいWWEが出資してるからね。
そして「プロレスとは」「WWEとは」といった事を異常にわかりやすく描いている。
観始めて気づいたが、この映画のターゲットは多分、WWEを観てる子どもたちなんだろうなと思った。観てもらえばわかるが物事や人物を凄く単純化して描いている。
「ペイジは確かに大人気だったらしいが、WWEレスラー伝記映画を作るにしても何でこんな若い女性をチョイスしたんだろ」と思ってたけど、そういったWWE入門として描いたり、今的な内容を描くのにうってつけだったんだなと思った。
サラヤをトライアウトで採用したのはヴィンス・ヴォーン演じるトレーナーのオッサン。彼は彼女の才能に目をつけ、その後もずっと厳しく時には優しく見守る。というか彼はもうひとりの主役と言ってもいいほど重要な裏方キャラとして出ている。ペイジがデビューするまでに世話になったバックステージの実在した人たち、そして大勢のジョバー(自分は輝けないがスターを輝かせる職人レスラー)を合体させてWWEのバックステージを擬人化させたかのような、そんなオッサンとなっていた。このオッサンの演技がすごく良い。彼はペイジの兄をWWEに入団させない「彼にはスターになるに必要な『何か』がない。その何かとは何だ?と訊かれても説明できない。とにかく彼にはない。彼は絶対にスターになれず潰れて惨めな人生を過ごす。だから絶対に入団させない」彼は、ほぼWWEの運命の神みたいなキャラなので彼が言うからにはそうなのだろう。
そしてペイジはトライアウトで、元WWEスーパースター「ロック様」ことドウェイン・ジョンソン(ドウェインが自分自身を演じている)とも出会った。出会った時のロック様はトライアウトに受かる秘訣を訊かれ、全盛期のマシンガンのような罵倒をペイジに浴びせかける。呆気にとられるペイジにロック様は笑いかけ「これがプロレス、これがWWEだ」と言う。誰でも一瞬でプロレスが理解できる良いシーンだ。彼は、この場面だけでなく「彼女を突然RAWに昇格させる偉い人」としても出てくる。だが幾らロック様と言えどこんな役割はしてないだろう。この「本作におけるロック様」は実在の人物ではあるが、ハンター夫妻やビンスやWWE幹部などの権力を持ったWWEの人たちを一体の人物に擬人化した存在なのだろう。裏方のオッサン同様WWEの神、WWEの妖精みたいなキャラ。
そして「ロック様と裏方のオッサン」は「スター性のあるペイジとスターを作り出せる才能はあるが自分はスターになれないペイジの兄」という対比にもなっている。
WWEのあまりに多くの色んな要素を、ペイジと兄、ロックと裏方おじ、二組の対比にして描くのは、あまりにも物事を単純化されすぎてるせいで終わりの方では「良い話だけど、何だか奇跡体験アンビリーバボーとかバラエティ番組の再現VTR見てるみたいだなぁ……」と思ってしまった。キッズムービーに思えたのはそのせいかも。
だけど本作の色んな要素は凄く気を遣って描いており特に欠点はなかったよ。
たとえば挫折するまでのペイジは「今のWWEで持て囃されるのは、自分みたいなプロレス巧者じゃなく、グラドルみたいなチャラチャラしたエロい女ばかり」と見下していた。だがセクシーな彼女たちも悪役として描くのではなく、彼女たちがそんな格好してるのはチャラチャラしたいだけじゃなくて社会の風潮や当時のWWEや客層に適応しようとした結果だと暗に示してたのが良かった。彼女たちはペイジに「貴女、私達を見下して私達のこと知ろうともしなかったでしょ?」と言う。そしてペイジとセクシーな彼女たちは和解してお互い得意な事を教え合う……。
ペイジが活躍してた時、観てないのでペイジのおかげかどうかは知らないけど、ペイジが活躍した辺りから女子レスラーの地位が男子並に向上した。その辺や引退とかも描かれるのかなと思ってたがデビューまでだったね。
そんな感じで特に欠点のない良い映画ではあったんだけどさっきも言ったように凄くわかりやすくしようとし過ぎたために映画的な深みとかは全くないんですよね。
今回もまたフローレンス・ピューの演技は本当に良かったね。演技のこと何も知らんので演技についてどう書いていいのかわかんないけど、彼女が傷ついた場面とかだと、昔の少女漫画で目が真っ白になってバリーンとガラスの割れる音がしたりするじゃん、そんな演技。何だかもう彼女の表情だけがこの世の全てみたいな感じになる。顔芸ってほど顔をクシャクシャにするわけじゃないのに何でそんな事になるのか女優って不思議だ。そして何度も言うようだが、特別に背が低いわけでも太ってるわけでも顔がでかいわけでもないのに絶妙にチンチクリンに見えるのが不思議だ。手が短いからか?よくわからないが金払ってでもずっと見ていたくなる、奇妙な魅力のある今一番好きな女優だわ。今後のピュー氏も楽しみ。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Fighting with My Family (2019) - IMDb

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『デューン/砂の惑星』(1984)/あまりに善悪別れすぎてて上手く行き過ぎると修正された歴史や誰かの妄想みたいに見える。ハルコネン好き🐛

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原題:Dune 監督:デヴィッド・リンチ 原作:フランク・ハーバート
音楽:ブライアン・イーノTOTO 製作国:アメリカ 上映時間:137分

 

 

 

最近ひさびさにゲームをはまってたので更新が滞ってました。
フランク・ハーバート原作のSF小説デューン』シリーズ第一部の映画化。今年の年末にドゥニ・ヴィルヌーヴによって新たに映画 化された『Dune(邦題未定)』が公開される事に沿ってか、このリンチ版がNetflixで配信されたので久々に観た。
小学生の時にTVでやってるのを観たが1mmも覚えていなかった。リンチファンだが一般的なリンチのファンが観たがる作品といえば『ブルーベルベット』『ワイルド・アット・ハート』『ツイン・ピークス』シリーズ、『ロスト・ハイウェイ』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』あと今年の頭にNetflixで突然配信された『ジャックは一体何をした?』などのアート性の強い短編映画などの、50年代的な明るいアメリカ像の虚飾が犯罪や悪夢、異界の住人などによってグチャグチャになり、それを朴訥とした田舎者や老人や動物が純粋な瞳でじっと見てる……というリンチが好き勝手に撮った作品なので、この雇われ監督で撮らされた上に本人も批評家も一般人も全員が失敗作だと言っている『砂の惑星』は、かなり観る気が起きないものなので実に数十年ぶりくらいに観た(だが失敗作とされているがカルト的な人気もあり最近レストア版Blu-rayBOXが発売された)。
このリンチ版の前にホドロフスキーが中心となって多くの天才クリエイターが集まって映画化しようと何年も奔走していたが頓挫してしまった。その時どんな映画を作ろうとしてたのかはドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』(2013)で伺うことが出来る(このドキュメンタリーは単体の映画としてデューンホドロフスキーの事あまり知らなくてもめちゃくちゃ面白いのでオススメ)。ちなみに悲願だったデューン映画化を取り上げられて悲しみに暮れたホドロフスキーは、自分の代わりに天才リンチが撮り上げた本作を観てあまりの駄作ぶりに元気を取り戻したそうだ。
2000年にTVドラマ化もされたらしいがそっちは観てない。というかそもそも原作も読んでない。子供の頃、何度か読もうかと迷った事あるが「砂がいっぱいなのかぁ……」と読む気になれなかった(どうやら少年期の自分にとって「砂がいっぱい=憂鬱」というイメージだったのだろう)。
どうでもいいけどオフィシャルな邦題が『デューン/砂の惑星』『砂の惑星』の二通りあってどちらが正しいのかよく分からない。Blu-rayには「デューン」が付いてるから、付いてる方を取った。

 

 

 

映画が始まると高貴な女性みたいな人が出てきて怒涛の勢いでデューン世界の解説を始める。重要な人物なのだろうが原作読んでないし特に調べる気もないので誰なのか未だに知らない。何だかよく知らないが重要なキャラらしき女性が第四の壁を破ってドアップで作品世界の説明を観客に対して行う。この独特の雰囲気は、リンチも好きなエド・ウッドっぽい。だが、映像なしの口頭でもって凄い勢いで専門用語を連呼されてもとても覚えてられない。今、感想を書いてても「何か言ってた」という記憶しか無く何一つ覚えていない。次にやっと本編が始まったので「説明パート終わったか」と思うが、またしても舞台となる複数の惑星や慣習などの説明をナレーションが始める!既に周知の原作ファンなら「知ってる知ってる」と思うのだろうが、原作未読の者としては「知らん知らん!説明やめろ!」と、ここで「デューン」世界と自分の間の距離がめっちゃ離れてしまう厳しい滑り出し。こんな思いさせられるなら説明一切なしでどんどん進めた方がよかっただろう。知らん人がこんな一気に説明されても何一つ入ってこないし既知の人には不要なだけ……つまりは全く無駄な時間だ。いざ本編を見ると幼児でもわかる単純化な話だったので尚更いらなかった(だけど今「説明が全く入ってこん!」という事を書いていて凄く楽しかった。という事はこの入ってこなさすぎる解説2連発は「知らん知らんw」と思わせるエンターテイメントを俺に提供してくれたことになる)。
本作公開当時は今よりも映画製作会社主導で映画が作られてた時代で、編集権はリンチに無く映画製作会社がバンバン編集したのでこんなに解説ナレーションが入ってるのかな。
超能力を発揮できる麻薬〈メランジ〉を宇宙で唯一、発掘できる砂漠の惑星〈アラキス〉、「デューン砂丘)」の異名を持つこの惑星を舞台に光と闇の闘いが描かれる。
名家アトレイデ家と、その宿敵である醜悪なハルコネン家の対決。そこに、砂丘に住む超巨大芋虫〈サンドワーム〉、超能力をもつ女性種族とか奇妙な風習などといったオリジナリティ溢れる要素が絡み合う。
麻薬で超能力を得れたり、独特の宗教的精神世界感やエコロジー的思想など60年代的なムードをビンビン感じる。『ホドロフスキーのDUNE』でホドロフスキーが幻の自作を語る時はこれらドラッグとか超人思想などの60年代的要素をもっと大々的に押し出したかった様子が伺えた。『ホーリー・マウンテン』とか観ればわかるがホドロフスキーって完全にそういった思想の人だしね。本作ではそういったカウンターカルチャー的要素はほぼ感じなかった。ながら観してたせいもあるが麻薬の採掘とかも、今Wikipedia見て初めて知った。本編でメランジがどうとか言ってたっけ?よく覚えてない。一言でいうとフォースだけあるスター・ウォーズみたいな感じ?
本作は誰でもわかるように作られた80年代アメリカエンタメ的な映画で、主人公サイドのアトレイデ家はどこまでも高潔かつ勇敢で外見も完璧な美男美女ばかりで(特に主人公を演じるカイル・マクラクランとそのお母さんが美しすぎる)、悪とされるハルコネン家は残虐かつ不潔で卑劣で全員めっちゃ醜い(スティング以外)。そんな汚らわしいハルコネン家が高潔なアトレイデ家の軍を卑劣な策で滅ぼし、奇跡的に生き延びた主人公(カイル・マクラクラン)が砂丘のゲリラと共に反乱軍を結成してハルコネン家を打倒する……という、かなりわかりやすいスター・ウォーズより更にわかりやすい勧善懲悪の英雄譚。そしてラストバトルは主人公とスティングのナイフによる一騎打ち(どんな大規模な映画でも最後に男同士のタイマンでしばきあいするのがアメリカ映画のお約束だ)。
原作でもここまで綺麗に善悪がパッカリ別れてるのかどうかは知らないけど現代の視点からすると極端に分け過ぎな気がして真面目な視点では乗りにくい。たとえば近年で言うと、放映中は記録的なほど超絶的な人気で皆が話題にしてたが最終章が放映されて以降まったく息してない『ゲーム・オブ・スローンズ』を思い出してみよう。主人公格〈スターク家〉は確かに高潔な人物が多かった、しかし「スターク好きだけど、戦乱の世に生きるには、ちょっとお人好しだったりお花畑すぎやしない?」と思わせるものがあった。そして宿敵ポジションの〈ラニスター家〉は必要以上に狡猾かつ残虐で憎たらしかったがカリスマ性のある悪役が多かったり高潔な精神を持つティリオンやジェイミーなども居た。本作のハルコネン家の場合、ただただ醜悪で、一人だけ美しいスティングにしても北斗の拳のモヒカン程度の精神しか持ち合わせておらず、ここまで人間同士の闘いなのにも関わらず善悪の差が激しいと「これって、アトレイデ家がハルコネン家を滅ぼした後、ハルコネン家を貶めるために歴史修正して書かれた記録の映画化かな?」という気分になってきて、素直に応援できないものがある。
だが、肥満で歩けないので常に宙に浮いている大柄中年男性ハルコネン男爵は醜悪さが突き抜けており、ここまでいくと清々しいものがあって凄く良いキャラだなと思った。実は策略家っぽいし。いつも汗まみれで醜いあばた面をドアップで見せつけてくるし、半裸の金髪美少年を殺して美少年の血まみれで陶酔したり、アトレイデ家の王妃を捕えてその美しい顔に唾を吐きかけたり、普段の会話シーンでも演じてる俳優がわざと唾を撒き散らせながら台詞を話したりと悪趣味さが徹底している。この辺はリンチが伸び伸びしてるのを感じられた数少ない箇所だ。あまりに嫌な奴過ぎて逆に好きになった。
そのハルコネンの息子?らしきハルコネン似の大柄中年男性も常に巨大な肉を手に持ってムシャムシャ喰いながら歩くという中世の蛮族みたいだし、ハルコネンと汗まみれ肉まみれでお互い爆笑しながらハグしていて楽しそう。
ハルコネン家で唯一美しいスティングも、主人公との一騎打ちでスーツから姑息な刃をまろび出させるセコい一手も『ジョジョの奇妙な冒険』のDIOの血の目潰し(好き)みたいで最高!
また中世ヨーロッパとスチームパンクを思わせる美術が本当にカッコいい。科学が発達した世界なのに木製の家具?みたいなのが多いのも最高だし、カッコいいSF映画の美術としてはトップレベルにいけている。ブライアン・イーノによる荘厳なテーマ曲も渋い。あとガラスに入ったナメクジみたいな異星人とかバリア張ってナイフファイティングしたり苦痛の箱に手を入れる試練など、奇妙な文化や習慣などがどれも面白い。
そして、気のせいかそれら架空の風習を行う登場人物を演じてる役者たちが「台本に書いてるからやってるけど、ところでこれ何なん……?」という遠い目をして演じてるのもまた良い。彼らのぼーっとした表情は、朴訥とした純粋な人や老人や障碍者を好むリンチっぽさを感じた(ナメクジ異星人の目をやたらアップにするのもリンチっぽかった)。
要するにストーリーはともかくディティールや美術や音楽などといった装飾は一級品だった。
アトレイデ家がハルコネン家に嵌められる前半までは割と丁寧に描いてて「結構、普通にいいじゃん」と思ったが、主人公が砂丘の反乱軍を率いてからはTVドラマの数話分をダイジェストで見せてるみたいな進行でもったいないものがあった。
アトレイデ家没落からの主人公が率いる反乱軍が苦もなく悪のハルコネンを滅ぼすくだりは、あまりにもホイホイすんなり進み、おまけに主人公がタイマンでスティングをぶっ殺して真の超人として目覚めて終わるもんだから「これはハルコネン家に陥れられ砂漠で死ぬ寸前の主人公の妄想かな?」と思ってしまった。
世の中思い通りにならないことが常なので、あまりにすんなり行く展開だと妄想にしか見えなくなってきがち。
それにしても空気を抜かれたハルコネンが「ぐわああああ!」と絶叫しながら回転しつつ宙を舞い、そのまま「ぐわああああ!」と絶叫して回転しながら巨大サンドワームの口の中に「スポ……」と入っていく凄まじい死に様が最高だった。無駄無駄ラッシュを喰らわせられた勢いでゴミ回収車にブチ込まれたチョコラータみたいなもんだ。ここまで主人公サイドの良いように事が運ぶと、絵本みたいでスッキリするし微笑ましいものがある。
確かに失敗作だろうがカルトになる奇妙な魅力は確かに感じた。
ホドロフスキーの思い通りに、もしくはリンチの思い通りに撮って上手く行けばSFの名作となっていた世界線もあったのかもしれん(もちろん実在しない絵に描いた餅にすぎないので、それらも失敗作だった可能性もあるが)。
「ビジュアルは良いし一見の価値はあるんだけど何か真面目に観る感じじゃないな」という一抹の残念感は、本作同様に大作小説原作で金かけて作った、これまた80年代映画『帝都物語』(1988)に通じるものがある。バブルな制作費で才能ある人をかき集めたけど制作会社の口出しでヘンテコな作品になった感じが似てるのかな。でもそういった「空っぽな宮殿」みたいな映画を観て豊かだった時代に思いを馳せるのも悪くはない。

🐛ちなみにヴィルヌーヴによる新作『Dune』(2020)では、主人公をシャラメ、砂丘の女性テロリストをゼンデイヤハルコネン男爵をMCUマイティ・ソー』シリーズで俺の好きなサブキャラ、セルヴィグ教授の人が演じるらしい。セルヴィグ博士のハルコネンが楽しみだな。というか俺、醜悪すぎるハルコネン男爵が好きだと今気づいてきた。まぁ公開はコロナで来年の春とかになる気もするけども。二部作を予定してるらしいから、一本目はアトレイデ家が滅ぼされるところまで描く感じかな?

 

 

 

そんな感じでした

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「ブルーベルベット (1986)」/久しぶりに観たがやっぱよかった👂 - gock221B

ツイン・ピークス The Return (2017)」全18話
#1
 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #15 #16 #17 #18(終)

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Dune (1984) - IMDb

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『ノット・オーケー』(2020) 全7話/「ライフイズストレンジ」+「キャリー」って感じで良かったです👩‍🦱

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原題:I Am Not Okay With This 企画ジョナサン・エントウィッスル。クリスティ・ホール
製作総指揮:ショーン・レヴィほか 原作:チャールズ・フォースマン 制作局:Netflix
製作国:アメリカ 配信時間:各話約20~30分、全7話

  

 

 

グラフィック・ノベルが原作の青春ドラマ(〈グラフィック・ノベル〉は正確な定義付けされてないみたいだけど個人的には「ヒーローもののアメコミ以外の、少し文学的な大人向けのアメリカンコミック」だと思ってる)。
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のベバリー役の子役女優ソフィア・リリスが主人公、その男友達役として同じく『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のラビの息子のユダヤ系少年役だった子が出ている。
本作同様にNetflix制作で「子供」「田舎町」「超能力」などを扱った『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の監督が本作の制作総指揮をしており本作もストレンジャー・シングスに少し似てるかも(80年代が舞台のストレンジャー・シングスと違って本作は現代の話だが、現代っぽい描写が少ない普遍的な思春期像を描いてるし出てるキャラがレトロ趣味だったりして結果的にストレンジャー・シングスの30年後とは思えない、殆ど同じ時代のドラマに見える)。
また、僕は観てないけどNetflixで人気の青春ドラマ『このサイテーな世界の終わり』の監督が本作の監督を務めており、本作の雰囲気は『このサイテーな世界の終わり』に似てるらしい(「サイテー」の方も暇な時に観てみるか)。
感想の終盤でネタバレあり。

 

 


ペンシルバニアの田舎町。17歳の女子高生シドニー(ソフィア・リリス)が主人公。
シドニーと仲良かった父親は、一年前のある日、自宅の地下で首吊り自殺して亡くなった。以降、ウェイトレスの母親、小学生の弟と暮らしている。
ドラマの冒頭、血液のような赤い液体をかぶったシドニーが呆然と町を歩いている。恐らく終盤であろう場面で彼女が「何故こうなったか」という回想がこのドラマ本編。「いけてない女子高生の青春ドラマ」でラストが血まみれ……否応なしにブライアン・デ・パルマの『キャリー』を思い起こさせる。キャリーのように血を被るのか、誰かの返り血か、はたまたパンチやトマトジュースなど無害な赤い液体か……そんな択一を念頭に置き、ドラマが始まる。
転校してきたばかりのシドニーは引っ込み思案で友達も少ない、いわゆる陰キャ。しかし同じ時期に引っ越してきた事で親友になった黒人少女ディナは凄くモテるしスポーツ堪能かつ優等生……という陽キャ。しかしディナは最近、シドニーが最も苦手とするアメフト部のガサツな陽キャ、ブラッドリーと付き合い始めたので面白くない日々。
シドニーのイライラが積もり積もった時、超能力が発動するようになった。
周囲の物を吹っ飛ばしたり人に鼻血を出させたり小動物が死んだり……。
そんなある日、近所に住む心優しいサブカル少年スタンリー(ワイアット・オレフ)と仲良くなったはいいが彼に超能力を見つかってしまい……みたいな話。
各話20~30分で全7話……全話合わせても『アベンジャーズ エンド・ゲーム』一本分より短い、それに単純に面白いので1日~2日ですぐ観れる。

 

 

 

要するに思春期の少女が家族、友人、恋愛……など、人間関係で悩んでて、その感情の爆発を超能力で表現した青春ドラマ。
そんな話は、遥か昔から大量に創られてきた。本作の特色は……実はあまり無い。単純に映像が綺麗で美術やファッションの趣味やテンポが良くて面白い、正攻法で攻めるドラマ。強いて言うならラストがちょっと反則な感じするが、それは後述。
主人公シドニーを演じるソフィア・リリスは『IT』でめっちゃ良い感じの、5、6年後にはブレイクしてスターになってるのは間違いない現在のナンバー1女性の子役。低い温度で周囲を冷静に観察してるので「ドライな子かな」と思ってたら、何か嬉しいことあったら一瞬で太陽のように喜びを表現する。そんな素直な顔芸が今の時代の若者っぽい。有名人で言うとビリー・アイリッシュっぽい……と書いて思ったけど何時の時代の若者も皆そんな感じかもしれない。よくわからなくなってきた、まぁいい。
ソフィア・リリスは軽蔑したりウンザリしたり激怒……といったネガティブな感情の演技が凄く上手い(そして笑う時は全て照れ笑い)。このドラマは殆ど彼女のワンマンショーという感じで凄く惹きつけられる。彼女の顔を観てるだけで楽しめる。友人たちと比べて陰キャシドニーはもっさりした格好をしており、その立ち姿も可愛いらしい。
シドニーと仲良くなるサブカル好きの変わり者の少年スタンリーを演じるのは『IT』でユダヤ人少年を演じてた子だが、彼もソフィア・リリス同様すごく良い。彼が着る水色のジャケットもお洒落だ。スタンリーはシドニーと知り合ってジョイント(マリファナを紙で巻いて煙草みたいに吸う)した日に弾みでSEXし、お互い童貞と処女を捨てる。スタンリーはこの田舎で話が合いそうなシドニーを前から気に入ってたようだが、彼女と仲良くなって更に好きになって全編、シドニーを助けてくれる。スタンリーは若干17歳ながら苛ついたシドニーに突き放されたりフラれても常に彼女を助けようと追いかけて助け続ける姿は『マッド・マックス 怒りのデスロード』のマックスとか少女漫画に出てくるボーイフレンド並に広い心を持っている聖人の少年だ。僕が高校の時……だめだ、そもそも女子と話しすら出来なかったし若い時は自分のことしか考えてなかった、せいぜい30代後半にならないと他人のことを考えられなかった(つまりスタンリーは僕より20年分偉い)。彼はいつもシガレットケースにジョイントを10本くらい入れてて学校で隠れて吸ったりするので、もし自分が彼の父親なら「マリファナ吸ってもいいけど裏山とかで吸いなさい!」と言いたいところ。生え際が後ろすぎる事だけが心配だが何もかも最高の少年だ。噂では彼は、原作に出てくる脇役2人を合体させて扱いを大きくしたキャラらしい。
そんな感じで「パパが死んで悲しいし、ママとギクシャクしてる」「親友に彼氏ができて辛い」「はずみで男の子とSEXしちゃったけど、恋人ってほど好きなわけでもない……」「超能力を会得した。こんなパワー欲しくないのに……」などといった、他愛もない(しかし本人にとっては切実な)青春ドラマが繰り広げられる。
アメリカの美しい田舎町〉で〈家族と少し溝がある〉〈繊細な少女〉が〈シニカルな冗談〉とか〈内省的なナレーション〉を言いながら〈爽やかなギターポップ〉がBGMで、キレたら〈スーパーパワー〉をかます、そして〈親友以上の関係の同性の親友がいる〉〈異常に親身になってくれる、私のことを好きな異性がいる〉〈主人公の心の声が頻繁にナレーションで入る〉そして〈青春ものだけど最後にヤバいことになる〉という……フランスの傑作青春アドベンチャーゲーム『ライフイズストレンジ』と被ってるところが凄く多い。だが「パクリ」だとか言いたいんじゃなくて現代的なテーマを取り入れて欧米の繊細な女の子を描くと大抵こうなってしまうんだろう。このシドニーの「陰キャだけど飾らなくて魅力的な女の子」感は『ライフイズストレンジ』の主人公マックスにも似てるし『ライフイズストレンジ』をドラマ化したら、こんな感じだろうなと思った。
シドニーやスタンリーたちも可愛いし、美しい町並みや家の内装や小物も凄く可愛いので久々にちょいちょいスクショさせられた。それにしても『ライフイズストレンジ』もそうなんだけど、アメリカの田舎を舞台にした繊細な主人公の青春ものを観たら、アメリカの田舎に行ったことないのに「懐かしい……」と思ってしまうのは何故だろう。スタンリーが「あの塔知ってる?」と指差すと、行ったことのは勿論まだ塔が劇中に出てきても居ないのに「知ってる知ってる。懐かしいなぁ」と思ってしまうのが不思議だ。自分の子供時代が田舎だったし、子供の時にスピルバーグの映画などアメリカの田舎を舞台にしたジュブナイルを多く観たせいか、アメリカの田舎を舞台にしたフィクションばかり観てたせいか、自分の心の中に「存在しなかったアメリカの田舎」というバーチャル空間が出来あがってるのかもしれん。将来、ジジイになって認知症になったら、それらの記憶がごちゃまぜになるんだろうな。
次の段落から終盤のネタバレ

 

 

 

そんな感じで〈超能力〉と〈父親かもしれない黒い霊を目撃した〉こと以外は、何とか解決できそうな爽やかな思春期が描かれてて楽しい。
仲悪かった母親とも仲直りしたし嫌な奴も居ない……しいて言うなら親友ディナのアホの彼氏ブラッドリーくらいか。しかし、このブラッドリーも「君は俺を嫌ってるけど、ディナを困らせないように俺たち仲良くしよう」とシドニーに握手を求めるなど、アホではあるが心底悪い奴というわけでもない感じで描かれていた。嫌なやつというよりは自分の利益を求めてるだけの只のガキといった感じ。異常に心が広いスタンリーより、むしろコイツの方が平均的な男子高校生と言える。
だが自分の大事な親友……いや、親友以上の感情を抱いてしまっているディナをアホのブラッドリーに取られて苛ついてたシドニー。そんな彼女はブラッドリーの浮気を知りディナに話して、ディナとブラッドリーは破局。ブラッドリーはシドニーに逆恨みするが「お、おぼえてろよ!」と睨むくらいで、まぁあまり深刻な感じはしない。だが悪評が立って人気者のブラッドリーの周囲には人が居なくなった。ここに至ってもブラッドリーはまだ、そこまで嫌な奴には見えない。唯一残った舎弟に「ホームカミングの日を楽しみにしてろよ」と言う。やはり『キャリー』よろしくパーティでシドニーに赤い液体をかけて愚弄する予定のようだ。
そして迎えたホームカミングの日、シドニーはママやディナと仲直りして、ディナと出かける。会場で、喧嘩別れしてたスタンリーとも仲直りして三人は楽しく過ごす。そしてディナはシドニーの〈親友以上の愛情〉を受け止めようとしている、全てが順調に動き始めた。
ここでブラッドリーが登場。シドニの日記を盗んで読んでいた。皆の前でシドニーの秘密「ディナに恋愛感情を持っている」を皆の前でぶちまけ、シドニーレズビアンだと嘲笑する。怒って止めさせようとするスタンリーも殴り倒される。ここまで、さほど嫌な奴にも見えてなかったブラッドリーが急ハンドルで一気に悪役になったね。
ブラッドリーはこの行いも顔も口調も、とても周囲が味方してくれるようなものではなく「こいつ明日から学校でどう過ごすつもりだろ」と思った。まぁ憎しみだけ膨らんで暗黒面に堕ちてもうどうでもいい感じなんだろう。火口でオビワンと闘うアナキンみたいな感じ。
ブラッドリーは続けて「シドニーの超能力」について暴露しようとしたため、既にキレていたシドニーの感情は限界を超えて膨れ上がりブラッドリーの頭部を『スキャナーズ』のように吹っ飛ばしてしまう。首が爆散して倒れるブラッドリーの首なし死体。
酔ってディナにキスして拒まれただけで林の木々を吹き飛ばしてたんだから、嫌いな奴にここまでやられたら、そりゃこうなるか。
ブラッドリーが「ディナの日記には超能力持ちだと描かれている!」と言ったところで証拠はないのだから「それは私が書いた小説だ」と言えばそれで済んだんだけど、シドニーはディナへの想いを暴かれた事と目の前の大嫌いなブラッドリーが悪意を自分にぶつけてきてるのが耐えられなかったんだろうな。そういえば「シドニーはすぐキレる」って最初から振ってたしな。
しかしシドニーがブラッドリーを惨殺したのは驚いた。
というのも第1話の冒頭で『キャリー』みたいなシドニーを観はしたが、このドラマは割と爽やかにここまで来たし、ブラッドリーもそこまで悪いキャラとして描いてないから「ブラッドリーがシドニーの秘密を嘲笑し、それでシドニーがキレてパーティ会場を無茶苦茶にして逃げちゃうんだな。それでパンチか何かを頭から被って赤く濡れるオチかな」くらいの想像してたんだけど、まさかブラッドリーのドタマを吹っ飛ばすとは!
確かにブラッドリーは憎まれキャラだが悪いことと言えば浮気しかしてないし惨殺は明らかに過剰防衛。意地悪されて仕返しするという予想はそのままだったが、仕返しの内容がこちらの想像の斜め上を行っていた。こういった「展開は想像通りだけど描写が想像を超えてきた」というのは映画やドラマを観ててかなり面白いと思えるポイントだ。
シドニーの超能力は今まで、ボーリングの玉を壁にめり込ませたり、大木を10本くらいなぎ倒したりと威力のあるところを見せてきたが、それがモロに人体に向くとこうなるわな。
全話かけて描いてきた、スタンリーと超能力を制御する共同トレーニング、ディナや周囲との和解……など、これまでの努力が全てどうでもよくなってしまう顛末が描かれて新たな次元に上昇して終わるラスト……。こういうラストは個人的にかなり好きだ。
修行で強くなるわけではなく「思い出す」事によってそれまでより1万倍強くなって人格まで上がって終わる『キャプテン・マーベル』や『カンフー・ハッスル』。今までの努力の結果、全く違う世界に行ってしまっただけでなく主人公すら今までの人格から別の者に成り7)とか、ラストで突然それまで出てきた多くのロボや敵よりも1万倍くらい強い真ゲッターロボが出てきて物語そのものがシンギュラリティを迎えた瞬間に終わる石川賢の漫画『ゲッターロボ號』とか。
それらの作品ほどじゃないけど、シドニーの過剰すぎる防衛によってそれら「今までの努力が全て無になるサイキック・パワーの暴走」で、今までの〈超能力はおまけで、メインは爽やか青春ドラマ〉って感じの本作の主題が急に超能力になって物語がアセンションして、更に今までシドニーを付けていた黒い影(父の霊?他の超能力者?)が「今度は彼らが恐れる番だ。さぁ始めよう……」などとアメコミやホラー映画みたいな台詞を言ってドラマは終わる。恐らくシーズン2に続くのだろう。それに、この最終回はまだ原作コミックの途中みたいだし。
ここまで「超能力を扱ってはいるが、それは只の調味料で、実際は田舎を舞台にした爽やか青春ドラマだよ~」と描いておいて最終回で急に、突然『スキャナーズ』や『キャリー』みたいなバイオレンスがブッこまれて、こんなX-MENの登場人物のオリジンみたいな終わり方するとは……正直ちょっとズルいと言えなくもない。だってマジでそんなノリで描いてなかったからね。ブラッドリーがそこまで嫌な奴じゃないように描いてたのも、ラストで驚かすためにわざとそう描いてたんだろうし。結構、反則ギリギリだが、そのズルさを覆い隠す面白さがあったのでズルさは相殺される。結果OKです。
それにしても『スキャナーズ』で頭が吹っ飛ぶところとか『エヴァQ』でカヲルくんが爽やかな笑顔のまま爆散する場面は何故か爆笑しそうになったが、本作のブラッドリー頭部破裂の場合、悪事に対して罰が重すぎるので「えっ!そんなに?!w」と思い、笑いより驚きの方がデカかったね。返り値で真っ赤になったシドニーが会場を出るところも大した距離じゃないのに細かくカットを割っていて、全カットでシドニーが凄いビックリ顔してるのだが、ここも最高に可笑しかった。

※追記:どうやらこのシーズン1で打ち切りらしい。結構良かったと思ったけどなぁ。

 

 

 

 そんな感じでした

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I Am Not Okay with This (TV Series 2020– ) - IMDb

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I Am Not Okay With This (English Edition)

I Am Not Okay With This (English Edition)

 
I Am Not Okay With This

I Am Not Okay With This

  • 作者:Forsman, Charles
  • 発売日: 2020/02/25
  • メディア: ペーパーバック
 

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『ウォッチメン』(2019) 全9話/レイシストとの対決メインのオリジナル要素は傑作だったのに旧作要素メインの終盤はイマイチでした🕚

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原題:Watchmen 企画&製作総指揮:デイモン・リンデロフ 原作:アラン・ムーア。デイヴ・ギボンズ 制作局:HBO 製作国:アメリカ 配信時間:全9話、各約60分

 

 

 

魔術師アラン・ムーアの原作とデイブ・ギボンズのアートによって描かれたアメコミ史に燦然と輝くスーパーヒーロー脱構築アメコミ『ウォッチメン』(1986-1987)。その原作のストーリーから34年後のストーリーがこのドラマ。だからザック・スナイダー監督による映画版の『ウォッチメン』(2009)の続編というわけではない(だから劇中オジマンディアスが行ったカタストロフはイカ)。
僕はと言うと20代前半の時に邦訳が出たので読んで、勿論めっちゃ面白くて二回目の邦訳が出た時も一冊目持ってるのに何となくもう一回買ったりしたし映画版も観に行った。映画版は、「かなり頑張ってまとめたな。でもまぁダイジェスト映像みたいなもんだな。だがこれによってウォッチメンが周知されて再度邦訳もされたし良かったな」と、多くの人と同じ感想を抱いた。あと僕は趣味が同じ人と友達になったりオフ会などで同好の士と知り合ったり一切しない者だったので公開初日に今は亡きバウスシアターに並んでると他に並んでるアメコミ好きの人の口から「オジマンディアス」という単語が出て「他人の肉声で『オジマンディアス』って言うの初めて聞いた!」と変な事に驚いた。
原作『ウォッチメン』は、スーパーヒーローコミックではあるがDCやMARVELみたいにヒーローの活躍をポジティブに描いてるのではなく「現実世界にスーパーヒーローが登場したら?」というスーパーヒーローの脱構築的な感じで描かれている。1940年に自警団的なヒーロー、そして1960年代に神のような超自然的なパワーを持ったスーパーヒーローが登場した影響で歴史が変わってしまい、アメリカはベトナムに勝利し、アメリカとソ連の冷戦によって第三次世界大戦勃発寸前……というアメリカが舞台で終末感あふれる内容だった。これ以上、内容や面白さを説明してたら記事一個くらいかかるので買って読んだ方が早い。
このドラマは公式の原作の続きなので正式な「その後のウォッチメン」ではあるが、DCコミックの方でもドクター・マンハッタンやオジマンディアスが登場したりもしてるので「幾つかある『ウォッチメンのその後』の一つ」と、軽く捉える感じでいいと思う。
まあまあネタバレあり。原作『ウォッチメン』のネタバレは普通にあり

 

 

🕚

 

 

本作は、原作コミックの続き、で、原作の後どうなったのか?というと、

オジマンディアス=彼が行ったイカ作戦だが、ロールシャッハの手記は恐らく信じられてはいないようでオジマンディアスの仕業だとは知られていない。本当に外宇宙のイカが来たと思われていてトラウマで何十年もPTSDで苦しむ人達がいる。またオジマンディアスはそれ以降も小さく無害なイカを機械で自動で降らせるようにして注意喚起させている。オジマンディアス本人は約10年前に失踪。
Drマンハッタン=原作ラストで地球を去り火星にいる。
ロールシャッハ=彼が残した手記は悪い影響だけをもたらし、彼の右翼的思想や極端な思想は有色人種やマイノリティを護る警察を攻撃する過激白人至上主義者〈第七騎兵隊〉に信奉されており、彼らはロールシャッハ風のマスクを着用している。
シルクスペクター=父コメディアンの名字を名乗りFBIのベテラン捜査官になっている。そして父を思わせる辛辣な口調になっている。
ナイトオウル=本人は出てこないしどうなったのかわからない。ただし彼の戦闘機オウルシップの技術は警察の戦闘機に運用されている。
・世界情勢=Drマンハッタンの活躍で制圧してアメリカの新しい州となったベトナムは重要な要素。

そんな感じで最も人気あるキャラのロールシャッハだけ凄く不遇な扱いとなっている。このドラマは概ね好評らしいが、唯一ロールシャッハのファンから彼の扱いの悪さについて不満が出ているらしい。僕はと言うと「ロールシャッハの手記が有効だった場合、オジマンディアスはどこにでもいる薄っぺらい只の悪人になってしまい、このドラマみたいなストーリーは作れないからそうしたんだろう」と推測した。だから「このドラマ世界はロールシャッハの努力が徒労に終わった世界線なんだな」と素直に受け止めたので特に不満はない(アメコミは色んな世界線に分岐してるのでこのドラマの筋が気に入らなければ各自で受け入れなければいい)。
あと、原作のキャラが何人か本編に重要なキャラとして出てくるが感想の前半では一応伏せておこう(後の方でちょっとネタバレする)。
このドラマもまた非常に原作『ウォッチメン』っぽく描かれてて「重要人物の死で始まり、その秘密を探るミステリー形式で進んでいく」「各キャラ一人づつの真相にクローズアップした小さな話の積み重ねで進んでいく」「すると巨大な陰謀が明らかになっていく」「場面転換する時に、違う時間の違う場面に切り替わる時に似た構図で切り替わる(目のアップが、顔みたいな建物に切り替わるとか)」「時代に合わせたカルチャーや今後の展開を暗示する物が画面に散りばめられている」など、すごく原作コミックっぽい描写を映像でやっている。と言っても時計の構造のように緻密だった原作ほどではないが「あぁウォッチメンっぽいな」と感じるテイストは出ている。

 

 


ドラマの舞台は2019年のオクラホマ州タルサ。このタルサは1921年に悪名高い白人至上主義団体KKKクー・クラックス・クラン)によって成功した黒人が住んでいた黒人居住地の黒人たちが襲われて大虐殺され町そのものが破壊された〈タルサ暴動〉が起きた町だった。……この〈タルサ暴動〉は全然知らんかったので検索して初めて知った(日本語版Wikipediaにも載ってなかった)。全然名前を聞かないのは、知られたくない歴史の一つだからだろう。この事件をアメリカ国外に知らしめただけでもこのドラマの存在価値はあったと言ってもいい。
そして現在。ロールシャッハのマスクを被った白人至上主義団体〈第7機兵隊〉は、少数民族や人種差別被害者を護る警察へ反発し、2016年、40人のタルサ警察官の自宅が襲撃された。襲撃を受けたが一命をとりとめた主人公の黒人女性アンジェラ・エイバー刑事は、旧知のジャッド・クロフォード署長と警察を再建した。新しいタルサ警察は騎兵隊に襲撃されないように、昼間は警官を辞めた一般市民を装い、捜査する時はマスクをして身分を隠した〈覆面自警団〉として〈機兵隊〉と戦っていた。
主人公アンジェラも、普段は優しい夫と共に孤児数人を育てるパン屋を装っているが、その正体は修道女風のコスチュームに着替えたヴィジランテ〈シスター・ナイト〉としてレイシスト共を捕えていた。
……「自警団」とは言ってるが、国家権力である警察が覆面してるだけなので本作のタルサ覆面警察をバットマンデアデビル同様にヴィジランテ(自警団員)と呼んでいいのかどうか疑問が残るところだが、主人公のアンジェラは中盤以降、警官というより故人で独自に動いてるからまぁヴィジランテと呼んでもギリいいか。
そんな感じで本作の基本的な舞台は「覆面警察 vs.覆面レイシスト」という構図で始まる。年末年始、香港で中国や香港警察の横暴に反抗した大規模な暴動が起きていたが、香港では警察によって「マスク禁止令」が出るという……アメコミみたいな事が現実で起きてる時に本作が公開されたのでタイムリーだなと思った(『ジョーカー』もね)。
そんなある日、アンジェラや仲間たちと共に騎兵隊と闘っていた、アンジェラと共に覆面警察を立ち上げて家族ぐるみの旧知の仲でもあるジャッド署長が、昔KKKに殺された黒人のように木に吊るされて死んでいた!
……「騎兵隊の仕業か?」とアンジェラたち覆面警官が怒りの捜査を始めて物語が始まる。この署長が殺されて始まるのは原作でいうとコメディアンが殺された事のパロディだと思うが実のところ、この署長はコメディアンほど重要な人物ではないのでコメディアンの代わりとしては少し弱い。

 

 

アンジェラは、吊るされた署長の現場で悠々と座ってた車椅子の黒人老人ウィルを調べたり逃げられたりしてるうちに他にも、どこか見覚えのある謎の場所でクローン人間と共に暮らす謎の老人、どこか見覚えのあるFBIやり手の中年女性捜査官ローリー、謎の大富豪の東洋人レディ・トリュー、アンジェラを支える優しい夫……などについて色々描かれながら、それら個別の秘密が物語の真相へと収束されていく。
割と前半で判明するので書いちゃうけど車椅子の老人ウィルはアンジェラの祖父なのだが、中盤描かれた祖父の過去がめちゃくちゃ良かった。そもそも第一話冒頭の〈タルサ暴動〉も、このウィルじいさんの幼少期の話、この中盤では彼がタルサ警察で働き始めた過去が描かれる。アンジェラは祖父ウィルの思い出を、原作にも出てきた過去を追体験できる薬品「ノスタルジア」を服用する事によって追体験する。
モノクロで描かれるウィル老人の過去。
幼い頃タルサ暴動で両親を失ったウィル老人、彼は黒人の覆面保安官の映画が好きだったため自分も警察官となった。当時よりも黒人差別が軟化したタルサだが、黒人警官である新米警官ウィルが悪い白人を逮捕すると、悪い白人は釈放されウィルは同僚の白人警官にリンチされ首吊縄をかけて殺されかける。「この町で命が惜しければ白人の問題に首を突っ込むな」というわけだ。ボコボコにされた直後、ウィルは、白人の暴漢に襲われる市民を目撃する。だが彼らを逮捕すると殺されるかもしれない。そこでウィルは袋を被って悪をボコボコにする。まるでフィクションから飛び出してきたかのようなヒーロー〈悪を退治する覆面のヴィジランテ〉はマスコミで持て囃される。
ウィルは「黒人がそんな事してるのがバレたら暴動が起きる」って事でウィルの妻の提案で、覆面の目の隙間から見える皮膚の部分を白く塗り「正体は不明だが、どうやら白人らしい」と思わせて活躍する、リンチされた時に付けられた首吊り縄を首に巻いたまま悪と闘う……そう、原作でも語られた、アメリカ初のヴィジランテ・ヒーロー〈フーデッド・ジャスティス〉はウィルだったのだ。まさか他のウォッチメンのキャラを差し置いてフーデッド・ジャスティスが最も念入りにオリジンが描かれるとは意外だった。
原作で「ジャスティスは同性愛者だった」とされてたので「フーデッドジャスティスがキャプテンメトロポリスと付き合ってた」という同性愛描写も、ちゃちゃっと入るが、はっきり言って「原作でそうなってるから入れただけ」感がかなりあった。まぁ原作と矛盾がないようにしたのだろう。キャプテンメトロポリスとの浮気は、妻との不和が生じる原因にもなっているしね。ジャスティスはメトロポリスの誘いで〈ウォッチメン〉の前身ヒーローチーム〈ミニッツメン〉の一員となる。しかしメトロポリスに「僕は君が好きだが、黒人がメンバーだと知られると色々問題があるから君は覆面を被ったままでいてくれ」と言われる。
そしてフーデッドジャスティスは、この町タルサで暗躍しているという白人至上主義団体KKKが黒人同士を殺しあわせて根絶やしにする恐ろしい計画〈サイクロプス〉を突き止める。メトロポリスにミニッツメン出動を要請するが、ミニッツメンを大きくすることにしか興味のないメトロポリスに「黒人の問題は君だけで解決してくれ」と断られる。怒りのジャスティスはKKKを皆殺しにして本部を全焼させる。ウィルが怒りのダークサイドに飲み込まれた事にショックを受けた妻は幼い息子(アンジェラの父)を連れて出ていく……。
この第6話で描かれた、主人公の祖父フーデッド・ジャスティスのオリジンが最高に良かった。
第一話冒頭のタルサ暴動、フーデッド・ジャスティスの誕生、それを孫のシスターナイトが引き継ぐ……このドラマは正直それだけで良かった気がする。

 

 


ところでサブキャラで良かったのはアンジェラの信頼できる同僚〈ルッキングラス〉。
こいつはかなりオススメ。鏡のように周囲の光を反射するマスクを付けており、映像を使った尋問を得意とする。
この鏡のマスクというのもオジマンディアスのイカの惨劇に起因する理由があるし、普段はマーケティングの仕事をしており映像を使った尋問もその昼の仕事で培われた経験を元にしたものだろう。ルッキンググラスを演じている俳優は、アダム・ドライバーを更に冴えなくしたような凄く良い感じの、いつまででも見ていたいような顔してる俳優が演じている。本作でロールシャッハは不遇の扱いだったものの、このルッキンググラスはどう見ても「現代のロールシャッハみたいなキャラ」という感じで描かれている。マスクを鼻までずらして飯食うし映像の尋問でもロールシャッハ模様を使ってるしね。最終話では騎兵隊員用のロールシャッハのマスクを被るし。少年時代のトラウマがあって性的に少し歪みがあるところも似ている。だが極端な政治的スタンスとか悪臭とかコミュ障ではないので「ロールシャッハを少しまともにした感じのヴィジランテ」とでもいうか。
騎兵隊員が家に押し入ってきて次の話では既に皆殺しにしていたが、あそこはきっとルッキンググラスの家だしロールシャッハが簡易火炎放射器などで敵を倒す場面のオマージュの殺戮シーンだったに違いないのできっちり見せて欲しかった。
キャラや鏡マスクなども、ちゃんと原作コミックでの出来事の影響で生まれたキャラだし、かなり良い。もしシーズン2を作るならルッキンググラスの出番をもっと主人公レベルに増やして欲しい。吹き替えてる声優の声もカッコよかった。
他の同僚は、ただただ攻撃的なだけオッサン〈レッドスケア〉と、ただ居るだけの迷彩マスクの女性、規則にうるさいパンダマスクの〈パンダ〉とかが居るが目立った活躍はない。
あと全身タイツの敵がアンジェラを遠くから見ていて、アンジェラが「誰!?」と言ったら猛ダッシュで走って逃げながら両手で身体にローションをまぶしてスライディングして下水溝に滑り込んで逃げるというエクストリーム逃走を披露したヌルヌルマンの衝撃が凄かった。そんな変な格好してなきゃ目も付けられないのに、わざわざ見つかる格好しといて見つかったらそんな無茶苦茶な逃げ方するっていうのが完全に気が狂っている。というかこいつが何だったのか最後まで観てもよくわからん。何だったん?騎兵隊のスパイかと思ったがロールシャッハ覆面じゃないからレディートリューの刺客だったのかな。

 

 

 

そしてシスターナイトの祖父ウィルの正体が語り終えた後の後半。
原作にも出てきたキャラが出たり絡んでくる。Dr.マンハッタンが登場するくだりは全く予想してないところから出てきたので、思いも寄らないそのサプライズを楽しんだし「全ての時間を同時に経験している」マンハッタンとアンジェラの会話は、原作通り面白かった。
だがマンハッタンが終盤、未来を予知しながら数秒後に放たれるタキオン銃を全く回避せず笑顔で喰らって捕らわれるのがよくわかんなかった。あそこは誰が見ても「避ければいいじゃん?」と思うだろう。でも『ウォッチメン』世界は「決められている運命はどうやっても回避できない」という傾向が強いので「あそこは撃たれる事が決まってるから避けようとしてもどうしても食らう運命だから何も抵抗しなかった」って事なのかな?と好意的に受け取った。だが最終回、囚われたマンハッタンがタキオンの檻に封印されているが、その檻が只の蛍光灯にしか見えないので「何とかして脱出しろよ」と思わせられた。その点、スーパーマンクリプトナイトは緑に光らせとくだけで説得力あるので、やっぱタキオンよりクリプトナイトだな、と思った。
それ以前に「何でマンハッタンがこんなにアンジェラに愛情を持ってるんだ?」「それ以前にマンハッタンは好奇心はあっても、こんな優しい奴じゃなくない?」「最後の2話くらいで急に今まで出てこなかったマンハッタンが出てきて、主人公と重要な繋がりがあって物語の中心だと言われてもすんなり受け入れられない」などと、マンハッタンが登場してアンジェラと仲良くなって再登場するるくだりまでは何とか受け入れられたが、そのまま何もせず殺されるくだりは全体的に荒いし最後の2話は受け入れがたくてテンション下がって終わった。マンハッタンにあんなに電話して執着してたローリーとの絡みも全く無いし。
第一話からずっと描いていたオジマンディアスは、クソ野郎のまま主人公たちが悪の組織を倒す道具となったのは良いと思う。
原作キャラのうち「強くなったシルクスペクター」とか「全編、徹底して行われるオジマンディアスいじめ」などは気持ちよかったけど、最終的にマンハッタンがメインとなる最後の2話はかなり強引で散漫な印象を覚えた。
最後まで観たら、僕は「黒人の、主人公シスターナイトと祖父フーデッドジャスティス」「黒人を殺戮する完全悪のKKKと第七騎兵隊」この辺をメインとした「黒人 vs.白人のレイシスト」という骨子だけでドラマを組み立てた方が良かったと思った。
サプライズでマンハッタンを出したはいいが扱いきれてない印象でした。
「○○の正体がマンハッタンだった」という事がわかった第7話くらいまでは、このドラマのことを「神!」って感じで受け止めてたけどね。
ここ数年の、古い名作の続編やリメイクやリブートなどでよく感じる「オリジナルの新しい要素がせっかく面白かったのに、旧作の要素をぶっ込んだ途端、微妙な感じになって終わった」という作品の一本でした。
まぁ「ウォッチメンの続編」を謳って新作を作って、旧作要素や旧キャラが全く出てこなければ「旧キャラも出せよ!」という反発もあるだろうから(そんな感じだったら俺も多分そう言う)仕方なかったんだけど。
だからシスターナイトやフーデッドジャスティスや覆面警察とレイシスト第七騎兵隊との闘いだけをメインで、おまけでエウロパに幽閉されてるオジマンディアスを描いて、マンハッタンが登場するところで終えて「続きはシーズン2で」って感じにした方が良かった気がする。
第6話くらいまでは「これは『デアデビル(シーズン3)』を超えるアメコミドラマ最高傑作か?」と思ったが、最後の2話でテンション下がってそうはならなかった。
だけど基本的に「最初から最後まで面白かったドラマ」なのは間違いない。
僕も何だかんだ言いながら一気観したし。
シーズン2がもしあるなら、シスターナイトは語りきった感あるし次からはマンハッタン化するだろうから、ルッキンググラスをロールシャッハ的な主人公として展開して欲しい。旧キャラはもう出さなくていいけどオジマンディアス裁判編はやるんでしょうね。ローリーは良キャラだから出てもいいし今回、謎のままだったナイトオウルについて知りたいところ。

※追加:という感想を書いた直後「マンハッタンが、ベトナム出身のアンジェラとトリュー、どちらを後継者とするかの話だったのでは?」と指摘されて、確かに‥と思い、トリューのことも只の面白オバサンとしか思ってなかった考えの未熟な自分に気付いて、本作の評価が少し上がりました。マンハッタンは最初から後継を残して死ぬつもりだったのかもね。

 

 

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そんな感じでした

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Watchmen (TV Series 2019) - IMDb

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『ドクター・スリープ』(2019)/中盤までの遠隔サイキック・バトルが凄く面白かったのでホテルには別に行かなくてよかった🐈

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原題:Doctor Sleep 監督&脚本&編集:マイク・フラナガン 原作:スティーヴン・キング 製作国:アメリカ 上映時間:152分 シリーズ:「シャイニング」の続編

 

 

 

配信レンタル開始されてたので観ました。
スティーヴン・キング原作小説『シャイニング』(1977)……の40年後の話として執筆した続編『ドクター・スリープ』(2013)の映画化。小説の映画化ではあるがスタンリー・キューブリック監督の映画版『シャイニング』等の要素も取り入れてるので映画版『シャイニング』の続編としても観れるようになっている。
この監督のホラー映画は『オキュラス/怨霊鏡』『ウィジャ ビギニング ~呪い襲い殺す~』などを観たことあるが、どれも凄く悪いわけではなく面白いところもあったりするけどトータルで言うと凄く胸に迫ってくるものもない100点満点中52点って感じの、一番感想を書く気が起きない映画だったので、ホラー映画は極力感想書くようにしてるにも関わらず感想書いてない。でも同監督がスティーヴン・キング原作を監督したNetflix映画『ジェラルドのゲーム』はかなり面白かった。しかも映画の雰囲気が他のキング原作映画よりもキングっぽかったので「この監督はキング作品がめちゃくちゃ好きなんだろうな」と思ってたら、スタンリー・キューブリックが手掛けて傑作だったけど原作とかけ離れてたのでキングが大嫌いな事でお馴染みの『シャイニング』の続編を監督した。否応なしに天才キューブリックと比較されてしまう「シャイニングの続編」なんて誰も手掛けたくないだろうに挙手するなんて、この人は度胸あるし「オフィシャルでシャイニングいじれる~」という意気込みが伝わってくる。
キューブリックの『シャイニング』は無論好きです(というか映画好きでシャイニング嫌いな奴なんていないだろ)。原作『シャイニング』も中高生の頃読んだけど昔過ぎたせいか全く覚えてない。「これはこれでいいけど映画の方が好きだな」と思った記憶だけある。本作の原作『ドクター・スリープ』は全く読んでない(というか存在も知らんかった)。
本作の公開時は、評価は高かったものの興行収入はいまいちだったらしい。
かなり地味な予告編を子供や若者が観ても「レッドラムやん!」とか「オーバールックホテルやん!」「壊したドアからこんにちわやん!」などとわかるわけもなく「何だか地味なホラーだな」としか思わなかったせいか?あれ観てシャイニング続編を期待して観に来る人は40歳以上とか映画好きしかいないからじゃないか?そしてキューブリック版のような格調高い映像を期待して観た「キングとかホラーが好きなわけじゃない只の映画好き」が観たら「なんだこりゃB級ホラーやん」としか思わなかっただろうし、そんな諸々が原因でヒットしなかったのか?というのが俺の推測。
いつもよりネタバレが激しいので御注意。あと何故かいつもより異常に長め

 

 REDRUM

 

 

😺本作は多分キューブリック版『シャイニング』の続編というわけじゃなく「原作小説『シャイニング』の続編である小説『ドクター・スリープ』の映画化」という感じみたい。本作を観た感じでは原作のキングっぽい雰囲気で進んでいくが、オーバールックホテルはキューブリック映画版のデザインそのままだし、回想シーンに出てくるダニーの父や母も若い時のジャック・ニコルソンシェリー・デュバルと似てるし全く同じ背格好や服装で出てくる。ダニー父からダニーを庇って殺された黒人男性ディックなどは本人そっくりの俳優が演じている。またキューブリック版のホテルでお馴染みの〈エレベーターから出る血の濁流の幻覚〉〈働くばかりで遊ばないタイプライター〉〈狂った父が斧で壊したドア〉〈REDRUM〉〈廊下の先に立つ双子の幽霊〉〈237号室の腐ったババア〉などのキューブリック版でお馴染みの名場面も全部そのまま出てくる。
あとBGMも全て『シャイニング』の特徴的な効果音やBGMを使ってるので、『シャイニング』刷り込み効果によって普通のホラーより面白さが2割くらい増してる気がする。
といった感じで原作のB級ホラーっっぽいキングの感じでストーリーは進んでいくが、キューブリック版の意匠もふんだんに取り入れられてるので、映画と小説どちらの続編としても観れるようになっている。

 

この物語は、主に三人の超能力者をメインに描かれる。
1980年『シャイニング』で描かれた〈オーバールックホテルでの惨劇〉の後、ダニーと母ウェンディはフロリダで暮らした。現在閉鎖されたホテルの亡霊はダニーに取り憑いていた。ダニーは、死んだ師ディックの亡霊が教えてくれた超能力〈シャイニング〉のパワーで、ホテルの亡霊たちを心の中の箱に封印した。
30年後、中年男性になったダニー・トランス(ユアン・マクレガー)は超能力〈シャイニング〉を抑制するため父と同じく酒浸りになっていた。それを克服するため小さな町に移住しアルコール中毒支援団体に通いホスピスの従業員として働く。そしてダニーは、死ぬ寸前の患者のベッドに訪れる不思議な猫アジーと共に〈シャイニング〉の力で患者を慰め〈ドクター・スリープ〉と呼ばれるようになる。……ちなみにこの猫は、老人ホームで死ぬ2時間前に老人の元に訪れる実在するセラピー猫オスカーのエピソードを元にして……というかそのまま使ってる。 オスカー (セラピー猫) - Wikipedia
一方、黒人の少女アブラは、ダニーをも凌ぐ強力な〈シャイニング〉の持ち主だった。アブラとダニーは遠く離れた場所に住んでいるがシャイニングを使って長年、交信を続けていた。
アメリカ全土を移動しながら暮らすヒッピーのような集団が居た。ローズ(レベッカ・ファーガソン)を首領としていた、この集団は〈シャイニング〉能力を持つ子供を拷問することで苦痛を伴って出る生気を吸う事によって何世紀もの間、生き永らえていた半不老不死の邪悪な吸精鬼集団だった(また、彼女らも全員シャイニング使い)。
ローズたちが子供を拷問殺人する現場を〈シャイニング〉でアブラは目撃し、ローズもまたアブラの事を知覚した。ローズ達はシャイニング使いの子供の生気を定期的に吸っていないと不老不死を維持できないため強力なシャイニング使いであるアブラを標的にする。
アブラは、ローズたちの蛮行を止めるためダニーに協力を求め、ダニー&アブラの正義のシャイニング使いとローズたち悪のシャイニング使いとの死闘が切って落とされた!

 

 

 

『シャイニング』の続編って事と、序盤のダニーの落ち着いた半生描写などを観てて「心霊との闘いを通して弟子を育てながら『シャイニング』のトラウマを克服する、しっとりしたホラーかな?」と思ってたら、激しいサイキックバトルに突入するのが意外で面白かった。
そんな感じで前半は、ダニーやアブラの私生活、ローズたちの連続殺人などを描いて「シャイニングとはどんな能力か、ローズたちの存在は何か」を、かなりじっくり描いていく。この時間はかなり長いものの、ダニーの半生は、それだけで一本の映画作れそうなくらい濃厚なので一切退屈せず観れる。また本作は全体的に時間がかなり長いが、「IT」みたいにダレることなく面白く観れる。超能力〈シャイニング〉だけじゃなく丸っきりヴァンパイアみたいなローズ達という非現実的な存在を染み渡らせるにはある程度時間かけないと無理だろうしね。このローズ達……「他人のシャイニングを吸って何世紀も生き永らえてる半不老不死の邪悪なシャイニング使い」という存在は、幾らなんでも突飛すぎるので割と好みが別れる。俺の予想だが「ホラーあまり観ないけど映画的に優れてて格調高い『シャイニング』だけは好きで続編って言うから観た」という映画ファンは、恐らくこのマンガみたいなローズたちの存在を受け入れがたいと思われる。
僕も観てたら割とそういう気持ちが湧いてきたのでキューブリック版『シャイニング』じゃなくて本作を観る眼を、キングのホラー小説やB級ホラー脳に切り替えて観た。
そもそも『シャイニング』の本質は、映画的に格調高い部分を取り去ってしまうと「お化け屋敷の中で、発狂したハゲのオッサンが斧持って追いかけ回してくる」というB級ホラー映画っぽい筋だった事を思い出してみよう。そうすると充分、続編である事が受け入れられる。ところでローズ達は前半、ロリコンのオッサンを狩る少女アンディを仲間にするくだりがやたら長かったね。あれは「ローズ達はこういう人たちです」という事を分からせるためにじっくり描いてたのかね。アンディ役の女優は凄くミュータントっぽい良いルックスしてるのでX-MEN映画にすぐ出れそうな感じ。
さて登場人物紹介や〈シャイニング〉などの説明も終わった中盤では、ダニー&アブラ vs.ローズ達によるサイキックバトルが描かれるのだが、ここが凄く面白い。
全員〈シャイニング〉使いなので「超離れた場所からの視認」「脳をハッキングし合う」「遠隔サイコキネシス」など、遠く離れた相手とシャイニングで闘う様子は、ハッカー同士の電脳戦を生身でやってるみたいで凄く面白い。今まで映画で描かれた超能力バトルは『AKIRA』っぽい視えないエネルギーフィールドを発生させるものや発火能力や電撃能力など単純なものばかりだったが本作の場合「何百kmも離れた相手の脳をハッキングして居場所や弱点を探る」という序盤戦が凄く面白い。
ローズが幽体離脱して上空を飛びアブラの街に探りに行くシーンも凄く幻想的。
「自分の脳内は宮殿」だと嘯くローズは、市役所の書類棚のように描写されたアブラの脳内を探る、しかしそれはアブラの仕掛けた罠でローズは自分が馬鹿にしたばかりのアブラの書類棚によって手を挟まれ、その間にアブラがローズの「宮殿」に侵入しローズのことを探る……この遠隔サイキック・バトルがスリリングだし、ダニーと同僚がローズの不死身の仲間たちを待ち伏せして皆殺しにする爽快なシーン、ダニーが誘拐されたアブラに乗り移って自分が乗ってる車ごと交通事故を起こして敵の幹部をブッ殺すシーンなど、中盤でのサイキック・バトルはどれも面白くて「これはキング原作映画でトップレベルに面白いのでは?なんで話題にならなかったんだろ」と思った。

 

 

 

後半は一人残ったローズとのラストバトル。ローズは備蓄してあった〈シャイニングの生気〉を全て吸ってフルパワー・ローズとなる。
フルパワーになったローズは、めちゃくちゃ強くなったと思われる。
……だがフルパワーになったローズのパワーを見せる場面がないのであまり伝わらない)。終盤の展開を観て「何となくフルパワーのローズの方がダニー&アブラより……強い……のかな?」と、こちらが歩み寄ってやっと汲み取れることであって、正直ローズってあんまり強く見えない。 というのもローズは中盤の遠隔サイキック・バトルで、アブラにボコボコにされているので、ここまで観てたら「ローズ=アブラやダニーの方がずっと強い」という格付けになっている。その後「フルパワーになったからローズの方が強い」って事なんだろうが、さっきも言ったように強くなったと思われるローズの力試しする場面がないのであまりそう思えない。だから中盤の遠隔バトルでアブラにやられるのはローズの部下とかにすればよかった気がする。それにローズを演じるレベッカ・ファーガソンは凄い美女ではあるが、個人的に「凄い美人だけど普通の人間」という印象が強い……『ミッション:インポッシブル』でいつも必死こいて闘ってるのを観てたせいかな?……だから、あんまり「超自然的なパワーを持った不老不死の超人」って感じがあんまりしないんですよね。「凄い美人女優のレベッカ・ファーガソンが超能力者の役をしてるなぁ」という感じが最後まで抜けなかったと言うか。アブラは、瞳がでかいというより瞳の幅が凄く広い不思議な黒人美少女で、賢そうだし何となく超能力者に見える。ダニーはオビ=ワン・ケノービだから超能力持ってて当然ですよね。美人といえば、ローズ以外にもダニーの母ウェンディとかアブラの母親とか全員、顔が薄くて主張が少ない痩せた白人美女なんだよね。冒頭でダニーがワンナイトラブするチョイ役のどうでもいいシングルマザー役ですらスーパーモデルみたいなレベルの美女で「みんな綺麗だけど前時代的なキャスティングだな」と思った。別にどうしてもそれが嫌なほど文句あるわけじゃないし美しい女性は僕も勿論好きだけど、とにかく現実味のない白人の美人ばかり起用してるのが古いよね。
まぁとにかくダニーは忌まわしきオーバールックホテルでローズを迎え討つ。
自分たちのシャイニングではフルパワーのローズには勝てないから、この人間を無差別に喰らう悪霊てんこ盛りホテルでなら勝機がある、という事か。
「バケモノを倒すにはバケモノにぶつける!」という『フレディvsジェイソン』とか、『フレディvsジェイソン』をパクった『貞子vs伽椰子』と同じやり方だ。
フィクション的には「ダニーが過去のトラウマを完全に消し去って世界を浄化する」という意味合いもある。
対決の前にダニーは忌まわしくも懐かしいホテル内を巡り、ボイラーを作動させて電力を巡らせ、霊たちも呼び起こしてホテルそのものを長い眠りから目覚めさせる。
かつて父ジャックが亡霊のバーテンダーから酒を買っていたラウンジのバーカウンター、そこでは死んでホテルに取り込まれたジャックがバーテンをしていた(若い時のジャック・ニコルソンっぽい俳優が演じている)。父と話すダニー。
ローズを迎え撃つダニーは、自分を追いかけ回した狂った父が持っていた斧を装備(まるで聖剣みたいな扱いで斧にクローズアップするのが面白い)。
アブラの幻術でローズをあの懐かしい雪の迷宮に誘い込むがフルパワーになったローズには通用せずダニーはアブラを逃してローズに立ち向かう。だが2人でも勝てなかったローズにダニーが勝てるわけもなく防戦一方。ダニーは切り札として今まで何年もかけて自分の心の中の箱に封印していた〈オーバールックホテルの悪霊〉たちを全て開放。双子の幼女、237号室のババア、盛会じゃよおじさん……オーバールックホテルの悪霊に喰い殺されるローズ。「子供の時のダニーが封印できた霊よりもフルパワーのローズの方が強いじゃないの?」と一瞬思ったが……まぁ今は悪霊のホームであるホテルに居るから地形効果によって悪霊たちも強くなってるんだと思うことにした。
ローズを倒したのは良いが、今度はフルパワーのローズよりも強い悪霊達が野放しになった。取り憑かれるダニー。
このままではアブラを殺してしまうと思ったダニー、しかしこんな事もあろうかとボイラーを暴走させていたダニー。悪霊はダニーを操ってボイラーを止めようとするがダニーはそれに抵抗。その間にアブラは脱出。かくしてダニーの自己犠牲でホテルは悪霊ごと炎上。
筋は通ってるんだけど、ここは「ダニー、別に死ななくても良くね?」と乗れなかった。読んでないけど検索したところ原作ではダニーは死なずアブラの良き師匠、仲良しのシャイニングおじさん〈ドクター・スリープ〉として生き残るハッピーエンドらしい。絶対こっちでいいだろ。「弟子のために師匠が犠牲になる」というのは定番だけど、ダニーは「アブラの師匠」というだけのキャラじゃなく、ダニーには彼個人だけのストーリーラインもあって暗い半生から老人の死を癒す「ドクター・スリープ」という新しくポジティブなアイデンティティも手に入れてやっと人生が始まった感じだし、生き残らないと「ドクター・スリープ」という映画のタイトルも意味薄いよね。僕は「映画は、主人公とか師匠や年長者は死んで終わった方ほうが物語が締まるから良い」と思うタイプだけど、このダニーの場合は死なないほうが良かった。殺すのであれば序盤の「ダニーがドクター・スリープと呼ばれるようになる」くだり全部要らないだろ、その辺全部カットして「荒んだ生活送ってたダニーがアブラと出会って悪と戦ってトラウマやホテルを浄化して死ぬ」って感じで良いしタイトルも変えればいい、序盤のドクター・スリープ展開を残すなら生き残った方が良い。
また、待望のオーバールックホテルを舞台とした後半のラストバトルであるが、強引な理屈付けていざ本当に来たところで思いのほか盛り上がらなかった。というのも、ここで迎え撃つのはローズ一人だけだし、中盤までの弱いローズならともかくフルパワーになって強化されたローズは達観してるので、血の濁流とか雪の迷宮などを見ても「ふーん……」って感じで全くビビらないので盛り上がりに欠ける。ここもまた、ローズを格落ちさせたくないのならローズの部下たちも連れて来て、ローズの代わりにそいつらがオーバールックホテルに阿鼻叫喚でくそビビりまくったり食われまくる様を描けばよかったのではないか?
また皆大好きな幽霊たち……〈双子の幽霊〉とか〈「盛会じゃよ」おじさん〉とか〈237号室の腐ったババア〉もオールスターで登場する(おじさんとSEXしてたぬいぐるみだけ何故か出てこなかった)、あまりに短時間の間に次々と登場するしローズもダニーもアブラも誰も幽霊にビビらないので何だか「『シャイニング』のアトラクションに来た」くらいにしか感じなかった(やっぱりビビったり殺される雑魚たちが居て欲しかった)。だから終盤は残念ながら同人誌的展開の域を出ませんでしたね……しかも〈237号室のババア〉に至っては劇中、3、4回も出てくるからね。幾らなんでも何度も出て来すぎだろう!もはや〈237号室のババア〉も大事な仲間とすら思えてくる。満面の笑顔の監督が「彼らにまた会いたかったよね?!」と次から次へとシャイニング幽霊を出してもてなしてくれてるみたいで「ちょっと……やめ……」と、観てるうちに段々恥ずかしくなってきた。というか「新鮮味がないな……何でだろ?」と思ったらオーバールックホテル再訪は既に『レディ・プレイヤー1』で念入りにやってて二回目の再訪だからね。もうアトラクション感が満載なわけだわ。
というかダニーやアブラや、正義と悪のサイキックバトルなどの新しい物語がせっかく面白かったのにオーバールックホテルに来て一気に盛り下がった。これなら来なくてよかったよ。来るとしたら、現実のオーバールックホテルは既に取り壊されてて「ダニーの心の中に封印してあるオーバールックホテル」にローズを封じ込めて自分たちもその異空間の中に入って闘う……とかそんな感じで良かったんじゃないだろうか。どうしても現実のホテルに行くんなら、さっきも言ったようにホテルや幽霊にビビってくれる雑魚たちを出すべきだよね。
後半や結末に不満はあるが、中盤まではかなり面白い超能力映画でした。
ここ数年、古い人気作の続編、リブート、リメイク……などが多発してて、もれなく爆死している。それらには本作みたいに接待ファンサービスは必ず入ってて「おっ懐かし……」とは一瞬思うけど、それが何かクリエイティブなことに繋がるわけでもなく何となくただ恥ずかしいだけで終わることが多いってよくわかった。「なにもかも……懐かしい……」みたいな気持ちになるの嫌いなんだよ、ジジイみたいで気色悪いだろ。懐かしさしか楽しみがないならもう終わりかけてますよね。ここ数年の続編だのリブートなどでも良いと思った作品や、良くはなかったけど作品内の僅かな良い要素だと思ったもの(カイロ・レンとか)とかって、全部旧作とはあまり関係ない新しい要素とか描き方だったりしたしね。凄く良かったのって『マッド・マックス 怒りのデスロード』みたいな殆ど丸っきり新しくなってるものだけだし。だから懐かしいものとか、そんな感情は全部クソ。そんなもん有難がるくらいなら死んだほうがマシ。その時にはホスピスの猫が俺のベッドに寝始める時。
 

 

REDRUM

 

 

そんな感じでした
gock221b.hatenablog.com「IT/イット (1990)」後編はイマイチだが前編とペニーワイズは最高🤡 - gock221B
「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(2017)」子供達と日常パートは昔より良いが、ペニーワイズは昔の方が良い🤡 - gock221B
「ダークタワー (2017)」異世界で屈強な黒人と‥。全体的にかなり面白くないが終わり方だけ異常に良い映画 - gock221B
「ジェラルドのゲーム (2017)」手錠でベッドから動けなくなった熟女が状況と自己のトラウマに立ち向かう - gock221B
「1922 (2017)」死ぬほど地味で暗い話だがS・キングっぽさが出てるしクトゥルー神話っぽい陰惨な雰囲気に妙に惹き込まれた🐭 - gock221B

「スティーヴン・キング ビッグ・ドライバー (2014)」一本道すぎるけど蘇ると別人になるわけじゃなく本人が暴行魔に復習するのが気持ちいいレイプリベンジもの🚚 - gock221B
「スティーヴン・キング ファミリー・シークレット (2014)」おしどり夫婦の夫が連続殺人鬼。ビッグドライバー、1922と併せて観たい👫 - gock221B
「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019)」🤡 - gock221B
『クリスティーン』(1983) ジョン・カーペンター/Evil Carに魅入られて暗黒面に堕ちた陰キャを親友のイケメン陽キャが愛で殺す🚗 - gock221B

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Doctor Sleep (2019) - IMDb

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